0027ある意味
「あれ、どうしたの皆?」
「実……は……浅井……君……が……告白……を……」
「木下何ってんだよ! ただこいつといると何だかんだで楽しいって言っただけじゃねーか! なあ豊穣……ってお前……」
豊穣に弁解を求めたがその目には光るものが。
「ま……まさか金緑! 豊穣に告白したの!」
「してねーよ! 誤解を招くから豊穣そんなに泣くなよ……」
「泣いてないわ! これは心のあくびの塩水よ!」
『ありがとう……こんなひどい事しかできない私と一緒にいて楽しいって言ってくれて……大好き……』
「ちなみにどんな告白だったの? 木下さん」
「それ……は――」
木下が屏風に耳打ちする。
「ああなるほど! それは告白の一種ね!
これはお前の存在を全て受け止めてやる系だわ!」
「なんだそりゃ」
マジでよくわからんのだが。
「簡単に言えば女の子の悪いところ含めて存在を肯定して受け入れたのよ! 安定の包容力ね!」
『これで、豊穣の金緑への依存はさらに加速しそうね。やっぱりライバルはこれぐらいでないと』
そう言われればそうだな。
さっきの発言を取り消す気はないが確かに豊穣の悪い所を受け入れたことになるな。
まあぶっちゃけずっと前からそうだが、言葉であそこまではっきり言ったのは思えば始めてかもしれない。
「というわけで次は私ね! さあ! ス―パー美少女屏風風花ちゃんに熱い告白をカモン! プリーズ!」
「ずる……い……です……次は……私……です……まず……誓い……の……キス……です」
◇
「いかがでした? 響お嬢様」
見慣れた車中で老紳士が話しかける。
「まずまずかと、お父様とお母さまへのご挨拶は断られてしまいましたが……」
「それはようございました。ではこれを」
「そうですね。つい忘れていました。金緑さんがいないとこれがないといけないのですね……」
見慣れたそれを手にする響。
「お辛いですか? お嬢様」
「いいえ、なれていますし、今は運命の相手である金緑さんという希望があるのですから……」
手に持ったそれを手で撫でる、つるつるした表面は鈍い光沢を帯びその僅かな輝きは、それまでの様々な思いをもたらした長い付き合いの日々を映すようだった。
「でも、本当に良かった運命の相手が金緑さんで……どんな殿方か少し心配でしたが杞憂でしたね。まだ金緑さんの目は私だけを見てくれてはいませんが、想いを込めて接していればあの本みたいに……」
「……お嬢様本当に我々の手助けは必要ないのでしょうか?」
老紳士は言葉を飲み込み出すべき言葉を変えた。
木下魚が響の愛読書の作者ウッドフィシュである事は浅井金緑を篭絡するうえで、その認知は邪魔になる可能性があるからだ。
「愚問です爺、ここまでお膳出してしてもらえば十分です」
「して、次なる篭絡策はお考えになっているのでしょうか?」
「ええそれはもちろん。爺、教師たちへの根回しはお済でしょうか?」
「もちろんでございます」
「ならいいです。爺、講師の手配を」
「どのような講師でしょうか?」
「最高峰の家庭料理が作れる講師です。やはり手作りでないと想いは伝わりませんから」
響はそれを頭に被った。
「イッテクダサイ」
響は思った早く解放されたいと。
そして金緑との蜜月に思いをはせるのであった。




