対価
それから豪勢な懐石料理を皆で食べ採血をした。
そうしたら封筒に詰めた金銭をくれた。
しかも十万。
さすがに採血だけでこれは貰い過ぎだと、頑なにこたわったが。
これ以上の価値が君の血にはある。娘とお友達との遊興費に使ってくれと彼方さんに是非とも言われてしぶしぶ受け取った。
なんでも近々九条院さんの心を読む能力を使った仕事があるらしい。
俺が受け取った10万の何十倍もの対価を得られるらしい。
しかし、俺に渡したこれ以上の対価は学生の身分で渡すと金銭感覚が崩壊しかねないから10万という金額らしい。
それでも貰い過ぎだとは思うが是非ともと強くいうのでしぶしぶ受け取ったが、これは銀行行だな。
父さんと母さんの仕送りは金額に毎回大小開きはあるがたまに馬鹿みたいな大金を振り込んでいるので、それなりに資金はある。
俺は特に金のかかる趣味は持ていないし、外食はファストフードぐらいだ。
金はたまる一方、そしてこの定期収入。
たまにはこいつらをファミレスにでも連れて行ってやるか。
金があってもファミレスとは庶民的過ぎるな俺……まぁ金銭感覚が狂って浪費家になるよりましではあるが。
それ以前に舌の肥えた九条院さんの舌にあう名店という奴には俺には全く縁がない。
後で九条院さんに聞いてみよう。
俺の払える範囲でだが。
そんなこんなで食事と採血が終わると俺たちは車の乗せれそれぞれの自宅へ送られていった。
でも俺は自分の家ではない。
豊穣の家だ。
「つまりお前の家に泊まれってことだろ? 怖いから」
「違うわよ! 今日は糞虫観測の日なのだから家で観察するのよ!」
『うん! そう今日は絶対一緒にいて』
なんだそりゃ今日の本心隠しは随分と無茶苦茶だな、なんだよ観察日って定期的にやっているような言い草だが、当然初登場ワードである。
「まあお前が無茶苦茶なのはいつもの事か」
「ゲロ! 入りなさい命令よ!」
「へいへいお邪魔しまーす」
俺が開け慣れた豊穣宅の玄関を開けるとそこにはダンボールと小包の山が俺たちを出迎えた。




