番外編 : このよろず屋の大切な奴隷にドッキリを仕掛けてみた件 2/2
和風高級リゾート”和多海”に到着した。
瞳、茜、花音は女子更衣室のある建屋に入り、手荷物をロッカーにしまう。
そして、各々が水着に着替え始め―――
―――ハラリ
瞳の私服がはだけていった。
「ひ…瞳ちゃん…スタイル良すぎですぅ…」
「えっ?そう?」
茜が瞳の下着姿を眺めて言葉を漏らす。
そして非常に羨ましそうな表情を見せながら、視線を上下させていった。
「そうですよぉ!そのバランスの取れたプロポーション……それに比べて私なんか…」
―――ぷにんっ
茜は自分の横腹を見てつまみだす。
その目は死んだ魚の目を彷彿とさせるものだった。
「な…なにが悪いの?」
「もうちょっとスラっとした体型になりたいですぅ…」
「わ、私は茜の方が女性らしいと思うけど…」
「でももう少しお肉を落としてスラっとしたいのですがぁ……太りやすい体質なので減りません…」
「私としては羨ましいけど……私は太りにくい体質だから…」
もう少し痩せてスレンダーな体型になりたい茜。
もう少しふくよかになり女性らしくなりたい瞳。
お互いがお互いの体型を眺め合う。
そんな中―――
「ならその贅肉を寄越すです!」
――むにッ
「あっ…花音ちゃ…ッ!ダメですぅ…」
「ッ!…や、柔らかいです~」
茜の脇腹に飢えた花音が抱き着き、揉みしだき始める。
一瞬抵抗しようとする茜。
だが花音が笑顔で触れてくる為、抵抗できずに蹂躙される。
「私もちょっとだけ…」
――むにッ
「瞳ちゃんまで!?ぁ…ッ…」
「肌のハリが……弾力がすごい……それに包み込まれる…」
「う…嬉しくないですよぉ~…」
花音の気持ちよさそうな表情に触発され、瞳も茜のお肉を堪能する。
そして花音はその間に茜の背後へと回り、眼下に映る豊満な臀部をロックオンした。
「あれ?花音?」
花音が静かに立っている様子を目にした瞳は茜のマッサージを止めた。
茜は瞳のマッサージから解放されたことで、ホッと一息ついた。…のだが―――
「……イイケツしてやがるです!」
―――パシンッ
「ひゃぅッ!」
―――パシンッパシンッ
今度は花音にお尻を叩かれ、茜が驚きの声をあげる。
一方花音は叩くと揺れる茜のお尻を嬉しそうに堪能していった。
「こ、こら花音!やめなさい」
「むぅ…」
いきなり開幕した花音のやんちゃに対し、慌ててストップをかける瞳。
花音は物足りなそうに頬を膨らませ、叩いて遊ぶのをやめることにした。
「あと…そんな言葉使っちゃダメでしょ!どこで覚えたの?」
「テレビで見たです。”暴れん棒軍曹”の名セリフです」
(……?暴れん棒軍曹?………ッ!それってッ!)
暴れん棒軍曹。
主人公の鬼軍曹がオケツペンペン棒を片手に、極悪人から村娘まで、ありとあらゆる登場人物のケツを叩きまくる時代劇風世直しアクションドラマである。
いつも最後に繰り広げられる世直し懲罰タイムは、悪霊に取りつかれたかの如く荒れ狂う軍曹のホモぉぉアクションにより、画面上でモザイクが飛び交う為、15禁扱いとされている。
「それ確か夜にやってる時代劇じゃない!?何で見てるのよ!?」
「夜の11時にテレビをつけたらやってたです。これがとっても面白かったのです!」
瞳は花音がよくテレビを見ることを知っている。
だが好奇心旺盛であるが故に、夜の危ない知識まで吸収してしまうのはよろしくない。
そこの判断ができていない花音に、瞳は頭を若干悩ませた。
「マネしちゃだめ!それと、茜のお尻を叩く理由にはならないでしょ?」
「茜のお尻はヤラシイからギルティです!天誅です!」
「天誅しちゃだめ!というか夜の10時には寝なさい!!成長できないわよ?」
「―――ッ!!」
瞳の"成長できない"という言葉に反応した花音は動きを止める。
そして、瞳の方をじっと見つめ、首を傾げながら質問をする。
「成長しないです?体に良くないです?」
「そうよ!早く寝ないと成長できないの」
「…もしかして…早く寝たらアレになれるです?」
「…アレ?」
花音は茜の方を指差した。
「そ、そうね…。早く寝れば可能性は高くなる…かも…」
(夜の10時くらいから寝れば成長ホルモンがどうこうってテレビで聞いたことがあるし…………多分)
「……どうしたら早くなれるです?」
花音は真剣な表情で瞳に質問した。
羨ましそうに茜の方を見ている。
「……だったら牛乳を飲みなさい。ちょっとずつでもいいのよ?そうしたら早くなれるわ!」
「ッ!!…む゛ぅぅ……」
花音は唸り始めた。
大嫌いな牛乳を飲まないと理想の身体に早くなれない……そう言われて頭の中で葛藤が始まったのだ。
「どちらにしろ花音はまだ無理よ。そんなに焦らないこと!」
「……くやしいです……目の前であおってくるです…」
―――たゆん
茜の意識とは関係なく揺れる豊満な果実。
花音は葛藤しつつも、その光景をジッと見て心に刻むのだった。
「…いつかなってやるです……ぼんきゅぼん…」
「そこまで"きゅ"ではありませんがぁ……あげられるなら分けてあげたいですよぉ……」
「自慢です?ボンレスハムにしてやるです!!」
―――むぎゅぅぅッ
花音は悔しさを胸に、正面から茜に抱きついた。
本人は両手を使い、ボンレスハムについている縄のつもりで締め上げる。
だが、お腹の肉を締めあげるやいなや、花音の両手から力が抜け落ち、幸せそうに顔を埋めてしまうのであった。
「とってもやわらかいです~」
「花音ちゃん……とっても大胆ですぅ…」
「…もうやめなさいって…」
瞳は満足そうな表情の花音を引き剥がし、水着に着替えるよう指示をした。
その指示に花音は従い、各々は水着に着替えていく。そして―――
「―――さてと…二人とも着替え終わった?ちょっとこっちに来てもらえる?」
「なんでしょう?」
「瞳お姉ちゃん?どうしたです?」
瞳は砂浜に向かおうと準備をしていた茜と花音を呼び寄せる。
「二人とも…”ドッキリ”って知ってる?」
「あ、はいぃ。知ってますよぉ」
「テレビで見たことあるです」
瞳は茜と花音に”スイカ割りドッキリ”を仕掛ける事を提案する。
そして仁の行動を予想し、怪しまれず、そして気づかれずに砂の中へ埋める算段を伝えた。
「お…面白そうです!!仁の表情が見ものです!!」
「仁さんには申し訳ありませんが……ちょっと興味がありますねぇ」
「なら決まりね!」
瞳は右手を前にだす。
そしてその上に、茜と花音も手を置いていった。
「さぁ二人とも、プラン通りに行くわよ!…えい、えい――」
「「「おぉー!」」」
そして、瞳は計画通り、仁を砂の中に埋め立てたのであった。
◇◇
瞳は仁がいやらしい目で見てくることを予想し、それを理由に強制埋め立てを実行した。
そして埋め立て処分された仁の目を布で隠し、なんちゃってスイカ割りを開始する。
「さぁ、スイカ割りを始めるわよ」
「――ッ!!」
(ふふっ…いい感じですねぇ…仁さん驚いてますよぉ?)
(うん。ここまでは予定通りね!)
瞳と茜は仁に聞こえないよう、小さな声で会話を行う。
入念なコミュニケーションでドッキリの連携を図っていく。
「ここにスイカがあるです~」
仁の近くまで歩いて行った花音。
スイカを近くに置いたかのように振舞い、仁を困惑させていく。
(うん!良い演技よ花音!)
――ぐっ
花音はドヤ顔で親指を立て、瞳に合図を送る。
――ぐっ
それを見た瞳は花音に合図を返し、茜の方に向き直るとコクンと頷いた。
「私と花音ちゃんが誘導するので瞳ちゃんがスイカを叩き割ってくださいぃ」
「任せて。全力で叩き割るわ」
(うんここまでは完璧。筋書き通りね!)
(はい、あとはゆっくり足音を立てて近づくだけですぅ)
「おい、お嬢!俺はここだッ!!分かってんだろうな?やめろよッ!絶対こっちに来んじゃねぇぞ!!」
「スイカが呼んでるです」
「―――ッ!!!」
(あっ…仁さんの顔が引きつりましたぁ。花音ちゃんの言葉で”自分がスイカにされている”って勘違いしたかもしれません…)
(そうね。流石に自分がスイカ扱いされてたら…怖いかも………)
(ど、どうされますかぁ?中止ですか?続行ですかぁ?)
(仁なら大丈夫よね?……続行よ!)
「そっち?今行くわ」
瞳は一歩ずつ、ゆっくりと仁の方向へと進んでいった。
砂を踏みしめるように振舞っていき、足音を出して近づく気配を仁に与えていく。
―――ザリッ―――ザリッ
(ふふっ…顔が引きつってる……いい表情ね)
(仁さんどう思ってるんでしょうねぇ……この状況)
―――ザリッ―――ザリッ
(あ、俯いたわ。抵抗を諦めたのかな?)
(スイカとしての運命を受け入れたんですかねぇ…)
――ジャリッッ!
(さて、ここら辺に棒を打ち下ろしてっと……)
―――ボスンッ
「―――ふぉッ!!?」
(あ……仁の口が埴輪みたいになってる。相変わらず仁の顔芸は飽きないわね―――っと……目隠しをとってネタバラシしなくちゃ。――ふふっ…反応が楽しみ!)
―――バサッ
瞳が目隠しを取ると、仁は眩しそうに辺りをキョロキョロ見渡した。
そして辺りの様子を把握した後、瞳の方を見上げるのであった。
「どう?びっくりした?初どっきり大成功!!」
仁は大きく口を開け、驚いた表情のまま固まっていた。
まだドッキリに驚いているようで、話そうと試みているようだが口調がとってもぎこちない。
「仁が口をパクパクしてるです。お魚さんみたいです~」
花音は仁の頬を楽しそうにつついていく。
その表情はとても楽し気なものだった。
「仁!感想を聞かせて?」
「ふぁ?…か…感想?……ど、ドッキリが刺激的すぎて超ビビりました……ってなんで感想言わせんだよッ!割られるスイカの気分だったんだぞぉぉ!」
「…!?」
その時、仁が本気で驚いている様子を見せた為、瞳は少し戸惑った。
ネタバラシの後は驚きが笑いに変わって終わる……そう考えていた為だ。
(あれ?やっぱりドッキリさせすぎたかな?謝ったほうが………あ、でも…驚かせた後は笑顔でって凛花が言ってたし……うん!笑顔笑顔!)
「ちょっとやりすぎたかしら?でも安心して!アンタは大切な私の奴隷なんだから!」
その言葉を聞いた仁はため息をした後、若干口角を上げた。
何かを画策しているような不気味な笑顔ではあったが、その表情に瞳は少しだけホッとするのであった。
(仁の表情……ちょっと落ち着いた感じになったわね。それに茜と花音も楽しそうにしてるし…このドッキリは大成功かも!)
そして瞳は、茜と花音にハイタッチし、ミッションをコンプリートした。
(……でも人を騙すって若干罪悪感があるわね。ドッキリ自体は楽しかったけど、仁には少しだけ悪いことをしたかも。だから……ってわけじゃないけど!今日はほんの少しだけ……優しくしてあげよう……)
瞳は心の中でそう思ったのであった。
◇◇
瞳はドッキリの後、昼食の買出しを行いスイカを叩き割る。
そしてお皿に取り分けた後、仁の前まで持っていった。
―――ザッ―――ザッ
「…ねぇ仁。スイカよ。食べなさい」
「………へっ?」
仁はあまりの出来事に驚嘆し、暫く表情が固まってしまう。
そんな仁の様子に”食べたくないのか”と勘違いした瞳は少しだけ口を尖らせた。
「どうしたの?食べさせてあげるって言ってるのよ?いらないの?」
「お、おぅ…じゃあ…頂くぜ」
――シャリッ
仁は若干表情を緩めながら、スイカを頬張っていく。
そしてその一口が食べ終わると、再度瞳は口元にスイカを近づけた。
――シャリッ
美味しそうにスイカを食べる仁、そしてその様子を見届ける瞳。
スイカを頬張る音だけが聞こえる…短くも長い二人の時間。
その僅かな時間は、仁がスイカを食べ終わるまで続いていった。
やがて、仁が食べ終わった事を見届けた瞳は立ち上がった。
そして僅かに笑みを浮かべながら、背を向けその場を立ち去っていく。
これは瞳のちょっとした優しさからの行動だった。
故に、瞳にとっては”仁とのコミュニケーションの一環”程度の認識しかない。
だが仁にとって、瞳が自然に行ったその優しさが”ドッキリ”になっていたこと。
そしてその特別な行動が成功していたことに、瞳が気づくことはなかったのであった。
以上、お嬢の日常系サイドストーリーでした。
今回コメディ要素(ほぼ仁要因)は控え目になっております。
あと4件目のタイトル表記をちょっと変更して分割しました。
やっぱ区切りで話数を分けておこうと思いましてハイ。
次話は来週あたりに校正してアップしたいと思います。




