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5件目 このよろず屋の社員旅行が連日慌ただしかった件 1/4


 2日目の朝になった。


 旅館で朝食を摂り、各々がチェックアウトの準備を始めた。

 俺は自分の荷物を急いでまとめ、昨日使ったパラソルや不要な手荷物を旅館のサービスカウンターに預ける手続きを行う。

 後日よろず屋まで配送してもらえるサービスを利用し、不要な荷物をまとめて預けておくことで、本日宿泊予定の旅館へ持っていく手荷物を極力減らすことができる為だ。

 

 そして、荷物を預ける手続きを完了したら、ロビーでチェックアウトを行い、旅館の外でお嬢達を待つことにした。




「期待に応えたいのですが…そろそろ限界ですねぇ…」

「そう……やっぱり仁に任せましょうか…」


 暫く旅館の入り口付近で待っていると、お嬢と茜が旅館の中の方から歩いて出てきた。

 お嬢が小さい鞄を三つ、茜が大きい鞄を一つ持って歩いてくるのが見える。


「仁、待たせたわね。忘れ物はない?」

「多分ねぇよ。そっちも大丈夫か?」

「よく確認したわ。大丈夫よ」

「私も大丈夫だと思い…ますぅ」


 ん?茜のやつ…朝からどうしたんだ?

 やけに重そうに鞄を持っているじゃねぇか。


 肩に掛けた大きな鞄が重いのか、表情は険しい。

 だが、地面に置こうとするそぶりは全くなかった。


「ねぇ仁、茜の持っている鞄を持ってあげて。それと、大事に扱いなさい」

「ん?あぁ。分かった」


 お嬢が俺に鞄を持ってほしいと頼んできた。

 かなり大事な物が入れてあるようだ。


「仁さんに託しますぅ…どうやら私には荷が重いようですぅ…すみません…」


 茜が大きな鞄を慎重に渡してくる。

 何が入れてあるかは知らないが、やはり相当貴重なものか、割れ物が入っているような感じではあった。


―――ズシンッ


「うぉっ!?確かにこの鞄はずっしりしてるな。茜がキツそうな顔をしているわけだ」

「……。そうでしょうね…」

「ですねぇ…」


 二人ともどうしたんだ?もう疲れたのか?

 まぁ、確かにこの荷物は重いからな。俺が持って行ってあげるのが最善だろう。

 

「何が入っているかは知らないが、俺ならこれぐらい余裕だから任せておけ」

「そう……なら次の旅館までお願いするわ。本当に荷が重いけど……とにかく大切に扱いなさい」

「わかった。それだけの貴重品が入っているってことだな」

「そうね…」

「ところでお嬢。忘れ物はないかって言っていたが……花音を忘れてねぇか?」

「忘れてないわよ?花音なら―――」


「ここです」


「ん?どこに―――――」



―――っておいまさか………



 俺の肩にかけられた大きな鞄がモゾモゾと蠢いた。

 するとファスナーをジジジッと中から開け、ひょっこりッと顔を出す幼女がいた。

 大きな鞄にすっぽりと全身を納め、頭だけ外に出している。

 アニメとかだと”ジャジャーン”という効果音付きで表現されるような出で立ちだ。

 

 鞄をアトラクションかなにかと勘違いしてねぇかコイツ…。

 つか朝から余計な荷物増やしてんじゃねぇよ。

 俺の体力を浪費させる気かよ。


 花音の行動は時に俺の理解の範疇を超える。

 なので俺は、何故この様な事をしているのか問いただす為、花音に確認することにした。


「おい花音…何でそこにいやがる…」

「鞄に潜り込んだからです~」

「違う。何故鞄に入ったかを聞いている。言わなきゃお前の大好きな砂浜に即埋めだ!」

「仁は朝から不機嫌です?」

「そう見えるか?何故だと思う?」

「多分カルシウム不足です!確か鞄の中に冷えた牛乳が入れてあったです。これを飲むです!」


―――にゅ~う~


 花音の首元辺りから牛乳瓶がにゅっと出てきた。

 旅館でよく売っているやつだ。今日の朝食にも並んでいた。


「…なんで牛乳出してんだよ?」

「仁に飲んでもらう為です!」

「…なんで俺に牛乳飲ませようとしてんだよ?」

「仁のカルシウム量が心配だからです!」


 おい…なんでそうなるんだよ。

 顔でカルシウム量を判断してんじゃねぇよ。

 つか俺のカルシウム量を心配してんじゃねぇよ。

 俺のカルシウムを一番消費させてんのはテメェだろうが。


「どうしたのです?カルシウムを摂るです」


 この幼女…消費させてる分は牛乳で補給しろってか!?

 しかもその牛乳…テメェが朝食で飲み残したやつだろうがッ!!

 どさくさに紛れて処理させようとしてんじゃねぇよッ!!!


「花音。それは貴方が飲む牛乳よ?」

「一口飲んだからもういらないです」

「貴方に必要な栄養素なのよ?牛乳が悪くなる前に頑張って飲みなさい」

「もうお腹一杯なの!もう飲めないのッ!」


 花音が駄々をこね始めた。相当牛乳が飲みたくないらしい。


「花音ちゃん…牛乳は苦手なんですねぇ…」

「そうなのよ…ほんの少しは飲んでくれるんだけど……」


 お嬢は朝食の時、花音に牛乳を飲ませようとしていた。

 花音はほとんど飲まずに朝食を終えたが、お嬢が残された牛乳を回収していたのを見ている。


 朝食後も何とか飲ませようとしていたのだろう。

 だがそれでも全く飲まなかった為、牛乳を鞄に入れて”喉が乾くまで一緒にいようね?”って感じか。

 当の本人からは全く飲む気が感じられないが。


 この様子では牛乳がヨーグルトになっても無理だろう。

 幼女の為にはならないが…仕方ねぇ…。



「……要らんなら寄越せ!」



――パシッ

――ポシュッ

――ンゴキュッゴキュッゴキュッ――

――ップハァァッ!!



「あ、仁!……もう…」

「仁は凄いです!いい飲みっぷりです!あっぱれなのです!落ち着いたです?」

「あぁ、腹の具合がな。…それで……何故鞄の中にいやがる?説明はどうした?」

「えっと…昨日の夜に、ばらえてぃー番組でやってたので真似したくなったのです。それで、瞳お姉ちゃんにたくさんお願いしたのです。そしたら、茜が快く手伝ってくれることになったのです~」


 昨日何があったかは知らねぇが、幼女の駄々っ子攻撃に根負けしたのかお嬢?

 それに茜…お前はいつも幼女に甘過ぎだ。


「"荷が重い"って意味がやっと分かった…こういうことかよ」

「はいぃ…物理的にも私には重かったですがぁ…」

「重いです?それは命の重さです!」

「なら俺の価値はテメェの倍以上だ!もっと敬え!」

「重さの質が違うです。そんなことよりも仁!さっさと進むです!」


 質ってなんだよッ!!野郎に価値は無いって言いたいのかよッ!!つか進む訳ねぇだろ!!


 ……っておい……やめろ……こっち向くんじゃねぇ……キラキラした目で見つめるんじゃねぇ……俺の情に訴えかけるな……色々許しちまうだろ……



―――っていかん!俺はそんな目には騙されねぇぞ!

 俺はテメェの好奇心のせいで他の観光客から好奇の目で見られるんだッ!

 それを分かってやってやがるのかッこの幼女はッ!!


「おいお嬢!なんで俺が幼女の鞄詰めを持ち歩かなきゃならん!この荷物は捨てていいか?」

「別にそのまま持っていけばいいじゃない。大したことではないでしょ?」


 いや、大したことだよ。

 これじゃ幼女を鞄に詰めて誘拐してるお兄さんじゃねぇか。


「花音ちゃ~ん、こっち見てくださいぃ!……あっ!いい笑顔ですねぇ!可愛いですぅぅ!!事案発生ですぅぅぅ!!!」


――カシャッ――カシャッ


 やめろッこのパパラッチ!!勝手に事案化させてんじゃねぇ!思い出にも残してんじゃねぇ!!


「仁……ダメ…です?」


 クソが…そんな目で何度もこっちをみるんじゃねぇよ…。


「ったく…好奇心があり過ぎるのも困ったものだな………次の旅館の入り口までだぞ!分かったか!」

「やったです~。仁は何だかんだ言っても優しいです~」


 チッ…こんなことで喜ぶのかよこの幼女は…。

 考えていることがさっぱり分からんな…。

 

 まぁ…仕方ねぇか…。幼女の思い出の一つぐらい作ってやれねぇようじゃ漢が廃るからな。

 ほんのちょっとだけ……


 …って、結局俺も甘過ぎか…。

 お嬢達のこと…何も言えねぇわ…。


 そして俺は、2日目に泊まる旅館のロビーまで荷物と花音を運んだ。



◇◇



 本日の夜に宿泊する予定の旅館まで到着した。

 この高級リゾートは旅館が密集しているので、前の旅館からそれほど遠くない距離に今日の旅館がある。

 約10分程歩いたら到着してしまう距離なのだ。

 

 とりあえず俺は花音を鞄から引きずり出し、地面に捨てた。

 そして、持ち運ばない荷物をまとめて旅館の方に預かってもらい、各々の荷物の保管が完了したら、本日の観光スポット巡りのスケジュールを茜に確認する。


「さて、必要な荷物は持ったな。んで……茜。今日のプランはどうなっているんだ?」

「あ、ちょっと待ってくださいぃ……えっとぉ……時間が決まっているプランは、メロン狩りだけですねぇ。午前中は近くの鍾乳洞や美術館、花園あたりを回りましょう。午後はメロン農園でメロン狩りを行い昼食、その後、山の展望台までのハイキングですかねぇ」


 茜が鞄からスケジュール表を出して読み上げて行った。前日にお嬢と話をしながら予定をまとめている姿を見たが、随分と楽しそうに作っていた。

 そして俺は、茜のスケジュール表をチラッ覗いてみたところ、真面目な茜らしいしっかりとしたプランが記載されていた。

 しかも所々でお嬢の要望がメモされており、デザインも内容もよくまとまっている。


「お、スゲェな茜…。スケジュール表を作成したのかよ。内容が見やすいし、可愛らしさもMAXじゃねぇか」

「あっ……は、恥ずかしいですぅ…見ないでくださいぃ…」


 茜は笑いながらもスケジュールが記載された表を俺から遠ざけて隠す。

 ちょっと照れているようだ。カワイイ奴め。

 

「なに恥ずかしがってんだよ。減るもんじゃねぇだろ?ほらほらぁッもっと見せてみろよぉ」

「じ、仁さ~ん!や、やめてくださいよぉぉ」


 地面にしゃがみ、胸にスケジュール表を抱きしめながら隠す茜。

 俺を見上げる顔は笑っているので本気で嫌がってはいないようだ。


―――あ、やべぇ!なんか楽しい!!

 なんだよこの小動物をいじめている感!これがあの”いやよいやよも好きの内”ってやつか?

 俺…もうすぐ何かに目覚めてしまうかもしれない!?


「ほれほれ?もっと隠さないと見えちゃうぞぉ?見えちゃうぞぉ!?」

「いやぁぁ……」



「そこの奴隷!セクハラ禁止!腕立て50回!用意ッ始め!」


 ――ッ!!


 ぐぅぅぅぞぉぉぉッ!!

 クソがッ!クソがッ!クソがッ!クソがッ!クソがッ!クソがッ―――――――――


「あっ仁さん……腕立てを始めましたねぇ…」

「私が命令したからね。腕立てを50回するまでは安心よ」

「でも……もう30回を超えてきましたぁ…」

「…流石体力馬鹿ね。50回じゃ少なかったかしら?」


――――クソがックソがッ!!!これで50だ!!


「はぁ…はぁ……いきなり何やらせとんじゃぁ!!」


「セクハラは社会問題よ。女の敵ね」

「パワハラは社会常識かよッ!!なら奴隷の敵じゃぁぁ!!」


「そこの奴隷!暴言禁止!スクワット50回!用意ッ始め!」


 ――ッ!!!!


 ぢぃぎぃしょぉぉぉッ!!

 クソがッ!クソがッ!クソがッ!クソがッ!クソがッ!クソがッ―――――――――


「最近の奴隷は反抗的ね」

「仁が変な屈伸してるです。わたしも一緒にやるです。い~ち、に~ぃ…」

「花音ちゃん…可愛いですぅ」

「あまり無理しちゃダメよ?」


――――クソがッ!50だクソがぁぁぁぁッ!!!


「はぁ……はぁ……」

「あら?……どうやら終わったようね」


「はぁ…はぁ…いきなり何やら――」

「何?あんた腹筋もやりたいわけ?そう…なら…」


「…ッ…わ、分かった……俺が悪かった…」

「素直でよろしい!悪い事はしちゃダメよ?」


「このパツ金がぁぁ……」

「…そこの…」

「嘘です!致しません!このッとぉーりッ!」


 俺は90度で頭を下げた。


「……まぁいいわ。さて茜、いつまでしゃがみこんでいるの?立ちなさい」


 お嬢はしゃがみこんだままの茜に手を伸ばし、掴むように促す。

 そして、茜がその手を掴むとお嬢は茜を引っ張りあげ、立たせてあげた。


「あ、ありがとうございますぅ」

「いいのよ。それに茜、そのスケジュール表で恥ずかしがる必要なんてない……堂々と見せればいいわ!しっかりと予定を組み立てられることは凄いことだし、それに見やすさも見栄えも素晴らしいわよ?」


「瞳ちゃん…ありがとうございますぅ」

「どこかの奴隷に教えてあげたいくらい!」


「し、失礼な……。俺はまだ本気を出していないだけだ」

「ふぅん……なら今度から本気で業務命令しようかしら?最近ちょっと奴隷に甘くなっているかもしれないから……初めの頃……原点回帰しちゃうかも……」


――チラッ


 ちょっ…お嬢…そんなにジト目で見ないでくれよ…。

 3か月くらい前のあの氷河期のような記憶がちょっと蘇ってくるじゃねぇか…。


「喜びなさい…。悲鳴が嬌声に変わるまですり潰してあげる」

「無能な奴隷で申し訳ございませんッ!」


 俺は謝罪した。

 今のお嬢がどうかは知らないが、原点回帰したお嬢ならやりかねん!


「ならこれからは本気で業務に従事しなさい。予定もしっかり立てること!」

「はい!ガンバリマス!!」


 お嬢は俺の誠心誠意を込めた誓いに納得したのか、俺に対して行われていたジト目攻撃をやめた。


 …お、許されたか?……ふぅ…助かったぜぇ。

 その目で喜ぶのはドMだけだぜ……俺はそんな趣味ねぇからよぉ…。



 それにしても……予定をたてろ…ねぇ…。

 細々としたことはやる気しねぇわ……やっぱめんどくせぇ。

 

 でも…そう考えると…俺は一体何ができているだろうか……う~ん……一体何が?

 あっ箇条書きができる!……それだけ!!


 でも俺のギフトで一気にできるようにしてもらえば……ってよく考えたらそれもダメだな。

 適性うんぬんの話じゃねぇ……俺のやる気の問題だわ。



「瞳ちゃん。とりあえず一番近いのは鍾乳洞ですねぇ。ここから順に観光地スポットを軽く見ていきましょう」

「そうね。メロン農園の予約時間まで時間はあるし、ゆっくりと観光できそうね」

「名所をまわるです~」

「じゃあ、早速行くわよ!」



 そして、お嬢の号令とともに観光スポット巡りが始まった。



◇◇



 俺達は茜のスケジュールに従い、各観光スポットを巡っていった。

 鍾乳洞、美術館とまわり、今は大きな花園を歩いている。


 鍾乳洞は中が幻想的にライトアップされているところが見どころで、美術館はご当地の文化や有名絵画、建築物での現代アートまで様々な芸術を感じられる名所であった。

 どちらも楽しく観光できるスポットだったが、この花園はそれを上回るほどの観光名所だ。


 ひまわり、コスモス、ゆりといった様々な花が咲き誇っている絶景庭園!

 しかも花園は広い公園のようにもなっており、幼い子でも楽しめるアトラクションが完備されている。

 さらに、海側にある小さな小屋では、大海原を眺めながらご当地スイーツを食べることができるそうだ。

 そこが結構名所らしい。


 俺達は色鮮やかな花が咲き誇る風景の中、海側の小屋へと続く道を歩いて行く。


「あ、カモメさんがとんでるです」


 暫く歩くと海が見えてきた。カモメが小屋の近くを飛んでいる。

 そして、海抜20mはあるのではなかろうか……この高さなら確かに大海原を一望できる。

 崖の近くまでは行けないようにしっかりとした柵が設置してあるが、小屋の休憩所からでも、高級リゾート全体を見渡せる。


「すげぇな。…お、花音。カモメのエサが売ってるぞ。ちょっとあげてみるか?」

「あげるです」


 俺は小屋の近くに行き、カモメ用の餌を購入する。

 そして、花音に手渡した。


「これ、おいしいです?」

「た、食べるなよ?カモメ用だ」


 食べ物のことになると食い意地張りすぎだな。

 好奇心が旺盛なだけかも知れないが。


「カモメにエサをあげてくるです」

「あぁ、行ってこい」


 幼女はカモメの群れに突っ込んでいった。


「花音ちゃんがカモメさんと戯れていますぅ……これはいい写真が……使命感!!」


 茜は花音とカモメが戯れている姿を写真で撮り続けている。

 確かに写真コンクールに応募でもすれば結構いい線行きそうな光景だ。


 撮影者は茜として……もし俺だったらどんなタイトルをつけるだろうか……。


 カモメに遊ばれている幼女。

 カモメに貢いでいる幼女。

 カモメにたかられている幼女。


 うん、なんでもいけるな。


 そう俺が考えている間に、茜の手により"カモメの大群に襲われている幼女"の写真が連写されていく。

 そしてその間にも、カモメの数はどんどん増え……幼女が襲われているといっても過言ではなくなってきた。


「あ゛あぁっぷぅぁ゛ぁぅ゛ぁ゛―――」


 幼女のうめき声が聞こえる。どうやらカモメの数に圧倒されているようだ。

 そして、カモメが徐々に飛び去っていった時、襲われていた幼女がトコトコと戻ってきた。

 カモメ達の洗礼を受けた為か、髪がボサボサである。


「……エサがすぐなくなったです…」

「そりゃなくなるだろ。カモメの数を考えろよ」


 花音は少し残念そうな顔をしていたが、でも楽しかったといった様子だ。

 そして、まだ物足りないのか、エサを持たずにカモメの大群へと再度突っ込んでいった。

 無論、カモメ達は幼女に興味を示さず飛び去っていく。

 エサを持たない幼女に用はないとでも言っているかのようである……よく訓練されたカモメじゃねぇか。


「せっかくだからご当地スイーツを少し食べながら休憩しましょ」

「あ、そうですねぇ」

「仁か茜で席を確保して。なるべく景色のいい席をお願い」

「了解だ」


 俺と茜が海を見渡せる外のベンチを確保し、お嬢が小屋のご当地スイーツを購入する。

 お嬢の持ってきたご当地スイーツは一口サイズの半分凍った洋菓子だ。

 味は巨峰、ブルーベリー、梨など、色々ある。

 カモメと追いかけっこをしていた花音の興味も、どうやらご当地スイーツの方へと切り替わったようだ。


「はぁ…いいですねぇ…。こう…ゆったりと観光するのは…楽しいですぅ」

「そうね。楽しめる場所が沢山あって退屈しないわ」

「鍾乳洞も美術館も楽しめましたしねぇ」

 

 お嬢と茜はさっきまで巡っていた観光スポットの話をしたり、”メロンをこれから食べに行くのにご当地スイーツをもう一つ食べても大丈夫かな?”っといった様子で談笑している。


 一方、俺の方は温かい日差しで日光浴だ。今日の日差しは心地よく、気持ちいいので眠たくなってくる。

 そして花音も眠たそうな様子だ

 

 元気な幼女は絶対横やりを入れてくるからな……助かったぜ…。


 そして暫くのんびりとした時間を過ごし、お昼頃の時間になった時、茜が思い出したように口を開いた。


「―――あ、瞳ちゃん。もうすぐお昼の時間ですよぉ。メロン狩りの予約時間が近いのでこれから行きましょう」

「――ッ!!今メロンって言ったです?やったです!!」


 メロンという単語に反応して花音が飛び起きる。

 食べ物…特に甘いものに対しては耳ざといな。


「じゃあ、これからメロン農園に向かうわよ。茜、案内して」

「はいぃ」


 そして俺達は、花園の休憩エリアからそれ程遠くない場所にあるメロン農園まで足を運んだ。

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