0008演劇毒舌「シンデレラと」ツッコミ王子」前編
そして来てしまった。
学園祭当日。
前日のリハーサルも衣装合わせさえも俺と豊穣には一切ない。
なんという無謀いや信頼なのか木下……。
まじでお前は俺を何だ思ってるんだ……。
直接聞いてもラインで聞いてもがんばれで終わらせるし。
大体なんで衣装合わせすらないんだ。
サイズが合わなかったらどうするつもりだ。
サプライズなのか。
俺のツッコミで全てが決まるわけだが……。
といくら考えても明確な答えが出ない。
そしてクラスメイトの吉田さん(眼鏡美人)にメイクをされているわけであって、ああもう考えても無駄だな。
豊穣対策に磨き上げた俺のツッコミ力をすべて出すだけだ。
そして、何故が周りが騒がしい人の顔をじろいろ見られている気が、メイクをしている吉田さんは当然としても他の女子はなんで騒いでんだ。
「浅井君髪型決めると凄いかっこいいね」
吉田さんが何故か顔を染めていう。
「そうかいつもと変わらん気がするが」
「全く豊穣さんも幸せ者ね。こんな隠れイケメンにいつも構ってもらえるから」
「まぁ腐れ縁だしな、もうなれたよ」
吉田さんは何かを言いたげな顔を一瞬浮かべたが、すぐに顔を引き締める。
将来はメイク関係の仕事に付きたいと思っていると先ほど語っていた、吉田さんだ。
そのメイク術が人目につく初仕事を終えて考えることがるのだろう。
「浅井君、豊穣さんのメイクと衣装合わせ終わったって」
「ああ、わかった」
それにしても衣装は何故か一度も袖を通してないのにぴったりだったが、一体何をしたらこうなるんだ? 木下さんのおかげと言っていたが、全く持って木下は図りしれない能力感じる。
「糞虫にしてはいつもより黒光りしてるわね!」
「それは、糞虫じゃなくてGだからな」
後ろからかけられた辛辣な声に脊髄反射的に返答する。
振り返ると言葉を失ってしまった。
「……何よ糞虫」
「いやなその……」
豊穣は白いドレス身にまとい。
その整った顔はドーランが塗られタダでさえ白い肌は舞台裏の薄明りに僅かに反射してキラキラと小さく光り、
普段毒しか吐きださない唇の真紅のルージュで艶めかしく唇を彩る。
安い言い方をすれば本当のお姫様がこの場にいればきっとこいつのような、姿の女性の事だろう。
素直に認めよう豊穣はとても綺麗だった。
「どうしたのよ糞虫」
「いや、普通に綺麗だなって」
「ば……馬鹿な事言わないでよ糞虫!」
『綺麗ってそうかな……えへへへ、それよりも浅井君凄いカッコいいよ……あー抱き付いてくんかくんかしたい』
「吉田さん、シンデレラのぼろい服装はどうするんだ?」
「上からポンチョ型の大きなボロ布に見立てた衣装を着せて魔法使いが来たら脱ぐって寸法よ」
「なるほど」
「豊穣も聞いたいたか?」
「サッカーチームを結成できるぐらいね!」
「違-よ! 魔法使いが来たらボロ布を脱ぐって話だ!」
「なにこれを脱げって言うの? ついに糞虫は強姦魔にレベルアップしたのね!」
『魔法使いそういことか、少し妄想しちゃった。だって演技とはいえ大好きな浅井君と結婚できるんだもん。
えへへへへ、やっぱりマイホームは子供が育てやすいように機能的にだね! 浅井君と私の子供可愛いだろうな』
何とか意思疎通は出来てはいるが妄想の世界に漬かっているらしい。
さすがにサッカーチームができるぐらいは作りすぎだ。
俺の理想では娘二人男一人計3人ぐらいだな――。
いやなんで俺が豊穣と結婚する方向に考えてんだ?
これは演技。
演技としては豊穣と結ばれるのは悪い気はしないが、リアルは心の声無しではあれだからな……。
「浅井……君」
「なんだ木下、その恰好って」
「そう……です……私……も……出ま……す」
木下の格好は黒ローブに黒の先の尖った幅広の帽子。
先のねじ曲がった茶色い杖。
魔法使いの格好をしていた。
「それはいんだが、セリフはどうするんだよ?」
そう木下は口下手だ。
表に限った事であるが、裏である心の声は簡単に他人には聞こえてくれないのだ。
俺には木下の心の声は駄々洩れだが。
「大丈夫……です……録音……した……演者……の……声……を……私の……声の……代わり……に……流し……ます」
「そうかならいんだが」
「期待……して……くださ……い……最後に……面白い……イベント……を……用意……しま……した」
イベント?
なにを言ってるんだ。
劇中にハプニングでも起こすかと聞くと木下は、うつむいて『期待とけ!』と飛ばしてくるだけ。
何か企んでいつようだ。
しかし、考えて対策を取る時間はない。
舞台である体育館講堂を舞台装置の赤いサイド幕越しから見ると屏風の姿があった。
薄暗いで表情は見えないが最前列の真ん中に陣取っている。
そしてあれはコーラとポップコーンか、その容器には見覚えがある、休憩時間ちらっとみた屋台の物に見える。
楽しむ気はばっちり。
楽しみにしていたようだし準備は万端のようだ。
俺クラスの出し物あるこの演劇は文化祭初日である。
なんでも多くのクラスが演劇をやる事になり普通なら後半か中盤でやる演劇を文化祭の3日間連続でやるそうだ。
その栄えある一番手が俺のクラスという事で……なんだがとんでもない事になっている。
この演劇要所要所俺のツッコミの腕で何とするという丸投げなのに……。
無茶ぶりが過ぎて早急に胃に穴が開きそうだぜ普通の人間なら。
俺みたいに毒を浴び続けてそれを和らげるために精神的耐久力とツッコミの技を磨いてないと中々のハードプレイだ。
まぁ何とかするか。
もう少し下がって様子を見よう。
あと五分で開幕なのだから。
◇
「あるところにシンデレラという可憐な少女がいました。彼女には特徴があってとても毒舌です」
演劇はその吉田さんの天の声で始まった。
前口上のウッドフィッシュ脚本というのは一部の人からどよめきがあがったが、今は落ち着いている。
どうやらウッドフィッシュ――木下脚本というのはふさせられていたようだ。
まぁそんなことをすればファンやら何やかが押しかけて文化祭は人が多すぎて大混乱だろう。
「毒舌シンデレラは母親が死んでしてから父親が再婚した、義理の母親と姉達との仲はよろしくなく雑用を押し付けられていました」
「ゲロめんどくさいわね! 掃除なんてやってられないわ全く!」
豊穣が箒片手に登場する。
ちなみに心の声は聞こえない木下の説明だと、伝えたい相手と対面しないと聞こえないらしい。
「シンデレラ、ここ埃が残っているわよ使えない子ね」
姉役の一人釣り目が特徴の横田さんだ。
姑のように埃を指で確かめている。
「あらそう、ポリキャプ次女お姉さま!」
「一様義理だけど私姉ですからね!」
「何を騒いでいるの?」
姉長女役のきつめな印象を受ける顔立ちの相沢さんだ。
やれやれといた感じで腕を組んでいる。
「お姉さまシンデレラが私の事をポリキャプていうの!」
「あら、フナムシお姉さまもいらしゃったの!」
「えええ!? 仮にも長女に対してそれ! 長女だからってあだ名までひどくなってるじゃない!」
「あらお気に召しませんこと、じゃあイカの生殖器お姉さまで手を打ちましょう!」
「せめてもっと分かりやすく悪く言って! 馬鹿にされているのかよくわからないじゃない! あとポリキャップは、世界観に合わないから却下よ!」
「じゃあ分かったわ! メンズカルピス次女お姉さま!」
「普通に下ネタはやめなさい! 子供が見てるかもしれないから!」
「まぁ! ただ飲み物に対してなんて卑猥な発想のお姉さま方なの! 私と血のつながらない義理のお姉さまで良かったわね!」
オバーリアクションで驚き口に手を当てる豊穣。
「言わせておいてこの野郎……はっ危うく本気になりそうだったわ!」
拳を握る相沢さん。これ劇だから押さえて相沢さん。木下スゲーよお前、ここまでほぼ台本どうり、切れそうになった時の対処法までカバーしてるし。
「お姉さま押さえてこいつに言い勝つのは無理だから」
「そうです事よ! 下種の極み○○似の次女お姉さま!」
「普通に似てないからね! 顔も性格も浮気もしてないからね! してないからね! 大事な所だから二回いました!」
おい身を削りすぎだろ。
完全に浮気してる流れに捕えられるわ!
「浮気なんて冗談よ! ポリキャップお姉さま、お姉さまは小さい無垢な男の子が大好きなんですから、浮気じゃなくてショタハレームでしたわね!」
「なんで私の密かな野望をアンタが……」
ここは台本に乗ってないそういう事だ……。
「それよりきいて、三日後城で舞踏会があるんですって! 当然あなたは居残りシンデレラ」
「酷いですわ! フナムシお姉さま! 虫とポリキャップですら行けるなら私だって」
「「誰がつれてくか!」」
「チッ最大限の褒め言葉が通用しないなんて……さすが浜辺に生息する姉妹! 一筋縄ではいかないわね!」
「普通に私たちを何だと思っているのよ!」
横田さんが吠えた熱くなってきたらしい。
「シンデレラの義理の姉二人組でしょ!」
「そこはボケてよ! 身構えた意味ないじゃない!」
「そんなわけでシンデレラは家で掃除でもしておきなさい。ドレス一つないぼろ切れを纏ているようなあなたに舞踏会が出れるわけがないのだから」
「これは私の特攻服よ!」
「「と……特攻服?」」
予想外のセリフにぽかんとした表情を浮かべる相沢さんと横田さん。
さてどうすると言いたいところろだが、今のところ全て木下の予想の範疇だ。
「ええ、そうよ! フナムシ&ポリキャップお姉さま! ボロを纏うと言えばシンデレラ! そうこれこそシンデレラの戦闘服なのよ!」
「特攻服じゃないの! なによ戦闘服って!」
「いい所を突きますわね。フナムシお姉さま! 真の特攻服とは実戦に適した衣服見かけだけじゃいのよ! だから私のボロは特攻服であり戦闘服なの!」
「あんたは何と戦っているのよ……」
「それはもちろん現実よ! 現実を舐めちゃダメ! 気を抜けはあっという間にツナギのいい男に食べられしまうわ!」
「お前の現実、どーなってるの!?」
「もちろんいい男と共にあるのよ!」
「目を覚ませ! あの人空想の産物なんだから!」
「あらあら知ってますことよ。その空想にどはまりしてフナムシお姉さまそのキャラのお葬式に出たのしょ?」
「たっくんとツナギの変態を一緒にするな! たっくんはとちっちゃくて可愛い超絶美少年で、受けでも攻めでも全力で相手と絡む理想の男の子なんだから!」
おいお前も屏風と同じ側の人間か!
「お姉さま落ち着いて、脱線してるから……」
「はっそうだったわね! そんなわけよシンデレラあんたは当日は家で待機よ! もっともその恰好で舞踏会に行こうなんて思わないでしょうけどね!」
「何を言っているの行くわよ私」
「は? 何言いてんのあんた」
「だから行くって言ってるじゃない! 虫とポリキャップという浜辺に打ち上げられたチームがいけるなら私も余裕よ!」
「いや場違いすぎるでしょ!」
「だからなんだとうのよ!」
「駄目だこいつ話が通じないわ!」
「お姉さまシンデレラは元からこういうやつだから」
「確かにそうね、いいからあなたは当日留守番! いいわね!」
「ゲロしかたないわね! 奇虫お姉さま! 肥溜めの蓋次女お姉さま!」
「最低のあだ名きちゃったよ!」
横田さんは叫ぶ。
とても酷い事を言われたらとりあえず叫ぶという指導を忘れていないようだ。
そうすると酷い言葉がギャグっぽくなるからな。
「何よシンデレラ文句でもあるの?」
「思っていません事よ。ただお二人の口から汚物が漏れ出しているようだから注意しただけですわ!」
「文句があるなら普通にいいなさい! だからあんたは留守番なのよ!」
「こうしてシンデラは家で留守番をいいわたされ、そして舞踏会当日へ物語は続きます」
「やってられないわね! ポリ……ポ……ポルナレフ次女お姉さまとフジツボお姉さまは今頃オスを引っ掛けて押した引いたり触ったり、
大ハッスルしているというのに、私は留守番! 人権を持っているのは私だけだだというのにね!」
箒を投げ出し嘆く豊穣。
いがいと演技がうまいなあいつ。
そしてあだ名を間違えるボケだろうが結構二人を雑に扱ってやがる。
後で二人にフォローいれとかないと。
「お困りかしら?」
「誰よ!」
やっと木下の登場か。
声は木下ではなくアニメ声で聞いた事がない声だ。
その声とてもきれいで清らかな清涼感を感じさせるつ物で、木下の役にはぴったり合っている。
声質から優しさを感じせる声だった。
これが木下が用意した声ってことか。
「お困りのようね。お嬢さん」
我らが魔法使い木下の登場である。
「困ってないわ! 黒豚野郎!」
「辛辣で強情なお嬢さんだね。私の力があれば舞踏会にいけ――」
「断固お断りするわ!」
「まあ、まあ、落ち着いて話を……」
「何度言っても同じよ! 黒豚野郎!」
「私の力があれば……」
「しつこいわね! 断 固 お 断 り !」
豊穣お前スゲーよ。
演目の重要シーンを拒絶ってまじで何考えてんだよ。
どうする木下流石にこれは予想外過ぎて台本になかったぞ。
それから数呼吸置いて「プッツン」と何かが切れる効果音が体育館に響いた。
「うるせぇ! だまりやがれ!」
一瞬で凍り付く体育館。
別人かと思ったがよく聞くと同じ声質だ。
まさに豹変、先ほどまでの慈愛に満ちた声は見る影もない。
「いいから! 俺の魔法にかかりやがれ! 話が進まねーだろ!」
「何口答えする気! 黒豚野郎!」
「うるせー! 精霊ども! こいつを連れてけ! 裸にひん剥いて強制メイクアップだ!」
「「キー!」」
精霊役の二人が登場するが、頭に手先を向ける敬礼といい、黒の全身タイツといい、掛け声が決めてとなって完全に違うモノを連想させる。
頭に星マークがあればこれで精霊として通用する発想はねーよ。
「ちょ……何するのよ! 見かけどうりの変態!」
「「キッキー」」
両脇を抱えられ強制フェードアウトする豊穣。
木下よく予想して対策がとれたもんだ。
これがプロの実力か。
「さて、後はこいつとこいつでいいわね……」
懐から小さなカボチャと人形を取り出す。
「はぁ! カボチャよ馬車に! 人形よ従者に!」
杖を掲そう唱える、照明が一瞬消えて木下にスポットライトがあたる。
裏方は大急ぎで所定の位置にカボチャの馬車を移動させると、スモークがたかれ消えていた照明がついた。
「これでいいわね! 精霊たちシンデレラを連れてきなさい!」
「「キー!」」
精霊たちは豊穣を連れてくると舞台袖に消えた。
「中々似合ってるわよシンデラ! さあ馬車に乗ってきなさい! あとこれは断っても強制だから!」
「ゲロおせっかいな黒豚ね! いいじゃない噂のゲロシャブ舞踏会に殴り込みよ!」
「いいタイムリミットは夜十二時よ! 十二時なれば鐘がなるから、それが過ぎたら魔法が解けるから絶対に帰ってきなさい!
時間が過ぎたら強制退場させるから、いいこと時間外まで居座ろうとしても無駄と覚えてきなさい!」
とんでもない発言である。
まじでこれ大丈夫なのか?
◇
「こうして魔法使いの逆鱗にふれたシンデレラは舞踏会に行く運びとなりました。一方その舞台である王城では」
そして場面は王城へついに俺の出番なわけだ。
「王子殿下、どうか考えを改めてもらえないでしょうか?」
椅子にし座る俺に語り掛ける白髪のかつらをかぶった老執事役の吉田が話しかける。
「くどいぞ爺、私の考えは変わらん」
「しかし、今夜の舞踏会のメインである王子殿下が参加しないのでは、一部貴族たちから苦情が出かねません」
「ふん、おおかた私の権力目当ての寄生虫どもだ。ほおっておけばよい」
「しかし」
「くどいぞ爺」
「王子殿下ご報告が!」
慌てて駆け込んでくる兵士。
「なんだもうしてみろ」
兵士は白い紙を差し出す。
「これは?」
「王子殿下宛の手紙にございまいます!」
「手紙など後だ」
「しかし、これは王座に置かれいたのです!」
「王座に? 警備兵は何をしておいたのだ!」
「それが巡回にきた兵士の話によると、王座から目を離した数呼吸程の僅かな時間に現れたそうで」
「見せてみろ」
手紙を開く王子役の俺。
順調ここまで問題は無し。
【今夜御身の心を頂きます。
怪盗シンデレラ&魔法使い】
「怪盗なにこれ? 俺こんな展開聞いてないんだけど?」
どうなってんだこんなの台本に乗ってねーぞ。
「当たり前じゃないですか! 王子殿下には言ってないんですから!」
「俺一応王子だよね! この国で二番目にえらいよね!」
「だまらっしゃい! これは演劇なんだからそこは察しなさい!」
「えっ? なんで俺が怒られてるの? どんだけ王子この国で嫌われてんの?」
「そんなわけで王子怪盗との戦いの時間でございましす。ご出立を」
「俺の意思関係なし! そしてなんで戦にいくみたいなノリなんだよ! 爺一応俺の理解者の設定だろ! 助けろって!」
プイと視線を外す爺。
俺は兵士に連れられ強フェードアウトの直前。
「このくそ爺~~~~~~~~!」
大声叫んだ。
意味が分からない、木下は一体どんな物語を作ったんだ。