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俺の毒舌幼なじみの心の声が甘々の件について  作者: 師失人 
その三~フルフェイスの転校生~
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0018フラグ

「屏風何度も言ってるだろ! 彼女を自称するのはやめろって!」

 

 「えーーーいいじゃない彼女みたいなもんだし!」


 「ちげーよ! お前このノリがないなら、可愛い部類だってのに……あっ!」

 

 覆わず出た本音に驚いて口元に手をやるがもう遅い。

 

 「金緑から可愛い頂きました! これで彼女ね!」


 満面の笑みで屏風がのたまう。

 これだから普段言えないんだような……。

 すぐ調子の乗る。

 それさえなければほんとに可愛いい見かけをしているのに。


 「とちょっと本気な冗談はさておいて、その豪華な重箱は?」


 「お前切り替え急だな。九条院さんの弁当だ。食べきれないというからご馳走なえうところだ」


 「ほんと! 私も食べていい金緑!」


 「なんで俺に聞く。九条院さんに聞けよ」

 

 「確かにそうね! 九条院さん私も食べちゃダメ?」


 「イイデスヨ ビョウブサン ミナサンデメシアガッテ クダサイ」


 「ありがとう! 九条院さん! ところで九条院さんはどうやって食べるの?」


 「コウスルト クチモトガ デルノデス」


 そういって頭のヘルメットの脇をおした。

 シャコ! とヘルメットの下部が内部に収納され顔の半分があらわとなる。

 九条院さんの顔は日に当たっていないせいか真っ白で、きめ細かい肌に映えるルージュを塗ったような赤い唇。

 ヘルメットの隙間から見える鼻はスラっとして高い。

 目は見えないがこれだけでも十分魅力だ。




 「じゃあ食べるか」


 木下も豊穣も屏風も各々声を上げて九条院さんの弁当に端を伸ばす。

 俺はあえて顔の下部を曝した九条院さんを褒めなかった。

 さすがに顔を隠した人間の顔を褒めるのは気が進まない。


 何か理由があって隠しているのだ。

 顔にトラウマやコンプレックスがあるかもしれないし、こういうものは本人が語り出しまで、触れない方がいいと言いう判断からだ。


 下手な好奇心は時に相手を傷つける事がある。

 傷つきやすい女性ならなおのことであり、慎重になっても悪くはあるまい。

 じゃあいただくか。

 すでに豊穣と木下、屏風は九条院さんの弁当を食べて顔をほころばせている。


 よっぽど旨いのかバクバク食べる3人に対し九条院さんはゆっくり優雅に食べる。

 これが育ちの違いってやつか。

 まずは何を頂くかな。


 ◇

 大満足の昼食が終わった。

 俺らが食べきるころには、クラスの視線がいつの間にか集中して熱いと気づく。

 このまでは収まりそうはないので九条院さんが食べ終わってから、許可をもらって残りをクラスの連中に上げた。


 この弁当には白米がついていなかったため俺たちは自前の弁当の白米と九条院さんの弁当をおかずにしていたせいかまだ充分に残っていて、クラスの連中でも文句を言う奴はいなかった。


 九条院さんは食べ終わると再び顔を隠してしまったので、生声は聴けなかった。

 ちょっと興味があったんだけどな。

 そうして6限目が終わった。


 そして下校の時間。

 帰り支度を整え屏風が来るのを待っていると。


 「アサイイサン」


 九条院さんに話しかけられた。

 何故か合成音なのに気持ちがこもっているきがする。


 「九条院さんなに?」


 「キョウハ アリガツゴザイマシタ アサオイサン トッテモ オヤサシイインデスネ」


 「まぁ一癖も二癖もある奴しか周りにいないからな。九条院さんが喜んでくれたらなによりだけど」


 「ホントウニ ステキナ トノガタデスネ アサイサンハ ワタシハ コレデ シツレイシマス コウモンニ ジイヲマタセイルノデ」


 「じゃあまた明日。九条院さん」


 「デハ キノシタサン トホウジョウサン モマタアシタ オアイシマショウ」


 「悪い……人……では……ない……よう……です……が……」


 『悪い奴じゃないみたいだがな……』


 「ゲロ雌ブタにして見所があるけど……」


 『九条院さんいい人だけど……』


 『金緑を好きになりかけてがる』


 『浅井君を好きなり掛けてる』


 はぁ? 何ってんだこいつら。

 九条院さんがそう簡単に俺を好きなるっておい。

 女性はそんなに簡単じゃないと思うぞ。


 「皆元気! 屏風ちゃんの登場よ! てどしたの二人とも暗い顔して!」


 「実……は……」


 教室に勢いよく飛び込んできた屏風に木下は耳打ちをする。


 「ああそういこと……九条院さん確かに金緑に気を持ったようね!」


 「なんでまた九条院さんと合ったの今朝が初めてだぞ?」


 「甘いわ! 金緑女の子は運命を気にする生き物なるの! ビビッときたらその男の子が気になちゃうんだから!」


 ◇

 「響、お嬢様。今回の学園に探し人はいらしゃったでしょうか?」


 高級感のある黒を基調とした内装が施された車内で、一人のスーツ姿の老紳士がハンドルを握りながら、バックミラーに車中に入る響を捕え話しかける。


 「マダ ワカリマセンガ……」


 「何か問題でも起こったのでしたらなんなりと、この爺響様の命令なら、業火の中寒水の中によろこんで飛び込みましょう」


 そう爺と言われた老紳士は返すが、吐いた言葉に迷いはかすかにも感じられない。

 その眼孔は忠誠心という狂気に似た焔が宿っている。


 「モンダイデハリマセン タダ ステキナ トノガタガ オリマシテ」


 「それはようございますね。響様に好意を持たれる、お幸せな殿方はどのような方でしょうか?」


 「アサイサン トイウカタナノデスガ ワタシノミカケヲイッサイ センサクセズ フツウノオンナノコ トシテアツカテイクレル ヤサシイカタデス」


 「なるほど、確かに思いやりのある方のようですね。となりますと例の人物候補(、、、、)となるわけでありますね」


 「ダト イイノデスガ……」


 「響お嬢様、気落とさずに前回の出来事は不幸な事故です。今回は望みがあるかと」


 「ワカッテハ イルノデスガ」


 「でわ、間違いがなきように、浅井殿の身辺調査をしてきましょう」


 「オネガイシマス アノヨウナメ ニハニドト……」


 「了解しました。人間性いかんでは麻酔銃を用意しスナイパーを常時配置、響お嬢様の安全を確保いたします」


 「ソコマデ シナクテモ アサイサンハ ソンナコトキットシマセン」


 「響お嬢様にこの短期間でここまで信頼させるとは、普通の男性とは確かに違うですな」


 「ワタシノ コノビキヲ トキハナッテクレル ウンメイノアイテガ アサオサン ダトイイノデスガ」


 「しかし、違った場合傷つくのは響お嬢様でございます。間違いがなきよう下準備は必要かと」


 「デワ ジイ タノメマスカ?」


 「了解いたしました」


 「ホントウニ コンド(、、、)コソワ」


 動き出した車の車内で響はそう呟いた。

 物心ついてから追い求め続けた平穏を渇望しながら。


 ◇

 「そういうものなのか?」


 「ゲロゲロよ!」


 『女の子はそういものだよ。浅井君』

 

 「そう……で……す」


 『たりめーだぞ! 金緑!』


 「そういうモノよ! 私は金緑をみてピーン来たんだから!」


 女の子独自の考えにいまいち納得できない感もあったが、俺は別の事が気になっていた。

 屏風って花畑に自由に咲き誇る花のように、誰が何を言ってもブレず本心のまま生きてるなという事だ。


 別にそれが悪いと言わないが、心と表面に明らかなギャップのある二人の心の声を聞いていると不思議でならない。

 思わず屏風に声をぶつけた。


 「屏風なんでお前は、そこまで裏表がないんだ?」


 その言葉に屏風は。


 「裏と表なんていちいち作るより本音の方がすっきりして楽しいからよ! 当然私が金緑が大好きってことも本音だからね!」


 そういって抱き付いてきた。


 「だからって抱き付くなよ!」


 腕を絡ませようとする屏風を振り払う。


 「え~~! 美少女JKの体温なんて一部の業界ではご褒美みたいな物なのに~~~」


 「どんな業界だよ!」


 「当然JKビジネス業界よ!」


 「普通にあるんかい! なんでもいいからここはボケろよ! 一応芸人志望だろが!」


 「ついに金緑が私にお笑いの指導を……コンビ結成ね!」


 「違うわ! 普通に心配するとこれか! つーか大御所芸人から指導を受けるんだろ!」


 「もう指導受けてるんだけど。送られてくるメールが堅苦しい上に、難しいのよ! まださっぱり理解できてないわ……」


 「やっぱり直接会わないとダメね」とぼやく屏風に俺は声を返した。


 「そん時は言えよ、一緒に行ってやるから」


 「やっぱり芸人に興味が――」


 「言っとくけど二人きりであって何か間違い起きないようにだぞ? 大事な女の子を一人で行かせることなんてできないからな」


 その言葉に屏風は一度動いたハシビロコウのように動きが止まって、つぎに顔がボン! とトマトのように真っ赤になった。

 漫画やアニメならば頭から煙が吹きそうなぐらいに。

 

 『き……金緑が急にデレた……落ち着くのよ私……そうだわ。素数の数を数えればいいのよ。素数は二つに割れないおバカな数字。唱えれば心が落ち着くってどっかの神父が言っていたわね!』


 そう心で言うと屏風は素数を数えだした。

 何やってるのこいつ?

 そう考える間もなく二人の心の声が飛んできた。


 『屏風ちゃんだけずるい! 私も心配されたい!』


 『くっ……こういう時、屏風みてーな行動力が俺にありゃ。すでに腹に金緑の子供がいただろうに……』


 とんでもいないことを心でいいだす木下。

 ツッコムべきなのか、と思っていたが屏風の方がおかしなことに。


 『金緑が一人、金緑二人好き! 金緑が三人好き! 金緑四人好き! 金緑が――』


 お前は素数を数ええたいたはずだろ!

 なんで俺を羊みたいに数えだしてんだよ!

 しかも、好きって連呼しているもんだからスゲーこっぱずかしい。


 『うりゃ!』


 そんな俺に木下が右腕に抱き付いてきた。

 軟かく大きな胸を押し付けてくる。

 さきほどの心の言葉もあって意識してどぎまぎしてしまう。

 やっぱり巨乳は大切ですやっぱり。

 すると左腕に薄い柔らかい感触が。


 「木下、豊穣どうした?」


 「なん……と……なく……で……す」


 『俺の乳袋柔らかいだろ! ほれほれ!』


 「Gがいたから驚いて抱き付いただけよ! 糞虫! 私をGから守りなさい!」


 『むう! 木下ちゃんに負けない!』


 次に腰に軽い衝撃が。


 「えへへ、金緑大好き!」


 とろけた顔で俺の腰抱き付き顔をすりすりと愛ネコに顔でもすりつけるような屏風。

 どうやら先ほどの羊数え俺バージョンで、気持ちを高め過ぎたらしい。


 俺ってこいつらにここまで好かれる事したっけか?

 普通にこいつらを思いやって大切に接してきただけなんだけどな……。


 「お前らなんで俺がこんなに好きなんだ我ながら疑問なんだが?」


 「糞虫は籠で飼うには丁度いいからよ!」


 『だって浅井君だし、私は大好きな浅井君がいないと生きていけないから……』


 「浅井……君……は……とって……も……優し……くて……一緒……に……て……楽しい……から……で……す……でき……れば……ずっと……一緒……に……いたい…………です」


 『ネタ補給に見かけ性格良しでユーモアがあって一緒にて面白い。こんな優良物件は、ないからな』


 「なんだかんだ言って私を大事にしてくれるし、一緒にて楽しいし。こういう人と結婚したらきっと幸せになれるもの!」


  三人の好意に眼がしらが熱くなってきたその照れ隠しに声をだしたが。

 

 「お前らの気持ちは分かったから離してくれよ。動けん」




 「「「ダメ!」」」


 全くこいつらこういう時はやけに素直だ。


 あれから三十分ほど三人抱きつかれ、解放される頃になると教室に残っている人間はまばらになっていた。


 「ねえ、聞いた? 校門前に止まってた高級車、九条院さんの家のらしいわよ! さっき九条院さんを乗せて走りさったそうよ!」


 と聞こえてきた。

 クラスの女子の会話に聞き耳を立てていたわけではない。

 興奮しながらがなしているので聞くつもりがなくとも、聞こえてしまうのだ。


 「ゲロ! メット野郎はマジモノのブルジョアらしいわね!」


 『お弁当でもいそう思ってたけど。九条院さんってすごいお金持ちみたいだね』


 「九条院……さん……は……九条……製菓……社長……の……一人……娘……です……から」


 「その会社って、今評判のコンビニの美味しい苺のムースの会社よね? 木下さんどうしてそんなことしってるの?」


 「U子……さん……と……花園……さん……に……朝……の……うち……に……連絡……して……調べて……もら……い……まし……た」


 「あの二人何者だよ! ただのアシスタントじゃねーのかよ」


 「二人……は……戦う……アシスタント……なの……で」


 『二人の前職が面白くてな、まあそういう事だ』


 戦うアシスタント謎しかねーよ!

 花園さんとU子の前職……想像できん。

 特にU子が。


 「花園さんとU子さんって、このまえの私たちのデートを観察に来てた二人よね? そんな凄い人達だったの?」


 「そう……です……その……道の……プロ……だった……人……たの……で」


 そう答える木下に豊穣が俺が先ほどまであえてつかなかった確信を突く。


 「でっ雌ブタ一号! メット野郎はなんであんなみょうちくりんのモノを被っているのかしら?」


 「詳細は……分かり……ませ……ん……断片的……な……情報……を……繋げる……と……特殊な……病気……の……ため……らしい……です……人に……移る……病気……では……ない……よう……です……が」


 「じゃあ九条院さんが言うった運命の相手って?」


 屏風が口をはさんだ。


 「それ……も……分かり……ませ……ん……ただ……この……一年……で……この……近辺……の……高校に……何回……も……転入……と……転校……を……繰り……返して……いる……よう……です」


 「ゲロ意味不明ね!」


 『浅井君が九条院さんの……まさかね』


 「大丈夫よね金緑? さすがの私でも展開が予想できるんだけど……」


 「その……とうり……で……す」


 『だからわざわざあいつらに調べさせたわけだが、フラグビンビンじゃねーか!』


 「多分大丈夫だろ。俺に人の病を治す力なんてねーし、九条院さんが探してる相手って九条院さんの病気を治してくれる男だろ。出会えれば普通に生活できるみたいなニュアンスだったし」


 「ゲロ! 糞虫!」


 「そう……で……すが」


 「そうだけど」


 『浅井君『『金緑だからな』』』


 お前らの中で俺はどんな奴なんだよ!

 その時今朝の屏風の言葉が蘇った。

 ――俺は変な女の子を引き寄せる特殊能力なんてないよな。

 多分……何故か強く否定できない自分がいた。

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