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ディープキス

それから暫く平和な日々が過ぎる。

 あれから九条院さんの顔は見ていない。

 そりゃあんなことがあって責任の一端を感じているのだろう。

 あいつらはわからんが俺は特に気にしてないのに、九条院さんが悪い子ではないとはよくわかっている。

 監禁されてた時毎日俺の所に尋ねてきて何度も「ごめんなさい」と言ってたし、九条院さんの家の人のせいで本人の意思じゃないんだし、九条院さんは悪くないに。

 しかし、結局三学期が終わっても九条院さんは一度も登校してこなかった。

 そして何事もなき進級し始業式が終わりクラスに帰ってきたわけだが。


 「遅いわよ! 金緑」


 「そう……です……金緑……君」


 『遅いぜ! 金緑』


 「糞……浅井遅いわよ!」


 『もうちょとで普通に浅井君って呼べそうなんだけどな』


 「悪い待たせたか屏風、豊穣、魚」


 「全く名前よびなんて木下さんには一歩リードされたわね。あの一件の報酬じゃ仕方ないけど」


 「ゲロそうね!」


 『むううう! 木下さんうらやましすぎだよ! 名前で呼ばれるなんて私だって呼ばれたことないのに……』


 「まぁ時期が来たらお前らも名前で呼んでやるから」


 あれから木下を名前で呼ぶ事で一悶着あったが、報酬と言われると二人は納得。

 それでもごねられて時が来たら呼ぶと約束した。

 急に名前で呼び出すと調子乗って何いい出すかわからないからな屏風が。

 俺の席は窓際で前が豊穣、横が木下、後ろが屏風、教室の端には何故か青井の姿も見える。

 進級してみれば見慣れたメンバーがそろたことに作為的な物を感じるが、これで担任が花さんとでもならなければ多分偶然だろう。



 「はいはい! 席について」


 この聞き覚えのある声。


 「美人教師満開花さんの登場ですよ! キラ♪」


 うん、偶然じゃねーなこれ。

 誰かは知らんがグットだ。

 やっぱりクラスメイトに可愛い知人の女の子は必須だぜ。

 ごめんなさいラブコメの神さま、悪くいちゃって見直しました。

 花さんは俺に視線を向けてウインク。

 後で何人かの男が俺にウインクをしたと言い出すのだろうな。

 こんな思わせぶりでモテてきた人だし、だらしくなくなければ完ぺきなのに。


 「全員そろってないわね……なるほど確かに皆さん私が今年一年貴方達を担当する満開花です。気軽に花ちゃんて呼んでね♪」


 花さんの言葉で辺りを見回すと俺の斜め下屏風の隣だけが空いていた。

 何か問題でもある生徒なのだろうか?


 「シツレイシマス」


 この機械変声した声は間違うはずもない。

 九条院さんだ。


 「ちょっと遅刻だぞ! 九条院さん! またあんなことしたらダメだっゾ!」


 「ワカリマシタ」


 「分かったなら良し! 席についてね!」


 そうして九条院さんが歩き出す、クラスの面々はフルフェイスヘルメット姿の九条院さんに面らって誰も喋らない。

 まぁぱっとみ不審者だもんなこの姿。

 言っちゃ悪いけど。

 そして九条院さんは歩きながらヘルメットの下方をおし蒸気が吹き上げる。

 そしてヘルメットに収められていた金髪の長髪一回転。

 そして俺の唇に。


 「チュ!」


 九条院さんの俺の口内に舌を入れ俺の舌の絡ませてくる。

 ディープキス……かこれ。


 「ぷは! いきなりどうしたの? 九条院さん!」


 「やっと会えました金緑さん!」


 「何よ! 貴方まだ金緑を諦めてなかったの?」


 屏風の敵意の込めた声が飛ぶ。


 「諦めるわけにはいきません! 私には金緑さんしかいないのですから!」


 「確認……しま……すが……分かっ……て……います……ね……もし……何か……私達……に……手を……出せば……」

 

 「それは承知の上ですですから、正々堂々と金緑さんを頂きに参上しました!」


 「ゲロ! 貴方の言葉を信じるとでも思っているのかしら!」


 「豊穣さんの杞憂は大丈夫です! どうやら私の病気は金緑さんの体液を定期的に体内に摂取すればコントロール可能な事が分かったのです! 私達一族が欲しているのは私の病気をコントロールする素手ですので、金緑さんからそれが得られるなら親族の方々もおとなしくしてくれるでしょう」


 「分か……り……ました……許し……ます」


 「ちょっと木下さん」

 

 「ゲロ! 雌ブタ一号!」


 「実は……昨日……九条院……さん……関係者……という……老紳士……が……私……を……訪ねて……きて……土下座……して……「お嬢様を許してください」と……頼み……込んで……きた……のです……命……かけて……も……いい……と……言わ……れて……しまっ……た……ので……」



 「そいうわけで金緑さん! 私に毎日ディープキスで唾液を飲ませてくださいね!」


 「なんでそうなるのよ! そんな美味しい役私屏風風花ちゃんだって欲しいわよ!」


 「ずるい……です……私……も……毎日……した……い……です!」


 「ゲロ! ずるいわよ! メット野郎!」


 「だってディープキスで金緑さんの唾液を飲んだ方が気持ちいいじゃないですか!」


 「だからってね! 血でいいじゃないの!」


 「ここは幸せな気分を尊重してキスで唾液でお願いします!」


 「なんで……そう……なるん……ですか!」


 「こらー! 四人とも僕の目の前で男の子取り合いは今は止めなさい! 浅井金緑君、君は放課後生徒指導室に一人で来なさい!」


 言い争う四人は何とか収まりがついたが、新学期初日から生徒指導室かよ。 

 まぁ花さんだから普通の指導ではないだろうが。

 今年も騒がしくなりそうだ。

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