豊穣
っ!?
その言葉に一瞬ドキッとなるが、豊穣の寝息で気付き乱れる心を無理やり落ち着かせる。
寝言とはいえ美少女に告白されるのは、誰しもドキドキする物で。
しかも好意を寄せている女の子だ。
そのドキドキは計り知れないもので。
俺は向かい合った豊穣を見つめた。
それに体が熱いあれだけ精のつく料理を食べれば当たり前だけど。
下半身に集まろうとする熱を意思の力でねじ伏せる。
俺はいくじなしだな。
据え膳食わぬば男の恥というが、俺は男としての矜持よりこいつらを大切にすることをどうしても取ってしまうようだ。
「えへへへへへ浅井君は私のモノ~」
豊穣は俺を抱きしめた。
触れれば折れてしまいそうな華奢な小さな手に肉好きこそは薄いがとても軟らかくて、その手に込める力が弱くて男というものの女性に対する庇護欲を強烈に刺激する。
「こうしているときは抜群に可愛いのにな」
思わず声が漏れる。
豊穣の顔には月明りが当りその女神のなように綺麗な顔がはっきり見える。
美しい女性を天上の女神と称した人間は誰かはしらないが、きっと自然とその言葉が出たのだろう。
美しいモノとは自然と見とれ自然と声が洩れる物だ。
「浅井君ずっと一緒だね……」
豊穣が顔を緩めた。
その顔は本当に幸せそうでとても良い夢を見ているのは何よりだ。
俺はきっと最後まで豊穣を見捨てられないんだろうな。
それにこんなにめんどくさくて綺麗で可愛い女の子を受け止められるのは俺ぐらいだろう。
そう思ったでも気持ちはまだ揺らいでいる。
木下、屏風、九条院さん、花さんも豊穣と同じぐらい魅力的で。
優柔不断と思われても当然だ。
俺は恵まれているだからこそ迷うのだ。
この俺に好意を向けてくれる女性だからこそ俺は悩まなくてはいけない。
それが最後に一人選ぶ俺の精一杯の誠意だ。
「おじいちゃんとおばあちゃんになってもずっと隣にいさせてね……」
「確約は今は出来ないがそうなったら……」
あえて俺は言葉を最後まで言わなかった。
こんな大事な事そうと決まったわけでもないのに言うわけにはいかない。
過度な期待を持たせて裏切ることは俺は出来ない。
豊穣は綺麗で可愛くても遊びで付き合う事は同じく俺は出来ない。
本気で好意を寄せていない相手にディープキスなんてするわけがないのだ。
それぐらい皆は大切に思っている。
でも、今日は豊穣を抱き枕で寝るのもいいのかもしれないな。
俺は俺を抱きしめる豊穣の背に手を回し優しく抱きしめた。
抱きしめるとき豊穣は小さな声を上げたがその抱きしめる。
豊穣の体は柔らかくていい匂いがする。
横向きに抱き合っているせいで豊穣の綺麗な顔とほんのり湿り気を帯びた髪の毛が月に光に照らされて髪の毛がまるで月の欠片でできているようだ。
本当に綺麗だ。
豊穣の綺麗な顔と合わさり一級の芸術品いわれても納得できる。
俺は自然と豊穣の唇に自分の唇を重ねた。
舌は入れてはいない。
綺麗な物にふれたいという欲求には勝てなかった。
ゆっくりと唇を放しそのまま目をつぶる。
今日は何故か体がポカポカしていい気持だ。
今更気づいた高揚感のまま俺は眠りについた。
その日の夢はよく覚えていないがとても幸せな夢だったきがする。




