18 ドアの向こうに
ここから第2章です!
※投稿頻度が少し遅くなるかもしれません。また書き溜めますorz
「審議官を買収するというのか」
フォーレンは狼狽していた。
全く予想もしていなかった手段なのだろう。
いや、そもそも裁判という概念自体この世界にないのだから無理はない。
「では早速なのですが、この都市を統括している王族の元へ移動させてくれませんか?」
「正気か、今は深夜だぞ」
そうだ。深夜だ。
通常ならこの時間帯に接見を申し出るなど、非常識極まりない。
だが、時間がないのだ。
今、話し合っている間にも依頼人の母親は、陵辱されているかもしれないのだ。
「だからこそ『金のスキル』があるのでしょう」
「金で納得させる気か…」
冷たい視線をこちらに向けている。
最近、金で解決しようとする事が多かったので少し嫌悪感を抱いているのだろう。
しかし、金が一番手っ取り早く事を進められるのだ。
「まぁ、いい。今からこの都市を統括しているジジイの元へ行くからな」
「お願いします」
「テレポーテーション…」
おれ達2人は、珈琲を半分ほど残したまま空間転移魔法を用いた。
彼らはまだ知らない。
ある人物が、既に王族の元へ出向いていた事を
―都市『ロットー』を統括する王族の館ー
「くぅぅぅう…」
大きな館の中にある小さな執務室。
その中で、1人の老人が椅子に座りながら体を伸ばしていた。
「仕事が溜まっとるのぉ」
深夜にあっても王族は執務をしていたのだ。
王族の勤務は庶民が想像するより過酷である。
特に、地方支部など人員が少ない為、寝る時間などない。
そんな老人が執務をしている最中に事件は起きた。
〈コンコンコン!〉
ドアをノックする音だ。
こんな真夜中に誰じゃ?
「職員か? 後の執務は儂がやっておくから帰ってよいぞ」
全く…働きすぎじゃ。
職員を早く帰してやらんとな
だが、ノックの音は鳴り止まない。
〈コンコンコン〉
先程と同じような音である。
ふぅ…だから、働きすぎじゃと言っておるだろう
一向に帰る気配の無い訪問者に対して、老人は遂に自らドアの方へと近づいた。
――そして
〈ガチャ〉
「お主は……」
「お久しぶりですわロンメル様」
ドアの向こうにいたのはゴールドではなく、スラリとした体型に美しい顔立ち。
バッカスだ
「実は、ゴールドという名前の怪しい男がオークションにきまして」
「ほぅ… どういう事じゃ?」
「異様に金を持っているのよ。何千万をパッと出せるようなね、金の出どころは分からないけど」
「それは面白い話じゃなぁ」
「それでそのゴールドという男が、もうそろそろここに来ます、用件は分かりませんけど」
「『先読み』のスキルか?… 」
「えぇ… 直接相手を直接見なければ分かりませんけど、次に相手がどういう行動をするのかが分かりますからね」
「便利なスキルじゃなぁ… それよりも」
老人は満面の笑みを見せるとゆっくりと椅子へと戻っていく。
そして、自らの白髭を触りながらバッカスの方をチラリと見た。
「正義漢の儂にそんな話を持ってくるとは… 少しこっちへ来い。扉を閉めてな」
「はい…」
彼女は顔を下に向けてゆっくりと扉の中へ入る。
扉を閉めながら
〈カチャ〉
扉がキッチリと閉まるのを見ると老人は、彼女に近づいていく。
そして右の頬を思いっきり掌で、バッカスが倒れてしまうほどの力で叩いたのだ。
「おいバッカス、なんだ言わせる気だ?… 金の話をする時には扉を閉めろと。背中を見せろ」
「は、はい。ロンメル様すみま…」
〈ガッ!ゴッ!ゴッ!〉
鈍い音が室内へと響き渡る。
老人は彼女の背中目掛けて何回も何回も、拳で殴り、時には足で蹴ったりもした。
よく見るとバッカスの背中はアザだらけで、いや身体中がアザだらけである。
服で隠れる所は全て何かしらの傷があった。
「誰が、奴隷制度の復活に寄与してやったと思っているのじゃ」
「ロンメル…様… です」
「そうだ。そのせいで中央の王家から目をつけられてこんな場所へ飛ばされたのだぞ」
老人はぐったりとした彼女の口に布を詰めて、声が出せないようにさらにテープで固定をする。
手や足もグルグル巻きにして、動かないように
「んんんんんんんん」
「お仕置きじゃバッカス…」
ゆっくりと芋虫のような彼女を持ち上げると、部屋内にある廊下側でない扉を開けた。
その中は真っ暗な世界である。
「いつもの防音部屋じゃ… いくらでも叫ぶといい」
「んんんん!んん!」
「ははは。お前は暗い所が苦手じゃったかな? いや、何を言っとるのかよく分からんなぁ、ははは」
彼女の必死の訴えも虚しく、闇の世界へと放り込まれていく。
扉をキッチリと閉まると声にもならない呻き声は、外に響かなくなった。
それを確認すると老人は再度、白髭を触り出す。
「ゴールドという男か… 金を吐き出させるか」
そう、ロンメルが正義漢などと言うのは真っ赤な嘘なのである。
自らの口で、正義漢と広めているだけで実際は極悪人であった。




