楽屋
柿谷が去ってラーメンを食い終わった後、スマホのメールが入った。
『すぐに楽屋に
キ
テ
ホ
シ
イ
では、頼んだよ』
……壮絶キモい内容だった。
テメーは恋人か。未来予想図のア・イ・シ・テ・ルのサインか。
そんな風に不満をつぶやきながらも、権力には抗えずに今日も梨元さんの楽屋の扉を叩く。
「失礼します」
「やぁ、新谷君。来てくれたね」
「そう言えば久しぶりですね」
「なんだね……お久しブリーフとでも言いたいのかね」
「……いえ」
なんだそりゃ。
ぶん殴るぞ。
「君を呼び出したのは他でもない。なにか僕に隠していることがないかと思ってね」
「……っ」
なんちゅう鋭いオッサンだ。
「いえ、別にありませんけど」
「本当かね?」
ギラリと。
梨元さんのハズキルーペが光る。
「ええ、本当です」
内心はドキドキだが、極力平静を装って答える。
「……そうか。いや、失敬失敬」
「なんかあったんですか?」
「凪坂46のメンバーの中に雰囲気が変わった子がいてね。まさか、とは思ったんだが」
「……誰ですか?」
「東郷真那だ」
「か、カレー娘ですか」
全然的外れだった。
「てっきり君が手を出していると心配したが……」
「彼女14歳じゃないですか!?」
「だからこそなのだろう!?」
「ロリコンじゃないですか!?」
「ロリコンだろう!?」
「ロリコンじゃないです!」
「嘘つくな!」
「アンタどんな目で俺を見てるんだ!?」
だいたいそんな奴を公式お兄ちゃんに指名するんじゃねぇよ。
「しかし、まあ年齢なんて関係ないと人は言うけれど世間はロリコンには厳しいからね」
「そりゃ、年端のいかない女の子をたぶらかしているようなもんですからね」
「しかし、江戸時代では結構普通だったんだよ」
「……確かにそれを言われると、文化的な流れってやつですかね」
こんなしょうもない話なのに、結構真面目な話になってきた。
「まあ、一般論として言わせてもらえば、お互いに本気だったら僕はいいと思うがね」
「……仮に、あなたの娘が14歳で僕と付き合ってると言ってきたらどうします」
「君を社会的に抹殺する」
「怖いな!」
「シティハンターを呼び出す掲示板でXYZ書いてぶっ殺してもらう」
「怖過ぎるな!」
「一般論だと言ったろう?一般論なんてアテにならないもんさ。ただ、僕は思うんだ」
「なにをですか?」
「本気で恋をしたんだったら一生ロリコンの汚名がつきまとったとしても貫く。そんな覚悟を持ちたまえってね」
「……」
カッコイイのか。
めちゃくちゃカッコ悪いのか。
俺には正直判断がつかない。
「という訳で」
「……そう言えばなんの話だったんですか?」
「新作映画の脚本書いたから、ぜひ見に行ってくれ」
『ロリコンのサンタクロース』
めちゃ怖いホラーーーーーー?




