第一話・若葉と真由莉
ボクは、もうすぐキミから離れてしまう。
その前に、伝えたい事がたくさんあるよ――――?
今日は、私が通うことになる霜山大学付属高校の入学式。
新しい友達と、新しい恋、フレッシュ学校生活にわくわくしながら、通学路を歩いていく。
「若葉〜!!!!おっはよ〜〜!!!」
「あっ!真由だ!ヤッホ〜!!!!!!」
「若葉はりきってんね!!高校デビューですかあ!!」
「はりきってるかな?別にフツーじゃん?」
「それだけメイクしてればフツーじゃないって!!!」
「真由が平凡すぎるんじゃん???」
私の名前は若葉。森野若葉。
今年高校一年生になる、ごくごく普通の女子高生だ。
フツーに人並みの恋もしてきたし、友達もいっぱいいる。
でも、霜月高校に通うのは、私と真由、愛実だけ。
もっとも、愛実はお姉さんがココの大学生だからだと思う。
愛実のお姉さん――――明日未さんは、美人で頭がいい人。でもあんまりしゃべらない、無口な人。
私は無口な人が苦手。だから私はあまり明日未さんが好きじゃない。
もっとも、明日未さんもあたしを好きじゃないっぽいけど。
真由―――板倉真由莉は、あたしの幼馴染。一番仲良しの、おてんば少女。
真由莉って言うのが長いから、真由って呼んでいる。
今ここにはいない愛実は、眼鏡を掛けたおとなしい女の子。読書が趣味で、実はヒップホップも得意だったりする、風変わりな少女。
まあ、この風変わりなとこが好きだから、友達やってられるんだけどね。
「若葉ぁ?どした?また空想の世界かニャぁ?」
「真由、うるさい!!引っかくよ!!」
「ごめんニャ☆」
「猫缶食べる?一撃でしゃべれなくなるゴキブリ味のやつあるよ。あ、それとも垢味がいいか」
「・・・・・若葉、いつも思うけどそんなもんどこで売ってんの」
「商店街」
「・・・・・・マジッすか?」
真由は時々猫口調になる。それをやめさせるために、ものすんごい味の猫缶を常備している。
もっとも、それを使ったことは一度だけ。真由が爆発したからやむなく、ね。
「若葉ー!!!おーいてーくよー!!!!」
「あ、まてぇ!!!真由ー!!」
私たちは桜吹雪の中を、鬼ごっこしながら駆け抜けていった。
「「でっか!!!」」
今は高校の目の前。
言葉通り、この高校・・・・ハンパナクデカイ。
まあ、大学の付属高校だから、大きいのは仕方がない。
でも・・・・・
「真由、この高校、でかすぎて迷子になるんじゃない?」
「それもそうだねー。あはははははー・・・・・!?」
私たちはここにきてあることに気づいた。
「ね、若葉、あたしたち、方向音痴じゃなかったっけ?」
「そうだったぁ・・・・・!!!!」
そう、あたしたちは二人とも、そろいもそろって方向音痴。
このデカすぎ高校に通う者にとっては、絶望的なこと。
「どーしよっか、真由?」
「どーしもできないね、若葉?」
さっきまで笑顔だった二人が、絶望+不安のなんとも恐怖感漂う気持ちになったのはいうまでもない。