収録
実にTYO49の隣での収録。彼女たちや古谷を気にする必要なんてこれっぽっちもないのだが、自然と肩に力が入ってしまう。
「さあ、今日の凪坂ちゃんは恒例家族企画。題して、家族突撃……訪問ーーーーーーーーーーーー!」
「「「「イェー!」」」」
こ、この場合は『ギャー』とか『イヤー』とか言えよ。
「この企画はみなさんの家族に突然訪問をしてしまおうというチャレンジ企画です!」
「はい!」
「おっ、柿谷。元気いいな」
「つまりなにが言いたいんですか!?」
「そのままだよ!」
わかりやすい説明だっただろうが。
「さあ、今回は誰の家族が出るのかなー」
意地悪そうに周りを見渡すと、やはりみんな嫌そうな顔をしている。まあ、それはそうだろう。誰だって家族を見せるのは苦痛だ。ましてや、このぐらいの思春期の年頃だったらなおさらだ。
しかし、これも仕事。
俺はお前らの嫌な顔を引き出して、笑いをとって見せる。
なんなら、泣かせまくってやってもいい。
「で……最初に出演する家族は……この子だ!」
そう言うと、モニターに映像が流れた。
「鬼鬼マンモスーーー!」
・・・
「「「「……」」」」
おふくろーーーーーーー!?
「ちょ……なん……どゆこと!?」
急いでスタッフの方を見ると、
『木葉マネージャーから了解もらってます』
というカンペが……あのクソ女……
「だいちゃーん! 元気ー!? ママだよー」
ば、ババアーーーーーーーーーー!?
「ママだって」「ママね」「ママって呼んでるのかな」「きっと呼んでるわよ」「呼んでそうだもんねー」「ねー」「なんかオダママのことも略してこの前ママって言い間違えてたし」「あの人絶対にマザコンだよ」
「て、テメーら」
コソコソと堂々影口言ってんじゃねーよ。
「だいちゃーん。たまには帰っておいでー。M−1決勝戦史上最低点だからって、R−1で一回戦敗退だって全然恥じることないんだよ。家族一丸となって応援してるから……ミキー! 早くこっち来なさい! いいからっ!」
「……」
「えっ、やだ!? あんた! お兄ちゃんが頑張ってテレビ出てるんだから! えっ……恥? な、なんてこと言うの! 家族でしょ! 家族が応援してあげないで誰が応援して……えっ、お母さんも恥ずかしいって言ってた? バカ! テレビ! テ・レ・ビ!」
・・・
……殺すぞ!?
「だいちゃん、ママね、ちゃんと連れてきてるからお友だち。じゃじゃーん」
ババアが断固自称ママのままそう言うと、カメラが横にスライドする。
「大二郎ー、元気か」
そう言いながら手を振るのは高校時代からの親友加藤岳だった。思わず、懐かしい顔に少し照れくさい気分になる。
「だいちゃん、忙しい中に岳ちゃん来てくれたよー。さあ、ここでいつもお世話になってる凪坂ちゃんたちと距離を縮めるために『質問状』もらってます。ええっと……『新谷さんは高校生の頃、なんて呼ばれてましたか?』。これは、本田ちゃんの質問ね」
「お、おい本田。お前、もうちょっと面白い質問しろよー」
冷やかし半分、真面目半分でツッコミを入れる。
俺のあだ名なんて凄く普通だった。
『大ちょん』。まあ、面白くもないし結構呼ばれてそうなパッとしないアダ名だと思う。大二郎だから、その一文字を取って、大ちょん。
「岳ちゃん、わかる?」
「えっと……確か、おっぱいマジシャン」
そっちの奴ーーーー!?




