第17話 収録(2)
「えっと、皆さんはクイズ大会の準備を黙々としてくれてたと思いますけど、それは真っ赤な嘘! 実は、家族に君たちの本当の姿を教えていただこうと言うものになっております!」
「ええっ……じゃあ、今まで勉強してきた分は!?」
推定偏差値25の能條(根野菜娘)が、唇を尖らす。
「まあ、全部無駄だったよね」
「……」
「だいたい、このスタッフたちが君たちにそんな準備させると思うかい? 愚かだよ、愚か。そんな浅はかな考えを持つこと自体、愚か過ぎるよ」
柿谷がなんとも言えない表情を浮かべて、パクパク、パクパクしている。すまん……しかし、これが、バラエティ番組のMCと言うものなんだ。
ううっ……半分、涙目になってるじゃないか……不憫。
「と言うことでね、まずは……柿谷芽衣のお母さんからお話を伺っております。『彼女が他のメンバーと比べて優れているところは?』という質問に対し、お母さん、こう答えていただいています」
『身体が柔らかい』
お母さん……もっと、見るべきところがあるでしょう? 可愛いし、性格いいし、頭だっていいのに……なによりあんなにうんばばしてたのに……今更、そこフィーチャーさせますか?
「か、柿谷。身体柔らかいの?」
「……はい!」
瞳から、今にも流れでそうな涙を拭いながら、元気よく、健気に返事をする柿谷。
「……なんで、泣いてんの?」
黙れオダママ!
「じゃあ、一回、前でやってみてよ」
「はい!」
・・・
プルプルプル……
……ま、まあ柔らかい……かな。
中の中の上という感じで、まあどこにでもいる人のやる奴。よくやるアイドルがやる『オレ野原しんのすけだぞー』の下位互換。
「はい、ありがとう……」
特に取り上げることもなく、終わってしまった。
「じゃあ、次は……エース本田!」
「げっ!?」
「そんな声を出すな! ええっと、本田のお父さんにも聞いて来たぞ。『彼女が他のメンバーと比べて優れているところは?』という質問にーー」
『身体が柔らかい』
「お前もか!?」
と言うか、ここのスタッフは性格最悪だな。普通、カブらせるかよ。
「じゃあ、本田もやってみて」
「はーい」
まあ、柿谷にもやってもらったし、特にいいいいいいいいいいいい!?
エクソシストみたいになってるーーーーーーーーーー!?
「ほ、本田! お前……凄すぎるよ!」
「エヘヘ……本当ですか?」
……エ、エクソシストしながら、ピュアな顔してハニかむんじゃねえよ。激しく気持ち悪いじゃねぇか。
この時点で、柿谷が完全なピエロと化した。
「……」
か、悲しそう……
「じゃあ、他にも聞いてみたいと思っていますけども、柿谷……のお母さん。おっ、2回目じゃないか」
「は、はいっ!」
いい返事だ。ここで、名誉挽回だぞ!
「ええっと……また、同じ質問か。『彼女が他のメンバーと比べて優れているところは?』という問いにお母さんがーー」
『指が柔らかい』
他人だけど……ば、ババアーーーーーーーーーー!?
「ゆ、指が柔らかいの?」
「はい! 行きます」
なにも言っていないのに、立ち上がり、人差し指を曲げ出す柿谷。
135度……微妙。
「……はい、ありがとうね」
カット……その心意気や買うが、まず135%カットだろうなぁ。
「じゃあ、次は……オダママ」
「わ、私かぁ!」
「えっと、『彼女が他のメンバーと比べて優れているところは?』という問いに妹がーー」
『指が柔らかい』
「お前もか!?」
「はい……じゃあ、やります! えいっ!」
5本ともエグいぐらい曲がってるーーーーーーーーー!?




