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俺の毒舌幼なじみの心の声が甘々の件について  作者: 師失人 
その一~毒舌幼なじみと俺たちの日常~
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0007おまじない

次の日の朝、目が覚めた。

 カーテンの隙間から漏れる朝日が少し煩わしい。

 今日は屏風に問い正すって決めたんだったな。

 そろそろ豊穣が来る時間だ。

 さて制服に着替えるか。


 ◇

 いつもと同じく授業を受けて、屏風のつまらないボケと豊穣のいつものネタにツッコミをして気づけばもう放課後だ。

 聞くなら三人がいつもどうり揃っている今だろう。

 木下がいれば心の声でフォローしてくれるだろうし。


 「屏風話があるんだが」


 「なに金緑? 愛の告白」


 「糞虫! 私という主人を差し置いて雌ブタ二号に個別の話? 恥を知りなさい!」


 『あわわわ、ま……まさか屏風ちゃんに告白』


 「なんでお前が切れてんだよ……すぐ終わる話だって」


 「でなに、別れ話ならお断りよ!」


 「だからなんで、彼女気取りなんだ……」


 「それ以外だと、ま……まさかついに私とコンビを」


 「違うわ! 普通にこれ聞く必要あるのかと思えてきたじゃねーか!」


 「もったいつけずに言いなさい! 糞虫!」


 「これは私とダーリンの会話よ! 割り込むな!」


 「いい度胸ね! 雌ブタ二号!」


 「なんで豊穣が怒ってるのよ!」


 「まーまて落ち着け二人とも」


 二人をなだめ、一息つく。

 なんだかんだいってもこういう話は話ずらい物だ。


 「屏風お前は俺の事どう思ってる?」


 「どうって未来の旦那様!」


 「身の程を知ったほうがいいわね! いくら糞虫でもそこまで落ちぶれてはいないわ!」


 『むうううう、屏風ちゃんに先越された……私だって正直になれれば』


 「それは冗談だろ?」


 「冗談じゃないわよ! 私は同人誌の攻めにぐちゃぐちゃにされる金緑だって愛してるんだから!」


 「ベクトルが違ったよ! 完全にふざけてるじゃねーか!」


 「何を言ってるの! 私は金緑のごついおっさんとの濃厚な絡みも、美少年数人との超濃厚な絡みの姿が書かれた同人誌の世界観の金緑だって、愛しているのよ!」


 「愛してるってそっちの系の創作の俺かい!」


 「勘違いしないでよ! リアルの金緑も好きよ! でもやっぱり同人誌の中の男たちと濃厚に絡んでいる姿の方が好きね! 興奮するもの!」


 「この前の約束を守って同人誌は処分するように」


 「わかってるわよ! これは脳内同人誌だから! 現在13冊目よ!」


 「まじで俺を想像の中で、もてあそぶはやめてくれませんかね!」


 「えーーーーこれが腐女子的愛なのに! レベルが高い腐女子だと、自分に優しくしてくれる好意を持った男性だって勝手にそっちのけがなくても、濃厚に男性と絡ませるのに」


 「手遅れだった! どんだけ闇が深いんだ! 腐女子業界!」


 「それは言い過ぎよ! ライトな人だって沢山いるんだから、一部がちょっとアレなだけで」


 「何んで好意を持たれたら男と絡ませるんだよ!」


 「仕方ないじゃない! それが腐女子ってものよ!」


 全くこいつはやっぱり俺の勘違いだな。

 屏風は俺に好意を抱いていはいるようだが、愛の方ではないらしい。

 これで俺に惚れていると言われても説得力が全くない。


 想像の中といいえ想い人が自分以外の他人と濃厚に絡むと興奮するって中々の上級者プレイだぜ。

 

 「分かった分かったよ」


 「えっ! ついに金緑が私の気持ちに気づいてくれたの?」


 「普通にベクトルが上級者向けで俺の手に余るわ!」


 「なによそれ!」


 「聞いた俺が悪かったよ! そのネタは終わりにして平常運転で行くぞ!」


 だんまりを決め込んでいた木下は屏風に耳打ちをする。


 「屏風……さん……それで……いいの……ですか? ……完全……に……勘違い……され……てます……よ」


 「いいのよ。今わね。まだ私が金緑に相応しい女の子になってないから、本当の想いを伝えるのはその時ね」


 何を話しているかしらんが木下の事だ見事なフォローでも入れているのだろう。



 「そうだ忘れてた金緑ちょっと」


 手招きする屏風。


 「なんだよ」


 ニンマリとした表情を浮かべる屏風に近寄る。


 「ちょっとこっちに来て中腰!」

 

 「何だよ全く、これで」


 中腰をとったが、安定感がそのままでは悪いので片膝をつく。


 「目をつぶってすぐ終わるから」


 目をつぶるとがっしと頭を掴まれる。

 すごいデジャブ感を感じるのだが……。

 これなんだったけ。


 「いくよ金緑我慢してね!」


 思わず目を開けるが時はすでに遅く、屏風の頭が迫っていた。

 その時思い出した。

 これは木下の時と同じだ、ということは。


 ゴツン


 「痛って!」


 「痛ったた」


 痛って、屏風は本気で頭をぶつけてきやがった。

 木下の時より数段痛い。


 「何しやがる!」


 「痛ったた、何って最近流行ってる漫画のおまじないよ。こうすると意中の相手と心が通じ合えるって言う」


 木下に視線を飛ばすとが木下はうつむいて『悪い俺のせいだ』と心の声を返してくる。

 俺の話を丸ごと漫画化してるのか?

 悪びれる様子すらねえ。


 「これ結構みんな知ってるのよ! ウッドフィッシュって言う少女漫画家なんだけど」


 『屏風め……わざとやってるんじゃねーのか』


 「でね。これやると意中の相手に本心が伝わるの! ありふれたネタだけどこれが面白いの!」


 『ふふふ、これで金緑の私の心の声がなんてね』


 「やっぱり意中の人にダイレクトに好意が伝わるって大きなアドバンテージよね! 憧れるわ!」


 『そうだったら、金緑にこの大好きって想いがダイレクトに伝われるんだけどな……』


 「あり得ないと分かっていてもつい、この手のおまじないやってみたくなるのよね! 乙女の性ってやつね!」


 『はぁ、どうしたら金緑が私だけを見てくれるんだろ……』


 思わずまた木下をチラリ。

 木下は俺の心を見透かしたように。


 『ほら、屏風お前の事大好きだろ。聞こえないが大体が予想がつくぞ』


 さっきの俺の至った回答勘違いかよ!

 舌の根も乾かぬうちにとはこのことだよ!

 自分自身対してツッコむ俺。

 それより問題は屏風の腐女子的愛ってやつだ。

 これが本気ならかなりあれだ。

 確認を取か。


 「だとしても仮に伝わっても腐女子的愛は勘弁なのだが……」


 「それはそれで興奮するわね!」


 「おい!」


 『なんてね。だって薄い本は興奮するけど、実際に金緑に会って話して心が暖かくなるのは別の物だから』


 「冗談よ、冗談。金緑がいやなら少しづつ変えていくわよ! 今後の夫婦生活を考えてね!」


 「いつお前と夫婦になったんだよ!」


 「そんなもの先に言い出したもん勝ちよ! ねぇダーリン!」


 「やめい!」


 「いけず~」


 腕を絡ませてくる屏風を振り払う。

 こいつの本心を知っても平常運転でいいだろう。

 腕を振り払っても楽しそうにしてるし。

 そして少し安堵、腐女子的愛とやらで、


 男と濃厚にからむ妄想でも送ってこられたら、そういう趣味のないノーマル俺にはかなりきつい。

 自然と屏風を遠ざけるのが目に浮かぶ。


 「そんなわけだから! カップル成立まじかってことでいいわね!」


 俺がツッコむ前に豊穣が吠えた。


 「糞虫、私も同じことをしなさい!」

 


 「何を言ってんだ豊穣」


 「だから雌ブタ二号と同じ事よ!」


 「あれあれ~もしかしてヤキモチ?」


 「違うわよ!  いいからやりなさい糞虫!」


 『ぶうううう、屏風ちゃんだけずるい! 私だって浅井君と仲良くなるおまじないしたい!』


 「わかった、わかった、から落ち着け」


 『金緑ヤバい事になったのかもだぞ。この手の漫画の法則だともう一度同じことをすれば心の声が聞けなくなる』


 な……なんだと!?


 どこかで見たことのある法則に思わず驚く。

 それ結構やばいんじゃ。

 まぁ元に戻るだけと言えばそうなんだけど。

 今の豊穣の甘い心の声にすっかり浸った俺では、普段の豊穣はきつい。


 辛辣な言葉に耐えられる気がしない。

 甘い言葉とはここまで人間を弱くするのか。


 「どうしたの糞虫! やりなさい!」


 『ねーねー早く早く』


 「金緑無視しなさい! この女をつけあがらせちゃダメ!」


 と言われても豊穣はそうでもしないと納得しないだろう。

 

 『金緑優しくにやればいんじゃないか?』


 優しくなるほどその手が、だがそれって……

 だがそれしかないだろう。

 これならお互い痛くはないし。


 「豊穣目をつぶれ」


 「いいからさっさしなさい!」


 『わーい。えへへこれで仲良くなれるかな』


 唇を尖らせる豊穣に俺は頭をゆっくり近づけ。

 優しく額と額を触れた。

 自分の見えない何かが、豊穣と繋がった気がした。


 「終わったぞ」


 「あらもう」


 『よくわからないけど成功したかな』


 どうやらうまくいったようだ。

 これはどうやら頭を強くぶつけないと効果がないらしい。

 一息つこうとするが屏風が。


 「な……なによそれ! そっちの方がロマンチックじゃない! 私とやり直しを要求するわ!」


 「私……も……したい……で……す」


 『絵柄的に美味しいぞそれ!』


 「なんだよお前ら急に別にそこまで特別なことじゃ豊穣?」


 豊穣は顔を真っ赤に染めていた。


 『これってこれって物凄いロマンチックなシーンなんじゃ……そ……それを大好きな浅井君と……』


 「おい、豊穣。豊穣さん。だめだな気づかねえ」


 豊穣の目に手をかざしひらひらと動かしてみても全く反応はない。

 そんな反応されると急に俺も。


 「なんで二人そろって顔を染めてるのよ!」


 「ずるい……です……私達……も……して……くださ……い」


 『ずるいぞ二人とも俺たちにもしろよ!』


 そう言われてますます顔が熱くなる。

 スゲー恥かしい。

 なんで俺こんな事したんだ?

 おでことおでこを男女で触れ合うなんて青春映画じゃないんだから。


 加速度的に心臓は波打ち、顔は血があつまりすぎて今にもパンと弾けてしまいそうだ。

 しかし、二人は許してはくれない。


 「木下さん私が先でいい?」


 「私……が……先が……いい……で……す」


 「じゃあこれね!」


 指を二つ伸ばしたチョキを突き出す屏風。


 「望む……ところ……で……す」


 「さ……「最初は……」」


 二人とも俺をないがしろでじゃんけんを始めないでくれませんかね?

 まさかこれを二人分やれと……俺は今日死ぬのかもしれん。


 どきどきの心不全で死んだら、きっと大々的に報道されて、ネットでリア充心臓爆発ザマアとか言わそうだ。

 そんな恥ずかしい死因はいやだ。

 逃げるか。


 「金緑言っておくけど今逃げたら私とベロチューだから!」


 「私……も……です」


 『俺たちとベロチューよりは難易度が低いだろおとなしくしな! ドキドキ! ワクワク! 別に逃げてもいいけど覚悟はしろよ!』


 くっ完全に逃げ道が、他者から見ればご褒美でも当事者からすれば、凄い恥ずかしいってことは理解してほしい。

 恥ずかしさは時に男としての願望を超える事だってある。


 こんな悩みなんて贅沢かもしれないが俺の純情ハートには応えるぜ。

 二人は粛々とじゃんけんを終え木下が勝った。

 まず木下からか。


 「不束者(ふつつかもの)……ですが……よろし……くお願い……しま……す」

 


 「おう」


 唇を尖らせ目をつむる木下。

 こいつキスする気満々なんじゃ。

 しかし迷っていても仕方ない。

 ゆっくりと額を近づけると、木下は俺の首に手を回して顔を近づけて。


 「おい! 木下! 近いって!」

 

 『むふふふ、お前も男だろ覚悟を決めろ!』


 「ちょ……待って……」


 「てい! なに勢いに任せてキスしようとしてるのよ! 金緑の唇は私専用なんだから!」


 木下の頭に手刀をいれて木下を制する屏風。

 後半の言葉当然妄言だ。

 今のところ俺の体は誰の所有物ではない。

 ツッコみたいところではあるが、向き直した木下の額に自分の額を触れた。


 改めて味わうと豊穣の時と同じく何かが繋がったような一体感が心地よい。

 意外と癖になるなこれ。


 「心と心……が繋が……って……い……るみたい……で……す」


 まぁ今でもある意味心は繋がってはいるが。

 これは心地いいけど異性とやるの結構恥かしいなこれ。

 散々色々とツッコんでは来たが一切体を接触していないせいか、異性との肌と肌の触れ合いはやっぱり緊張してしまう。


 「最後は私よ! 金緑! さあ来なさい!」


 手をばっと広げ構えを取る屏風。


 「お前は何と戦おうとしているんだ……」


 『それはもちろん。豊穣はともかく木下さんが意外と積極的で一番の障害ね』


 木下の実際は肉食系だけどな。


 「まあいいや、目をつぶってくれ」


 木下の時と同じく頭を近づけるが。


 『やばい、やばい、やばい、き、金緑がこんなに近く、やばい鼻血が』

 

 さっさとしないとまじで鼻血でも出しそうだ。

 目をつぶる屏風にこんと額を優しくぶつけた。 

 さきほど同じく一体感を味わう。


 「終わったぞ」


 「えっもう意外と対したことないわね。悪き分じゃないけど、木下さん撮れてる?」


 「ばっち……り……です」


 スマホをかざす木下。

 そこには額を合わせる屏風と俺の姿が、しかもも動画だ。


 「お前ら撮ってたのか」


 「そうよ私と木下さんの二人分ね!」


 「卑怯よ! 雌ブタたち! 私を差し置いて!」


 「大丈夫……です……豊穣……さん……の……も……撮って……ありま……す……から……後で……送り……ま……す」


 「いい働きよ! 雌ブタ一号!」


 『わーい、ありがとう木下さん』


 「それ……で……少し……加工……し……て……みまし……た」


 再びスマホをかざす木下。

 そこには。


 「むほ~~~~~! いい仕事するじゃない木下さん!」


 「っ!?」


 『これ頼めば私のにも加工してくれるかな!?』


 そこには額を合わせて「好きだ」という俺の姿が。

 っておい!


 「いい仕事するじゃない! 木下さん!」


 「雌ブタ一号にしてはいい仕事ね!」


 『凄い木下さん』


 「おい」


 「後……で……二人に……も……送り…………ます」


 「いいの! ありがとう木下さん!」


 「ふん当然ね!」


 『ありがとう木下さん! 宝物にするね!』


 「おい、聞けって俺の意見は?」


 「何言ってるの? この場ではあるわけないじゃない!」


 「なんでだよ!」


 「これは私たちの問題よ! 金緑でも割り込むことは出来ないわ!」


 「浅井君……これ……ばかり……は」


 『野暮なこと言うなよ金緑!』


 「そうよ糞虫!」


 『そうだよ浅井君』


 「なんだそりゃ! 俺の意思は!?」


 「そんな物今は関係ないわよ! ねぇ木下さん!」


 「そう……で……す」


 「そうよ」


 「豊穣あんたには聞いてないわよ!」


 「もう……少し……加工……し……て……BGM……を……いれる……ので」


 「ほんと! いい仕事するわね! 木下さん!」


 「これで糞虫の研究が進むわね!」


 『凄い楽しみだな』


 「俺の意見はどこにいった……」


 「なによ金緑不満なの! 美少女二人と見かけがそこそこの毒舌女の囲まれて! ハレームじゃない! 男として何が不満なのよ!」


 「うっ……」


 そう言われると悪きはしない。

 しかし個性的過ぎるだろ。

 普通モット普通の女の子に囲まれるんじゃないのか。

 別に悪きはしないが何故かそこが妙に引っかかる。


 「お許しが出たみたいだから木下さん私のには、金緑の喘ぎ声いれてね! ヤオイゲームから抜きだしたやつね!」


 「おい! そればっかりは阻止させてもらおう!」


 「えーなんでよ! たかが動画じゃない!」


 「欲望入りすぎだろ! 普通にやめろ!」


 「チッ、金緑の同人誌が書けないうっぷんをこれで晴らそうと持ったのに!」


 「いま舌打ちしたよね!」


 「してないわよ! チッチッチ!」


 「完全にしてるじゃねーか! 隠すどころかもろ出しじゃねーか! まじでそういうホモホモしいものと俺を絡めたら絶交だからな!」


 「えーいけず」


 「いけずじゃない! 妄想の中で男と濃厚に絡まされる俺の身に成れ頼むから!」


 ◇

 そんなこんなで一日が過ぎて二日一種間一か月、気づけば残暑も終わりもう実りの十月。

 学園祭の季節である。

 思い返してみても一回しか演劇に練習には参加していないが、まじで大丈夫なのだろうか?

 まぁ木下の事だ心配する必要がないのかもしれんが。

 

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