可愛い娘
「あらプラトニックね! 流石に私達の前で公開キッスはハードルが高いか」
「まぁこれもキスじゃないか、灯の嬉しそうだし」
「確かに、乙女は好きな異性にキスをされるのが最高のご褒美だもんね!」
俺は二人の言葉を聞いてから唇を離す。
豊穣は未だ呆けていた。
額にキスとはいえ海さんと陸さんの前では聞いたようだ。
ディープキスまですませた中だというのにこの初々しさ。
可愛い奴だな。
「灯が戻ってくるまで朝食食べて待ちましょ! 大丈夫! 灯は先に食べたから!」
「まあそうですね」
そうして朝食を取り終えた頃になると豊穣が正気を取り戻した。
「全く我が娘ながら可愛いんだから、好きな人におでこにチューされただけで幸せ過ぎて呆けちゃうなんて!」
「ゲロ……」
『だってお母さんとお父さんの目の前であんなこと……』
「駄目よ! 灯! 念願の第一子を生むためにはもっと過激な事を毎日しないといけないんだから! だからもう少しダーリンに甘えて耐性つけなさい」
そして俺をチラリ当然嫌な気はしない。
むしろ嬉しい。
「じゃあ行っちゃいなさい! そろそろ遅れるわよ! 金緑君これからも灯をよろしくね! ここまで灯のモノだってマーキングすれば昨日の変な男も諦めるだろうけど」
マーキング昨日の事か。
海さんが何故が俺の首をちらちらみている気がするがやはり指で触っても異物など特にない。
やっぱり気のせいだな。
「じゃあいくか豊穣」
「ゲロ!」
『うん!』
◇
「という事があってな」
家を出てすぐに合流した木下と屏風にこれまでの経緯を話す。
当然無理やりだ。
こいつらしいっちゃらしのだが。
俺にプライベートという領域はないのだろうか?
「金緑君……もしか……して……嫌……なん……です……か?」
木下がうつむきかけたので否定の言葉を。
「そうじゃない。ただ俺のプライぺーとはどこいったものかと思ってな……」
「何だそんなこと! 当然あるわけないじゃない! それとも貴方は私たちに言えない事でもあるの?」
「まぁほとんどねーな」
思えば心の声が聞こえるぐらいしか秘密がない。
思わぬところで自分のクリーンさに驚く。
「ふふん、私そういう金緑のクリーンな所大好き!」
「おいこらいきなり抱き付くな危ないだろ」
左腕に屏風が抱き付いてきた。
右手は豊穣と繋がれている。
家から出るとすぐにべったりだ。
これから全道が何を仕掛けてくるか分からないし俺が守ってやらないとな。
「ずる……い……です……私も」
そういって木下も参戦してきた空気を読んで左腕に自分の腕を通す。
「ちょっと木下さん! 危ないでしょ!」
「駄目……です……私も……です」
「皆さんお揃いで楽しそうですね! 私も混ぜてください!」




