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俺の毒舌幼なじみの心の声が甘々の件について  作者: 師失人 
その三~フルフェイスの転校生~
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0025貴方は運命の相手です

「これームルームは終了だよ! 残り時間は……」


 九条院さんとわかれて学校につき、花さん進行のホームルームで伝える要件を伝えきり残った時間は恒例の自由タイムだ。

 すでに周りにクラスメイト達はおしゃべりを開始していた。

 花さんは書類を整理している。


 この人は人が見ているとちゃんとしているからな。

 後日、また書類が!? などと泣きついてくるのは目に見えているけど。


 「そう……いえば……九条院……さん……まだ……きま……せんね」


 「そうだな、大したけがは負ってないみたいに見えたんだがな」


 「でっメット野郎のパイオツの感触はどうだったの?」


 「触ってねーし見てもいねーよ! いい加減、機嫌直せって!」


 「何って言ってるのよ! 糞虫! メット野郎の秘密の花園を覗いたんでしょ!」


 『だってだって羨ましいんだもん!』


 「秘密の花園じゃねーよ! 素顔だよ! お前の言い方だと事に及んだみたいに聞こえるじゃねーか!」


 「似たような物じゃない!」


 「違うわ!」


 こんな感じに九条院さんと別れてから、豊穣はご立腹で、毒をいつもより吐きやがる。

 そんなわけでツッコんでいく訳だが。


 『だって、浅井君に間一髪救ってもえるなんて、私だってないのにずるいよ……九条院さん』


 というわけだ。

 どうやら九条院さんが羨ましいらしい。

 だがさすがに、無理があるぞ豊穣。

 普通にあと二度三度同じことをやれば確実に一回は事故ること請け合いだ。


 「浅井……さん……結局……九条院……さん……の……病気……とは……何……だった……のです……か」


 「さあわからん。見かけ的にはいたって普通だったし」


 「美人……だった……んです……よね?」


 「まあな」


 「ライバル……出現……ですか」


 『こりゃフラグだな』


 「浅井君、九条院さんの素顔見たってホント?」


 吉田さん(眼鏡美人)がそう質問する。

 クラスが一旦静かになった。

 そりゃ俺だって逆の立場ならきになるもんな。


 「ほんとだけど」


 「どんな顔だったの?」


 「一言で言えば金髪美人」


 その言葉にクラスがざわつきだす。

 「うーそ」とか「あり得なくなくね」と言葉が聞こえる。

 男子は静観、実物を見るまで保留でもするつもりかもしれない。


 具体的な事は伏せておくか、わざわざ隠しているのだから見られたら困ることがるのかもしれないし、これぐらいなら大丈夫だろうけど。

 

 「ガラガラ」


 教室の引き戸が開いた。

 クラスの視線が一点に集中する。

 入ってきたのじゃ九条院さんだ。

 いつもと同じヘルメットを被っている。

 いつもより光沢があっててかてかなので新品なのだろう。


 「九条院さん、遅刻だぞっ! 理由を聞こうじゃないか!」


 「スイマセン ソノマエニ アサイサンニ ゴヨウケンガ」


 「分かったよ! 手短にね!」


 九条院さんはゆっくり花畑でもあるく様が幻視できるような優雅な動きで。俺に近づきながら、ヘルメットの左右を押した。

 プシューと左右に蒸気が吹き出る。


 まさか、ヘルメットを取る気なのか。

 確か一人ならセーフって言ってたけど。

 こんな場所でとって大丈夫なのか?

 しかし、それにお構いなしにヘルメットを取り、ヘルメットの下にしまっていた、


 光が反射して鈍く輝く、黄金の長髪を邪魔だと言わんばかりにぐるんと頭で振り払った。


 クラスは静寂に包まれ一目で九条院さんに釘付けだった。

 俺を見つめる九条院さん。

 九条院さんの瞳は綺麗な碧眼に俺を映す。

 次に九条院さんは口を開いた。


 「浅井さん」


 「……何? 九条院さん」


 普段可愛い三人を見慣れている俺も別のタイプの美人である九条院さんに見つめられると、言葉の歯切れが悪くなってしまう。

 

 「実は……」


 そういってゆっくり俺の顔に自身の顔を近づける。

 そして勢いをつけて。


 「チュ」


 俺の唇に九条院さんは自身の唇を重ねた。

 唇に柔らかい感触が走る。

 一方俺の思考はパンク寸前だった。

 なんでまた九条院さんが――。

 まだ出会って十日もないのに――。

 混乱を極める俺に九条院さんは満面の笑顔で。


 「浅井さん。貴方は私の運命の人です。私と結婚してください」


 一息置いて。


 「なによそれ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!?」


 珍しく毒の入っていない豊穣の絶叫が響いた。



 ちょっと待て九条院さん!」


 「何ですか旦那様」


 「旦那様だけはやめてマジで、それより説明してよ理解が追い付かないから」


 九条院さんの旦那様発言で、明らかに不機嫌になる豊穣と木下の強い視線を感じつつきょとんとした表情の九条院さんにそういった。


 「そうですね。私の病気について説明が必要ですね。金緑さん」


 そうして辺りを見回すと青井に向かって手招きをした。


 「ついに俺にも春が」


 おまえこの流れでなぜそうなる。


 「でっなに九条院さん。浅井から俺に乗りかえるなら歓迎するよ!」


 「なるほど、本当はそんなこと思っていないのですね。どうせ俺なんて……というのが心の中の口癖なんですね」


 「っ!? なんでそれを……」


 何とも言えない表情で、青井は小さくつぶやく。


 「そこの貴方これは漫画の読みすぎでないですよ」


 と青井の隣の木村(男)を指さす。


 「そこの貴方新しいBL本の発売日が今日で浮足立っていますね」


 吉田さんに指を指した。

 吉田さんは顔歪めた。


 「そこの貴方今日の私のお弁当の中身は伊勢海老と松沢牛のA5ランクステーキです」


 次は太めの体格で力士を目指している利木澤だ。

 そんな感じに次々に指さしては、考えを見透かしたように言葉を並べ立てる。

 そして全員何とも言えない表情で固まってしまった。


 「これが私の病気です。私かなり重度のエンパスなんです」


 エンパス確か他人の意思や出来事を自分の事のように感じてしまう体質だっけか。


 「メット野郎! それと糞虫に口に口づけして告白するのと何が関係あるのよ!」


 未だ俺が状況を受け入れない中豊穣が吠えた。


 「豊穣さん貴方。表の声と心の声が大きく違うのですね。そんなに金緑さんが好――」


 「黙りなさい!」


 豊穣お前は知らないだろうが、お前が俺に好意を寄せているのは知ってるぞ。

 九条院さんの口を塞いでも意味がない。

 九条院さんの口を塞ぐ豊穣を見てそう思った。


 「話を……戻し……ます……その……病気……と……浅井君……が……何の……関係……が……あるの……です……か」


 「木下さんは心の声の方は粗暴な方なようですね。そうですね答えます。私は普段この病気を抑え込む特注のヘルメットを被って生活しているのですが、その代わりとなるのが運命の相手つまり浅井金緑さんなのです」


 「九条院さん何で俺なの?」


 「それはわかりません。私の一族の女性ににはまれにこの病気が発病して代々その番として、金緑さんのような殿方を婿として貰い受けてきたのです。

 

 それを私達は運命の相手と呼びます。だから金緑さんは私の運命の人なのです」


 「そんな無茶苦茶な」


 「そのとうりですが、事実なのです。運命の相手が近くにいれ私はこの病気を完全にコントロールできるのです。その力のおかげで私の一族は代々繁栄してきたのです」


 「だから……って……浅井君……は……譲り……ません」


 俺の右腕を抱き寄せる木下。

 左腕を無言で豊穣が抱き寄せた。

 お前ら。


 「ふふふ、もう無駄です。金緑さんの始めの唇は私が戴きました!」


 「多分……私……が……最初……です」


 「えっ!? そんな……この本には、初めての唇をお互い重ねた男女は必ず恋に落ちると書いてあったのに……」


 そういう九条院さんの手にはウッドフィッシュと著者名の書かれた漫画本が、思わず木下を見た。


 『懐かしい俺の処女作、その名のとうり作者が処女をこじらせたと称された痛い作品だ。俺の黒歴史だぜ!』


 九条院さんに聞かれているかもしれないのによく言えたもんだ。

 木下度胸があるな。

 その度胸が天に通じたのか九条院さんはい聞いていないようだ。

 完全にコントロールできるってのは本当らしい。


 「しかたないですね。次のプランに移行するだけです! 私には金緑さんしかいないのですから」


 「異議あり! 糞虫の意見を尊重すべきよ!」


 「なるほど、貴方も金緑さんがいないとダメなのですね。しかし、困ります。私は金緑さんがいないと女の子としての幸せはあり得ないです」


 「じゃあ選びなさいよ! 糞虫! メット野郎を取るか私を取るか選びなさい!」


 「残念ながら私の病気は運命の相手だけは心は読めません。金緑さんご自由に選んでください」

 

 「豊穣……さん……私……も……です」


 「そうだったわね! 私達とメット野郎どっちを取るの糞虫!」


 『浅井君私……信じてるから』


 選ぶっていってもな。

 こんな物答えを聞くまでもないだろうに。

 豊穣そんな心配そうに見るなよ。

 無表情でも、さすがにわかるぞ。

 心声つーか不安な感情を抱いているのが伝わてくる。


 これも例の心が筒抜ける俺の能力なのだろうか。

 そして対照的に九条院さんはじ自信に満ち溢れた表情で俺を見ている。

 木下は『ワクワク! ドキドキ!』と心の声を送ってきやがる。


 木下お前な……こんな時までぶれねーな。

 見た感じは、静かに俺の言葉を待っているように見えるからな。


 こんなギャップ需要ないだろ。

 まあ木下らしいつっちゃらしいが。

 全く屏風がこの場にいないのが不幸中の幸いだ。

 アイツがいたら物凄く騒ぎそうだしな。

 当然選ぶのは――


 「九条院さん悪いけど俺は豊穣と木下を選ぶよ」


 その時屏風が教室でしゃみしている姿が頭に浮かんだ。

 別に忘れてないのに。


 「よく言ったわ! 糞虫!」


 『信じてけど……よかった……ありがとう浅井君』


 「あり……がとう……ござ……いま……す」


 『分かりきった答えだけど、少しばかり心臓に悪いなこれ。ドキドキが止まらなかったぜ』


 「参考に理由を聞いても?」


 九条院さん――理由って言うまでもないだろうに。


 「そりゃ二人は気心知れた仲だし後――」


 「後なんですか?」


 最後のいらなかったか。

 だが言ってしまったものは仕方ない。


 「二人とも可愛いからな。九条院さんと同じぐらい」


 『えへへへへそうかな』


 『良くわかってんじゃねーか』


 「やはり二人とも心と表で大きなギャップがあるようですね。それを知って(、、、)も同じ関係が……まあいいです私が二人と同じくらいという事は脈ありですね。関係なんて今日から深めればいいのですから」


 そりゃ変わらないよ。と言いたかったが喉に押し戻した。

 後で重要な要素になる気がする。


 「そういうわけだからごめんね。九条院さん」


 「でもそれは今の話ですよね? 私には金緑さんしかいないのですから諦めませんよ?」


 「何を言っているのよ! メット野郎!」


 「そんなに金緑さんを取られたくないなら自分の口で言えばいいのに、貴方は金緑さんに依存しすぎです」


 「ッ…………!?」


 今日初めて豊穣の顔に変化があられた。

 みるみるうちに真っ赤になって。

 流れるような洗練された動きで。


 スパン!?


 「なんで!?」


 思い切り豊穣に平手打ちされた。

 マジでなんでだ!?


 「糞虫! 蠅がたかっていたわよ!」


 「だったら叩くな! 潰れたらお互い大惨事だろうが!」


 「何言ってるのよ! 糞虫! 蠅はGと同じく害虫生かしては置けないわ!」


 「余計に悪いわ! そんなもん俺の上で潰そうとするな!」

 

 『ううううう……どうして手が出ちゃたんだろ……九条院さんの言うとうり浅井君に依存し過ぎなのかな……』


 デジャブ感を感じつつ改めて豊穣を見ると顔は真っ赤だ。

 そんな真っ赤になったままの豊穣に九条院さんは肩を竦め。


 「後悔するぐらいならやらなければいいのに、困った方ですね。これが噂に聞くツンデレというモノなのでしょうか?」


 九条院さんの病気の話これで確信が持てた。

 こりゃ豊穣との相性最悪だな。


 「まあ、いつもの事だ。気にしてないぞ俺は」


 豊穣はまだ少し赤い顔のまま俺を無言で見つめて。


 『ありがとう浅井君。やっぱり優しいね。大好き』


 「豊穣さんはそれは口に出さないと伝わりませんよ」


 聞こえてるから伝わってるけどね。


 「……うるさい! メット野郎!」


 「豊穣……さん……落ち……着いて……くだ……さい……今から……私たち……の……仲に……割り……込む……のは……流石……に……難しい……です……よね……浅井君?」


 そう木下は言うが前髪に隠れた僅かに見えた綺麗な目が少しだけ、不安が交じっている気がした。


 「当たり前じゃん。お前らの中らからいつか一番を選ぶって約束したからな、その約束は破る気はない」


 「なら……いいの……ですが」


 『さすが俺の金緑だぜ!』


 ぱあと口元がゆるんだ。

 隠れている目も喜んでいる気がする。


 「ゲロ! ゲロ!」


 『浅井君ありがとう。できれば私を選んでね?』


 豊穣の声は半音上がっている。


 「ふふふふ、やはり障害は大きくないと乗り超える楽しみがありません。私にはウッドフッシュ先生の著書から学んだ知恵があります。絶対に金緑さんは頂きます」


 不敵に笑う九条院さんだが、著者兼情報元の木下のあの発言から考えて、九条院さんが何をするのかさっぱりわからん。

 これから一悶着ありそうだぜ。


 「所で君たち! 金緑君を奪い合うのは青春だからいいけど、そろそろホームーム終わるよ!」


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