プラトニック
『起きて浅井君』
何やら声が聞こえる。
『こういう時はキッスは定番だよね!』
キッス? そう言えば昨日は豊穣の家に泊まったんだっけ。
つーことはもう朝ってことか。
意識は段々はっきりしてきて。目元が白くて煩わしい。
多分朝日だろう。
そのわずらわしさのあまり目を開けると。
「なにやってんだお前?」
豊穣が俺の顔を覗き込んでいた。
「何って糞虫が生きているかの確認よ!」
『ちぇ! 目覚めの口づけしたかったのに!』
そうかい。平常運転の豊穣に安堵する俺。
豊穣の服は今は制服。
昨日変なのに告白されたから、少しはこたえたかと思っていたが、特に問題はないようで何よりだ。
「糞虫! 朝餌が出来てるわよ! 後今日は私が寝癖と身だしなみ直してあげるわ! ちょっと待ってなさい」
そう言って豊穣が部屋を出ていく。
暫くすると鏡と制服をもって帰ってきた。
「糞虫後ろ向いてるから制服着なさい!」
『あわわわ浅井君の生着替えゴクリ』
ちらちらとみてくる豊穣を後目に制服に着替える。
着替え終わると豊穣が櫛で俺の寝癖を直す何故か俺の首元をチラチラ見ている気がするが、指で首触っても特に異常はない勘違いなのか?
「じゃあ! 次は餌ね!」
豊穣はそうテンション高めに俺を引いてリビングへ。
そこには海さんと陸さんが椅子に座っていた。
「でっ! 金緑君どうだった?」
「なにがです? 海さん」
「どうだってナニはナニよ!」
直球だなおい。
そりゃ夫婦の愛を確かあうるための防音の部屋を貸せばそりゃきになるだろうけど。
「特にそういう関係にはなっていませんけど……」
「全く金緑君たら草食なんだから! 家の娘のなにが不満なのよ! 灯は金緑君がいないと食事が喉を通らないぐらいベタ惚れなのは気づいているのんでしょ?」
「そりゃまあ結構最近ですけど」
「だったら――」
「まあまあ母さん金緑君の事だから何か考えがあるんだよね?」
「ただ俺は豊穣とそういう関係になるなら、ちゃんと好意を口で伝えてほしいんです」
「さすが金緑君プラトニック! 俺が好きなら口で言え話はそこからってことね!」
「思いが通じ合ってから関係を結ぶか、灯を本当に特別に思ってくれてるんだね!」
「だって灯! 愛されてるわね! これでちゃんと告白できれば念願の第一子誕生一直線よ! さっさとコクちゃいなさい! 金緑君が大好きなんでしょ?」




