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人生ってなんだろう。

世の中、変だ。俺は、コンビニでビールを思わず、買ってしまった。飲み干す。一気に。呑みたくなった。コンビニのお向かいの赤ワインを業務用スーパーで、ご購入。漫才。漫才。もう、いいや。歩きたくない。俺は、客を降ろしたタクシーに乗り込んだ。帰ろうっと。

「お客さん。仕事、何してんの」

「あ。俺、漫才師」

「へえ、もしかして、テレビとか出てるの」

「うん」

「ふうん。頑張ってね」

「ありがとう」

タクシーの運転手のおじさんの頭は、はげていた。嘘も方便。でも、俺、今日から漫才師。弘人の相方、どっちがボケでどっちがツッコミだ。ああ、煙草、煙草。


部屋の鍵を開ける。もう、寝ちまおう。ぐったりと。疲れる男、理解者募集、弘人さんよ。


『どうも、朝焼け番長と申します。よろしくお願いします。我々も頑張っていこうと思ってるんですが。ね。弘人君』

『ぼ、僕、が、頑張れません』

『なんでやねん』

『ぼ、僕には未来がないんです。ぼ、僕には』

『ウルトラじゃんけんタイム。こうすると未来がやってきますよ、弘人君』

『じゃ、じゃんけんしま、しましょう』

『じゃんけんポン。はい。三秒たったので弘人君には未来がやってきました。よかったですね』

『そ、そ、そうですね』

『このじゃんけんを、十名の皆様に差し上げます』

『じゃ、じゃんけんをど、どうやって、さ、差し上げるんですか』

『わかりません。どうもありがとうございました。朝焼け番長でした』


うわっ。夢だ。舞台の上で弘人と俺が黒いスーツに身を包み、百人ほどの客の前でウケない漫才をしていた。煙草、煙草。美由紀にアマエタイ。美由紀。俺、今日から漫才師だからな。無職じゃとは、もう呼ばせない。煙草の火を点けると同時に、美由紀が帰って来た。やっぱり、笑っていた。

「どう、だった。例の理解者募集」

「漫才師になりたいんだって」

「へえ。人生、笑わないとね。相方さんとかいるの」

「お、俺が相方だってよ」

「まじ」

「まじ」

「仕事、見つけて良かったじゃん。京介」

「ま、まあな」


美由紀を抱く。何故だか、怖くなった。全てを俺は失うんじゃないかって。キスを交わす度に。美由紀。俺のそばにいてくれ。俺を理解してくれ。


「今日さ、カレーにしようか。京介」

「そうだな」

「あんた、カレーに卵と納豆、入れるの、好きだね」

「そうよ。この食い方がイチバン美味いんだよ」

「その前に、あんた、酒臭いよ」

「ばれたか」


食事の会話はやっぱり、弘人のことになった。統合失調症。アトリエ。絵。師匠からの破門。土下座したこと。漫才師。

「へえ、その子、病んでるんだ。うちの病院に来るように言ってくれない」

「ああ、いいよ。仁大会病院ね。言っとくわ」

「今度さ、その弘人君と、ほんと、3人で会えないかな」

俺は笑うことを選択した。

「会おう、会おう。絶対、喜ぶよ。あいつ。理解者募集だからな」

「よかった。ネタ合わせ、頑張るんだよ。朝焼け番長」

「はい」

俺は幸福だ。美由紀とまた、抱き合って、キスを交わす。でも、怖い。はい。コンビ名は朝焼け番長。夢じゃない。


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