9件目 このよろず屋に様々な秋がやってきた件 3/11
午後からはお嬢の指示を仰ぎながら業務を開始した。
書類の処理や配達依頼といった本日の業務。それを一つずつ片付けていく。
その間、花音にはお菓子とゲームを与えることで時間を潰してもらった。
たまに構って欲しそうにすり寄ってくる時もあったが、適当にあしらいながら自身の役割をこなしていく。
そして―――
「ふぅ…最後の伝票処理完了っと」
「お疲れ様。意外と早く終わったわね」
「あぁ、思いのほか順調だったな」
お嬢の言う通り、今日の作業は予想より早く終わった。
俺の整理整頓スキルや書類処理スキル等が日々上達しているからだろう。
作業の慣れ。技量の向上。俺の進化が止まらない。
この調子で今後は作業効率化も視野に入れていこうと思う。……検討だけな。
「まだ16時にもなってないけど……今日はお仕事終了ね」
「もう終わりか。やったぜ」
「早く終われることってあまりありませんよねぇ」
「そうね。珍しいかも」
「なんだかプレミアムなアレみたいですぅ」
「あっ確かに。まぁでも…月に一回ぐらい余裕のある日を作ることは大切よね。…経営者として!」
「社員さん思いですねぇ」
「ふふっ……当然よ」
成程…今後はプレミアムな日を作ってくれるようだな。
今までにない良い心がけ……それは素晴らしい。
でもお嬢…それはフライデーな日にやって頂きたい。
明日はお仕事…ビギニングマンデーです。
「あっ!ところで茜。シフトの件だけど……来週の平日ってどうだった?」
仕事が終わって一息ついた後、お嬢が茜に問いかけた。
明日からの1週間はシフトが入っているが、来週の月曜日からはどうも予定が厳しいらしい。
「あっはいぃ。来週は土曜日からでお願いしますぅ」
「分かったわ。じゃあ来週の平日5日間はお休みにしておくわね」
お嬢がスケジュール表を取り出し、茜のシフトを記載していく。
来週の平日……そこに出勤の丸はない。
「ところで…ダイエットの件ですがぁ……」
「あぁ…そういえば…」
仕事に集中していた為、忘れかけていた。
茜が太った件。痩せる為の話をする約束だった。
でも本人は痩せたいと言っていたが、どこまで本気で痩せたいのだろうか。
一応それは確認しておく必要があるだろう。
「なぁ茜。俺に言われて無理してないか?特に困らないなら軽く―――」
「いえ、もう本気になりました。やっぱり……仁さんの言う通りなんです!」
「――おぅ!?」
茜の顔つきが真剣なものへと変わった。
そして真っ直ぐに俺の眼を見据えてきた。
声がいつものほんわかしたものではない。
深刻な何かを言葉にする……前兆のような雰囲気だ。
茜のやつ……一体どうしたんだ?
「仁さんには言っていませんでしたが……来週末に少し問題が……」
「問題?何かあるのか?」
「実は私の高校で文化祭がありまして…」
「文化祭か。いいじゃねぇか」
「…みんなで踊ります」
「…それは大変だ」
文化祭でダンシング。
茜のクラスはそんなことを行うのか。楽しそうだな。
でも茜の様子……このままの調子でいくと色々怪しい。
2週間もあったら余裕で肥えられる。その時こいつは踊れるのだろうか?
「クラス皆で踊るのか?」
「いえ、裏方もいますし露店に回る人もいます。メインで踊るメンバーは9人で、投票だったのですがぁ……見事メンバー入りしましてぇ…」
「…よかったじゃねぇか」
「…よくないですよぉ。メンバー内で私だけぽちゃっとしてるんですよぉ…」
茜の表情が暗い。
どうやら他のメンバーは皆スレンダーちゃんのようだ。
なら断ればいいとは思うが……断れ無さそうな性格してるし、なるべくしてなった感じだろう。
それに確かクラス委員長になった経緯もあったな?今もやってるのかは知らないが……人気者はつらいな。
「それにしてもお前……そんな体で跳ね……踊るつもりだったのか?」
「うぐぅ…それはそうですけどぉ……」
「決まった時……クラスの友達に心配されなかったのか?」
「この前されましたぁ……摘ままれたりされてますぅ……」
「最近弛んできているしな。気持ちも腹も」
「う゛ぅ゛ぅぅ……瞳ちゃん……」
「そこの奴隷、デリカシーが足りない」
「嘘ッ!?」
「スクワット20回」
「俺がスクワットやるのかよ…」
クソが……お嬢のやつは茜の味方か。
デリカシーがなくてすみませんねっと!
「……。…やっぱりブルガリアンスクワット30回」
「げッ!?運動強度上げやがったッ!俺にダイエットさせんじゃねぇ!」
そして俺は己の下半身を大幅に鍛え始めた。
◇◇
ブルガリアンスクワットを皆に披露し終えた俺は茜の方に向き直る。
そして腕を組み堂々とした出で立ちでトレーナー感を演出した。
「では早速だが……いつでもできるトレーニング方法を一つ伝授しよう」
「えっ?それは何ですかぁ?」
「ドローインといってな。腹周りを引き締めるトレーニング方法があるんだ」
「どろ…?はい?」
「簡単に言えば腹へこませたまま呼吸をする運動だ。俺の真似してやってみろ」
俺は茜に教えながらやってみせた。
お腹をへこませたまま呼吸を繰り返す。ただこれだけ。
単純で簡単。なので誰でもできる。だがやってみるとこれが意外とキツイトレーニング方法だ。
「こ、これ……結構きついですねぇ…」
「この一つ一つの努力が結果に結びついてくるんだ」
「は、はいぃ…」
「俺は"心を鬼"にして茜と向き合うからな」
「お、お手柔らかにおねがいしますぅ…」
まずはこれで良し。少し時間がある時に行うだけでも変わってくるだろう。
さぁ無駄な時間は一切ない!歩く時間さえ有効利用!素晴らしいぞ筋トレは!
「あっあと…茜さぁ。今って”食欲の秋”だと思うよな?」
「えっ?は、はいぃ」
「なら次は”スポーツの秋”だよな?」
「えっ?」
俺はふと思い出した言葉を口にする。そして茜に問うてみた。
体を鍛えてもそれ以上に食っていたら直近での効果は中々得られない。
なのでもう少しだけ提案してみることにした。
「1時間のウォーキングも日課としよう」
「えっ?え゛ぇぇ!」
「動かなきゃ始まらないし、動かなきゃ痩せられない」
「で、でもぉ…」
「また逃げるのか?」
「……う゛っ……」
ウォーキングという単語。茜はその単語に拒絶反応を示した。
だが俺は茜を一喝する。逃げ腰態度を指摘し、先ほどまでの初心にかえらせる。
「なぁお嬢。明日から仕事の合間の時間を少し貰ってもいいか?」
「えっ…うん。少しぐらいなら構わないけど…」
「よし、許可は貰った。それもやるぞ」
「ウォーキングも…1時間ですかぁ…」
少し残念そうな様子を見せる茜。ウォーキングはあまり乗り気じゃなさそうだ。
でもそこは勢いで乗り越えるべき事だろう。それを乗り越えた先にしかお前の望むものはないのだから。
「それと夜の時間…母さんがパートで家にいない時が多いらしいな」
「あっはいぃ。遅くなることが多いですねぇ」
「ならそん時はこっちで夕食を食ってくか?」
「え!?それはありがたいですけどぉ……どうしてですかぁ?」
「茜専用のヘルシーメニューを用意してやる。それで効果倍増だ」
俺が色々と言い出したこと。それに茜の為だ。
ある程度責任を持ってやってやろうと思う。……ついでレベルでできることだけど。
「凄いですぅ……そこまで徹底するんですねぇ」
「当り前だ。どうせ普段は外食が多いんだろ?」
「確かにそうですけどぉ…」
「そんで毎食から揚げばっか食ってんだろ?」
「なッ!?何故それを……」
「今までの行動から推測しただけだ。甘えは捨てろ!このチキン野郎!」
「じ、仁さん…怖いですぅ……」
俺は鬼トレーナー感を演出し、まだ残る茜の甘さに喝を入れた。
小動物の様に怯える茜。だが俺に優しさや同情は一切ない。
「では手始めに…今からウォーキングを始めるとしよう」
「え?早速ですかぁ!?」
「あぁそうだ。南側に少し歩くと大きい公園がある。一周5kmくらいあったはずだから、まずはそこを半周しよう」
「今からですかぁ…」
既にやる気のない表情と声色。甘えがでている。
やはり精神から弛んでいるな。これはいけない……教育せねば!
「何言ってんだ。明日からはもっと鍛えるぞ」
「え゛ぇぇっ!?」
「学校が終わったらすぐ来い。仕事をしながら体幹トレーニングだ」
「わ、分かりましたぁ……」
俺と茜は近くの公園で軽めのウォーキングを行った。だが、たった半周のウォーキングで茜は疲れを見せていた為、その日は解散となった。
俺は茜を帰らせてから花音を家まで送る。
そしてよろず屋に戻った後、茜の半強制ダイエット作戦の計画を練るのだった。
◇◇
翌日から1時間程、仕事の合間にウォーキングタイムが設けられた。
茜と一緒に近くの公園を約半周。甘えたことを言った時はおもちゃのハリセンで喝である。
そして仕事終了後は俺のストレッチ小道具で体を引き締めにかかる。
勿論セクハラパワハラに注意しつつだ。目の保養という考えも……勿論ないッ!
初日は茜がイヤイヤ駄々をこねながらしぶしぶ行っていた。
だが4日目あたりから文句を言わなくなってきた。
茜の順応性は中々のものである。……俺の教育の賜物だな。
そしてひたすらストイックなトレーニングの日々が過ぎていき―――1週間が経過した。
今日は日曜日。
スパルタでストイックなダイエットの8日目…最終日である。
「おい茜。今からウォーキングに行くぞ」
「あっはいぃ。瞳ちゃん、行ってきますねぇ」
「行ってらっしゃい。帰ってきたら書類整理お願いね」
「分かりましたぁ」
俺と茜はよろず屋を出て、近くの公園まで歩いて向かう。
そして公園内に到着し次第、園内ウォーキングを開始する。
ウォーキングを暫くしたら軽めのランニングへ。それを数百メートルごとに交互に繰り返していく。
「茜。もう筋肉痛はないか?」
「最初の3日間は張りがありましたが、今は何ともなさそうですぅ」
ゆっくりとしたペースではあるが文句を垂れずについてくる茜。
トレーニングを始めた当初と比べて足取りが明らかに軽い。お腹周りも前よりは締まってマシになった。見ていて少しずつ成果が表れてきていると感じられる。
まぁ結構色々やっているし、そうでないと困る。何せ―――
仕事中は軽めの体幹トレーニング。
夜は俺特製のヘルシーメニュー”鶏むね肉フルコース”。
毎日1周5kmの公園コースを有酸素運動し、水分補給には燃焼系のスポーツ飲料だ。
それ以外にも色々実践している。ストレッチに足のマッサージ。ちょっとだけダンスの練習もしてみた。
これで成果が出てこなければ…俺はトレーナーとして退陣レベルだ。
「ランニングにも慣れてきた為でしょうかぁ。紅葉を楽しむ余裕がありますぅ」
「ほぅ…まだ余裕があると?」
「あっ!いえ゛っ!心だけで―――」
「大丈夫だ。目標は痩せるだけだからこれ以上ハードなことはやらねぇよ」
広いウォーキングコース。
両サイドに植えられた木々。その多くが紅く色づき始めている。
清々しい空気と暖かな日差し。ダイエット最終日は最高の日になった。
俺達は公園内の半周付近にさしかかった。
だがそこで俺は足を止める。俺の体が水分を寄越せと命令してきた為だ。
「茜、ちょっと待て」
「はいぃ?どうしたんですかぁ?」
「喉が乾いた。そこの自販機で飲み物を買ってくる」
「分かりましたぁ」
俺は右ポケットに片手を突っ込みながら近くの自販機に向かっていく。
ランニング用で用意した小さな財布。それをポケットの中から取り出し―――
「……あれ?」
だが、ポケットには財布がなかった。
「……金がねぇ…」
「……え?」
「多分よろず屋に置いてきちまった……」
よろず屋まで戻るか?でもここ一番遠いしなぁ…。
まぁそこらへんに水道あるだろうから……それを探して飲むことにしよう。
「そうですかぁ。それでしたら……アレでも使いましょうかぁ」
「んあ゛?」
自販機近くの茂み。
何食わぬ顔でその近くにしゃがみこみ、何かを拾い上げた。
きらりと光る銀色のコイン。……100円だった。
「……えっ?100円?」
「そうですよぉ?どうしたんですかぁ?」
茜のやつ……マジックでもしてるかのように拾ってきやがるな…。
自分のギフトを”使えない才能ですねぇ”とつぶやいていたのに………俺から見たらプロの落とし物捜索者だぞ?
「それ使ってもいいのか?」
「使わなかったらお金の意味がありませんよぉ。これは世の中の経済に還元しておきましょう~」
世の中の経済に還元……確かに正論だ。
誰にも見つからないまま使われないお金。それが世の中にどれだけあると言うのだろうか。
それを見つけて世の中に還元する。小銭程度であれば…使っても許されるだろう。
「じゃあ、ありがたく使わせてもらおう」
「そうしましょう」
「……でもこの自販機…100円で買えるものが少ないな」
このペットボトルのスポーツドリンクにしようと思ったが………仕方ない。これにしよう。
―――ガコン
缶ジュース。リンゴ濃縮還元100%。
プシュッという音を奏でながら蓋をあける。
―――ごくごく
「…ぷふぁ~」
のど越しすっきり。自然の恵みが俺の渇いた体を癒してくれた。
果汁が体に浸透する。五臓六腑に染み渡るとはまさにこのことだろう。
「…ごくり…」
「…ん?…茜も飲みたいのか?」
「えっ!?」
茜がジッと俺のジュースを見ている。とても飲みたそうな様子だ。
まぁそれは仕方がないだろう。なんてったって”ジュース禁止令”を発動しているからな。
でも、そろそろ禁止令を解除しても大丈夫かも知れない。……大分頑張っていたし。
「飲みたいなら一口ぐらい許可するぞ」
「そ、そうですねぇ………って、いえいえ大丈夫です」
お?遠慮した。これは意外な反応だ。
まさか精神的にも強くなっていたとは……これは良い傾向だな。
「そこまで遠慮しなくてもいいけどな」
「あ゛ぅぅ……だってぇ…間接……しちゃぅし…」
「ん?やっぱ欲しいのか?」
「いっ……いりませんよぉ!」
「なら全部飲んじゃうからな」
俺はリンゴジュースを全て飲みほし、中断していたランニングを再開した。
茜の走る姿を後ろから追いかけ、応援と発破をかけていく。
公園のコースも残り四分の一周。
茜とのウォーキングとランニングもラストスパートだ。
今日も茜に目指すべきゴールを提示させ頑張らせた。
必要以上に追い込まず。絶妙なバランス配分を心掛けて。ケアもしっかりと怠らない。
何故なら今の俺はスポーツトレーナー。茜専属のスポーツトレーナーなのだから。
俺は茜のひたむきに頑張る姿に感動を覚えつつ後ろ姿を追いかける。
そして徐々に沈みゆく夕焼けへと、茜と共に走っていった。
◇◇
俺と茜は公園からよろず屋へと戻る。
そして残りの仕事を全力でこなし、やがて終業の時間を迎えることとなった。
この瞬間…茜の1週間トレーニングも終了だ。
「これで終わりだな。茜、お疲れ様」
「仁さん……ありがとうございましたぁ…」
俺は茜にお礼を言われた。
今日までの厳しいトレーニング…その最後に報われる一言だった。
「いや、今日までよく頑張った。お前はやれば出来る子だった」
「…仁さん」
「あとは文化祭まで、ダンスの練習頑張れよ」
「はいぃ!文化祭は金曜日ですので大丈夫だと思いますぅ」
これで俺の役割は終了だ。
あとは茜次第…そしてステージ上に立つヒロイン達次第だ。
「あっそういえば……瞳ちゃんと仁さんは金曜日ってどうされますかぁ?」
「ん?どうするって?」
「見られるのは少し恥ずかしいのですがぁ…文化祭に来られるのかなぉと…」
どうやら茜は俺とお嬢が文化祭に来るかどうかを気にしているようだ。
”文化祭に参加する”or”文化祭に参加しない”………俺に与えられた選択肢はこの2つである。
ふっふっふっ…これは愚問だな。
答えは既に決まっている!いや…答えは勿論決まっている!!
「勿論!俺達も茜のダンスを見に文化祭へ―――」
「私達は仕事の都合で行けないわ。残念だけど」
「なッ!?何だとッ!?」
お嬢の口からとんでもない言葉が放たれた。
”文化祭には参加できません”という残念なお言葉だ。
おいおい……今をときめく女子高生のダンシングとかみんな見たいだろ?
俺もそうだよ……ちょっと楽しみにしてたのに……。
「仕方ないわ。時間指定の仕事は調整が難しいの。だから仁も手伝って」
「なら仕方ないのか……。茜、文化祭のダンス頑張ってこいよ」
「は、はいぃ!頑張ってきますぅ!」
茜は明日から学校でダンス練習。簡単なダンスでも練習は必要だからだ。
そして週末には文化祭だ。なので平日はもうよろず屋に来ない。
「茜、私はいけないけど、ここで応援してるわね」
「ありがとうございますぅ!瞳ちゃんと仁さんの応援で、なんだか心も体も軽くなった気がしますぅ!」
「体は気のせいだ。あとは気合いでカバーしろ。それとリバウンドはするんじゃないぞ!豚に戻る!」
「じ、仁さんひどいぃ!」
「そこの奴隷、フロントブリッジ10分。始め」
「――ッ!?何でお嬢がそれ知ってんだよ!?」
俺はリビング近くのフローリングでフロントブリッジの体勢を取った。
俺の体幹が徐々に鍛えられていく。……仕方ない……これも筋トレの一環だと考えよう。
「それじゃ、頑張ってね」
「ありがとうございましたぁ」
―――バタン
茜がよろず屋から出て行った。
次に会うとしたら6日後の土曜日だろう。
3日以上会わない日があることなんて…よく考えたらあまりなかった。……少し寂しくなるな。
「茜も色々頑張ってんだな。…俺達も仕事、頑張るとするか」
「そうね。…そうしましょ」
お嬢は俺の問いかけに反応した。
だが、茜を見送った後も何故かその場で立ち尽くしている。
1分程経過しても全く動く気配がない。
暫く茜が来なくなる。
ダンスの練習等がある為、会うこともまずないだろう。
先程の別れの後、少しばかり寂しくなってきたのだろうか?
いや、多分そうだろう。いつも気丈に振る舞ってはいるが……本当のお嬢はとても寂しがり屋だ。
「それにしても……」
「…なんだよ?」
お嬢が俺の方を向いて話しかけてきた。
その表情を見てみると……若干の寂しさが伺える。
仕方ねぇな…お嬢は。ちょっと寂しくなったんだろ?
だったら気が紛れるまでの間ぐらい……俺が話し相手になってやるよ。
「その体勢だとシリアス感ゼロね?真顔で”俺達も頑張るか”って……ぷふっ…」
「オイ!ならやらせんなよッ!つか変な筋トレ知識つけてんじゃねぇ!」
やがて俺はお嬢の強制筋トレから解放された。
そして茜の報告を期待しながら、夕食の準備を始めることにした。




