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3件目 このよろず屋に親戚の幼女が遊びに来た件 1/3


―――ピンポーン


 土曜日の朝っぱらから誰だ?

 茜は先週から土日のシフトを少し緩めに変更してもらってたから今日は来ない日のはずだが…。

 もしかして宅配か?今いきますよ~っと。


――ガチャッ


 玄関を開けるとそこに宅配業者の姿はなかった。


 ん?……なんだ?この幼女は?

 見た目からすると…6~8歳前後?…と言ったとこか。

 なぜよろず屋の前で突っ立ってやがる。


 お家を間違えたか?それともボロアパートに迷い込んだのか?

 じっとこっちを見上げて……まぁいい、少し質問してやるとしよう。


「どうしたんだい?お嬢ちゃん?」

「遊びに来たです!」


 ……は?

 何急に遊びに来た言ってんだこの幼女?

 ここは公園じゃねぇんだぞ!職場だぞ!


 仕方がない。

 この幼女に、此処がどういう所なのか……優しく教えてあげないといけないな。


「なぁお嬢ちゃん?ここは子供の遊び場じゃねぇんだ…大人の戦場なんだ…分かるな?だから今日は帰ってお家でおままごとでもして遊んでなさい」

「ここで間違ってないはずです!ここに瞳お姉ちゃん…いるです!」


 瞳お姉ちゃん?


「あ、瞳お姉ちゃん!」


 ッ!!お嬢のことじゃねぇか!!

 ――ってお嬢!ちょっとした用事あるからって朝方外出したのに…もう帰って来たのか!


「そこの奴隷!なんでアンタが花音かのんの頭撫でまわしてるのよ!ロリコンだったの!?」


 ろ、ロリコンちゃうわッ!!

 や…やばい!誤解を解かねばッ!!


「あっいや…あははッ!その…可愛い妹ちゃんだなぁと思って」

「妹じゃないわ。親戚の子よ。今日から明日の夜まで預かることになったの」

「そうだったのか…。わ、悪かったな…」

「別に平気です」


 俺はお嬢ちゃんをよろず屋の中へとエスコートする。

 そして入ってすぐのリビングで改めて顔を見合わせた。


「俺は但野 仁だ。仁でいいぞ」

「わたしは初宇部 花音(はつうべ かのん)です。花音でいいです」

「ちなみにお嬢ちゃん…今いくつだ?」

「年齢は9歳です!」

 

 まぁ、そんなもんか。

 見た目は少女というより幼女だが…。


「ごめんね花音。本当は私が預かる予定だったけど…急な用事ができちゃったから…」


 お嬢は花音と呼ばれる幼女の頭を申し訳なさそうに撫で始める。

 すると幼女は気持ちよさそうな表情で”大丈夫”であることを伝えた。


「仁!今日のあんたは学童指導員……ではなく、保育士に任命するわ!申し訳ないけれど今日一日は花音と遊んであげて。一応休日扱いにしておくから私の期待に答えなさい」

「あ、あぁ!任せろ!」

「うん。それじゃあ、また出かけるわ」


――バタンッ


 お嬢がまた外出していった。

 どうやら一時的に戻ってきただけだったようだ。


 それにしても……休日か。素晴らしいな。

 だが、エセ保育士をさせられるとは予想していなかった。

 この幼女…もうそんな年でもないだろ?


 それに”もう私は大人です”とでもいいたいのだろうか……何かをする度にしっかりしてます感をアピールしてやがる。

 まぁ仕方がない。俺のエセ保育士パワーで適度に遊んでやるとしよう。


 俺は幼女と一緒に近くの公園でボール遊びをする。

 よろず屋に戻ったらパズルゲームで一緒に遊び、その後は俺お手製スイーツを食べながら映画鑑賞だ。


 そしてその日は一日中、幼女と一緒に遊んでやった。




◇◇




―――――そして翌日


「あー…」

「ほらよ、食らえ」


――ぱくっ


「ん!うん!仁!もっとほしいです」

「もうねぇよ」

「残念です。でも、このお菓子もおいしかったです~」


 なんで俺が幼女の餌付けをせねばならん。


 時刻は朝の10時。

 幼女曰く10時のおやつタイムらしい。

 幼女は白猫を抱えたまま口を開けてくる。

 そこに俺のお手製スイーツたちを突っ込むのが今の役割だ。


 なぁお嬢…俺はいつまで幼女の相手をすればいい…。


 あまり考える間もなくおやつタイムが終わる。

 そして、幼女が食べ終わると同時にゲーム再開だ。

 幼女は白猫をリビングに放すと俺の膝の上に座り、TVゲームを開始する。


 すっかり懐かれたな…なぜだ?


 この幼女が人懐っこいのだろうか?

 それとも俺の作り置きしていたスイートなお菓子でメロメロにしてしまったのだろうか?

 このままではどこかのロリコン変態野郎にお菓子で誘惑されて連れて行かれるのではないかとお兄さん心配しちゃうぞ。


 こうして色々考えている間に今の対戦ゲームは終わっていった。

 

「あ、仁!次あれー!!”じぇのさいどじぇんがぁー”やりたい!!!」

「あぁ分かった」

「瞳お姉ちゃんもやろー!」

「私はまだやることがあるの。昼前に終わるわ。その時に一緒に遊びましょ」


 お嬢はリビングで昨日入った急な仕事の処理をしている。

 大変そうなので少し手伝ってあげたいところだが、俺が口や手を出せるような案件ではなさそうだ。

 なので俺は俺の役割である”全力で幼女と楽しく遊ぶ”ということに注力することにした。


 それにしてもこの幼女……なんかめっちゃ興奮してるな。

 さっきまでの”ですです口調”がなくなってやがる。

 色々な対戦ゲームをやってきたが、どのゲームでも本気で熱中するタイプのようだ。



 俺はTV画面に映されているゲームの中から幼女が指定するゲームを選択してプレイしていく。

 最近はネットで無料のゲームができたり、有料だがパッケージでまとめてダウンロードできたりと良い時代になったものだ。


 因みに今開始したゲームは攻略側と防衛側に分かれて戦うリアルタイム戦略ゲームだ。

 タワーと呼ばれる複数の防衛拠点を築いた俺が、幼女率いる攻略部隊を返り討ちにするという奥の深いクソゲーである。


 俺は様々なトラップを駆使して幼女を迎え撃つが、幼女は幼女で様々な攻略兵器を絶妙な位置とタイミングで配置し侵攻してくる。俺の防衛拠点であるタワーはことごとく効率的に破壊されていくのだ。


 そして、俺が守るべき王国の民達を容赦なく”じぇのさいど”し、屍の山を築き上げてくる。


 どの対戦ゲームでもこの調子だ。容赦がない…そして上手い。

 この幼女…頭のキレはかなり良いようだ。


 ……さて、このゲームも俺の負けか…。


 それにしても…懐かれたことで本日の日曜日も休日になった。これは僥倖と言えよう。

 しかし…初めての2連休…なんか色々と考えてしまうな…。


 まずこの幼女……そろそろ現実の厳しさを教えてやらねばならん。

 調子に乗っているので一度ぎゃふんと言わせてやるか。

 そして…特にお嬢。そろそろ一回ぎゃふんと言わせてみたい。

 今はエセ保育士だが、常日頃奴隷だった俺の切なる野望なのだ。


 しかし一体何をすれば…うーん…分からん。

 普通に考えてても結論に至らんな……まぁ、とりあえず気持ちから変えてみるとするか…。


 そして俺はゲスの極みを目指して自己暗示をかけた。

 心が少しずつゲスになっていくのが分かる。


 俺はゲス……ゲス野郎だ。

 さぁ、こいつらに…特にお嬢に一泡吹かせるにはどうする…どうしたらいい?

 怪しまれることなく…それでいて楽しいゲームのような……ん?もうお昼か…。


 ―――!?――閃いたぜ!


「なぁ花音。そろそろお昼ごはんにしよう。そして同時にゲームもしようか」

「え?お昼ご飯?同時に…ゲーム…です?」

「おいお嬢、もうお昼の時間だ。そして…ロシアンルーレットをやるぞッ!!!」

「突然なに?」


 お嬢がPCとのにらめっこをやめ、椅子を回転させて俺の方を向いた。

 ムスッとした表情でこちらを見てくる。


「最近刺激が足りないだろう?今日のお昼ごはん用で用意したニンニク抜き餃子のタネが冷蔵庫で寝かせてあるんだ。今から皮に包んで作るが、その餃子の一つに辛いもの…そうだな…ワサビを入れよう。そして辛い餃子を食べて"辛い"と言ったら負けってゲームだ」


「面白そうですー!!」

「お、ワサビは平気か?」

「からいものは何でも大丈夫です!」

「なんでわざわざ辛い物を入れるのよ?」


 やはりか。お嬢はあまり乗り気じゃない。

 ここは自然な表情で煽ってみるとしよう。


「なんでってそりゃ面白いからだろ?…おや?…お嬢もしかして……逃げるんですか?」

「――なッ!!」

「瞳お姉ちゃんはやらないです?」

「…ッ…まぁ、たまには付き合ってあげてもいいわ」


―――キタッ!


「よし、じゃあ早速お昼の準備をするぜ。お嬢…俺の職業は?」

「シェフよ」

「だよな。ちょっと待ってな。すぐ美味しい餃子を用意するからよ」


 俺は立ち上がり、リビングの横にある台所まで向かった。

 爽やかな笑顔を崩さずに普段通り歩いていく。


 …フッ…ふふふ…ふはははははははッ!!

 かかった…かかったぞコイツら!!


 辛い餃子?バカかッ!!

 その餃子を作るのはこの俺だぞ?

 辛いどころではない…激辛だぁッ!!


 美味しい餃子…クククッ!!あぁ、そうさ…おいしいおいしい餃子だよ?

 待っててね…すぐそのお口の中に届けてあげるからさぁ!


 そして俺はおいしいおいしい餃子たちを作り出した。




◇◇




 とりあえずの順番は簡単なくじで決まった。


 餃子を取る順番はお嬢→俺→幼女の順だ。


 そして俺は大きめの皿に12個の餃子を一直線に並べてテーブルに出した。

 香ばしい餃子の香りがリビングを包み始める。

 幼女は涎がたれそうな様子で前のめりに香りを楽しんでいる。

 だが、お嬢は極めて冷静な佇まいを崩していない。


 ほぅ…流石に警戒しているか。

 こんな事…今までしたことなかっただろうからな…このお嬢様はッ!

 クククッ…さぁ…12個の内1個は激辛ワサビだぁ。

 どっちでもいい!ヒィヒィ言って泣き叫べやぁ!!



「よし、準備できたな。早速はじ―――」

「ねぇそこの奴隷…」


 ―――ッ!!まさかッ!


「お嬢ッ!!先に勘ぐって悪いが”当たりを正直に言いなさい”ではないよな?」

「………。………お茶を取ってもらおうとしただけよ」


 おぉう……絶対言う気だったぞ。ゲームのルール分かってんのかよ…あ、あぶねぇ…。

 …ったく…何がお茶を取ってもらおうとしただけ…だよッ!奴隷命令までして取らせることかよ!!


 しかし…まさか即ゲームオーバールートが控えていたとは…。

 だが、これでもう準備は整っただろう!気を取り直して再開するとしよう!


「お嬢ほらお茶だ。……それじゃ―――」

「ねぇ、仁。でもこれアンタが作ったのよね?どこにワサビ入りを置いたか分かってるんじゃないの?」


 ――チッ!バレたかッ!


「あ…あぁ…そうかなぁ?一応見ないようにしていたけど…もしかしたら…何となくは…」

「卑怯じゃない!ならさっさと後ろを向きなさい」

「あぁ…。わかった」


 やるじゃねえかお嬢……。なぁなぁの流れのまま開始する予定だったのだが…。

 カレーは好きだがワサビの辛さは苦手だったからな……警戒心がいつもより強い!


「並びを変えたわ」

「そうか!よし早速開始を―――」

「あ、ちょっと待って」

「――ッ!…なにかあったか?…お嬢」

「これ焼き面がちょっとずつ違うわ」


 ――なッ!またバレただとッ!!


「今からひっくり返すわ!早く後ろを向きなさい!」

「お、おぅ…」


 まさか焼き面の違いを看破されるとは思いもしなかった。

 今のお嬢の警戒心は恐らく……過去最高に跳ね上がっている!


「返したわ」

「おぉう…そうか…どれがどれだか絶対わからないだろ…」

「一応念には念を入れたけど…まさか…小賢しい真似を考えてなかった?」

「め、滅相もございません」

「そう。なら始めましょうか」

「やるです!ろしあんですッ!!!」


 この幼女…楽しそうにはしゃぎやがって…。

 だが……この勝負…まだ俺の勝利に揺らぎはない!

 あぁ?何故かって?それはな―――



 ―――まだ目印があるからに決まってんだろぉッ!!!



 気づかないか?気づかないだろうなッ!!

 この俺の超絶クッキングスキルにかかれば餃子のよぉ……皮のシワが一つ増やしてある事なんざわかりゃしないんだよぉぉぉぉッ!!

 そして順番はお嬢→俺→幼女の順になったのだ!!…もう俺の勝利は確定したッ!!


 クククッ…そんな仕掛けが施されている真剣勝負とも知らずに……こいつら楽しそうにゲームしてやがるぜッ!!


「私はこれにするわ」

「なら俺はこれにしよう」

「わたしはこれです!」


 一回目は…まぁ皆おいしそうに食べたか…。

 確率的に当たるほうが少ない。当然だな。


「次はこれね」

「俺はこれ…かなぁ?」

「これに…これにするです!」


 二回目は…まだ当たりは引かないか…。実に残念だ。

 もう少しで幼女が引くところだったが…なかなか勘がいいようだ。


 さぁ、残り6個だ!


「じゃあ、次はこれね」


――きたッ!!


「うんこれもおいし――ッぅぁッ――うう゛あぅッー辛ッぁ―――!!」


 ワサビ入り餃子はお嬢が引っかかったようだ。


「お嬢の負けだな」

「瞳お姉ちゃんの負けです~!」

「ッ―――――ッあ゛ぁッーーッ!!」


 ウッッシャアアアアァァァッッッッ!!!

 どうだ!?ツーンとするだろぅ?ざまぁッ!!!

 いいぞいいぞぉ!!最初から最高のシナリオじゃねぇか!!上出来だ!!

 それに…う~ん…。

 心地よい…良い鳴き声してるじゃねぇかぁ。心が洗われるぅ。


 あ、やべぇ…お嬢不機嫌じゃねぇか…やりすぎたか?

 ……うわぁ……やっぱそうだ……調子に乗りすぎた……殺される!!


 ん?それにしてもこの幼女…何でこっちをじっと見てやがる?

 俺の散り様でも見届けるつもりか?


「……です?」


 ですぅ?じゃねぇ。DEATHだ。

 発音間違えんな。


「…まぁいいわ。もう一回やるわよ!さっさと準備しなさい!!」


 え…許された?おいおいおい!今日はついてるぜ!

 この幼女がいるからか知らねぇが、なかなか大人な対応じゃねぇか。


 だが、残念だったなお嬢。一回目でわかった…もう俺が負ける要素は見当たらない!


 お嬢……お前は……餃子を奥から取る癖がある!!


 クククッ…今から笑いが止まらねぇぜ。

 次もさっきと同じ…いや、それ以上の悲鳴を聞かせてもらうとしよう!

 お嬢の泣き叫ぶ姿……お宝映像だぜ?ビデオカメラでも回しておくべきだった!!


 おっといかん…笑うと色々バレる可能性がある。

 さっさと次の餃子を用意しないとな…クククッ!


 しかしこの幼女…なかなかどうして。

 さっき…ワサビ入り餃子を取ろうとした瞬間、箸が回避しやがった……何故だ?

 運がいいのか?勘が鋭いのか?


 まぁいい。今回の刺激物はこの幼女には流石にキツイだろう。

 辛いのは平気なようだが…俺も心が痛むレベルだ。

 だがもう後には引けねぇ!そして!…俺はお嬢に食わせたいッ!!!!

 

 俺は残りの餃子を食べた後、次の餃子を用意した。




◇◇




「さぁ…次のゲームを始めよう!!」


 今回の順番はお嬢→幼女→俺になった。

 そしてお嬢の餃子シャッフルが終わったところでゲームスタートである。


 さて、特製餃子の場所を確認しなければ……っと!?

 おぉッ!クククッ…素晴らしい!俺の手前まで来ているではないか!

 お嬢の癖を考えると……今回はすぐに悲鳴を聞くことができそうだ!!


 だが一つだけ問題がある。

 俺の順番が最後になった……これが唯一の懸念点。

 しかし11回連続で回避……いや、正確には8回も回避されることなどまずないだろう。


「始めるわよ!」

「やるですー!」

「いいぜ、2回戦だ」


 お嬢…もう運命からは逃れられないぜ!


「私はこ、……これ!」

「わたしは…これです」

「俺はこれにしよう」


―――残り9個


 流石に最初からは当たらないか。残念だ。

 それに…今回はお嬢が一番奥から取らなかったな…。

 さっきの経験から慎重になったのか?

 クククッ…まぁいい。すぐ奥から取りたくなるだろう。


「次は…こ、………これにするわ」

「わたしはこれを食べるです」

「俺はこれかなぁ?」


―――残り6個


 箸さえ餃子につけば"一度とったものを戻してはダメですよ~"で通せたのに…。

 お嬢の箸が奥へ一直線に向かったと思ったらフォークボールのように手前へ回避しやがった。

 俺を焦らせるのはうまいようだが…当たる確率は上がる一方だぜ?


「私は…これ!」

「わたしはこっちです~」

「俺はこれだな」


―――残り3個


 お嬢が完全に奥から取らなくなった…どういうことだ…バレたか?いや、そんな気配はない。

 現に俺の目からも皮の小さなシワ以外わからないレベルだ。

 仕方ない…ならばッ!


「あっ――!凛が何かしてるぞぉ」

「え?」

「猫です?」


――ササッ


「…?…いないじゃない」

「あれ?そこでさっき何かしてたな?見てたのかなぁ?」


 皿と餃子の向きを替えた。大人気ないのは分かっている。

 だがッ俺をここまで本気にさせたのだ!俺の本気の隠し技でこのお嬢を泣かせてやる!


 お嬢!お前の泣き叫ぶ声を聞くことが今の俺の…最高のご馳走だぁぁァァッ!!!


 さぁ運命の時間だ。次はないぜお嬢。

 激辛ワサビ入りの餃子を……お前に再度食らわせてやる!!!!


「じゃあ私は……これね。…うん…美味しいわ」


―――残り2個


 は?…おい…嘘…だろ…?


 皿の上の餃子は残り2個だ。今…おいしい…だと?

 お嬢は4個食べてあがりだ。幼女はまだ平然としている。


―――バカなッ!!


 この餃子には俺の超絶クッキングスキルにより激辛ワサビが完全に隠されている!

 勿論俺の素の鑑定スキルでは全く判別できないレベルだッ!!


 クソがッ!!目印まで付けていたというのにッ!


 やばい…やばいやばいやばい…。

 こんなことが有り得るわけねぇだろと高を括った!

 実は今回ワサビの真ん中にハバネロも混入させたんだよ!!

 残り2個…確率は50パーセント…ではない!!!

 次に取るのはこの幼女…そしてこの流れ…99パーセント俺のところにやってくる…。

 まだ辛いものは食べていない筈だッ!!なのに……汗が止まらねえッ!!!


「わたしがこれ食べるです。だから仁はこれなのです。今から食べさせてあげるです!仁…あーん」


 おい幼女…やめろ。

 それ以上その餃子臭を近づけるな。


「あ、悪いな…もうお腹いっぱいなんだ」

「そこの奴隷。口を開けなさい」


「――ッ!!」


「口の中に入れておくです~。仁の餃子はとっても美味しいです~」


 クソがッ!!この幼女ッ!


「じゃあ…」


 おい…待て待て待て…。


「あがッ!あがあがあがッ」

「口を開けながら喋っても何言ってるか分からないわ?じゃあ覚悟はいい?…そこの奴隷!」


 や、やめ―――


「咀嚼開始!」


 クッッッソッッッガァァァァァッッ!!!


 モグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグッブフォッッッ!!!


「全く…汚いわね…ちゃんと掃除しておきなさい!ご馳走様」

「仁はッ――面白ぃッですッ!お腹ぁっ痛いっ―――ですぅッ!あはぁッはははッ!!」


 おのれぇぇぇ…小娘共ぉぉ…!!


――ガチャッ


 突然、よろず屋の扉が開いた。

 そして誰かがリビングに上がってくる。


「み、皆さん…な、何されているんですかぁ?…外まで声が…」


 あ、アルバイター?……来るんだったらもっと早く…ッ!


「ウッ……あああ…あああアアアァァァッ!!!!後に残る辛さがッッ―――水ぅぅぅぅッ!!」


 そして俺は、暫く水を飲み続けた。

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