〇ッキーゲーム
「中々有意義で貴重な体験でした!」
気づけば時刻は放課後やっと九条院さんとの密着デーは終了か。
ちょっとこれは胃に穴が開きそうだぜ。
楽しむ暇が全然なかった……これが女性の嫉妬というやつか。
男としての本能より深い生き物としての恐怖を覚えかけたぜ。
こりゃ浮気でもしようものなら……いや考えるのは止めよう。
怖い事は考えないことが一番。
怖い事は対策をちゃん練ればいいだけだからな。
むやみに怖がっても始まらないし。
「分かったから膝から降りてくれる? 九条院さん」
「いやです!」
「なんで!?」
「なんでよ! メット野郎!」
「っ……!?」
「最後の仕上げはこれです!」
そういって鞄からドリコのバッキーを取り出した。
よくある棒状の細長いクッキーにチョコレートをコーティングしたお菓子だ。
「バッキーがどうしたの?」
「当然これです!」
そしてバッキ―を口にくわえ。
俺に突き出した。
これってあれだよな?
「よくわからないんだけど……」
白々しい嘘をついた。
「何ってバッキーゲームです!」
「「!?」」
むーむーと口にくわえたバッキーを俺の顔に突き出す九条院さん。
それに二人は。
「何やってるのよ! メット野郎!」
「何ってバッキーゲームは、意中のお相手やとても親しい間柄のお相手とするものですよね? 私の愛読書乙女の恋の魔法3巻にそうありました!」
まぁ間違ってはいないだろけども。
こいつらの前でそれやったら……。
「ゲロ! 私もよ!」
そういって豊穣はサラダ味の棒状クッキーブルッツを咥え。
「私……も……やり……ま……す!」
そういって木下は竹型のクッキーにチョコレートをコーティングしたお菓子親竹の山を咥え。
俺の顔に突き出す。
「まて、お前ら! ちょっと!」
「スーパー美少女JK屏風ちゃん到着!」
このタイミングでか!
なんとタイミングの良さ。
私もヒロインよ! という屏風の気合が呼び寄せたのかもしれない
そして屏風はこの状況を見てすぐさま鞄から何やら取り出して口に咥えた。
何故か通好みのせんべいアホウケだった。
「なんだかよくわからないけど、ベストタイミング! こういうのやって見たかったのよね!」
「皆さん! ここは正室である私の独壇場です!」
「ゲロ! 何ってるのよ!」
「違い……ます……私……です」
「そうよ! こういう美味しいところは屏風ちゃんの物って相場が決まっているのよ!」
「じゃあ選んでもらいましょう! 皆さん!」
「ゲロ! いいわよ! 望むところよ!」
「受け……て……立ち……ま……す!」
「いいわよ! 私の金緑なんだから!」
そう言って四人は目をつぶりそれぞれの口に咥えたバッキー、ブルッツ、親竹の山、アホウケを突き出す。
これまたどうしたら……。
誰を選んでもこれあとがめんどくさそうだ。
そうなるとこれが正解だと思う。
まず、一口。
流れる様に連続で。
「っ!?」
『浅井君!?』
もう一口。
「浅井……君!?」
『分かってるじゃねーか金緑!』
一口。
「よし!」
『これで正室の座は頂ね!』
最後に。
「金緑さん」
「これでいいだろ」
「金緑さんこれはどういう意味でしょうか?」
三人も同じ顔だ。
俺は全員の咥えたお菓子を一口づつ食べたのだ。
かなり早い動きで食べたので、最後の九条院さん以外は自分を選んだとでも勘違いしたのだろう。
チョコレートの甘みとブリッツの塩見さらにアホウケの甘じょっぱさが渾然一体となり口の中があれな感じだが、これが俺の答えだ。
「特に一人だけと言わなかったからな。全員のを貰っただけだ。順番は付き合いの長い順」
「ゲロ! マジもののビビリ虫ね!」
『それでも、一番ゲットやった!』
「ずる……い……です」
『なるほどそうくるか、俺も爪が甘かったぜ』
「何よそれ! ……まあ金緑らしいけど」
『ちょっと期待してたんだけどな……』
「金緑さんも意地っ張りですね! 素直に私を選べばいいのに!」




