花さんの罠
「何やってんですか……花さん」
「何って僕のダーリンを出迎えたんじゃないか♪ ニャン♪」
俺に見せびらかすようにくるんと一回転。
付けてない履いてない。
唯一エプロン以外につけているのは腰の尻尾を止めるベルトだけで、プリっとしたお尻丸見えだ。
「どうだい僕の裸エプロン猫耳尻尾姿ははそそられるだろう?」
「はい……ってか! なんて格好してるんですか! 服を着てください!」
「肯定するってことは僕の体も君の守備範囲ってことだね! やったね!」
思わず出た俺の本音にガッツポーズをする花さん。
花さんは美人だしスタイルもいい、その裸エプロンともなれば破壊力は凄まじい。
さらにそれに猫耳尻尾が加われば……。
豊穣たちの過激なアプローチに慣れた俺でもここまで直接的だとドギマギしてしまう。
「でっ何でそんな恰好してるですか!」
「えええぇーいいじゃん! 新婚プレイだよ!」
「よくない! 俺とアンタはそんな関係じゃないでしょ!」
「あのしっぽりお互いの体温を確かめ合った夜を忘れたのかい?」
「子供のころ一緒に寝たというのはノーカンですよ!」
「そんな殺生な僕と君がお互いの暖かさを感じ合ったあの夜をノーカンだなんて……ちぇ! そのまま欲望に負けて既成事実作っとけばよかった!」
「あんたねえ……帰ります!」
「えーまってよ折角料理も作ったのに!」
「それにしてはやけに焦げ臭いですけど、火がつけっぱなしとかいうありがちな落ちじゃないですよね?」
「それはないさ! すでに火は消しているよ! これは料理が炭化した残り香さ!」
「過去形かい! もっと悪いじゃねーか! そんな物料理と言わん!」
「仕方ないじゃないか! 僕が作る料理はいつも真っ黒になっちゃうんだから!」
全くこの人と来たら料理を作れば消し炭を。
掃除をすればゴミの山。
かろうじてできる洗濯以外の家事は昔から壊滅的だったけど。
全く治ってない。
むしろダメ度が上がってやがる……
「そんなわけで部屋に上がって食べて僕の手料理♪」
「いやですよ! 昔みたいにあまりのまずさに気絶なんて嫌ですよ!」
「まあそういわず! お風呂にする? ご飯にする? それとボ・ク・?」
頬を染める花さんに俺は。
「じゃあUターンで!」
踵をくるりと返し玄関に体を向けたが。
「そう言わないで! 僕の初めて揚げるから! 君の初めて頂戴! 君の初めてと僕の初めてをラブラブ合体だ!」
俺の腰に抱き付きあえて理解しなようにしている言葉を吐く花さん。
「嫌ですって! あいつら近くにいるんだからそんなことになったらめんどくさいですって!」
「僕は二号でいいから! 君と子供が出来ればいいから!」
「止めてくださいって! 大体おばあさんがもう少ししたら来るんしょ?」
「大丈夫! 大丈夫だから!」
「あんたが問題なしでもこっちは大ありなんですよ!」
それでも必死に食い下がる花さん。
何か知らんがいつものおちゃらけた感じと違う鬼気迫るものを感じる。
「大丈夫だよ! それも僕の計画のうちさ! 僕はハーレム肯定派だよ!」
「それでもダメですって! おばさんに見られたらどうするんですか!」
「そんな物君に責任とってもらうだけじゃないか!」
「余計悪いわ! 俺の学校での立場無くなるじゃないですか!」
「いいじゃん生徒と先生の禁断の関係! 興奮してきた!」
「それでもあっ――」
縋りつく花さんをひっぺ剥がそうと力をいれていたが足を滑らしてしまった。
そのまま玄関先に倒れ込み。
「痛てて大丈夫ですか花さん」
右手にムニっとした軟らかい感触が、嫌な予感がしながら腕からそって右手視線を流す。
「むふふふ! 大胆じゃないか! 僕のハリが自慢のパイオツを揉むなんて! うりゃ!」
花さんはそのまま足を俺の腰に回した。
どうやら俺が花さんの上に乗る形で倒れたらしい。
「離してください!」
「やーだよ!」
もがく俺だが花さんはがっちりと腰を足で掴みどさくさにまぎれて体を動かし、両腕を俺の背に回し抱き付き。
引きはがそうとするが花さんが抵抗する。
次にピンポーンとインターホンが鳴った。
背中にジワリと汗がにじんだ。
「花ー母さんよ! 入るわよ!」
いや入らないでくれ! おばさん! 頼むから!
そんな葛藤虚しく無情に扉が開かれる気配を確かに感じた。
ガチャリやけに大きく扉の開く音が聞こえる。
「母さん! この人が僕の旦那様さ!」
何故か体勢的に見えないはずの花さんの満面の笑顔が頭に浮かんだ。




