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背中を

「あら灯旦那持参でお帰りなさい!」


 「海さん変なノリは止めてください。それよりこれなんです?」


 「ああこれ全道正義とかいう人からよ!」


 その言葉に豊穣が俺の後ろに隠れる気配が。


 「灯アンタには金緑君という親公認の旦那がいるんだから旦那以外からのプレゼントはもらえないわよね! だから送り返そうとしている所よ!」


 海さんは怯える豊穣を見て、頭を上下させる。

 自分の行動は正しいと納得でもしているのだろうか。


 「でもこの量ですよ結構大変じゃ……」


 と廊下の天上近くまで積み上げられた大小のダンボール箱に視線を飛ばす。


 「大丈夫よ! このまえ木下ちゃんが教えてくれたなんでも屋さんが格安でっやってくれるから! 豊穣いい友達を持ったじゃない! でも初孫は貴方が先んじて産みなさい!」


 『お母さん初孫なんて……別に嫌じゃないけどバッチこいだけどそういうのはムードを大切にしたいし……』


 豊穣は俺の後方からそんな心の声を送ってくる。


 「とまぁ、灯がやるきになった所で、金緑君お風呂はまだよね? 食事はとってくるって灯がメールしてきたけど」


 「まだ入ってないです」


 「そうじゃあ入ちゃって! 灯こっちにきなさい」


 そういって豊穣を手招きした海さんは豊穣になにやら耳打ち。

 何かは知らんがさっさと入ってしまおう。

 そう考え玄関から少し歩いて脱衣所へ。

 服を脱ぐとき採血の時の注射器の針にキズが僅かにいたむが、特に問題はない。

 そして湯船に浸かった。

 温度は少し高めで一番気持ちい温度だ。

 暫く浸かっていると豊穣の声が響く。


 「糞虫! 羽を流してあげるわ!」


 「いやいいよ! てか普通に背中と言え!」


 「いいから入るわよタオルを巻いてね!」


 そういって豊穣は勢いよく浴室の引き戸を開ける。


 「まったく別にいいのにってお前!」


 浴槽につかりつつ豊穣の姿を見た俺は余りの事に動きは一端止まってしまった。

 豊穣は頬を染めて俺と見つめ合う。

 俺に視線は上から下に流れ豊穣の姿を視界からあえて外す。

 だって豊穣の姿は。


 「なんでお前全裸なんだ!?」


 「全裸じゃないわ! 羞恥心というタオルを巻いているモノ!」


 「それ無いと同じだからな! 防御力ゼロじゃん!」


 「いいから向こう向きなさい私だって恥ずかしんだから!」


 「じゃあやるなよ!」


 「うるさいわね! お風呂では本来不自然な大人の光や衣服を身にまとわないものよ! いいから背中を流させなさい!」


 こりゃ海さんの入り知恵か。

 全くあの人は。


 「いいからむこう向きなさい! 視線の端に入っているだけでも結構恥ずかしいんだから!」


 そういつつ豊穣は浴槽に浸かって俺を外に出すように誘導して、無理やり俺を自身と反対方向に向かせる。

 俺は豊穣が入ってきたときに自身の見られると問題になる部分を隠し見られていないはず。


 「さあ流すわよ!」


 すると豊穣は俺に抱き付いてきた。


 「どうした豊穣」


 「糞虫! いいからじっとしてなさい!」


 背中に当てられる物は豊穣の薄い胸。

 それは見かけには分からなかったが感触は薄くとも柔らかく控えめであるが故に、今後の成長を予感させる。

 このままでも十分魅力的だが、その僅かな成長を楽しむのもいいのかもしれない。

 どこぞのネット情報によると貧乳はステータスらしいが、確かに貧乳には貧乳のよさがある。

 胸の大きさで女性を差別する趣味はないがそれが如何に趣味が悪いかがよく分かった。

 男はいつだって女の子の胸に虜なのだ。

 次に伝わってきたの豊穣の熱い体温と心臓の鼓動。

 お互い裸で遮る衣服のないこの場では、先ほどまで浸かっていた湯船よりも熱いとろけるような豊穣の体温もその鼓動さえはっきり聞こえてくる。

 次に超えてきたのは『好き好き大好き』何度も繰り返す純粋な好意。豊穣の心がそう言葉を発するたびに豊穣の体は少しづつ熱を上げ、聞こえてくる好意の心の言葉によって俺はどろどろに溶かされている気分だ。

 本当にそうなってしまっても構わない。

 そう思えた。

 さらに豊穣はきゅっと俺を抱きしめた。

 先ほどまでと違い腕を胸に回したことで背中にさらに強く豊穣の胸が押し当てられる。

 背中に走るぞわぞわとした本能の電流。

 ダメだ俺この場で痴態を曝すつもりはない。

 背骨を駆け上がってきた本能を意思の力でねじ伏せた。

 それから豊穣は俺に抱き付いたままだ。

 それでも豊穣は上機嫌でいつしか心の声を送ってこなくなったが、ご満悦なようだが、さすがに。

 

 「豊穣悪いが速い所背中を流してくれるか? そろそろ湯冷めしそうだ」

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