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俺の毒舌幼なじみの心の声が甘々の件について  作者: 師失人 
その二~最高のキスしよう~
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0011屏風とデートをしよう中

「面白かったわね! 金緑」


 「まぁ確かに」


 リトルさんまの漫才を見終えた俺たちだがまだ演芸ホールはでていない。

 この後の握手会で芸人と握手をしたいと屏風が言うからだ。


 「それにしても結構長い列だな」


 「そりゃそうよ。関東での人気はいまいちだけど関西の人気は凄いからね。東京に近々進出するからきっともっと人気出るわよ!」


 「普通に実力者かよ。お前の事だからもっとマイナーなところに行くと思っていたが」


 「そりゃそうよ! 気になっている異性とデートするのに、一般受けをしないモノは流石に選ばないわよ」


 「お前にそんな一般感覚があるとは少し見直したぜ」


 「そうよ! そうでしょ! さぁ私の惚れなさい! キスしなさい! ハグしなさい!」


 仁王立ちで両手を広げる屏風。


 「すぐ調子のる。そういうとこが悪い癖だぞお前」


 「ちぇ、仕方ないわね。もう少しで私たちの番だしね」


 それいから屏風とたわいない話をしていると暫くして俺たちの番が来た。


 「おおきに! 今度は美女美男のカップルでんか!」


 近くでみるリトルさんまは二人とも出っ歯だった。

 しかもどう見ても前歯は入れ歯。

 某ものまね芸人を彷彿とさせる。


 

 片方の低身長の方は明るい顔を浮かべているが、もう片方の高身長の方は無表情だ。

 低身長のほうがリトル一号。

 高身長の方がリトル二号と言うらしい。



 どっかで聞き覚えのあるネーミングだと白々しい事を考えていると屏風が声を上げた。


 「わぁ本物のリトルさんまだ!」


 はしゃぐ屏風。

 そのテンションのまま手を握り、ぶんぶんと上下に揺らす。


 「彼氏さん。幸せもんやなこんな可愛い子彼女にして!」


 「いや彼女って――」


 「そうよ自慢の彼氏なんだから!」


 「おい、屏風……」


 屏風はアイコンタクトを送ってくるが、事前打ち合わせゼロのなのでよくわからない。

 彼氏のふりをすればいいのか?


 「そうなんです。こいつは中々可愛い奴でラブラブってやつです」


 上付きすぎてめっちゃ恥ずかしい。


 「ね! ラブラブでしょ!」


 俺の右手を自身の腕に絡ませ、胸を押しあててくる。


 「ちっリア充め!」


 ずっと黙っていた。

 高身長の男の方がとんでもないことをいいだす。

 それに対し俺はいつもの癖で。


 「えぇええ、この場で言うセリフ!?」


 「素人が俺たちのまねごとをするな!」


 怒りをあらわにするリトル二号。

 声質的にマジ切れだ。


 「その発言一ミリも笑えねーからな! これがプロの実態恐るべし芸人業界!」


 「ちっ素人が いっちょまえに偉そうにツッコみやがって!」


 「普通に笑えんわ! 芸人らしくボケろよ! 芸人じゃないの!?」


 「また始まったか、こいつ少し病んでてね。気にしないでくれ」


 「普通にえせ関西人かよ!」


 「当たり前じゃないか!」


 「何が当たり前だ! もう少しキャラ守れよ!」


 「ハハハ、面白い彼氏やね。マジで二人でこっちの業界こん?」


 「この人を完全に落としたら、二人でコンビを組む予定です!」


 人懐っこい表情を浮かべるリトル一号に対し、リトル二号は鬼の形相といった表情で俺たちを見ていた。


 「殺す」


 リトル二号が何か呟いた気がした。


 ◇

 「それにしても、リトル二号だっけ感じ悪い奴だったな……」


 「確かにそうね。病んでるとは聞いていたけど……」


 「普通にそんな奴のライブに誘うなよ……見直して損したぜ……」


 「何言ってんのよ大丈夫でしょ! あんなことで本気で怒る奴なんていないわよ!」


 「そりゃそうか」


 その時は深く考えなかった。

 今思えば、もっと注意するべきだった。

 普通ならしない事をするのが病んでいる証拠なのだから。


 「次行きましょ! 私パフェ食べたいもちろん金緑のおごりで!」


 「まぁいいけど、一応デートだし」


 「一応って何よ!」


 「すまん、いつもの癖だ」


 「金緑、貴方には私の魅力をたっぷりと教え込んであげるわ!」


 【お二人さんだったいい所あるよ!】


 「本当ですか満開先生」


 【ここから歩いて数分の所でカップル限定メニューが有名なカフェがあるよ】


 「そういうわだから行くわよ金緑」


 「へいへい」

 


 花さんの進めるカフェはかなり近くにあった。

 歩いて5分もたっていない。

 店内に入って椅子に座ってメニューをみた。

 目の端にフォロー組5人の姿が映る。

 店内はそこそこ混んでいて俺たち7人が座ると店内の席が全て埋まった。


 「でっ屏風何頼む?」


 「そりゃもちろんこれよ!」


 屏風が指さした物は。


「カップル限定スペシャルパフェ天国と地獄盛り?」


 「ええそうよ! 店員さんこれお願いします!」


 「俺の意見聞かないの? いいけどさ」


 それから数分で問題のスペシャルパフェが運ばれてきた。

 天国に黄色カスタードクリームと白いポップクリームを主軸にした。

 オーソドックスな物だが普通のパフェの2倍ほどの大きさ。


 当然とばかりに屏風の前に。

 そして問題の地獄盛りは俺の元へ。

 これ男気見せろってことだよな……。

 灼熱地獄を体現したような。

 赤いソースが鼻腔をくすぐりむせた。

 臭気が辛い。


 「どうしたの金緑」


 「……お前な。仕方ないか……」


 プルプル震える手でスプーンを持ち掬って一口。

 ッ――――――――――――――――!?

 辛ぇえええええええええええ。


 突き刺すよな辛さに加え辛みは舌に纏わりつき、急いで飲んだお冷の水は辛みが移っているようにすら感じる。

 正に辛み地獄。


 複数使われた辛みのスパイスたちは、一つにまとまる事で、痛みのハーモニーを奏で口内を蹂躙する。


 「大丈夫、無理なら食べなきゃいいじゃない」


 「だ……大丈夫だ」


 今日は屏風とのデートなのだ。

 そんな時に弱きは厳禁だ。

 スプーンを振い真紅の牙城を崩していく。


 大きさ的には屏風の食べるパフェと同じ大きさだが、数倍の大きさにさえ思えてくる。

 それでも掬い喰らう掬い喰らい。

 半分ほど食べたが。

 

 「ちょっとトイレ行ってくる」


 限界だった。


 トイレでこれでもかと口を漱いだが、口の辛みの残り香はなかなか取れない。

 それでなんとか落ち着いたので戻ってきていると。


 「あれ無くなってる」


 俺を苦しめた灼熱の牙城は器の上から完全に姿を消していた。


 「あれなら食べていたわよ」


 「マジで大丈夫なのか?」


 「意外と辛いの好きだからね。お腹いっぱいだから私の残りのパフェ食べちゃっていいわよ!」


 ありがてぇ、屏風が女神に見えてきた。


 『うふふふ、そのスプーンは私の使っていた物よ! さあ味わいなさい! 私との間接キスを!』


 ……まぁいいだろう。

 今は間接キスの事より口内を甘味で塗りつぶしたい。

 そそままパフェをかき込んだ。


 「甘めぇ」


 ここまで甘味って心を癒すと知らなかったぜ……


 「美味しかったわね」


 「地獄盛りがなければな」

 

 「そう、私は美味しかったけどな」


 『間接キスも含めて』


 「それ引くわ。いろんな意味で引くわ」


 カフェを出た俺ちは、腹ごなしに散歩を楽しんでいた。

 フォロー組の5人は未だ店内それもこれも、U子がジャンボパフェを食べきっていからだとごねたせいだ。


 いい大人がマジでごねるシーンは筆舌(ひつぜつ)に尽くしがたい。

 そんなわけでU子がパフェを食べ終わるまで暇になったのでそこら辺をㇷ゚ラプラと言ったわけの時間つぶしだ。

 そい言えば聞くことあったけ、今がちょうどいいか。


 「そういやさ、なんでお前は俺の好意を抱いてんだ。ここまでお前に好かれる事したっけ俺?」


 「それはね~……やっぱり秘密~」


 『きっと覚えてないわよね。金緑は普通にしていたんだろうから。私からすれば大きな事だったんだけど』

 

 無邪気に笑う屏風を見ながら考えてみるが。

 一向に答えは出ない。

 俺の記憶では屏風との初めての出会いは。


いきなり俺を呼び止めた屏風がボケだしたのでついツッコミを入れてからだ。

 その後から妙に懐かれ今に足る。

 やべぇマジでわからん。


 まぁそれもこいつと付き合っていればいつかはわかるだろう。

 こいつが俺に向ける好意は嫌じゃない。


 【浅井君……終わ……り……ました……合流……しま……しょ……う】


 屏風「終わったってよ。合流しようだって」


 「えぇええ!? もちょっと楽しみたい。仕方ないえい!」


 俺にの腰に抱き付く屏風。

 

 「急に抱き付くなって」


 「いやよ! 金緑ニュウムを取り込ませてよ!」


 「なんだの、そのブルトラマンの必殺技みたいなよくわからないモノは」


 「ぶぅううう、ノリが悪いぞ!  いいから抱き付かれてなさい」


 屏風は抱き付きから体制を変えて腕を絡ませご満悦の様子。

 屏風の体って軟らかいな。

 などと思いつ。


 「へいへい、じゃあ行くか」


 「で、次どうするんだ?」


 フォロー組5人と合流した俺達。

 次の行先を屏風に尋ねる。


 「そうね、時間的に食事どきだけど、私はパフェでお腹いっぱいだし」


 「そうか、俺は少し減ってるけど」


 「じゃあ、そこのハンバーガショップに皆で入りましょ」


 「バーガショップか、この前の変態店員のせいでいいイメージがないんだが……」


 「変態店員って何?」


 花さんが質問してきたのでざっくばらんと説明した。

 

 「ごめんね。こいつの身内が迷惑をかけて、実はその子この子の妹なのよ」


 「テヘペロ♪」


 もうし分けなさそうに言う花園さんに対してU子は舌を出してかわい子ぶるが、スルーを決め込む。

 俺の直感が言っているこれツッコんでも喜ぶだけだ。

 お前の妹かい納得だよ!


 「まあいいや、また変態とエンカウントなんて奇跡もないだろう入ろうぜ皆」


 皆を引き連れ店内へ。

 俺が先頭ポジションだったので代表して俺が注文をしたが奇跡は早々と現れた。


 「男性のお客様ですね! 810セットがお勧めです」


 満面の笑みで答える女性店員だが。


 「ちょっと待て! どっかかできいたセリフですけど!」


 『金緑がハッテンごくり』


 その妄想やめろって言ったんじゃん屏風。

 俺はそいう趣味はないからな!


 『個性的な店員だな』


 普通の感想の豊穣。

 

 『ニヤニヤ』


 木下それ意味が一瞬わからんから。

 普通の反応豊穣だけかよ……。


 「すいません810セットてどのような内容ですか?」


 事情を知らない花さんが不思議そうに質問する。

 これ聞かなくていいやつだと思いますよ。


 「810セットはマヨネーズマシマシでマヨラーには嬉しい一品となっています。ドリンクはカルピス一択です」


 「だってさ、どうする金緑くん」


 最低のメニューじゃん。

 俺を肥えさせるつもりか、当然俺は。


 「じゃあこのチーズバーガセットを……」

 

 「810セットですね!」


 「いやだからチーズバーガセットを……」


 「810セットマシマシですね!」


 「この野郎……なんで変態は俺に白濁した物を食わせたがるんだよ!」


 『それが腐女子だからよ!』


 屏風それフォローになってないからな!


 「でわ! 810セット白濁激盛りでよろしいですね!」


 「違うわ! 普通のハンバーガーをよこせ!」


 「男性に出すバーガーは810セットしかありませんぷい!」

 

 頬を膨らましそっぽを向く店員。

 こいつ話通じねぇ。

 

 「ごめんね。彼氏くん」


 「何がですか?」


 花園さんの意図が分からず聞き返す。


 「実はU子の妹なのよ。この子も」


 「納得だよ!」


 「そんなわけだからまかせて」


 そう言うので花園さんに任せる事にした。

 U子は先ほどと同じくテヘペロの体勢を撮るが無視を決め込む。

 こいつら姉妹めんどくせぇ。

 

 「任せろって、話通じる相手なんですか?」


 正直な感想を述べる俺に対し。


 「大丈夫、変態の扱いには慣れていから」


 「そりゃそうですが……」


 「まぁいいから任せて、任せて」


 変態店員に向かって花園さんは。


 「ひさしぶりね。マヨネーズプレイは順調なようね」


 「あっ花園さん。お久しぶりです。801セットですか?」


 「相変わらずね。プレイ中すまないけど。普通のハンバーガセットを注文するわ」


 「えぇええええ~~~~嫌です~~」


 この野郎、普通に苦情入れてやろか、と思った矢先花園さんが切りだす。


 「プレイってのは焦らす事も大切よ」


 「どういうことですか?」


 小首をかしげる変態。


 「プレイのご褒美は焦らされれば焦らされるほど嬉しいものよ。だから今は我慢して次にお客さんにぶつけるのよ!」


 「なるほど! それいただきます! 我慢プレイでため込んだ私の白濁液を男性にぐふふふふ」


 不気味に笑う変態からくるりと回転し俺に言った。


 「ほら、話がついたわよ」


 「大丈夫なんですか? 被害者が俺から変わるだけじゃ……」


 「大丈夫だから、後言っておくけど我慢するのは無期限よ! ドMな貴方のぴったりのプレイでしょ!」


 俺の疑問に対し花園さんは、変態にさらに言葉を重ねる。



 「はぃい! 花園お姉さま!」


 今にもブヒーと言いそうな蕩けた声で変態が叫ぶ。

 おいおい変な性癖に目覚めかけているじゃねーかよ。


 「これで被害者はでないわ! これで勝手にプレイだと思ってくれるから」


 「は……はぁ」


 身もだえする変態店員に改めてチーズバーガセットを頼んだ。


 


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