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ライブ


 一週間後にやって来たのは、まさかの幕張メッセ。あんな奴らが9000人を満員にするとは。俺のお笑いライブなんて、300人のハコでガラガラなのに。


 一応、一般席じゃなく関係者席の方を通る。公式お兄ちゃんの身分だと、てっきり顔パスかと思ったがガッチリ警備員に止められた。それから、必死にカバンの中から身分証とチケットを出していると、横から先輩公式お兄ちゃんであるお笑いコンビ『ピザマン』の二村さんが出現した。


「あっ……お疲れ様ーっす」


 とバリバリ顔パスで通過されて、いくらなんでもの格差に凄く傷ついた。その後、二村さんが気づいてくれて、一緒に同行させてくれた。


「すいません、俺が人気ないばっかりに」


「まあ、オーラだな。オーラ」


 そんな風におどけて言ってくれる二村さんは凄くいい人だ。そもそも、ピザマンが公式お兄ちゃんのパイオニアだと言っていい。今、一番勢いのある坂道46がのし上がってきたのも、彼らの働きは大きいのだろう。


 まず、凪坂46の挨拶に行く前に、坂道46の挨拶に同行させてもらった。


「「「「「あっ……二村さん!おはようございまーす」」」」」」


 入ってきたと同時に、嵐のような歓迎ムードが展開される。それから、ワイワイと雑談を交えて仲がいい雰囲気を如実に見せられた。


「さすが……凄いですね」


 思わずそうつぶやいていた。


 まるで本当のお兄ちゃん。


 いや、それ以上の関係性だと言っていいんじゃないだろうか。


「ふっ……お前も、何年も経てば自然と作れるよ」


 そう答える二村さんの表情は少しだけ誇らしげだったような気がした。


「あの……新谷さん」


 センターの神石が俺にも声をかけてくる。ゆるくフンワリとした髪に、白く雪のような肌。その壮麗な衣装が一層神々しさを醸し出す。


「こんにち()()


 か、噛んだ。あまりの美しさに噛んでしまった。写真集の売り上げが史上最多の20万部越えという歴史に残る快挙を成し遂げたトップアイドル。さすがに、みる人を惹きつける圧倒的オーラを纏っている。


「いつも、『凪坂ってナギナギ』楽しく拝見させていただいてます。彼女たちがいつもお世話になってます」


「「「「お世話になってます」」」」


 神石のお辞儀とともに、一斉にお辞儀をするほかの坂道46のメンバーたち。


「いえ、俺は何もやってないですよ」


「そんな。彼女たちって、いろいろと変わってて難しいんじゃないかなって思います。でも、放送では凄く面白くて。本当に凄いです」


 100パーセントお世辞だろうが、思わずホロリときてしまった。


「……逆にどうですか、放送以外の彼女たちは?」


「「「……ははっ」」」


 なんとも言えないほど微妙な苦笑いを浮かべる坂道46のメンバーたち。だいたい、今の様子で概要は理解できた。


「今後とも彼女たちをよろしくお願いします」


「「「お願いします!」」」


 深々と礼儀正しくお辞儀をする神石、そして坂道46のメンバーたち。


 ……彼女たちの爪のアカを煎じて2リットルペットボトルでがぶ飲みさせてやりたい。


「よーし、じゃあソロソロみんな、掛け声行くよー」


 坂道46キャプテンの梅井が元気にみんなを集める。


「根性!」


「感動!」


「笑顔!」


「われら坂道」


「上り坂」


「「「「フォーティーシッークスッ……はい!」」」


          ・・・


 っかっこいい!


 正直言って感動してしまった。そして、みんな、なんかキラキラしている。すごくみんな忙しいのに、やたら楽しそうで充実した表情を浮かべている。この子たちの公式妹が凪坂46なんて、正直信じたくない想いでいっぱいだ。


 そんな想いを浮かべながら、次は凪坂46の楽屋に行く。


「「「「「……」」」」」


 て、てめーら……挨拶をしろ。


「……あの、これ差し入れ」


 そう言って、いつも好んで食すと言われるもみじ饅頭を手渡す。


「「「「「……」」」」」


 お、お礼ぐらい言えよ。


 とまあ、心の中でそんなツッコミを入れてはみるものの、どうやらワザとではなく、単にめちゃめちゃ緊張しているらしい。


「……先輩たちの坂道46は掛け声をかけてたぞ」


 それとなくアドバイスをしてみる。


「「「「「……」」」」」


 無視はされるけど、気にしない。こいつらは、極度の集団人見知りだ。坂道46とは違うけど、こいつらにはこういう子たちなんだ。


「後輩のお前たちが頑張れるのは、気合いだけじゃないのか?」


 そう言うと。


 暫定センターに選ばれた柿谷が一歩前に出た。


「掛け声……しよっか?」


「「「「「……うん」」」」」


 ようやく、心が決まったらしい。


「じゃあ、行くよー!」


 暫定キャプテンの本田に合わせて。


 彼女たちは一斉に掛け声を出す。


「忘れないで!」


「夢を!」


「落とさないで!」


「涙!」


「だから!」


「君は?」


「飛ぶんだ!」


「どこまでも!」


「われら凪坂」


「愛と勇気だけが友達」


「「「「フォーティーシーックス……はい!」」」」















 いやアンパンマンーーーーーー!?

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― 新着の感想 ―
[良い点] いやーアンパンマンは名曲ですよねww 集団人見知り、かわいいです!
[一言] どうりで既視感があると思ったらwww この坂道46との差よwww やっぱバ○ナマンは偉大ですよね!
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