スキスキ大好き
「なんだ豊穣こんな体制で……」
馬乗りの体制の豊穣のいろいろが見えてはいるが口には出さない。
セクハラになるし露骨に性的な事を言い出すのは俺的によろしくないからな。
紳士たる男子の当たり前のマナーだ。
「分からないの? 糞虫」
『分からないの? 浅井君』
豊穣の表の声と心の声の前半が重なる。
じっと俺の目を見下ろす豊穣。
「私は……糞虫の事が」
『私は……浅井君の事が』
豊穣の表の棘がある声と心の優しい声の二重層が心地いい。
「……よ! ……心の底から」
『好きよ! 大好き心の底から』
「いつも……糞虫が……き」
『いつも優しい浅井君が好き』
「どれだけ……事を言っても……くれる心が……糞虫が……き」
『どれだけ酷い事を言っても許してくれる心が広い貴方が好き』
「誰でも……なく……くれる糞虫が……き」
『誰でも分け隔てなく接してくれる浅井君が好き』
「いつも私を……にしてくれる糞虫が……き」
『いつも私を大事にしてくれる浅井君が好き』
「私の手料理を……って……で食べてくれる糞虫が……き」
『私の手料理を美味しいっていつも笑顔で食べてくれる浅井君が好き』
「私の……に……をしないで、付き合ってくれる糞虫が……き」
『私のわがままにいやな顔をしないで、付き合ってくれる浅井君が好き』
「本当に……糞虫がいないと……いけないぐらい」
『本当にスキスキ大好き浅井君がいないと本当に生きていけないぐらい』
「だから糞虫……私は私の……を使って……糞虫を……い。糞虫の……全て……」
『だから浅井君……私は私の全部を使って大好きな浅井君を愛したい。浅井君の身も心も全て……』
そして俺の右手を両手に掴み、豊穣は自身の胸に当てようとする。
それに対し俺は――
「悪い豊穣……」
俺はそう豊穣に告げた。




