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4件目 このよろず屋の社員旅行が慌ただしかった件 3/3


 暫くの間、皆でよろず屋のメンバーを砂で作っていった。

 気になる出来栄えはというと、茜は達磨、お嬢は埴輪、俺はサボテン、花音は土偶だ。

 どれもあまり似てるとは思えない。俺が職人と化して作ったほうがまだマシなものが作れただろう。


「ねぇ、砂遊びはこれぐらいにしない?そろそろ海で泳いでみたいわ!」


 ひと通り砂の人形を作り終えた頃、お嬢がそろそろ本格的に泳ぎたくなった様子だ。

 海の方角を指さして早く行こうと急かしてくる。


「俺も泳ぎたいな……茜や花音はどうだ?」

「遊泳ですかぁ?先に行ってて待っててください~」


 お嬢と海へ泳ぎに行く直前、茜はパラソルの下まで戻ると、鞄を漁って何かを取り出した。

 輪っかタイプの浮き輪がチラっと見え、少しずつ膨らませているのが見える。


「お~い!茜、いきなり浮き輪か?ちょっと競泳でもしようぜ」

「あ、私はあまり泳げないんですよぉ。ですのでゆったりと浮輪で浮かんでますぅ」


 なんだよ、せっかくの海なのに泳げないのか。

 浮きやすそうなエッロい体してるくせに―――ってッ!幼女に悟られる!いかんいかん…。


「あ、なら私が教えてあげるわ。一緒に泳がない?」

「えっ?瞳ちゃん…いいんですか?」

「あ、当たり前でしょッ!と、友達なんだから!」

「ありがとうございますぅ」


 お嬢が茜に泳ぎ方を教えるようだ。ちょっと浮かれているお嬢の姿が見える。

 お嬢と茜がペアになって遊泳か……いいじゃねぇか花があってよ……ってまて……そうなると俺は……


「じぃぃぃ――――――ん」

「…………ッ……チッ」


 ……こっちをジッと凝視してんじゃねぇよ……。必然的に幼女のお守りじゃねぇか。

 最近花音が俺に懐いているようにみえるのかお嬢が花音を任せっきりにしてきやがる…。


「おい、花音。そういえばお前は泳げるのか?」

「微妙に泳げるです。上手くないので教えてほしいです」


 微妙ってどんだけだよ……それに俺に教えろって…甘えすぎだが……まぁいい。


「分かった。俺が教えてやる」

「ありがとです~。仁は優しいです~」


 そしてお嬢は茜と、俺は花音と一緒に泳ぎの練習を行った。



◇◇



「―――ッぁぷ!ぷぁッ!ペッ……し、しょっぱいですッ!」


 体を浮かせて息継ぎの練習をひたすら行っていると、花音が少し疲れてきたようだ。

 息継ぎが乱れ、少し海水を飲んでしまったらしい。


「大丈夫か?大分泳いで疲れてきただろ?そろそろ休むぞ」

「はいです…疲れてきたです……浮輪でぷかぷかしたいです~」

「なら…ほらよ、浮輪だ。波も少し強くなってきたし…そろそろお嬢のところへ―――」

「仁!そこにいたの?そろそろパラソルの場所まで戻りましょ」

「お、お嬢!?それに茜も!?こっちまで来たのかよ」

「瞳お姉ちゃん!わたし上手に泳げるようになったです」


 いや、そこそこ安定して進めるようになっただけだぞ!自惚れるでないわ!


「え!?凄いじゃない花音!でも茜もそこそこ泳げるようになったわよ?どっちが泳ぎが上手くなったのかしら?」

「なら俺が直々に鍛えた期待の幼女である花音と、そっちのぽっちゃり系アルバイターを泳ぎで勝負させてみようぜ」

「ぽッ…ぽっちゃり系!?」

「それは私とどっちが上手く教えられたかの勝負って意味?本人達がいいならいいけど………どうしたの花音?」

「……あ、あ…はい…です」


 ん?…花音の様子がおかしい……具合でも悪いのか?一体どうした?

 

 俺は花音の視線の方向を眺めてみる。

 遊泳区画から少し外れた場所にテトラポットなどの人工物があるのは見えた。


「おい、どうした?何か見つけたのか?」

「砂浜の一番端っこ……海の流れが変わっているです」

「ん?もしかして………離岸流!?よく気づいたな。あまり近づくと引き寄せられて沖の方へ流されるぞ。すぐ離れよう」

「分かったです」

「お嬢も茜も聞いたか?」

「聞いたわ。戻るわよ」

「あ、はいぃ」


 花音は俺の説明を理解したようで、こくんと頷くとバタ足で反対の砂浜にあるパラソルの方向へと泳ぎだした。

 俺も浮輪で浮かぶ花音を引っ張りながら離岸流とは反対方向にお嬢と一緒に歩き出す。 


「あ、仁さん!!あれッ!」

「茜?一体どうし…ッ!!ッ!?」


 俺は真後ろに振り返り、茜の指さす方向―――離岸流付近に視線を向ける。

 すると、子供が一人浮輪をつけて泳いでいる姿が目に映った。


 小さい男の子?――ッ!!おい離岸流付近にいるじゃねぇか!呑気に浮輪で泳いでやがる!!

 親は?近くにいねぇのか?沖の方へ少しずつ流されているぞ!気づいてねぇのかよあのガキッ!!


「おいそこのガキ!聞こえるかッ!?こっちの砂浜に向かって斜めに泳げ!!オイッ!!」


 だが、男の子は浮輪で少しずつ遠くへ泳いでいく。

 気付いたそぶりは全くない。


 あのガキ…泳ぎに夢中になっているのか全く気づいてねぇ!

 このままでは危険かもしれない……この場合俺はどうすれば……えっと…確か…。

 

「仁!考えてたら間に合わないッ!!」


―――お嬢!?


「私が監視員に連絡!アンタはあの子を連れてきなさい!!この距離なら間に合うわ!!」

「あ、…あぁ!!」


 そうだ…お嬢がそう判断したなら間違いねぇ……ここは最悪の事態を想定して動くべき時だ!!

 泳いで間に合うか?少し困難か?違うだろ……お嬢がイケるって言ったんだ!!

 そして……この俺なら……絶対やれるッ!!!


「おいお嬢!!俺の―――」

「アンタは今ライフセーバーよ!必ず助けなさい!!」


 お嬢は状況を把握している。

 説明する手間は必要ない。


「当たり前だ!!」


――ザパンッ


 俺は全力のクロールで徐々に流されていく男の子の下へと泳ぐ。


 さっきより体が動く!!これならいける!!


―――バシャッバシャッ


 俺は迅速に男の子との距離を詰めていく。


 男の子もだんだんと流されていくことに気付いたようで、砂浜に向かって泳ぎ始めた―――だが、それでも次第に沖へと流されて行っているのがチラっと見えた。

 浜辺に対して真っ直ぐ泳いでも沖に流れる力の方が遥かに強い。当たり前だ。


 だが、少しでも沖に流れるのが遅くなるってことは俺が追いつくのが早くなるってことだ!

 

―――バシャッバシャッ


「おい坊主!無事か!!」

「―――ッぅぁ!!」

「あ、おい!暴れるな!体力を消耗する!落ち着け!」


 俺はやっとのことで男の子の近くまで到着した。

 だが、男の子は知らない男が襲ってきたと思ったのか…或いはだんだん流されていくことでパニックになっていたのかは不明だが突然暴れだす。


「お、おい!!うわっぷッ……ちょ、ちょっとは落ち着け!!た、助けっぷぅッ!助けに来たッ!!」 

「――ッ!?――あぅぅ」


 なぜか沖の方に流されていってしまうあり得ない状況で不安を感じていたのだろう。

 俺の口から発した”助けに来た”という言葉に反応し、男の子の様子が次第に落ち着いた。


 伝わったか……よかった…。

 そりゃ目つきの悪い野郎がこの状況で突然近づいてきたら驚くガキもいるよな…。悪かったぜ。


「落ち着いたか?ならすぐにこっちの方向へ泳ぐぞ。俺が紐で引っ張るから…坊主!お前もこっちに泳げ!!」

「う、うん…」


 よし!とりあえずこの流れからの脱出が先決だ!

 流れが大分速い!いくら俺でも沖の方へ軽く流されるくらいの力がある。

 現状でも結構流され続けているしな。


 そして俺は男の子と一緒に、慌てず、落ち着いて、浜辺と平行に、ひたすら泳いでいく。

 すると次第に体に受ける流れの力が弱くなっていき、沖方向へ流されていくことがなくなった。

 

 そろそろ離岸流から脱出したか……。

 体に受ける流れの力があまり感じられなくなったしな…。


「おい坊主、ここまで泳げばもう大丈夫だ。あとは浜辺に戻るだけだが……結構遠くにみえるな…って大丈夫か?」


 離岸流から脱出して一息つける状況になったが、男の子はまだ不安そうな表情を浮かべている。

 なんの知識もなく訳の分からない力に引っ張られてしまったのだ。まだ混乱しているのだろう。


「…ボク…こ、こわかった……泳いでいたら、どんどん砂浜がはなれていって…泳いでも反対方向へいって……それで…」

「坊主……安心しろ。今は俺がいる!それに俺の仲間たちが助けを求めてくれている。だからゆっくり砂浜を目指して泳ぐぞ。まだ泳げるか?」

「う、うん」

「よし、いい返事だ!」


 そして俺は男の子の浮輪を引っ張りながら砂浜へと泳ぎ続ける。

 その間、先ほどまでに起きた状況を確認する為、男の子に質問をぶつけてみることにした。


「それにしても坊主、ここは遊泳区画じゃねぇぞ。どうしてこっちまで泳いだんだ?」

「え、えっと……なんか変なカタチした岩みたいなごつごつがあって、その上にのってみたかったから…」


 岩みたいな?人工物か?……テトラポットのことか?


「そうか…。でも今回のことで海は危険ってことは分かっただろ?注意されていることは守った方がいい」

「う、うん…ごめんなさい」

「謝ることねぇよ。……それよりも良かったじゃねぇか。こういう経験ができてよ」

「えっ……なんで…ですか?」


 男の子は疑問に思うような口ぶりで聞き返す。


 そりゃそうだ。今回の出来事は不運でしかない。それを俺は”良かった”って言ったんだ。

 普通この場では使わねぇよ。理解できないのも頷ける。


 だから、俺は伝えたい言葉の本当の意味を改めて口にすることにした。


「この経験を次に活かせるって意味で言ったんだ。今日のこの失敗を失敗のまま終わらせずに明日に活かすんだよ。今日の出来事で何がいけなかったのか、今後はこうならない為にどう注意すればいいのかを考えて自分の成長に繋げればいい。今回のことだけじゃねぇ……どんなことでも同じだ。それが大切なことだと俺は考えている。理解できるか?」


「う、うん。なんとなく…」


 難しかったか?そりゃそうだな。

 俺も自分で言ってはみたものの何が正解なのか未だに分かってねぇ。

 人それぞれの考え方の問題があるしな。

 ……でも……でも俺の……俺のこの気持ちだけは伝わっていると信じたい。


「そうか……なら――――っと…あれは……どうやら本職の方が来てくれたか!」

「あ、ほんとだっ!!」


 そして俺と男の子は、浜辺にある程度近づいたところで、救助されることとなった。



◇◇



 俺と男の子は無事救助され、浜辺に戻ることができた。

 スタッフが詰めている建屋まで案内され、男の子を両親の下へと連れて行くまで付き合ってやった。

 そして、男の子は無事両親の下へと戻り、その両親は俺と本職のライフセーバーの方々に頭を下げてお礼を言ってまわっている。

 

「では、俺はそろそろ行くことにします」

「あぁ、君のおかげで助かったよ!素晴らしい行動だったと思っている。本当にありがとう!!」

「いえ、大したことはできませんでしたよ。……それでは!」


 俺は一礼して建屋を後にしようとする。すると―――

 

「お兄ちゃん!」

「ん?」


 さっき助けた男の子がこっちをみている。

 何かを言いたそうな様子であった。


「あ、あの……助けてくれて、ほんとうにありがとうございました!」


 律儀に頭を下げてお礼をしてきた。


 ただのやんちゃ坊主かと思っていたが、なかなか真面目な面構えじゃねぇか。


「それじゃあな坊主。今度からは気をつけろよ」

「うん。ありがとうお兄ちゃん!!」

「あぁ!」


 俺は男の子の肩を軽く叩いてお別れをする。


 ありがとうお兄ちゃん…か…。…悪くない。

 ただ、そのお礼は俺だけのものってわけじゃないんだけどな…。


 花音が離岸流を見つけて、茜がさっきの坊主を見つけて、そしてお嬢が決断しなければ俺は―――


――ガチャッ


「あっ…仁!!大丈夫だった!?」

「えっ?お嬢!?いたのかよ!?」


 俺が建屋の扉を開けて外に出るや否や、お嬢が声をかけてきた。

 どうやらお嬢たちは建屋の近くで待ってくれていたようだ。


 しかし、そのお嬢の雰囲気はいつものツンツンしたものではなくなっていた。

 表情から察すると、心配しているような印象である。


「ど、どうしたんだよお嬢…心配そうな顔して…」

「あ、当たり前じゃない!だって…だってッ…私の大切な奴隷がどんどん流されていったのよ!もしかしたら私のせいで死んじゃう可能性もあったかもしれないじゃない!」

「なんだよ珍しく大げさじゃねぇか?そんなに奴隷が大切かよ」

「当たり前じゃない!!」


 は……はは……今は冗談が通じるタイミングじゃなかったか…。


「でもよ、お嬢のおかげでなんとかなった。だってよぉ、俺はさっきまでライフセーバーだったんだぜ?」

「そんなの知ってるわよぉ…」


 お嬢はガチで心配していたようだ。これは俺でも表情で分かる。


 さて…っと……これは仕方がねぇな……俺はこういう雰囲気苦手なんだよ。

 ちょっとこのしんみりした空気を変えておいてやるとするか…。


「あ~!今日はいいことしちまったなぁ~!なぁ、もう良い時間帯になってきたしさ、早めに温泉でも入ろうぜ?もう体が冷えちまう。……あ、なんなら、俺は混浴でもいいんだぜ?今日に限っては俺を労ってもバチはあたらねぇだろ?」

「バカッ!変態奴隷!冗談言ってないでさっさと行くわよ!」

「仁さんは変態さんですねぇ…でもぉ…ぁ、ぃぇッ!」

「わたしは全然大丈夫です。しょうがないから労ってやるです」

「花音は私達と一緒に入るのよ。混浴なんてしないわ!」


 お嬢はパラソルの方へと歩いていき、”片付けと着替えを早くしなさい”と俺に命令してくる。

 そして俺はささっと荷物を片付けてから着替え、旅館にある天然温泉に入る為、足を運んだ。


 あ~、疲れた…。混浴……あわよくばと思ったが残念だな…。

 でもまぁ、いつもの感じに戻ったし良しとしよう。

 もう慣れちまっただけかもしれねぇが……俺はこっちの方が安心するぜ。


 そして、各々が高級旅館の温泉でゆったりと疲れを癒した。



◇◇



 俺は温泉でゆったりした後、玄関口付近でお嬢と茜が女湯から出てくるのを待った。

 幼女は既に出てきており、ロビーのスタッフに何かを話している。


「あ、瞳ちゃん!浴衣が似合いますねぇ」

「そ、そう…かしら?」


 お嬢達が出てきたようだ。

 とりあえず俺はお嬢の方へと歩き出す。


「あ、瞳お姉ちゃんこっちです!ここの旅館は花火ができるです!みんなでやるです~!!」


 ん?なんか幼女がはしゃいでいるな。

 手には……花火の袋を持っているじゃねぇか。


 さっき花音がスタッフと話をしていたのと関係があるのだろう。この旅館がサービスで花火を提供しているらしいのだ。

 流石は高級リゾート。楽しめるサービスも充実しているようだな。


「あ、花音!待ちなさい!」


 お嬢と茜は花音の向かう方へと歩いて行った。

 なので俺も仕方なくその後をついていく。


 そして、旅館から少し歩くと観光客の何人かが花火をしている場所が見えてきた。


 花音はスタッフから浜辺の一角にある花火ができる場所を教えてもらっていたので、そこまで走っていくと、ささっと花火の準備をし始める。


「早速火をつけるです〜とっても楽しみなッの〜です〜」


 ウッキウキじゃねぇかこの幼女。

 どんだけやりたかったんだよ。

 


―――シュゥゥゥゥッ



 花音は浜辺の指定された場所で花火に火をつけた。

 旅館の周辺にほとんど照明がない為、花火をしている人以外の光はほとんどない。 

 そんな薄暗い中での花火は、とても楽しく、そして美しかった。

 特に、色鮮やかで多彩な火花が砂浜を照らす幻想的な光景は、俺の心に刻み込まれた。


「花火…きれいだな。辺りが暗いからか、よりきれいにみえる…」

「そうね。たまにはこういうのもいいじゃない」

「落ち着きますねぇ。私、こういう雰囲気は大好きですぅ」

「きれいです!?もっと花火をつけるです!」


 幼女が両手に花火を持って花火同士で引火させる。


「両手持ちです!仁を燃やすですー!」


 おいおいおい!俺がちょっと浸ってる時に物騒なこと言ってんじゃねぇよ!

 俺の浴衣が燃やされるといろいろ迷惑になるだろうがッ!!


「っておい!こっち来んなッ!走り回るなッ!!両手で振り回すなッッ!!!」

「仁!待つですー」


 俺は幼女に追いかけられた。

 そして、少しの間逃げていると、幼女の足が急に止まる。


「あっ!ここっ!仁が埋まってた場所です。もう一度埋めたいです~!」


 お、やっと止まったかこの幼女……つかどれだけ俺を埋めたいんだよ。

 だが、流石にもう埋められることはねぇだろ。


「皆さ~ん。デジタルカメラを取ってきましたぁ。一枚撮りましょ~う」

「そこに手ごろな照明があるわ。あの場所なら綺麗に撮れそうじゃない?」


 俺が花音に追いかけられている間に、茜が鞄からデジタルカメラを取ってきたらしい。

 お嬢が綺麗に写りそうであろう場所を見つけ、皆を誘導し始める。


 そして、お嬢がデジタルカメラを三脚にセットし、写真を撮る準備が完了した。


「さて…と。写真を撮るわよ。並びなさい」

「はいぃ」

「並ぶです~」


 お嬢がタイマーをセットしてこっちに戻ってくる。


「ちょっと!なんで仁が真ん中に突っ立ってるのよ!そこは私の定位置よ!早くどきなさい!」

「まじか!?分かったすぐど――うぉッ花音!?」

「一緒に写るです。もう離さないです~」

「もういいわ!そこに私が入り込むわよ!横にズレなさい」

「ちょっお嬢!?」

「あ、仁さん!?そんなにこっちに来たら…あッ」

「うぉ、ちょッ!茜!?大丈夫か!」

「ちょっと仁。なんでこっちに戻ってくるのよ!密着し過ぎよ!」

「お、悪りぃ!」

「あッ……仁さん……お、お尻を触らないでくださいぃ」

「すまねぇッ!!支えただけだ!!不可抗力だ!!」

「ちょッちょっと仁!押さないで!引っ付かないで!!」

「仁、もっとこっちに来るです~」


―――カシャッ


「……あ、撮っちゃいましたねぇ」

「ちょっと急かしすぎたわ…。落ち着きましょうか…」


 冷静になったお嬢と茜が写真の出来栄えを確認するため、デジタルカメラを操作しに向かう。


「全然並べていませんねぇ……」

「ぐだぐだじゃない…。もう一回撮るわよ」


 今度はタイマーをセットする前にお嬢がしっかりと仕切り始める。

 俺の立ち位置もポーズもお嬢指定だ。


「はい!ここに立って!並んで!動かない!」


―――カシャッ


「さて、どれどれ…ッ!うん!いいじゃない!良い一枚が撮れたわ!!」

「あ、ホントですねぇ」

「集合写真です!」

「さぁ、終わったからさっさと部屋に戻るわよ!仁!カメラとバケツを旅館まで運んで」

「はいはい。了解だ」


 お嬢達が使った花火や小さいバケツなどを旅館に運んで戻っていった。

 俺はお嬢の命令に従い、水の入った大きめのバケツと三脚、そしてデジタルカメラを片付ける必要がある。

 なので、まず俺はデジタルカメラを専用の袋にいれて片付けようとしたのだが―――


「―――あ、そういえば…さっきの写真の出来栄え…俺は確認していなかったな」 


 俺はふとさっきの写真の出来栄えが気になった。

 そこで、デジタルカメラの画像フォルダを指定して、中の画像データを確認する。


「お、あった。へぇ…上手く撮れてるじゃねぇか!なかなか良い集合写真だ!」


 お嬢が納得した集合写真だ。

 お嬢が真ん中に立ち、右横に茜、左前に花音、左斜め後ろに俺が立っている。


「お嬢はこの最後に撮った写真がいいって言ってたが………でも俺は……」


 俺は最初に撮影した時の画像に切り替える。

 茜を支えた拍子にお尻を触ってしまい、驚いた俺がお嬢にもたれかかっていた。

 そして花音が俺の袖を引っ張っていて、慌ただしさを感じさせるような写真だった。


「俺はこっちの方が……よろず屋らしくていいんだけどなぁ…」


 満天の星空が照らす美しい海を眺め、今日一日の思い出に浸り始める。

 静かで落ち着いた夜、さらさらとした白い砂浜の上で一人微笑んだ。


「仁~!何やってるの!早く行くわよ~!」 


 旅館の方からは皆の呼ぶ声が聞こえる。

 砂浜でずっと突っ立っている俺に痺れを切らしたようだ。


 さて……お嬢達が待っているな………俺も戻るとするか。


 そして、社員旅行の一日目は慌ただしく過ぎていくのであった。

社員旅行1日目終了になります。

一旦区切りです。


そして今回から分割表示を変更します。

元々前編後編の2話構成をベースにしていましたが、一部分が15000文字とかちょっと引くわ。


これからは書きたいだけ書いて分けたいように分ける方針!基本1部分5000文字程度~10000文字程度で区切る!とりあえずコレだ!


あと今回はキャライメージの参考資料としてラフデザインも追加することにしました。

1件目と2件目の話の間に差し込みますが、既にイメージされていた方は無視してください(ニッコリ)


次回 6月3日頃更新予定!(あくまで予定で…)


また更新した際は読んで頂ければ幸いです!それでは!


★今後のクオリティ向上の為、惜しいところがあれば是非お聞かせください_(._.)_★

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