一つの布団で
そして俺は布団に入った。
豊穣は風呂場へ。
当然眠れるわけがない。
俺の頭の中には先ほどの素直で可愛い豊穣で一杯だ。
はっきり言って豊穣は美人だ。
胸はぺったんこで年中毒を吐いていても帳消しにするほどの。
俺が豊穣を見廃られなかった理由は二つ。
その一つがその抜群の容姿だ。
もう一つは俺はあれだけ暴言を吐かれていても、どこかで本当の豊穣の言葉ではないと分かっていたからだ。
少し前の豊穣の本心を知る前の俺なら希望論でかたずけていたのかmおしれないが。
そんな豊穣が一時とはいえ素直になって好意を向けてくれたのだ。
それが嬉しくて可愛くて愛おしくて。
あいつらに誓った約束を反故にしてしまいそうな俺がいる。
それでいいのかもしれない。
俺は豊穣に好意を持っていて豊穣は俺がいないと生きていない程愛してくれている。
豊穣を選ぶ事に好意に好意で返すことを進める俺はいた。
それでも俺が優柔不断なせいか木下と屏風、九条院さんと花さんの姿が頭にちらつく。
二つの勢力は頭の中でせめぎ合う。
どちらとも対象は違えど同じ好意であるはずだが、お互いに覇を競い合う。
俺って幸せ者だな。
改めて自分の置かれた状況を振り返る。
思えば豊穣一人から始まってここまで個性豊かな美少女が揃ったものだ。
おっと花さんは大人の美女だったな。
本人にその言ったら少女という単語に固執しそうな気もするが。
そんなことを考えているとますます目がさえてしまう無理やり眠ろうと体を横に倒した頃だった。
「浅井君でたよ。寝てるの?」
豊穣の足音が近づいてくる。
俺の顔は緊張と恥ずかしさで自分でもはっきりわかるぐらい熱が集まっている。
その状況で顔を合わせるのが恥ずかしくて狸寝入り状態で体が動かない。
「浅井君聞いて……」
豊穣が俺の腹部に手を回す。
横向きの俺の体の下に侵入する豊穣の手が柔らかくて気持ちいい。
次に豊穣は俺の体に自身の体を密着させる。
豊穣の体は風呂上がりの熱がとても熱いのに心地よい。
さきほど使ったのであろうシャンプー芳香が鼻を抜ける。
さらに次豊穣は俺の耳元に自分の口を近づける。
直接浴びたら疼きで溶けてしまいそうな甘い吐息が耳元に届くたびに背筋がぞくぞくする。
「私はそのあ……糞虫が」
『私は貴方の事が』
「好きになってくれる虫がいると思うわ」
『大好き、貴方がいないと生きていけないぐらい』
「だから糞虫が私のそばを離れるのを許さないわ」
『だからずっと私のそばにいて』
「駄目ね、こんな言葉じゃ浅井君が……」
『ただ大好きって言うだけなのにどうしてこんなに難しんだろこれじゃ浅井君が……』
「いいこと糞虫貴方は私の許可なく私の元を離れちゃダメよ。だって」
『本当に大好きだから』
そして豊穣は俺の耳に。
「チュ!」
『大好きこんなめんどくさい女の子でごめんね』
支離滅裂な言葉。
それでも豊穣の好意だけは俺にしっかり伝わった。
俺がどうす返すか迷っていると小さな寝息どうやら寝てしまったらしい。
いつも間にか腰に回した豊穣の手の力弱まっているのを感じ豊穣が痛がらないように優しくゆっくり体を回し寝ている豊穣と向かい合う。
「浅井君好き……」




