パワーアップ
「木下さんなにそれ良いわね! 私もやるわ!」
「当然私もです! いいですよね金緑さん!」
「ちょっと待てお前らなんでこんな展開に……」
「何って当たり前じゃない! 満開先生には負けてられないわよ! というわけでキスミープリーズ私のキステクニックで金緑をメロメロよ!」
「私……の……夢……の……一つは……好きな……人……と……濃厚……な……キス……しな……がら……子作り……して……子供……を……作って……産む……事……なの……で……キス……テクニック……は……高め……たいた……方……が…………いい……です! だから……練習……です!」
「木下さん天才です! 私も金緑さんの子供を孕むならそんな感じにラブラブで孕みたいです!」
「いいじゃない木下さん! 王道はラブラブエッチよね!」
これは何と答えたらいいんだ?
青井が見たら血涙を流して発狂しような展開ではあるが、最後に一人選ぶと約束しているのにそこまで気を持たせるのは酷ってもんじゃないか。
そういえば豊穣が静かだな。
豊穣に視線をやった。
「どうした豊穣?」
思わず声をかけた。
何故かピクリとも動いていないからだ。
視線は俺に向けいるが俺を見ていない。
心ここに有らずってやつだ。
「どうしたんですか豊穣さん?」
九条院さんが豊穣に話しかけ豊穣を眺めた。
「どうやら妄想でオーバーヒートしているようです。金緑さん愛の囁き以外で解決お願いします」
「どうすればいいんだよ……」
九条院さんと違って俺は向けられないと心の声は聞ことはできない。
いつもなら正解は分かりやすいがこれは問題だ。
どうするか。
「とり……あえず……ショック……療法……で……抱き……付いて……みては」
抱き付きかあの時に遊園地以来だな。
俺は木下の提案にしたがい豊穣の後ろに回り腰に手を回し頭を豊穣の右肩に寄せる。
所謂なろ抱きってやつだ。
「豊穣さん戻ってきてくれませんかね?」
ちょっとだけおちゃらける。
九条院さんの要望を聞きつつこいつらが騒ぎ出さないようにだ。
豊穣の体女性特有の柔らかい感触で、肩に乗せる鼻からは本能を刺激する芳香が。
しかし、豊穣はピクリともしない。
刺激が弱いのかと少しだけ腰に回した手に力を込めた時だった。
ずぶずぶと沈む感覚が突然出現した。
驚いてと手を放そうとするが、手が動かない。
まるで意識だけが起きていて体が命令を拒絶しているようだ。
次に何かが見えた。
最初は分からなかったが、だんだんはっきりし始めたどうやら俺と豊穣のようだが、その光景は見覚えがない。
何故か俺の隣に豊穣が赤ちゃんを抱いている。
それから光景はパノラマ写真にように次々にあらわれ消えていく。
子供は何時しか三人になり子供達はどんどん大きくなって行く。
どういうことだこれ。
自分でも何が起こったのか分からない。
暫くの混乱はあったが分かったことがあるこの映像の中ではどうやら俺と豊穣は結婚しているらしい。
一枚だけだが結婚式の映像もあった。
でもいくらたっても、俺と豊穣に加齢が見られない所から考えてこれからの未来ってわけではないみたいだ。
高校生の姿から子供が結婚して孫が生まれても俺たちの姿が全く変わらないのは明らかにおかしい。
「金緑! 金緑ってば!」
屏風の声がする。
すると世界は急速に回り出し、気づくと元に戻っていた。
「どう……かし……ました……か?」
「何でもない」
「それよりいつまで抱き付いているのですか? そろそろ豊穣さん限界ですよ?」
そういわれ豊穣を見ると耳まで真っ赤だ。
正面は見なくとも分かるレベルだ。
『あわわわ、浅井君がこんなに近くに、キスって聞いてつい妄想しちゃって浅井君と結婚して孫が生まれると事までは覚えているけど、いつの間にかこんな事に嬉しいけど恥ずかしいよ~』
あれ何かおかしい気が。
「いいから放しなさいよ! 全くもうイチャコラするならこの私屏風ちゃんにしなさい!」
『豊穣いいな私もしてほしいな』
「そうです。私にもしてください!」
『本当に皆さんと金緑さんを奪い合うって楽しいです! もちろん負ける気はありませんが』
「では……話……を……戻し……ま……しょう……キス……の……練習……に……ついて……です」
『全く早いとこ金緑の子が孕みたいぜ! そんな露骨なこと言い出すとこいつらが騒ぎ出すから言えねーけどな』
もしかして心の声を聞く能力パワーアップしていないかこれ?
少し合意だったかやで。
ちなみにキスの話題はうやむやにしません。
存分に砂糖をどうぞです




