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6件目 このよろず屋の大家の孫娘と学園祭に行ってきた件 4/6


「おぉ、コンテスト会場の裏側にゲームフロアがあるんだな!」


 俺達は広場の裏手に回り、コンテスト会場の丁度裏側にあるゲーム区画へと移動した。


「そうだよ。ゲームのプレイには参加費がいるけど、色々なゲームを楽しめて景品があるものもある」

「楽しそうですねぇ」


 俺達はゲームの出し物をしている区画の中を回ってみる。

 すると、ビンゴ大会や輪っか投げ屋台など、様々な催し物が行われていた。


「あっ!ダーツがあるわ!楽しそうね」

「お、なら勝負するかお嬢?」

「いいわよ」

「よし!リベンジマッチだ!!」


―――タタターン


「ふふっ……また私の勝ちね。罰ゲームでもかけておくんだったわ」

「また負けた…。お嬢は相変わらず強いな」

「ですねぇ。やっぱり瞳ちゃんは凄いですぅ」

「昔から強かったよね。流石瞳たん」

「皆ありがとう!……さて、満足したしそろそろ―――」


『おっしぃぃぃッ!!あともう少しで景品だったねぇ!でもナイスガッツッ!!』


「――ッ!?」


 遠くからハキハキとした声が聞こえてきた。

 何かの出し物のゲーム実況者のようだ。挑戦者の頑張りを讃える声が聞こえる。


「あれは……モグラ叩きゲームか」

「興味がないわね。最後に出店を―――」

『さぁ、パーフェクトは出るのか!先着3名!景品はあの伝説のカレーの素だぞぉ!!』


――ピクッ


 お嬢が僅かに反応した。


 まさかあれは……。

 お嬢が前にネットショッピングで購入しようとして出来なかった……あの伝説のッ!

 ラムカナ屋の新作!超高級特製カレースパイスじゃねぇか!!


「仁……アレを取りなさい」


 やっぱりか。


「取りたきゃ自分で取れ」

「私じゃ取れなさそうだもん……だからお願いッッ!」


 お嬢が珍しく懇願している。

 どれだけあれが欲しいんだよ……って!?

 ちょっと待て……よく考えてみろ……これは……お嬢を焦らせる絶好の機会じゃねぇかッ!!


「……ハッ!ねだっても無駄だぞ?ヤル気がしねぇわ」

「お願いしてダメなら命令よ!任せるわ!!」

「勝手に任せんな。タダじゃやらねぇからな」

「ならご褒美をあげる!」

「褒められるだけだろ?」

「臨時ボーナス」

「なんだとォッッ!?」


 臨時ボーナス……いや、まだ浮かれるには早い!

 そのボーナス額を確認しておかなければッ!!

 過去の寸志事件を思い出せ!確認するまで油断はするな!!


「……お嬢様……褒美はいかほどでございましょうか?」

「1か月分の褒賞を出すわ!成功報酬よ!!」

「っしゃあ!ヤってやんよォォォォッッ!!!」

「不純な動機だね」

「動機が何だろうと関係ねぇッ!!これは俺の仕事だ!」

「信じてるから……必ず取って!」


 緊急クエスト発生だ!!

 難易度はSランク!全対象討伐任務だ!!

 さぁ、全滅させてやるぜッモグラ野郎!!!!


「クククッ…俺の職業(ジョブ)はなんだ?」

「フフフッ…土竜撃滅士(モグラ叩き名人)よ!」

「だよな!最強の土竜撃滅士(モグラ叩き名人)とは俺のことだッッ!」


「いや、そんな職業ないでしょ。2人ともノリノリだね」

「当たり前だ!最高スコアを叩き出してやるぜ!!」

「仁さぁん、頑張ってくださ~いぃ」


『じゃあ、チャレンジャーが来たところでぇッ……スタート!!』


「来やがれッ!モグラ共!!」


――ダンッ

――ぴぎぃ


――ダンダンッ!

――ぴぎぃぴぎぃ


―――ダンッダンッダンッダダダッダダダンッ

―――ダダダンダダンダダダンダンッ

―――ダダダダダダダダダンッダダダンッ!!!


―――ダダダンッッ!!!!!!

―――ぴぎぃィィィィィィィィィィィィッッッ!!


「―――フッ…これが…土竜スレイヤーの力…」


―――タッタタ~ン

―――100点


「やったわ!!流石よッ仁!!」

「うわぁ……ホントに出しちゃったよ…スゴイね」

「仁さん……よく分かりませんが凄いですぅ…」


『すっごぉぉぉい!!!!パーフェクトが出たァァ!!!みなさん拍手ぅぅ!!』


――パチパチパチ

――パチパチパチ


 クククッ見たか?……これで任務完了!後日報奨金が俺の手元に渡される!

 緊急クエスト――完遂だッ!!


『はい!コレ景品です!おめでとう!!』

「あ、ありがとうございます」


 俺は緊急クエストの討伐報酬を受け取った。


「ほらよ」

「あ………じ、仁!!……ありがとうッ!!」

「ッ!?」


 おっ!?お嬢が笑顔になった。

 こんなに喜んでくれるなら取ったかいがあったってもんだ。


 それに…その自然な笑顔は……悪くない。

 

 そして俺達はゲームセンターを颯爽と後にした。



◇◇



 ゲーム区画から移動し、大きな噴水のある広場に到着した。


 この広場は、噴水の周りが美しいタイルで整備され、芸術的な憩いの場を演出している。又、広場の端には、僅かながらミストシャワーが設置されており、比較的涼しそうだ。


 そして、一般来場者にも開放されている区画の一つである為か、飲食系の出し物が多く軒を連ねており、他の区画よりも活気が凄かった。


「そこのグラサンお兄さん!こっちに寄ってってよ!」

「ん?何だ?」


 広場を歩いていると、どこかの出し物の元気な看板娘が声をかけてきた。

 どうやら自分達の出し物の引き込みを行っているようだ。

 可愛らしい笑顔で積極的に集客しており、そこそこの人が集まっている。


「あぁ、お笑い同好会の出し物だね」

「お笑い同好会?」


「これを飲んだら爆笑確定!!笑いで涙がでてくるよッ!!超絶ドリンク”抱腹絶倒クライMAX”ッッ!!」


「”不思議物質入りの(ファンタジー)ドリンク販売所”って書いてある」

「コントで笑わさずに飲み物で笑わせようとするとは……なかなか斬新なサークルだな」


―――ゴクゴク


 先に列に並んでいた一般客の男性がファンタジー飲料を飲み始めた。

 俺はその様子をなんとなく眺め続ける。


「あっ!飲んだ感想!どうかなお兄さん?」


――ッ!?―――ッッ!!ッッ!!!


 腹を抱えてとんでもない形相をしている。

 笑い過ぎで声がでていない。必死に腹を押さえている。


「あのお兄さん…腹筋大丈夫かよ………拷問飲料じゃねぇか……」


 つかその飲み物……ちゃんと保健所に相談しましたか?

 食中毒は勿論大丈夫ですよね?でも、違う形でお腹痛めちゃってますよ?


「ちょっと飲んでみない?気になっちゃって…」

「お前変わり者だな……俺はパスだ」

「じゃあ瞳たん!半分ずつ飲もう!!」

「えッ私!?」


 お嬢が驚きの声をあげた。

 まさか指名されるとは思っていなかったのだろう。


「遠慮しないで!いいからいいから!一緒に飲もうよ!」

「あ、えっと…ちょっと…」


 凛花が有無を言わさず、強引にお嬢を連行していった。俺はただその光景を見守ることしかできない。

 あれは幼馴染だからこそ許される行為だろう。もし俺が口を出したら巻き添えを食らう。


「あ、ドリンク希望者ですか?」

「はい。1つくださ~い」

「はいどうぞ~。これを飲んで全てを笑い飛ばしましょう」


――コトッ


「それじゃあ半分貰うよ~」


―――ごくッごくッ


「はぁっ……さぁ、瞳たんも」

「う、うん……」


―――ごくッ


 こいつら……マジで飲みやがった。


「おい凛花……大丈夫なのか?」

「う、…うわぁ……これは……大丈夫…ではないかなぁ……」

「マジかよ…」

「…なんか新感覚?……これはもう……笑い転げそう……仁くんの顔でッ!!あははははははッ!!」


 凛花が大口を開け、お腹を抱えながら笑い始めた。

 なぁ…俺の顔って……そんなに面白いか?


「くふッ……」


 あっ…きた……。


「仁がサングラスッ!!…おっかしぃッ!!くふふふふふッッ!」


 お嬢がお腹を押さえながら笑っている。

 一度グラサンを取ってみる。それでも笑い声は止まらない。


 お嬢……自分でかけさせておいてそれはないだろ。

 つかグラサン外しても笑ってんじゃねぇか。


「あはははは」

「ふふふ」

「ひぃッ――ひぃッ――」

「ぐぁっはっはっは」


 俺は周りを見渡した。

 すると、ファンタジー飲料を飲んだ多くの来場客が笑っていた。

 そして、その内の何人かがグラサン姿の俺を見てさらに笑い出す。


 クソが……看板のコンセプト通りだ。

 ………笑いで……涙が出てくるぜ…。



―――そして1分程が経過した。



――――スゥゥ……


 飲むタイミングが一緒だった人達が一斉に真顔に戻っていく。

 そして、何事も無かったかのように歩き去っていった。


 さっきまでの笑いは何だったのだろうか?

 そう思わざるを得ない不思議な光景である。


 なんだこれ……新手のフラッシュモブかよ。


「なぁ凛花。俺の顔……まだ面白いか?」

「え?…別に面白くない顔だよ?」


 うん。真顔で言われるとそれはそれで悲しくなるな。

 あれ?面白い方がよかった?何故だ?何かが矛盾しているぞ?


「あぁ、何かすっきりしたわ!とっても清々しい気分!」


 お嬢がかつてない程に清々しい表情をしている。

 身も心も綺麗なお嬢様が誕生した。


「ねぇねぇ。そこの爽やかなお嬢さん。こっちの元気が出る飲み物も飲んでいかない?」


 少し離れた場所で出し物をしているグループの看板娘がお嬢に声をかけてきた。

 お嬢―――いや、清々しいオーラを纏った綺麗なお嬢様はその問いかけに返答した。


「その飲み物は何ですか?」

「超絶栄養剤!!”頭イカレMAX”ですよ~」

「元気溌剌研究会の出し物だね~。これも気になるな~」


 今度も怪しくて危ない飲み物か。

 こっちの出し物は人気なさそうなものばかりだな。

 噴水の反対側と違って、人がまばらなのも頷ける。


「最近お疲れ気味の貴方に!大事な予定の前の気付けに!これをドーン!」


――どーん


 看板娘は緑色をした小さなガラス瓶を取り出した。


「これを一口飲めば、徹夜作業も問題なし!カラオケオールナイトも問題なし!元気の源がオールイン!」


 何だよその緑色の物体は………一体何を瓶に突っ込んだんだ?

 しかも…めっちゃバブルしてるし………それに既視感のある液体だ…。

 あぁ。国民的ゲームの敵キャラにいたな。”ゴンドラクエスト”の敵キャラだわ。


「皆ちょっと疲れてるでしょ。とりあえず一本イッとかない?」


 凛花がまた飲もうとしているようだ。

 どんだけ未知に体当たりしていくんだろうか、この女は。


「いいわよ。気分もいいからノってあげる」

「皆さんが飲まれるのでしたら私も…ちょっと疲れましたのでぇ…」


 そういう流れで来るか。

 ここで飲まなければ俺は臆病者(チキン)扱いになりかねん。


「…………まぁ、せっかくの学園祭だ。ちょっとぐらいならノリで飲んでみることにしよう」

「分かった。……あっ店員さん、小さいサイズを4本下さい」

「はい!どうぞ~」


 凛花が店員から元気ドリンク(謎の物体X)を受け取る。

 そして、お嬢と茜と俺は、凛花から謎のドリンクを受け取った。


「とりあえず、そっちの木陰で飲んでみようか」

「そうね。いきましょう」


 俺達は広場の淵の木陰に移動する。そして―――――――過ちを犯したことを確信する。

 

 失敗した。

 軽いノリで飲むことを決めてしまったが……やっぱコレ、ヤバいやつだわ。


 俺は今、少し離れた場所―――噴水の近くに座る”先駆者”達を目にしてしまった。

 ついさっきこれを飲んでいた男性グループ………みんな座っている……そして……”前かがみ”だった。

 

「これで元気になれるのかな~?」

「疲れがなくなればいいけど…」

「どうなんでしょうねぇ」


 お嬢達が緑色の小さな瓶を眺めている。

 そして、瓶の蓋を取っていった。


 うん、多分元気になりますね。でも……違うところも元気になっちゃいますかね?

 俺、もう飲んだ末路が見えているんですけど。大丈夫ですかね?


「じゃあ、乾杯しよう」

「「「かんぱーい」」」


 まぁ、あれは普通サイズを飲んだからであろう……そうあってほしい。

 この小さい……お試しサイズ程度であればあるいは………


――ごく

――ごく

――ごく

――ごく


「ブッ!!」

「ブふッ!!」

「ブファッッ!」


 お嬢と茜が順番に吹き出した。続いて俺も吹き出してしまう。

 衝撃的な味により、体が防衛反応を起こした結果だ。


 とんでもねぇ!!少し吹き出しちまった!!


―――ゴクッ――ゴクンッ


 凛花のやつ!平然と飲みほしやがった!?

 違う意味でとんでもねぇ!!


「いやぁ、これは元気が出そうだよ。キミ、販売頑張って」

「は、はい!ありがとうございます!お姉様!」


 凛花が販売員にねぎらいの声をかけ、こちらに戻ってきた。


「あっ…なんだか………体が熱くなってきたね?」

「確かに…ちょっと熱いわ…」

「ほんとですぅ……」


 マジだ…俺もだんだん体が熱くなってきた。上半身だけでも…スーツを脱ぎたい…。

 だが、ここで俺が脱ぐと変態紳士のレッテルが――


――スル…


 お嬢が突然、自身の羽織っている薄い服に手をかけ、ずらし始める。

 茜と凛花も同様だった。


 ふぁ?まさかッ!?嘘だろ!?まじかよ!?ここでかよ!?

 キタよコレ!!なんて熱い展開なんだ!!俺も超絶熱くなってきたぜぇぇ!!


――バババッ


 俺は自分のスーツのボタンを高速で外していく。


「ちょっとピシッと着すぎたかしら?」

「羽織ってるものを脱いでもいいですよねぇ…」

「別にいいんじゃない?ボクも暑いのか熱いのか分からなくって……」



――ハラリ…

――スルスル… 



 お嬢ッ!?羽織っていたレースのようなものがッ!?薄着になっただとッ!!

 しかも胸元が少しはだけているぅぅッ!?

 程よい肉付き!!白い素肌!!心を惹きつけるチラリズム!!熱い…熱いぞッ激熱だッッ!!



――パタパタ



 ん?凛花?……ってッななッなぁぁぁッ!?胸元で服をパタパタさせているだとォォッ!?

 なんて無防備なッ!!だが素晴らしいッ!!爽やかな色気があるではないかッッッ!!!



――スルリ



 ハッ!?今の茜の状況が………ッ!!くッッそォォォッッッッ!なんてこったいッ!!!

 視線を集めるギフトは健在だッ!健全だけどエロ過ぎるッ!!

 お前は歩くわいせつ物かよォォッ!!


 俺は顔に手を当て天を望む。

 暑さと熱さで頭が逝ってしまったのだろうか?

 いや、これは現実!理想郷(ユートピア)はここにある!そう…目の前に…映っているではないかッ!

 

 俺はここで…………天国(ヘヴン)を見つけた……


「体が熱いですぅ……冬に飲みたかったですぅ…」

「この飲み物…絶対出しちゃダメでしょ……まだ体が熱い…これも脱ぎたい…」


 おいおいおい!いいぞいいぞぉ!

 もうすぐクライマックスだ!!下着はまだかァ?

 さぁ、あと1枚!!あと1枚!!脱げ!脱げ!


「脱げッ!!!」

「ッッ!!脱ぐわけないでしょッ!この変態ッッ!!何半裸になってるのよッ!!」


―――ハッッ!?俺は一体何をッ!?


「仁さん……野獣ですぅ…」

「あららぁ……犬が狼になっちゃったのかな~?」


 お嬢と茜は両手で胸元を隠すような仕草をとる。

 凛花はあまり気にしていない様子だが、ジト目で嘲笑された。


 これはやべぇ!!

 体が元気になるどころじゃねぇッ!!色々元気になりやがった!!


「そこの変態奴隷!人数分の水を買ってきて!!早くあっちに行ってぇ!!」

「うぉ!?わ、悪かったよ。ちょ、ちょっと待ってろッ!!」


―――タタッたたッたッたッたたぁぁ


 俺は直ぐにスーツのボタンをかけていく。そして、有り余る体力を全力で消費しながら、おいしいお水を買いに向かった。




「あれ?なんだか……変な走り方してない?」

「そうですねぇ……背中が少しまがっていますぅ」

「ふふふっ……さぁ?何でだろうねぇ~」


 瞳達は木陰でゆっくりと仁の帰りを待つのであった。

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