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実行

「では……お願い……します」


 そう言って木下は俺の腕にその体を任せて力を抜いた。


 「じゃあやるぞ」


 そのまま俺を木下を膝裏と背中に手をあて抱え上げる。

 話し合いの結果今日は様子見として木下をお姫様抱っこで登校することになった。

 他のメンバーは後日という形で収まった。なぜ最初が木下かというと、俺の要望だ。

 木下はこのメンバーで一番背が小さくて軽いからお姫様抱っこの感覚をつかむにはぴったりだ。

 感覚もつかめないまま急にやって腰を痛めたり、落としたりするのは流石に、その点木下は軽いからそういう危険は少ない。

 

 「どうだ木下?」


 「凄く……いい……です」


 『これがお褒め様抱っこ、散々描いて自分でやるのは初めてだが、すげーまじでお姫様気分だぜ! となるとこれは必須だな!』


 木下は俺の首に手を回す。

 木下の手はすべすべで柔らかくとても小さい。

 木下って小さくて可愛らしいな。

 そう思った。

 しかしこれは。


 「魚、顔が近すぎるんだが」


 木下が俺の首に手を回したことで、木下の視線は俺の顔にむけられている構図だ。

 木下の顔は真っ赤でつられて俺の顔も熱くなるのを感じる。

 少し動かしただけお互いの唇が触れそうだ。

 

 「駄目……です……このまま……で……お願い……します」


 『流石の俺もこれはドキドキするぜ』


 「そうかじゃあ――」


 「てい!」


 「痛って」


 頭に軽い鈍痛。

 どうやら屏風の仕業のようだ。


 「なんだよ! 屏風」


 「ちょっと時間がかかりすぎこのままじゃ遅刻するわよ!」


 そうなのか。

 それじゃ仕方ない。


 「金緑さん凄い見られてますよ! 早く私もしてほしいです!」


 「ゲロ! 糞亀ね!」


 『早く私もしてほしいなでもこんなにみられちゃうのわ……でもしてほしいな』


 そう言われれば視線を感じる。

 まぁこの程度慣れっこだがからな。

 そのまま歩き出した。


 「金緑君……もう……少し……ゆっくり」


 「悪い魚、これぐらいか?」


 「これ……ぐらい……です……できれば……このまま……キス……を……お願い……します」


 この状況でか、流石木下先生である。

 チャレンジャーだ。

 だが時と場所を考えてほしいものだ。

 通学中お姫様だっこで登校してキスまでしたら。

 誰かがちくって絶対に問題になる。

 まぁこの状況問題つっちゃ問題だけど。

 そんなわけで断りの言葉を述べる。


 「さすがにこの状況では無理だ諦めろ魚。キスだったら後でしてやるから」


 「では……これで……我慢……します」


 そういって木下は俺の首にやわらかい感触がした。

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