0012屏風とデートをしよう後
こうして変態の欲求を満たし念願の普通のハンバーガーをゲットした俺たち。
内訳は俺は普通のチーズバーガーセット飲み物はジャス……普通のコーラだ。
前のエンカウントに引っ張られるな俺。
そんな俺に対し他のメンバーは各自ポテトとドリンクが一つづつ。
U子がさっきから一言も喋らないのが気にはなるが。
それ以外に特に問題も過度なマヨネーズもない。
ハンバーガーってこういう味だったな。
前食べたモノがマヨネーズ塗れで胸やけしたのを思い出しすから、控えてきたが改めて食べると旨いなハンバーガーたまに食べるようにするかな。
そんなわけで食事をとった俺たちは店を出た。
「でっ改めて次どこにいくんだ屏風」
「次は映画館で映画よ!」
「これまた普通だな」
「デートなんてそんなもんよ!」
「でっなんの映画だ?」
「恋愛映画よ!」
「あんまり好きじゃないんだが……」
「大丈夫よ! コメディタッチだから」
「へーなんて題名なんだ?」
「エイドリアンVSエイリアンよ!」
「なんだその組み合わせ! 駄作むんむんじゃねーか!」
ボクシング映画と異星生物系アクション映画を掛け合わせたような題名に、嫌な予感しかしねえ。
【大丈夫……みた……い……です……ネット……の……評価は……高い……で……す】
我らが木下先生が早急に仕事をこなしフォローを入れる。なら大丈夫か。
この中で一番の常識人だし。
「じゃあいくか」
映画館はハンバーガ―ショップの道から歩いて数分の所にあって、中々込んでいた。
土曜日なのかだろうかカップルが多い気がする。
ふと視線を立て看板に移した。
「カップル限定特別割引……」
「そうよ! お財布にも優しい女よ私は!」
どんと胸を張る屏風。
なんだろうこの感じ、何か間違えている感がむんむんと、ここは自分を安く見せてどーすんだとでも言っとけばいいのか?
「さっ行きましょ!」
言葉も言わせずせかす屏風に俺は。
「それよりお前らはどうするんだ?」
残りのメンバーに話しかけた。
映画館の暗闇では流石にフォローは出来ないだろう。
【大丈夫よ! 糞虫! インカムには暗視対応のカメラがついているからスマホで確認できるわ!】
『ふふん。そこは抜かりないんだから、暗闇で屏風ちゃんに変な事しようとしても駄目だよ?』
「豊穣お前……普通に対面してるんだから、普通に言えよ……」
そして無駄に高性能だなこのインカム。
インカムをまじまじと見つめる俺。
「ちなみ……に……改造……した……の……私……です」
『たっぷり魔改造しといたぜ!』
木下お前まじで何者だよ。
超ハイスペックじゃねーかよ。
「いくわよ! 金緑!」
再びせかす屏風。
屏風連れられチケット売り場へ。
すると係員の若い女性からこんなことを言われた。
「カップルの証拠として彼氏にキスをお願いします」
「ふふん! キスしちゃうわよ金緑!」
『なんてね、本番は、もう少し先♪』
屏風は俺の頬に柔らかい物――唇を押し当てた。
◇それから屏風は、キャラメルシュガー味のポップコーンLサイズを買ってご満悦な顔を浮かべ、俺の手を引き客席へ。
丁度良く真ん中の段の中心近くが開いていたのそこに座る。
俺が右で屏風が隣の左だ。
フォロー組は俺の座る席に後方に座るのを確認する。
「ところでこの映画どんな内容なんだ? 普通に題名からじゃ想像がつかないんだが……」
「これは簡単に言えばボクシング映画よ!」
「まぁエイドリアンだしな……でっエイリアンはどこでからんでくるんだ?」
「それは見てのお楽しみよ。あっ始まるみたいよ」
そして屏風はポップコーンを抱え食べだす。
俺も貰ってぱくり……あまぇ。
キャラメルシュガー味なんだから当たり前だけど。
俺には少し甘しすぎだな。
屏風は食べないの? とアイコンタクトをしてくるかお前に全部やると言ってやると、前に向き直った。
【金緑君チャンスだよ! 屏風ちゃんの手を握ってみて】
花さんがインカムで指示する。
映画館で手を握るか普通にデートっぽいな。
屏風の席のひじ掛けに置かれた手を握ろうとする。
すると、握ろうとした左手がひらりと交わしポップコーンへ。
意外なライバルもいたモノである。
【なにやってんのよ糞虫! やるなら一思いにやりなさい!】
『うう……いいな屏風ちゃん……私もいつか握ってもらえるかな』
豊穣まじでその内心表に滲ませてくれよ……。
まぁいいか後でご所望のとうり握ってやろう。
【蝶……のよ……うに……舞い……蜂……の……よう……に……さす……みたい……な……動き……です】
『ボクシングの基本だぜ!』
木下それ相手を倒す系だから。
くそツッコミたいが映画館は観客は静寂を守るのがマナー。
さすがにツッコめないぜ。
【彼氏くん男の子だったらがっばと行きなさい! 年頃の男の子はそれぐらいでいいのよ!】
花園さんの声を受けてもう一度チャレンジする。
手を伸ばす――交わされる。
手を伸ばす――交わされる。
手を伸ばす――交わされる。
くっそ、ポップコーン意外と強敵だ。
その甘味で女性を虜にする強敵に夢中な屏風どうやって攻略するか……。
そんななんとも言えない攻防をしていると気づけば映画は中盤。
主人公のエイドリアンがボクシングで対決している所だ。
ヒレの生えた緑の半魚人と。
なんだこりゃ。
どうやらこの映画は異星系住人とのボクシング映画らしい。
対戦形式は天下一武道会武道会方式の勝ち抜き戦、これは第二回戦らしい。
思わず目が離せず見ってしまう。
戦いは普通のボクシングだが、時折腕に生えたひれてエイドリアンの体をかすめ血だらけだ。
面白いじゃないか屏風。俺のツボをよくわかってやがる。
――左手に暖かい感触がした。
驚いて左手を見た。
そこには屏風の手が添えられ俺の視線を確認したのか俺の手を握る。
左手に柔らい女性特有の感触が伝わる。
そして暖かかった。
女性の体温ってこんなに熱かったのだろうか。
次に屏風を見た。
屏風は映画に集中しているが、光の加減か少し顔が赤らんでいる気がする。
屏風の体が右にいる俺側に片寄ってきた――。
それを見て俺も体を屏風側の左に寄せる――。
屏風の頭が俺の体に接触した。
屏風の頭が重力に従い下方へさがる僅かな力を感じながら映画に集中した。
いつの間にか俺も体の力を抜きお互いの体にかかる重力をお互いの体で支え合う――。
何かかが溶け合うような微睡の中、映画を見た――。
皆がインカムで何か言っている気がする――。
でも聞こえない――。
邪魔しないでくれよいま気分がとてもいいんだ――。
そう心の中で呟いた――。
「金緑、金緑ったら」
なんだよ屏風いい気分なのに、もう少しこのまま……気分のいい微睡の中、屏風の声が聞こえる気がする。
でも包まれるよう微睡は気持ちよく。
もう少し浸りた――
「てい!」
「ぐふっ!?」
頭に衝撃が走る。
何だ一体。
「……軟らかい」
「そりゃそうよ乙女の柔肌の上だもの」
見上げると屏風の顔が、位置的には膝ぐらいの位置俺の視点があるつまり――。
「俺は何で屏風に膝枕されてんの?」
普通に質問した。
今思えばツッコムべきだったか。
その時はそんな余裕はなかった。
だって女の子に気づいたら膝枕されてたっら誰だって混乱はするモノさ。
「なんでって途中で金緑が寝ちゃったからこのままじゃ倒れて危ないと思って膝枕してあげたんじゃない」
『男の人を膝枕するってこんなに気分いいのね初めて知ったわ。晴れて金緑の彼女になればこれ以上の事を……ふふふふ楽しみ♪ 楽しみ♪』
「あれ映画は?」
「さっき終ったわよ」
「まじか……」
かなりの俺好みの映画だったのに、エイドリアンとET型宇宙人との対決はどうなったんだ?
ET型のボクサーの拳が光ってたのは覚えているが……その最後の覚えているシーンから見ても、かなりいいところで寝落ちしてしまった。
仕方ない絶対DVD借りよう。
「でっ金緑はいつまで私の膝を占領するき?」
『私はいいんだけど。ちょっと見せつけすぎて少し恥ずかしいな』
思わず飛び起きた。
眠気眼で忘れていたがこれは思いいきり見られているんだった。
「雌ブタ二号の豚膝の上でオネンネとはいい度胸ね! 糞虫!」
『いいな屏風ちゃん。いいもん、いいもん、次の私の番で大好きな浅井君をいっぱい膝枕するんだから』
「女の……人……の……膝枕で……寝て……いる……人……初め……て……見ま……した」
『漫画じゃ散々描いたが、リアルとなるとみてるこっちがこっぱずかしいな。後で金緑と練習だな!』
「全く困った子たちだな。教師の目の前でイチャコライチャコラと、でも僕的にグー!」
親指を立てグーサインの花さん。
「彼氏くん。中々見せつけてくれるじゃない! 後で我らの先生と予習復習ね!」
はしゃぐ花園さに対しU子は何も言わなかった。
それがなんとも不気味だ。
というか屏風とのデートが始まってテヘペロしか言ってなくないか?
変態の思考回路はよくわからん。
まぁ変態は放置しとくとして、柔らかい屏風の膝枕の感触が未だ残る、左頬を撫でた。
なでられた頬は男特有の固い感触を返す。
女の子って本当に柔らかいんだな。
男とはやっぱり違うな。
「どうしたの先にいくわよ?」
「悪い屏風今行く」
「次の予定は何だ?」
映画館から出た俺はまず隣の屏風に聞く。
「ふふふ、これで終わりよ!」
屏風は俺を正面に捕えるように体を半回転させ俺の前に出る。
『もう少し楽しみたいけど。もう我慢できないから、少し強引なぐらいが私らしいよね』
屏風は俺の唇に唇を重ねた。
俺は驚きのあまり声が出ない。
映画館を出た時に確認した時刻は3時半それから十分もたっていない。
キスがデートの終点と言う約束なのだ。
時間切れ前に終わらせるのは予想外だった。
思わず動きを止める体に、屏風の柔らかい唇から甘い吐息が呼吸と共に僅かだが吹き入れられる。
お互いに口がふさがれているだ当然と言えば当然かもしれない。
屏風はさらに強く唇を押し当てる。
さらに近づくことで女性特有の吐息はまた違った甘い芳香が鼻腔をくすぐる。
その甘い香りは、香水に代表される人為的に香りつけられたものとは違い。
がつんと男の本能をくすぐる甘美な芳香。
その頃になると俺の体の硬直は解け。
自然と屏風の肩に手を置いた。
驚きで見開いていた瞼が自然に落ちる。
視界は暗闇とう安息に包まれ、二人をついないでいる唇がやけに熱い――。
次に屏風が俺抱きしめた。
背中に感じる僅かな痛み――。
平時なら痛いと言ってしまうほどの力だ。
それからどれぐらいたっただろう――。
当然僅かな時間だろう、それは理解しているでも俺の体感時間はとても――。
どれぐらいという表現が適切なほどに――。
「ぷは」
その甘美な時間は終わりを唐突に告げる。
屏風が唇を離したのだ。
それにつられて俺も目を開ける。
俺の視線は先ほどからの冷めない余韻の熱で彼女の唇を見つめた。
「ふふ、ごちそうさま」
屏風はスタスタと踵を返し歩き出し、少し歩いてから。
「金緑楽しい体験をありがと大好き!」
そういって屏風は駆け出して行った。
それを見た花さんは。
「これでお開きみたいだね。屏風ちゃんの最後の照れ隠しのダッシュ僕的にツボだよ! 次に金緑君と合った時の反応が楽しみ!」
「中々……参考……に……なり……ました……いい物……が……書け……そう……です」
『中々見せつけてくれるじゃねーか! 俺の後で金緑とやろっと!』
「彼氏くん……正妻の先生の前で見せつけ過ぎよ……あー私も彼氏欲しい……」
「雌ブタ二号のくせに……糞虫! 次は私だからね!」
『私だって屏風ちゃんみたいに大好きな浅井君とラブラブするもん! 羨ましくなんてないもん!』
で、最後に。
「でっいつになったら金緑君は掘られるの?」
「どんな行き違いだよ!」
変態=U子は全くブレない。
これが真正の変態である。




