表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

インスパイアされた作品

真夜中の邂逅

作者: オリンポス

リハビリで書いた小説ですが、今回は雅文体を取り入れてみました。(樋口一葉先生の十三夜のオマージュ作品です)


初挑戦なので、至らぬ点は御座いましょうが、よろしくお願いします。

 ぎぃこぎぃこと人力車を漕ぐ若い男を呼び止めて、「これこれ、お客さんもなにもないのなら、どうかわたしを乗せてはくれないかえ」と尋ねるに、その男、夜も深いせいなのか、あさっての方向を向いて頷きなさった。私はちと心配になりながらも、「では浅草の方までお願いします」と申するに、その男はもうすたすたと歩き始めてしまった。私はいきなり駕籠かごの中で揺らされたものだから少しばかりムッとして、けれどもこんなところで怒鳴っても女がすたる、やめましょやめましょと思って、なにも申すことはしなかった。ただなんとなく、前よりも太ったのではなかろうかなどと些末な考えばかりが脳裏をよぎって、それではいけない、なんとなく恥ずかしいわと腰掛けから身体を浮かせたりなどしていると、若い男から、「ぼくはもう疲れたからあとはお前さんだけで行きなさい」と突然にさじを投げられた。私はなんだか腹が立ってきて、「そんなに重苦しかったですか?」と嫌味の一つでも言ってやった。するとその男は慌てた素振りで違うんですと弁解を始める。「ぼくは気ままな性分だから、客もないのに時々こうやって彷徨したりするのです。そうして疲れたら勝手にやめてしまうわけだから自然とだれも乗らなくなりました。さりとて、気分が乗らない日は、家の中でひねもすぐうたら三昧をやっていますがね」わははと振り返ったその横顔、私は瞬間に声を発していました。「あなた、長吉さんじゃないかえ」「おや、どこかでお会いしましたか?」「私だよ私。長屋の常子よ」「ああ、常子さん、ご無沙汰しています」長吉さんはやっぱりあさっての方向に向かってお辞儀をして、「いつぶりでしょうかね」などとおっしゃる。「いつぶりなんてよそよそしいお返事があろうものか、私はあなたが僧になるってもんで泣く泣く吉原の遊女になった遊び人だというのに、ほんとうになにをしているのよ」私のような身分の低い女では、こうしてお話をすることは叶わなかったはずだ。「なあに、つまらない話です。ぼく、勘当されてしまったのですよ。文無しです。妻にも子にも見捨てられた放蕩ほうとう者ですよ。しまいには目もよく見えなくなってしまって、この有様で候う」ああ、私があなたとこうしてお話しすることをどんなにこいねがったことか。およそあなたにはわかりますまい。私は着物の袖でごしごしと目元をこすって、「もう夜も遅いでしょうから、家に来なさい。どうせ帰ってもだれもいないのでしょう」と申するに、長吉さんはたちまち笑顔になって、「本当かい、じゃあ一晩お邪魔させておくれよ」と言いなさった。ほんにまあ、人間万事塞翁が馬というもので、私達は二人で人力車を押して帰路を急いだ。その行き先を、冴え冴えとした月明かりだけが見守っていた。

改行してないのは、わざとです。


本当は句点すら打ちたくなくて、文末以外は読点で繋ぐつもりでした。

めっちゃ読みにくくてすいません!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 恐らく江戸時代かと思われる当時の口調を再現されていて、とても雰囲気が出ていました。 [一言] 元ネタは残念ながら読んだことはありませんが、興味が出てきました! こういった時代のロマンを感…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ