襲撃依頼
「ふふん! 準備はいいかい?」
全道は教室を出てすぐに電話をかけた。
いう案件は決まっている。
【何がでしょうか?】
「全くとぼけちゃって! 僕の花嫁についた悪い虫を落とす先制パンチさ!」
【つまり、浅井金緑を襲えというわけですね?】
「その通りさ手段は問わないけど、豊穣さんには手を出さない様に僕が手を出すからね」
全道は下唇を舐めた。
その顔には彼の本性を映すように醜悪な笑みを張り付けている。
【確認しますがやり方は自由なんですよね】
「ああその通りさ! でも顔は止めてくれよ! あんな花に群がる油虫の見てくれがどうなっても僕は構わないけど。あまり証拠を残すともみ消すのが面倒だからね! 前の時パパに怒られたからな……」
【しかし、羨ましいですよ、父親から毎月使い切れない大金が個人口座に入金されるなんて】
「ふふん! そうだろう! 僕のパパはそれだけ僕を愛しているってことだよ! もう長らく自分の口座は確認してないけど。常に億単位のお金は入っているからね! クレジットカードで使っても使っても使い切れないのさ!」
【それは結構な事で】
「そんなわけだからしっかり働いてくれよ! 賃金分ね!」
【分かりました賃金に見合う働きはしましょう】
「ふふん! それならいいのさ! あー楽しみだ、あの綺麗な顔が歪むのが楽しみだよ! 常に世界は僕の味方だからね! 初夜は壊れない程度に激しく楽しまないと! 質のいいおもちゃは長く遊びたいからね!」
趣味が悪い奴だ。
そう思うが口にはださない。
その片棒を長らく担ぎ続けた当事者である以上そんなことは言えないのだ。
【では明日浅井金緑に対し襲撃を決行します。証拠写真を添えてですよね?】
「もちろん! 君を疑っているわけじゃないけど、やっぱり自分の邪魔をする害虫が苦しむのは楽しいからね! 夏場の五月蠅い蚊に殺虫剤を巻いて退治するのと同じさ!」
【よくわかりませんがそうゆうもんですかね?】
「そういうものさ! 五月蠅い害虫を退治するのに心なんてふつう痛まないだろ? だから頼むよ! 僕の花嫁豊穣さんにたかる油虫を退治してくれたまえ! はははははははははは!」
そのまま全道は通話を切った。
全道歩き出す彼からすれば世界の全ては自分を中心に回っているのだ。
しかし、彼はしらない彼より遥か上位の者はこの学校に二人もいるという事を。




