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俺の毒舌幼なじみの心の声が甘々の件について  作者: 師失人 
その三~フルフェイスの転校生~
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目覚めたら拘束中でした

「起きてください金緑さん」


 何やら声が聞こえる気がする。

 誰だ? 豊穣か? 木下か? 屏風? それとも――九条院さん?

 まさかな九条院さんだとしてもありえないだろ。

 九条院さんが出てくるにしては展開が急すぎる。

 と何故か展開が急だと言葉が出てくるが。

 記憶がはっきりしない。

 家に戻って何かあったような……そう言えばネクタイピンはどうなったんだ?

 

 「金緑さん……起きてください」


 何かかが頬を叩いている気がする。


 「響お嬢様ここは強い刺激を与えてはいかがでしょう?」


 「それは断じて禁止です! 金緑さんにこれ以上の暴力は許しません!」


 やっぱり九条院さんの声だ。

 なんで九条院さんが……だんだんと意識がはっきりしてきて。

 目の前が暗いと初めて気づいた。

 夜かと思ったがその動揺で光が差し込んでくる。

 闇の帳をもたらせているそれを開けた。


 「九条院さん?」


 「おはようございます金緑さん……」


 ジャラ何かの金属がすれるような音が聞こえ、視線をそこに向ける。

 ――鎖かこれ。

 なんで右手の手首に。

 その鎖をそうように視線を流す柱に鎖が括り付けてあった。

 服装は制服のままで袖に取りに帰ったネクタイピンの姿が見える。

 俺のいる部屋は高級感溢れる物でテレビなんかで見る高級ホテルの部屋のようだ。

 

 「金緑さんご説明します」

 

 九条院さんが泣き出しそうな顔で俺に説明する。

 視線は下方をみている。


 「金緑さんはこれから九条院家に婿に入ってもらいます」


 「魅力的な提案だけど……」


 頭をよぎるアイツらの顔、裏切る気もないし裏切れないからな。


 「すいません……金緑さん……選択肢はありません」


 「そのとうりでございます。金緑殿これは九条院一族の総意なのです」


 「爺……今は私に語らせてください」


 「ですぎたまねでしたね。失礼いたしました響お嬢様」


 爺と呼ばれた髭を蓄えた、黒の執事服の老紳士はぺこりと九条院さんに軽く頭を下げる。


 「金緑さん……私のいえ……私達一族の物になってください」


 「悪いけどそれはできないよ……あいつらは裏切れない」


 「そこは曲げてもらいます。金緑さんが必要なのです私達一族には……」


 「それでも俺は……」


 「ごめんさない金緑さん。私を恨んでください私がいなければ金緑さんは……」


 「何言ってんのさ?」


 「えっ!?」


 九条院さんは初めて俺の顔を真っ直ぐ見た。

 きょとんとして目じりには涙を貯めている。

 

 「別に九条院さんがやりたくてやったわけでもないなら、恨まないよ。そうじゃないのは見ればわかるよ……」


 俺は嘘は言っていない。

 好んで加担して手を下しているならいざ知らず。

 そうでもない何もしていない人間を恨む気は俺にはない。

 甘いのかもしれないがこれは譲れない俺の考えだ。


 「金緑さん……ずるいですよ……もっと好きになっちゃたじゃないですか……私の運命相手が金緑さんで本当によかった……」


 「響お嬢様にふさわしい心の大きな御仁のようで安心いたしました。これから末永く響様をお願いします」


 ひげを蓄え得た老紳士の目を見て俺は何も言えなくなってしまった。

 おそらくこの事に好んで荷担しているであろう関係者なのだから、文句の一つでも言ってやろうと思ったが。

 その目をみて本当に九条院さんを思いやっているのだと何故かわかってしまった。

 子供のを想う親のような目をした人間に何を言えばいいのだろうか。


 「確認するけど俺に選択肢は」


 「残念ながらありません」


 そう九条院さんにいわれ、現実を受け止めきれない俺は俺を拘束している鎖のつけられた右手首を見た。

 ネクタイピンの姿が見えたが今更遅いか――結局このネクタイピンはどんな機能があったんだ?

 あれ? これってこんな形だったけ?

 見間違いかもしれないが前見た時より、ネクタイピンの校章の部分が僅かに盛り上がっている気がする。

 暫く見つめているとその盛り上がりは元に戻った。


 「どうかいたしました?」


 「なんでもいないよ九条院さん」


 俺の頭には木下の特製という言葉が浮んでいた。

 頼る物がこれだけとはマジの大ピンチだ。

 頼むぜ木下――

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