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8件目 このよろず屋は幼女とのふれあいを大切にしている件 5/7


 花音と芽衣が遊びに来てから1週間が経過した。

 今日は花音の通う小学校で運動会が行われる日。なのでよろず屋はお休みだ。


 俺とお嬢は朝方早めに起床した。

 シートやカメラ等の準備とお弁当の準備をする為だ。


 お弁当は俺が卵焼きやタコさんウインナーといったおかずを作り、お嬢がおにぎりを握っていく。

 そしてできたものから順番に弁当箱へと詰めこんでいった。


「お嬢、こっちは終わったぞ」

「こっちももう少し―――っと……。はい、で~きた!」


 程よい大きさのランチボックス内に、様々なおにぎりとおかずが並んだ。

 お嬢が上手く並べてくれたこともあり、見栄えは美しく仕上がっている。


「よしできた。それじゃ、ちょっと早いけど準備して向かうか?」

「時間的には……そうね。準備してくるからちょっと待ってて」


 お嬢はそう言うと自分の部屋へと戻って準備を始めた。

 俺もリュックにお弁当を詰めたら自分の準備を行っていく。


 俺の場合は携帯やお金といった必需品を持ったら完了だが、お嬢の場合は違う。

 日焼け止めを塗ったり、日傘を用意したりと、諸々の外出準備が必要らしい。


 俺はお嬢の準備が終わるまでの間、リビングの窓から空を見上げる。

 優しい朝日が照らす空。秋の雲が東へゆっくりと流れる様子を眺め続けた。


 天気予報では、”本日は快晴”との事だった。

 運動会で微妙に雨だったりすると延期になったりするし、風邪になるリスクもある。

 これは実に運がいい。


「仁、お待たせ。シートとかデジカメとかの準備はできてる?」

「あぁ、この鞄の中に入ってる」

「お昼の準備は?」

「それはこっちのリュックにあるぞ。他にも―――」


――ゴソゴソッ


 俺はリュック内に入ったものを確認していく。

 お弁当、飲み物、紙コップ、割り箸、ウェットティッシュなどなど。

 運動会で使う物一式が詰め込んである。


「―――大丈夫そうだな」

「うん。それじゃ、早く行きましょ!」 


 俺とお嬢は各々の自転車をよろず屋の裏から引っ張り出す。

 そして再度忘れ物がない事を確認し、黒山小学校まで向かっていった。




◇◇




「へぇ、ここが花音と芽衣が通っている小学校か」


 小さな山に隣接した形で建てられている小学校。

 外観はよくある小学校とあまり変わらないが、校庭は広く、遊具はかなり充実してそうだ。


 そしてその校庭では、既に運動会の設営がなされていた。

 又、児童達の家族と思われる多くの人達が場所取りなどを行なっている。


「もうそこそこ人がいるな」

「そうね…早めに座る場所を決めましょうか」


 多くの人が観戦する為の場所を取っている。

 俺とお嬢も花音達のいるクラスの近くに場所を取り、シートを敷いて準備を始めることにした。


「瞳お姉ちゃん!」


 シートを敷いて準備を終えた後、花音がお嬢の元へと駆け寄ってきた。

 お嬢の顔を見上げて、とても嬉しそうな笑顔でお出迎だ。

 因みに服装は体操服と赤白帽。運動用の服装だった。


「仁もよくきたです!」


――バシッバシッ


 そして俺の方を向いてきた花音。ニンマリとした笑顔での歓迎だ。

 ”来るのが当然です!”とでも言いたいのであろう。俺の腕を叩きながらスキンシップを図ってくる。


 おいおい……そんなにスキンシップしてどうした?照れ隠しか?

 俺もスキンシップ用で用意しとけば良かったぜ。”練りワサビ入りおにぎり”を。


「花音ちゃーん、もう入場の時間だよぉー」

「うん?整列の時間です!?」


 同級生と思われる女子児童が花音の事を呼んでいる。

 どうやらこれから入場行進が始まる様だ。


「花音、いってらっしゃい。精一杯やりなさいよ」

「うん!いってくるですー!」


―――タタタッ


 花音は自分のクラスの整列位置まで走っていく。

 そして、運動会の開会式が始まった。



◇◇




 開会式―――各学年の児童達は綺麗に整列したまま、校長達の長話を聞いていく。


 俺はその間に鞄からデジタルカメラを取り出し、花音を応援する為の準備を始める。

 そしてここで、周りのおじさん達との戦力差を痛感した。


 俺は一般的なデジタルカメラ装備。まわりのおじさん達はフルサイズ一眼レフ装備だ。

 ゲームで例えるなら冒険者装備と勇者装備といったところだろう。

 スゲェ………装備のレベルが違い過ぎる…。


 やがて開会式が終わり、運動会が始まろうとしていた。

 準備体操の後、最初の競技に出る児童達が入場口へと集まっていき―――最初のトラック競技が始まった。


「がんばれぇぇ!!負けるなぁ!!」

「うちの子の勇姿は絶対撮り逃さんぞぉぉッ!」

「雄々しいですぞ!坊っちゃまァァッ!!」

「フゥゥッッ!幼女最高ォォッッ!!」

「いけぇ―ッ!いけぇーッ!」


 観戦する児童達と大人達が一斉に応援を始めていく。

 だんだんと声援は大きくなっていき、校庭全体を包んでいく。


 皆の気迫は本物だ。家族に限っては愛ゆえの本気だろう。

 我が子の頑張りを必死に応援する親の姿が数多く見受けられた。



「あっ…そういえば!」

「仁?…どうしたの?」

「花音って何の競技に出場するんだ?」

「それならプログラム表があるわよ?出場するものに丸が記載してあるから…はいコレ」


 俺はお嬢から運動会のプログラム表を受け取る。

 そして花音の出場種目を確認する為、競技種目のページを開いた。


 午前中の競技はクラス全体が行う団体競技が多めだ。

 高学年が行う騎馬戦などの一部団体競技だけは、後ろの方にあるようだが。


 花音が出る団体競技は綱引き、大縄跳び、玉入れといった競技のようだ。

 そして……花音が個人として出る競技は―――


 ◇パン食い競走

 ◇借りもの競走

 ◇クラス対抗リレー


 ――の三つらしい。


 特にクラス対抗リレーは運動会の目玉競技といえよう。

 それに出場する花音は、結構重要なポジションを任されていると思われる。


「あっ仁!芽衣ちゃんが出てるわよ!」

「え!?まじで?」


 個人競技である障害物リレーが始まろうとしていた。

 どうやらその競技に芽衣が出場しているらしい。


 俺は芽衣の応援をする為、整列して並ぶ児童の中から芽衣を探しだした。

 そして応援しようとするが―――芽衣の被っている帽子は白色だった。……どうやら花音とは違うグループらしい。


 芽衣ちゃんは花音とは違うグループか……でも、そんなものは関係ない!

 俺は花音だけでなく、芽衣の事も応援してやらねばならぬ!

 茜がいない分は俺が応援するからな!これは俺の使命なのだ!


 因みに茜は自身の学校行事がある為、応援には来ていない。

 後でお嬢から聞いた話だが、心の中で泣いていたとの事だ。



―――パーン



 そして障害物リレーが始まった。


 トラック上に設置された障害物―――ロープ潜りや平均棒をクリアし、次の走者へタスキをつないでいく。

 幼い児童達が必死になって障害物を乗り越えていく姿は実に可愛らしい。


 そして芽衣もタスキを受け取ると、ゴールを目指して障害物を越えていく。

 ハードルを何とか飛び越え、網を必死に潜っていき、平均棒をバランスよく駆けていった。

 そして結果は6グループ中3位。悪くない結果だと思われる。


「芽衣もやるなぁ。平均棒で一人抜かしたぞ」

「うんうん!3位ならいいじゃない!それに……頑張ってて可愛らしいわ」


 その後も綱引きや玉入れ等の団体競技が行われていった。

 花音もその集団の1人として頑張っている。


 どのクラスの児童も真剣に競技に参加していた。

 そして楽しそうに競技を行っているように見える。



「"次の競技は、3年生によるパン食い競争です"」



 遂に、花音の個人出場競技がアナウンスで流れた。

 花音の個人競技その1。パン食い競争が始まるようだ。


「お嬢、遂にパン食い競争が始まるぞ」

「うん、早速ゴールの近くまで移動しましょ」


 花音が出る個人競技か。これは応援に熱が入るな!


 この小学校のパン食い競争のルールは簡単である。

 トラックを一周した後、コース最後に吊るされたパンを口で取ったらゴールできるというものだ。


 因みにパンはクリームパンが用意されているらしい。

 なかなか贅沢な競技だ。小さいコッペパンで十分だろ。


 それにしても……この人選はどうやって決められたんだろうか。

 もし立候補で決められていたのなら……絶対クリームパンを食う為に立候補している。これは間違いない!



―――パーン



 空砲が空に鳴り響いた。

 パン食い競争の始まりだ。


「始まったか……でもこの場所ならゴール時の良い写真が撮れそうだ」

「そうね。私もしっかりと映さないと!」


 各陣営から”がんばれがんばれ”という声が飛び交う中、必死に走ってゴールを目指す児童達。

 最後の関門である”吊るされたクリームパン”のエリアにより、順位がかなり変動して面白い展開となっていた。



 ははっ!皆が必死にパンを食おうとアウアウやってるな!

 必死さがなかなか面白い!それに…なんだか微笑ましい。


 しかしこのパン食い競争―――多くの児童が難儀していた。

 中々パンに食らいつけずに順位を大きく落としてしまう子や、最後まで取れずに泣いちゃう子までいるようだ。



「続いて第6組~~。いちについて~」



「お、花音の番が来た!…映せているか?」

「うん!大丈夫!ちゃんと映っているわ」



「ヨーイ……ドン!」


――パーンッ

――ダダダッッ


 各児童が一斉に走り出した。

 花音は6つあるコースの内、外側に位置する第5コースだ。


 おぉ!?前に出てきた?……あいつ意外と足はえーな…。


 徒競走で1位2位を争えるぐらいのスピードで、花音がトラックを走っていく。

 そしてクリームパンが吊るされた最後の難関へ、グループトップで到着しそうである。


 さぁ頑張れ花音!そこは何人ものトップ独走者が順位を落としていったエリアだ!

 流石のお前も油断していると、そこで逆に食われてしまうぞ?だからそこは慎重に―――


―――ダダッ

―――シュパン


 ……おぉ!……まじかよ!!


 それは一瞬の出来事だった。


 花音用のクリームパンが、吊るされていた場所から消滅した。


 スピードを落とさず全身をバネのようにしならせながらジャンプした花音。

 その跳躍でしっかりとパンを口で捉え、もぎ取っていったのだ。


 無駄な動作や迷いが一切ない。

 最後はハムスターを超える頬張り力で、もしゃもしゃしながら余裕でゴールしていく。


 どうやら花音には杞憂だったようだ。

 危なげなく余裕のゴールを決めてきた。



 流石だ花音!

 お嬢も嬉しそうに歓声を送ってる。

 そして俺もお前の勇姿―――ちゃんと見届けてやったからな。



―――ブイ!



 突然、花音が俺とお嬢の方へピースサインを向けてきた。

 どうやら俺とお嬢の姿に気づいたようで―――こちらの方に歩いて近づいてくる。

 頬張り過ぎたハムスターのような顔―――そんな顔のままドヤ顔で勝利アピール中だ。


 一応お嬢がデジタルカメラで映してはいるが……これは仕方がない。

 俺もその勇姿を一枚撮ってやるとするか。


 俺がカメラのフレームを向けると花音は足を止め、しっかりとポーズを決めてきた。

 右手をさらに天高く掲げてのビクトリーピースサインだ!


 ったく…あいつ目立ちたがり屋かよ。同じクラスの奴らも笑ってるぞ…。

 だが1着になったからか……花音のクラスからは歓声が上がっている。

 そして本人も相当ご満悦な様子だ。……そこはなかなか可愛いやつである。


「わふぁひぃふぁひぃっひゃふぅへぇふぅー!!」


――カシャッ


 おい…汚ねぇな。そのパン食ってから喋れよ。

 口からクリーム漏れてんぞ?最後はドン引きだぜ。


 その後も赤組、白組とも点数が拮抗したまま、順番にプログラムが消化されていった。

 そして黒山小学校の運動会午前の部は、白熱したまま終了したのであった。





◇◇





 午前のプログラムが終わり、お昼休憩になった。

 俺とお嬢が休むシートのもとまで、花音が全力で駆け寄ってくる。


「お弁当の時間ですー!」


 靴を脱いでシートの上に乗った後、四つん這いになってお弁当を覗き込む花音。

 足をばたつかせながら、どのおにぎりを食べようか悩んでいる。


「どれもおいしそうです!もうお腹ぺこぺこです!」

「好きなものを食べていいわよ」

「うん!」


 花音は早速、おにぎり、卵焼き、唐揚げなどをモシャモシャと食べはじめた。

 口いっぱいに頬張りながら幸せそうな様子を見せる。


 それにしても……こいつよく食うな。育ち盛りだからなのかもしれないが。

 でも茜の”だいなまいとぼでぃー(笑)”を目指してたっけ?……このペースなら可能性あるぞ。


 花音は午前の部で出た競技の話をしながら、お嬢と楽しげに食べ続けた。

 おにぎり3個とおかずの数々をペロッと平らげた後、少しだけ落ち着いた様子を見せる。



「ねぇねぇ!花音ちゃーん」



 お弁当を食べ終えたタイミングで、芽衣が花音を訪ねてきた。

 どうやら芽衣の方は家族とのお弁当を終え、花音と会話しにきたようだ。


「芽衣が来たです」

「あら、芽衣ちゃん」

「あ!…あの…瞳のお姉ちゃん!こんにちは!」


 元気の良い挨拶をしてくる芽衣。

 俺やお嬢に屈託のない笑顔を見せてくれる。


「芽衣、1週間ぶりだな」

「仁ちゃんも!1週間ぶりなの!」


 うんうん。元気な挨拶。やっぱり芽衣ちゃんは癒されるな~!

 この元気!この愛嬌!この純粋さ!!んん゛~~!!


 俺、茜じゃないけど―――この年頃の娘は最高だのぅ!!


「仁が芽衣にデレデレしてるです」

「――ハッ!?…し、してねぇよッ!!」


 ヤッベッ!顔に出てたか!?

 と、とりあえず話でもそらしておこう!


「多分いやらし―――」

「そぉ言えば花音!パン食い競争は凄かったなぁ!」


 俺はすかさず話を逸らすことにした。

 このまま話が進むと、下手したらロリコンレッテルを貼られる可能性がある。


「ッ!……す、凄かったです?」

「あぁ、マジで驚いた!最後は独走だったしな」

「えへぇ……やっぱりです?」

「わたしもそう思ったの!凄かったの!」

「……ッ……ち、ちょっと照れるですー」


 俺と芽衣の誉め殺しにより、花音はちょっとだけ照れてしまった。

 自分の髪の毛をいじりながら体を左右に振っている。


「花音ちゃん。やっぱり練習してよかったの。やったかいがあったの~」


 ほぅ……パン食い競争の練習をしたのか。

 花音が練習をしていたというのは意外だったな。


 いつもの何気ない感じでこなすイメージがある花音。

 今回も何となくできてしまったものだと思っていた。だがどうやら違うようだ。


「…何だよ?花音のやつ、パン食い競争の練習をしていたのか?」

「うん!花音ちゃんのお家で少しだけ練習したの」


「へぇ、練習か……実は勝つ気満々だったんだな」

「うん、そうなの。でも、出来ればレディーとして綺麗に食して欲しかったの。さっきのあれは”はしたない”からやっちゃダメだと思うの」


 さっきのアレね。確かにその通りだ。

 顔面クリーム(まみ)れの幼女では、レディーのカケラすら感じることはできない。

 つかあれは顔に塗るクリームじゃない。いや、そもそも(まみ)れてんじゃねぇ。


 そんなやり取りを行なっている間に、お嬢が手に持っていたおにぎりを食べ終わる。

 そして、お弁当箱の中は空になった。


「よし。お弁当が食べ終わった事だし……次はデザートにするか」


 俺はお弁当を食べ終えた後の楽しみとして用意したデザートを取り出した。

 そして、デザートを包んでいる布に手をかける。


 さぁ見るがいい!!

 今回は野菜ジュースを混ぜ込んだ特製のシフォンケーキだ!!


――バサぁぁぁ


 シフォンケーキを包んでいた布が俺の手によって取り払われた。

 人参に近い色をした特製デザートがここに顕現する。


「デザートですー!」

「でざーと……なの…」

――じゅる……


 芽衣の方から涎の啜るような音が聞こえた。

 幼女共の視線はシフォンケーキに釘付けだ。


 涎を垂らしてガン見かよ。

 まぁ俺のシフォンケーキを見てしまったのだから仕方がないか。

 でも芽衣ちゃん一ついいか?

 その音は……レディーが出していい音ではないぞ?


「おいしそうなの……仁ちゃん」

――じゅるる…


 溢れ出る涎を啜っていた芽衣が、シフォンケーキから視線を外した。

 そしてその視線が向けられた方向には―――俺の目がある。


「……こっちを見てどうした?」

「……じゅる……」


「…………でもお昼……」

「……っごきゅん…」


「………芽衣もせっかくだから………これ食べてくか?」

「――ッ!?い、いいの!?食べていくのー!」


 いや、あんな目で見つめられたら流石にな…。

 あれは断る方が勇気いるぞ…。


「……じゅる」

「花音…お前もかよ。その啜る音やめろ」


「ごくん……じゃあ早くデザートを食べさせるです!」

「つかお前……さっきデザート(クリームパン)食ってたよな?」


「あれは10時のおやつです」


 パン食い競争に使われるパンがおやつかよ。

 真剣に競技しているか怪しくなってくる。


「まぁいい、とりあえず食っていいぞ。ただ、今回は食べたら感想を聞かせて欲しい。…ふふ……実はな?今までのデザートとは趣向を変えてみたんだよ!そのシフォンケーキは従来のものよりも健康志向を考えて―――」


「はむッはむっっぷぃ!……おいしいです~」


 ……こいつ…俺の話を聞いてねぇ。

 つか一瞬で食い終わりやがった。もっと味わって食べやがれ。


「んむっんむ……ごくん……おいしいのー」


 こっちも食うの早ぇ…。そして名残惜しそうに唇舐めてやがる。

 でも今はそんな表情望んでねぇんだ…。とりあえず今は……俺の話を聞いてくれ…。


「仁、もっと欲しいです。わたしのお腹はまだ空いてるです」


 何でこいつは胃袋満タンまで食おうとするんだよ…。

 腹八分目でやめとけよ…。

 つか、午後の競技への影響を考えてないのかよ?


「……これはやらねぇよ。お前はちょっと食いすぎだ」

「それでももっと食べたいですー」

――キラキラ


 ふんッ!そんなポメラニアンみたいな目をしてもやらねぇよ!

 俺はそこまで甘くない!


「じぃ~ん~ダメです~?」

――キラキラ


 ふん……花音よ。いくらキラキラさせても無駄だ。

 そこで何度ポメろうが………それは過去に受けた技!同じ技では我には通じぬ!


「仁ちゃん…ケーキが欲しいの…」

――キラキラキラキラ


 ぐッグゾがぁッ!ま、眩しいィィ!ポメラニアンがもう一匹いやがったッ!

 ポメ目にポメ目を上乗せしてくるとはッ!くぅゥゥッッ!これは耐えられねぇッッ!!


「……チッ……半分だけだぞ。二人で仲良く分けて食え」

「やったです!」

「ありがとうなの~!!」


 俺は自分の分を半分渡すと、幼女達は仲良く分け合い始めた。

 花音と芽衣で大きい方を取り合いっ子でもするかと思ったが、そんなことは全くなかった。


「おぃしぃのぉ~」

「おぃしぃでふぅ~」


 でも……これだけおいしそうに食ってくれるなら作った甲斐があったと思える。

 後で感想を貰おうと思っていたが……もう半分貰ったようなものだな。


 そして運動会のお昼の時間は、まったりと過ぎていった。


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