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6件目 このよろず屋の大家の孫娘と学園祭に行ってきた件 3/6


 心地よい風が流れるテラスで優雅なひと時を過ごす。

 眼下には多くの人が出し物に並んで賑わっており、時に喧噪のような声が聞こえてくることもあった。


 ふっ……下が少し騒がしいな。気品を持って行動してほしいものだよ…全く。

 

 今の俺は上流貴族。天上人ロールプレイ中である!

 俺は紅茶を片手に頬杖をつき、はるか地平線を望みながら優雅にランチを待つ。


「あのぉ…凛花さん。ちょっと聞いてもいいですかぁ?」

「ん?何かな?」

「瞳ちゃんとはどこでお知り合いになったのですかぁ?」


 俺の対面に座った茜が、お嬢と凛花の関係性について聞き始めた。


 そういえばそうだったな。茜はそこら辺の話を一切聞いていない。

 勿論、俺もそこまで多くは聞いてないので知らないのだが。 


「えっと……幼少の頃に家同士の交流があったとき出会ったかな」

「凛花さんも貴族だったんですかぁ?」

「そうね。”コレ”でも良家のお嬢様よ」

「”コレ”でもって……ボク悲しいよ~」


 凛花は眉毛をハの字にしたような表情で嘆くような仕草を見せた。

 だが、悲しいと言っている割には全く悲しそうにしていない。


「そういえば瞳たん……」

「どうしたの?真剣な顔して」

「仁くんに”奴隷”って言ったことあったじゃん?」

「あっ…う、うん…」

「”奴隷プレイ”はいつもやってるの?」

「奴隷プレイ!?ち、違うわよ…」


 お嬢は凛花の質問に驚き、口をもごもごさせながら目を泳がせている。

 どう説明すれば良いのか思い浮かんでいないようだ。

 

 因みに茜は、目をパチパチさせながら首を傾げている。

 多分話の流れが分かっていない。

 

 確か茜がよろず屋に来る前に、お嬢が俺に対して奴隷命令をしようとしていた。

 俺のギフト情報を知らないと単に奴隷プレイが行われているようにしか見えないだろう。

 ……これは実によろしくない。このままではお嬢と俺が変態扱いになってしまう可能性がある。


 ったく凛花のやつ…あれからずっとそれが気になっていたのか…。


「ホントに?お互いに慣れた動きだったけど」

「う゛ッ……慣れてたの……かな」

「あっもしかして仁くんのギフトに関係あるの?」

「そ、それは………凛花にも言えない…」


 ん?言えない?

 さっさと俺のギフトの説明すればこの話は終わりじゃ―――ってそうか……


 もしかして俺のギフトを他の人には教えないよう配慮してくれているのか!?


 ギフトはその人の才能や個性的な面も分かってしまうことがある。

 だからあまり公言して欲しくない方も多い。


 多分そうだ……だからお嬢はわざわざそんな配慮を…。

 俺は公言されても気にしないのだが………配慮してくれる気持ちがとても嬉しい。


「そっか……幼い頃から見守ってきた身としては、ちょっとだけ複雑な気持ちだよ」

「こ、これにはちゃんとした理由があって…」

「理由?仁くんを奴隷として雇ったってことかな?」

「えっ!?…う……ちが…」

「なら瞳たんの趣味なのかな?」

「ち、ちが………」

「じゃあ仁くんが変態なのかな?」

「それもちが………うんッ!」


 うんッ!じゃねぇよッ!!

 何スッキリした笑顔で終わらせてんだよ!!

 俺を変態にして終わらせんなよ!理由付けが適当過ぎだろッ!


 俺は断じて変態じゃねぇ!紳士のつもりで生きてんだ!!……ったく……。


「なぁ凛花……ちょっといいか?」

「え?何かな?」

「誤解してそうだからもう説明しておく。まぁ、カミングアウトってやつだ」

「うん?」


 俺はよろず屋での雇用経緯や自身のギフトに関する話を始めた。

 すると、凛花はだんだんと前のめりになり、目を輝かせながら聞き入っていた。


「えっ?えっ?えっ?す、すごいすごい!」

「何がだよ?」

「瞳たん!それって凄く珍しくない?今まで聞いたことないよそんなギフト!!」

「そ、そうね。確かに珍しいと思ったわ」

「今まで瞳たんと奴隷ごっこしてる変態かと思ってた!」

「誰が変態じゃ!」

「あっごめんごめん…。でも、本物の奴隷として仕えてたってことだったんだぁ」

「そうよ。……本当は教えないつもりだったんだけど……」

――チラッ


 ん?お嬢?


「もう仁が教えちゃったし……」


 急にこっち見てどうした?


「だったらもう……」


 お、おい…まさか…


「実際に見せたほうが早いわよね?仁?」

―――ニコッ


 う゛げ゛ぇぇぇッッ!!

 そのパターンから奴隷命令がくるのかよッッ!!!


「お嬢!?ちょッまっ…」

「そこの奴隷、服従のポーズよ。仰向けになりなさい」


 ダメかー。


――ゴロン


 俺は間髪を入れず言い放たれた命令により、仰向けになった。

 犬の腹を見せるようなポーズ。何度やらされたか分からないおなじみのポーズだ。


「懐かしいですねぇ…仁さんのこのポーズ」

――ゴクゴク


 おいコラ、何しみじみと茶飲んでんだよアルバイター。

 もうこれが日常ですってか?感覚おかしくなってんぞ!?助けろよ!


「凄い……凄い凄い凄い!!」

「コレの何が凄いってんだよ…ただ仰向けになっただけだぞ」

「でも命令に従っちゃうんでしょ?」

「あぁ、悔しいことにな」

「これは楽しい実験ができそうだ!」


 ふぁ!?お前は何笑顔で物騒な事言ってんだよ!

 俺は実験動物違うぞ!?


「どう?いつもこんな感じよ」

「うん凄い!!ギフトが恩恵(ギフト)じゃなくなってるなんてッ!」


 そう!その通りだ!

 もしギフトの神様が住んでたら笑いながら突撃訪問だわ!


「…ねぇ瞳たん。とっても気になるんだけど……」


 急に凛花の目つきが変わった。

 あの目…危ない目だ……ちょっと身の危険を感じてきた。


「何かしたいの?」

「嫌な命令って奴隷でもしたくないよね?」

「そうね」

「でも命令には従っちゃうんだよね?」

「うん。そうね」

「……もしこの”奴隷くん”に”パンツを脱ぎなさい”って言ったら脱ぐのかな~?」


 コイツ――なんて事をッ!!


「えぇっ!?仁さんのぱ…パンッ」

「ちょッ―――なっなななに言ってるのよッ!ハレンチだわ!」


 お嬢と茜が凛花の実験に反対する。

 すると、凛花は実験を諦めて残念そうな表情をした。


 良かった…俺のモラルは守られたようだ。


「えぇ~。ギフトの可能性を検証したいなぁ……どれだけ命令に従順なのかをテストしたいなぁ……」


 おいおい、まだ未練タラタラかよ。

 だがお嬢は実験に反対派っぽいからな。これ以上の命令は―――


「あっそれは気になるわね。ちょっと前に抵抗されたこともあったし……」

「……試してみる?」

「そうね。やっぱり確認しておかなくっちゃ」


 はい?…おい嘘だろ?


「やったね。なら実験開始だ!」

「お、オイオイオイ!?パンツを脱がせるわけじゃないよな!!?」

「あははッ…それは冗談だよ」

「マジでやるのかよお嬢………」

「うん。お願い。ちょっとだけお遊びだと思って付き合って!」


 はぁ……楽しそうな顔しやがって…


「…お手柔らかに頼むぜ……」

「うん。善処するわ」


 そして、凛花は嬉々とした表情で実験内容を考え始める。


「うん!それじゃあ、まずは犬にしてみよう」

「ッ!!いきなりどういう発想だよッ!?頭沸きすぎだろッ!?」

「職業犬ってこと?」

「そうそう」


 いや、流石にそれは試さねぇだろ。

 もし完全な犬になったと仮定しよう。俺が人間に戻れる可能性が―――


「そこの奴隷」


――えっ!?


「あんたは今から職業”犬”よ」


 躊躇なく言い放ちやがったよこの(アマ)ぁぁぁぁッ!!!


「お…おぉッ!――お、お…おぉぉぉぉッ!?」


「どう?」

「な、なんともねぇ…」

「やっぱり。流石にダメっぽいね」

「そうね。一つ理解できたわ」


 こっ…怖ぇぇぇぇぇぇッッ!!あッぶねぇえぇッ!!

 一瞬昔のお嬢を垣間見た気がしたぜ。

 ったく何考えてんだ!本当に犬になったらどうすんじゃい!!


「でもワンしか言えなくすることはできるんだよね?」

「そうね。一回試すわね」


――えっ!?またワンちゃんやるの?


「そこの奴隷。今からあんたは私の犬!犬が発する言葉しか使っちゃダメ!いい?」

「わ…ぃ…いいわ…んけねぇ…だぁろんッッ!?」

「これは職業奴隷の副産物かな?」

「奴隷以外の時はこうはならないわ」

「それにしても、"わん"って言わないね」

「うん。前もこんな感じのことがあったの。それに今日はなかなか強情ね」


 クソがッ!そこまで好き勝手させるかよお嬢!!

 いくら奴隷適性MAXだろうと俺の"対奴隷命令耐性"は日々鍛えられているんだよ!!

 俺の気合いでッ!わんちゃん命令に抗わせてもらうぜッ!!


「わんっていいなさい」

「いうわ……け…ねぇ…だろんんんッ――」

「やけに食い下がるじゃない」

「あたり…ん…わ…まえ…わ……だろッ」

「言ったら……ご褒美をあげるわよ?」


 えっまじでッ!?


「わん!」


 ッ!!しまッ―――


「あ、やったわ!」

「流石は瞳たん。抵抗がなくなったね」

「仁さん……とても悔しそうな顔してますぅ」


 うぐぅォォッ!!しっぽ振っちまったぁッッ!!

 お嬢にしてやられたッ!!ご褒美という甘言に気を抜いてしまったッッ!!


「いちかけるいちは?」

「わん」


 もう抗えねぇッ!


「ごはんを盛る食器は?」

「わん」


 もう止まらねぇッ!!


「ふふっ…名犬ね」


 もう犬ごっこッさせんじゃねぇぇッ!!!


「ワフゥゥぅッッ!!」


 クソがッ!声が唸り声になりやがる!!


「なぜか唸り始めましたねぇ…」

「鼻息が荒くて不快だわ……駄犬ね」

「瞳たんを見て興奮してるのかな?発情期だったりして?」


 おいコラお気楽女!!何勝手に発情期にしてんだよ!!

 バター犬になってやろうかッ!


「犬はもういいかな」

「そうね。次は職業:猫でいいかな?」


 おいやめろッ!!

 もうやめろッ!!


「わんッ!!わんッ!!」

「何言ってるかわからないわね。とりあえず戻しましょうか。…そこの奴隷、普通に話していいわよ」

「ッ!お、お嬢…実験にしても遊び過ぎだ……俺のギフトは職業適性MAXのはずだろ?」

「そうよ。だから可能性を検証しているんじゃない。………このネコちゃんを見てみて?」

「……んん?」


 お嬢が膝に乗せているセレブネコを見せてきた。

 眠そうにしている猫を優しく撫でている本人はとっても上機嫌である。


「このネコちゃんは私達に癒しを分けてくれているわ」

「おう、だから何だよ?」

「ネコちゃんも働いてくれているのよ?このネコカフェの従業員と同じなの」

「猫は職業じゃねぇよッ!!」

「残念ね。……猫になったら可愛がってあげられるのに…」


 えっ…マジですか!?お嬢とにゃんにゃんですか?

 わぁ~お。


「何期待した顏してるの?…冗談よ」


――ッ!!!くそがッッ!!弄ばれた!!


「でもぉ…さっき犬がダメだったので猫も無理ではないですかぁ?」

「それもそうね。じゃあ個人的に猫にしたいから変えるわね」


 なぁお嬢。もう半分ノリになってきてないか?


「そこの奴隷!アンタは私の猫よ。ちゃんと猫になりきって正直に受け答えしなさい。カワイイ声で」

「にゃッ!?……にゃぁぁ…」

「じゃあ質問するわよ」

「にゃー」

「学園祭は楽しい?」

「にゃーん」


「疲れてませんかぁ?大丈夫ですかぁ?」

「にゃぁぁん…」


「美少女達に囲まれて嬉しいでしょ?」

「ニチャぁぁ」


「うわっ!酷い笑顔だ」

「猫の適性は最低ね。かわいくない」

「笑顔が……ちょっとぉ…」


 酷いィィッ!せっかく気持ちを込めて答えたのにぃぃ!!

 でも囲まれて嬉しいって顔に出てしまったか…これはマズイ。紳士として下心は消しておかねばな。


「やっぱり猫語にしておこっと。そこの奴隷、次は猫語で話しなさい」

「にゃッ!……おいお嬢、もうやめろにゃ」

「かわいいネコちゃんはそんな下品な言葉を使わないわよ。やり直し」

「んにゃ~…お遊びが過ぎるにゃ~!!」


「すみません…お料理……置いておきますね?」


――えッ!?


 俺は反射的に横へと振り向いた。

 そこにはネコカフェのスタッフが料理を持ってきていた。


――カタンッ――カタンッ

――カタンッ――カタンッ


「…失礼します」


―――そそくさッ


 このタイミングで各々が頼んだランチメニューが届く。

 料理を持ってきたスタッフは俺をチラっと見てからすぐ目を逸らす。

 

 多分痛い子だと思われた……何だよこの喪失感。

 

 そして、皮肉にも持ってきた皿は俺の頼んだ魚料理。

 食欲をそそる白身の魚のムニエルが盛られた一皿がやってきた。


 ……それにしても…美味そうだ…。


「…そこの奴隷、食べるのを待ちなさい」

「ぐッ!?」


 ムニエルを前にしてッ!


「待てが出来るなんていい子だね仁にゃん。ボクが大好きなお魚を食べさせてあげようか?」


 このお気楽女……白い目で見られた後に冗談言ってんじゃねぇよ!

 つかいつから俺は”仁にゃん”とかいう猫野郎になったんだよ。勝手に命名すんな!


「はぁ…このから揚げ……とってもおいしいですぅ」


 そこのぽっちゃりアルバイターッ!!もうこの風景に慣れやがったなッ!

 呑気に鶏から食いやがって!!平和な日常感じてんじゃねぇよ!


「どうしたの?仁の大好きなお魚よ?食べないの?フフッ」


 セレブネコを撫でながらニヤニヤしてんじゃねぇ。

 マジで時々エゲツないことしやがるな。


「”お魚嬉しいニャー”って言ってよ仁にゃ~ん」


 クソがッ……もう分かったぜッ!そこまでこの俺を煽ってくるなら…いいだろうッ!!

 望み通り……ネコの真似ごとしてやんよォォ!!!


(うお)ぉォォッッ!!サカナじゃァァッ!」


―――ガツガツガツッ!!

 

「ちょッちょっとッ!?お箸使って食べなさいよ!」

「あ~…命令無視して食べ始めたね~。野良猫っぽいわ~」


 いつまでもお遊びに付き合ってられるか!!

 腹が減ってんだ!さっさと魚を食らわせてもらうぜ。

 

「やっぱり煽ると奴隷命令の効果が弱くなるんじゃないかな?」

「そうね。奴隷本人の感情も命令の強制力に影響があるのかも。あとは命令の種類によってかな…」


 こいつら…わざと煽ってやがったな。

 この俺を弄びやがって…。――もぐもぐ


「じゃあ次の実験は耐久テストだ!」


 ぶぅっ!?

 今なんつった?耐久テストぉ?


「そこの奴隷!食べるのを止めなさい!」


 くそがッ!!俺のムニエルッ!!


「うん。命令した瞬間の強制力は強いみたいだね」

「そうみたいね」


 冷静に分析してんじゃねぇよ!


「仁!もし30秒間魚を食べずに耐えられたら褒めてあげる。でも食べたら罰ゲームよ!」

「はぁ?罰ゲームぅ!?」

「いいねぇ!楽しくなってきた!」

「でもぉ……罰ゲームって何をするんですかぁ?」

「ふっふっふ!…良い案があるのだよ」

「何かしら。凛花、教えて?」

「勿論ッ!!午後の女装コンテストにッ出場申請だぁぁッ!!」


―――ふぁぁぁぁァァッッ!!??


「それ面白いわね。採用!」

「えっ?仁さんの女装ですかぁ?……ちょっと見てみたい気もしますぅ」

「もし見せたいのならしょうがないね。お魚を食べていいよ?……さぁ、女装したくなかったら…頑張って我慢しよ?ね?」

「優しく言うくらいなら考え直せよッ!」

「そこの奴隷…」


 問答無用かよッ!?


「お魚を食べなさい」

「うぐぉぉぉッッ!??」


 くっ…クソがぁぁッ!これぐらい耐えぬいてやんよォォ!!

 この俺様の……本気の漢気でなァァァ!!!


 う゛お゛ぉぉぉぉォォォォォ―――――――― 


 耐えろッ耐えるんだ俺ッ!

 もし女装コンテストに出てみろ!!俺はまた大切な何かを失うぞ!!


―――おおおぉぉ……ぉぉ……ぉ……


 まだ耐えろッ!!この誰も得しない惨劇をッッ!!俺は―――


―――ぉぉ……ぉ……

―――ぱくっ………ガツガツガツッ


「……うん。37秒ね。そこの奴隷!食べるのをやめなさい」


―――ピタッ

―――ゴクン


「………37秒か……どうだ見たか……俺の底力を…」

「よく頑張れたわね。凄いわ」


 俺は30秒以上奴隷命令に抗うことに成功した。


 耐えきった……正直ギリギリだった…そして相当疲れた…もう抗う気力がねぇ。

 だが、なんとか回避したぞ……罰ゲームをな。

 ハハッ……女装コンテスト出場?そんなもんするわけねぇだろ!!

 期待した奴!残念だったなぁッッ!!


「残念ですねぇ…仁さんの女装…」

「頑張ればなんとかなるもんだね。凄い凄い」

「でも、ちょっと時間が短かったかもしれないわね」

「いや、これ以上耐えるのは無理だぞ?」

「ならここまでかな」

「ということで、仁!実験お疲れ様。ちょっとやりすぎたかもしれないわ。つい面白くなっちゃって……ごめんなさい」


 お嬢がしおらしく謝った。いいだろう、許す。


「…やっとお遊びが終わったか…。ちょっとじゃなく大分やりすぎだったけどな」


 途中、猫とじゃれあうときのような顔で楽しそうにしていたが……やはり面白がられていたか。


 つか耐えた報酬が褒められるだけってのはちょっと納得いかないな。

 今度何かするときはねだってみるか。


「全力でやってもらわないといけないからね。仁くんには悪いと思ったけど」

「そうね。…さてと、仁!アンタは今から私の執事兼ボディーガードよ」


 ッ!…体が…動くようになった。

 これはもう暗示の一種かと思うレベルだ。


「ふぅ、満足したか?」

「うんうん。満足した!やっぱり仁くんは面白いよ。あと、煽ってごめんね」

「お、おぅ……まぁ許しておいてやる。……それにしても、凛花は他人のギフトに興味があるのか?」

「えっ?ただの好奇心とか探求心からだよ。でも、所属サークルがそっち系だから気になるといえば気になっちゃうかな?」

「所属サークル?」

「うん。ボクはとあるサークルに所属してるんだ」

「どんなサークルなんだよ?」

「”ギフト探究サークル”さ」


 ギフト探究サークル?……だから俺のギフトが気になっていたのか?


「どんなことをするサークルなんだ?」

「ギフトの可能性を追求する集まりかな。自分の才能を伸ばすことを目的としてる人が多いね。ただ、別に大掛かりな事をしているわけじゃないからゆとりサークルって言われているけど」


 凛花は自身が所属するサークルの活動について説明していく。


「―――へぇ。んで、凛花の場合は何してるんだ?」

「そうだね…。ボクのギフトの可能性について検証していたかな」

「可能性?そういえば凛花のギフトって……聞いてもいいか?」

「そうだった。仁くんのギフトも聞いたし不公平だよね。……ボクは”管理する”才能だよ」

「管理?…物の管理が上手くなるのか?」

「簡単に言えばそうだね。でも色々と応用のできる才能だった」

「応用ねぇ……」


 物の管理、データ管理とかか?

 それに……もしかしたら記憶の管理までできたりするのかもしれないな。

 そうなると記憶が良いことにも頷ける。凄い才能だったりするかもしれん。


「そう、何でも応用さ。どんなものでも多くの可能性を持っているんだ」

「へぇ、その考え方はすげぇなぁ」

「でしょ?だから、もし良ければ色々聞かせてよ。アドバイスしてあげられるかも」

「そうか。ならついでに茜の”珍しいギフト”でも教えといてやろうか」

「――ぅえ゛ッ!?」


 から揚げを頬張りながら幸せそうにしていた茜の顔が硬直した。

 

 クククッ…いつから自分が安全地帯にいると錯覚した?

 お前も巻き添えに決まってんだろアルバイター!!


「凛花に応用方法を考えてもらうがいい」

「ッッッ!??」

「え?何?茜ちゃんも珍しいギフトなの!?」

「――ごくん………あっ…えっ………とぉ…そのぉ……」


 クククッ…心の中でニヤニヤが止まらない。

 その困り顔……実に美味!さぁ、楽しいティータイムを始めるとしよう!


「お、”お金が集まる”ギフトですぅ…」

「ええッ!?す、すごいすごい!!じゃあとりあえず実験を―――」

「この場での実験は難しいでしょ?」

「あ、そうか!なら色々とエピソードを聞かせてほしい!」

「あ゛あぅ………お手柔らかにお願いしますぅ…」


 そして茜は様々な質問攻めをされた後、解放された。



◇◇



 優雅なティータイムを終えた俺達は、ネコカフェから女装コンテスト会場がある大きな広場まで来た。


「ここは………仁くんが世界に羽ばたく第一歩となる場所……だったかもしれないのに」

「俺を何に羽化させる気だよ」

「勿論あれだよ」


 凛花はコンテスト会場の横にある受付を指をさす。

 そこには多くのコンテスト出場希望者が並んでいた。

 ほんの少し……運命を司る”世界線”が変わっていたら、俺が並んでいたかもしれない場所だ。


 あの行列……あれが出場申請をしている野郎共か。

 会場中をゲロまみれにする為に選ばれた戦士たち―――

 女装トロール兵の姿で―――って、これは意外!?

 かわいい男の娘ばかりじゃねぇかッ!?


「皆可愛いわね。でもあれ…男なんでしょ?」

「そうらしいですぅ。……凄いですねぇ」


 確かになかなかの粒ぞろいだ。可愛いと言ってもいい。

 微笑んでくれたらドキッとするだろう。だが”男”だ。


「ねぇ仁くん。会場横に設営されたコスプレ館ってところがあるんだけど」

「それがどうした」

「女装できるよ?アレ着る?」

「着ねぇよ」


 凛花がコスプレ館に飾られている女服を指さし、期待した眼差しを向けてきた。


 どれだけ女装させたいんだよ。

 俺のサービスカットなんざいらねぇだろ。


「奴隷の衣装ってありますか?」


 やめろお嬢ッ!!何しれっと奴隷服オーダーしてんだよッ!!

 奴隷適性にプラス補正がかかんだろッ!!


「一緒に男女逆転コスプレならいい?」

「一緒でもしねぇよ」

「残念……じゃあ仁くんの女装姿でも想像してみよう」

「それもやめろ。アニメじゃねぇんだ。不要なサービスカットを入れようとしてんじゃねぇ」

「フリル付きゴシック…ピンクのスカート…」

「おいやめろ…」

「―――む゛む゛む゛ッ」

「オイだからやめろォォッ!!全国放映されたらお茶の間が惨劇だぞぉぉ!!!!――――


――プツン


 ~しばらくヒマワリの映像をお楽しみください~  

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