待ち受け
「何もないわよ糞虫」
『だって花さんあんな格好で迫ったんだよ! あんな綺麗な人に対抗するのはこれしか……』
そういうことか嫉妬心ってやつだな。
四人でデートしたあたりから豊穣も積極的になってはいるようだが、本音はまだその口から聞いていない。
どうやったら本音が豊穣の口から出るのやら。
まぁそれはじっくりいこう。
「まあ花さんに対抗意識でも燃やしているんだろうが、普通にメイド姿似合ってるぞ豊穣、花さんと同じぐらいにな」
「ゲロ! 当たり前よ!」
『えへへへまた褒められた』
「なんだかよくわからんが自分で食べるよ。凄いこっぱずかしいし」
「ゲロ! そう!」
『そうちょっと残念だな。新婚さん気分で胸がほっこりしたのに』
「お前の方は朝飯大丈夫なのか? 着替える時間いれるとちこくするんじゃねーか」
「ゲロそうね! 朝ご飯は食べたけど着替えてくるわ! 言っておくけど覗かないでよ?」
「普通に覗かないよ。無防備な女の子の着替えを視姦する趣味はない」
『浅井君だったら見せても良かったんだけどな……なんてね』
そう魅力的な提案を飛ばしてくる豊穣に対し平静を装う。
俺だって男のだそいう欲望はある。
だからといって欲望のまま豊穣たちを食い散らかすのは俺の紳士の部分が否定する。
俺はあの三人が好きだ。
これは嘘偽りはない。
だからこそなんだかんだでほおっておけないし、大事にしている。
だからこそアイツらとの関係は破たんしていない。
これから長く共に過ごすであろうあいつらの誰かに恥じない様に接すると、心に決めている。
「ゲロ! そのまえに」
そういって何故か自分っではなく俺のスマホを渡してくる。
「どうすればいいんだこれ?」
「何って記念に写真を撮るのよ!」
「だったお前んでいいだろ? 何で俺なんだよ」
「いいから撮りなさい! いいわね!」
そういうと先ほど同じくスカートの両端を掴み軽く会釈する。
まるで主人に挨拶をする美人メイドのような姿に、思わず心臓の鼓動が早まるが。
「分かったほら」
パシャ! シャッター音が目的を果たしたと伝えてくる。
「糞虫! 貸しなさい!」
俺のスマホを奪い取る豊穣。
そのままいじくり出した。
声をかけようとすると。
「ゲロ! 終わったわ!」
そうして返却されたスマホを覗くと。
「豊穣俺はこれにどんなリアクションをしたら正解なんだ?」
「ゲロ! 知らないわ!」
『うふふふ、これでいつも私と浅井君は一緒だね! 一歩前進かも』
俺のスマホの待ち受け画面は豊穣の写真に変更されていた。
スマホの待ち受けに気心しれた異性の写真って完全に付き合っているカップルか、新婚の熱々夫婦ぐらいなものだ。
豊穣の本心は丸聞こえだし気持ちは嬉しいが、これはアイツらが見たら……上機嫌な心声を飛ばし乾燥機のある風呂場に向かう豊穣は眺めどうするか迷ったが、せっかくの豊穣の気持ちだと言うことで、待ち受けはそのままにすることにした。
あの二人に見せないように注意しないといけないな。




