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朝起きると

その日は俺はカーテンの隙間から漏れる朝日で目が覚めた。

 目はつぶったままだが目にはいる光がうざったい。

 それに耐え兼ね目を開けると。

 そこには豊穣の顔があったどうやら寝がえりでも打ったのだろう。

 

 「こうしていれば本当に綺麗な女の子なんだけどな」


 そういいつつ豊穣のほほつつく。

 指先に柔らかい感触が伝わる。

 豊穣の頬は思いのほか柔らかくて、程よい弾力がある。

 若い時に肌は水を弾き弾力があるというがこれがまさにそれなのだろう。

 それが妙に気持ちよくて暫く突いていると。

 ハッと我に返る。


 「こんなところ豊穣に聞かれたらことだな」


 「何が事なのよ?」


 「何って豊穣が大人しくしていれば抜群に可愛い女の子なんだなって……って豊穣起きたのか」


 ばっちり聞かれてしまった。

 やばい恒例のアレが来そうだ。


 「そうありがと……」


 あれ照れ隠しで拳が飛んでくるかと思ったのだが……。

 普通に頬を染めて嬉しそうだ。


 『えへへへへ浅井君ごのみの顔なんて照れちゃうよ』


 厳密にはそう言ってはいないのだがな……まぁ似たような物か、豊穣の綺麗な顔を褒めたのだからな。


 「そうか、てっきり鉄拳が飛んでくるかと思ってひやひやしたぜ」


 「そうね! 糞虫! 一発いっとく?」


 「普通に遠慮する。と言わけだどいてくれ」


 「駄目よ!」


 「なんでだよ!」


 「今日はもう少し虫枕で眠りたい気分なのよ!」


 「言い訳が無理やりってレベルじゃねぇ」

 

 『だって浅井君ともっと見つめ合いたいダメかな?』


 そうくるか普通に断れないじゃないか。

 俺だって美少女からの見つめ合いたいという要求に異論はない。

 ただ俺の精神が持たないので長くは無理だろうが。


 「わかった気が済むまで付き合ってやる」


 「ゲロ! 糞虫にしては殊勝な心がけね! そういうわけよ私の瞳を見つめなさい!」


 その言葉に思わず照れてしまう。

 だれだって美少女にこんな事を言われればこうなってしまうのは避けられないだろう。

 だがやらない事には許してくれそうにない。

 俺はじっと豊穣の瞳を見つめた。

 大きな黒の瞳がキラキラと輝いているのが良く見て取れる。

 女の子の瞳なんてじっくり見たことはないのだけど。

 この瞳の輝きは豊穣そのものの輝きなんだなとすっと頭に浮かんできた。

 如何に着飾り悪ぶっても本質は完全に隠すことは出来ないのだろう。

 豊穣の瞳を見ているとそう思える。

 昔からどれだけ酷い毒を俺に浴びせてきても目だけはいつもキラキラしていた。

 だからこそ俺は豊穣を見捨てられなかった。

 その綺麗な目で見つめられてしまうとどれだけ酷い毒を浴びせられても、許してしまう。

 それぐらい豊穣の目は純粋で綺麗だった。

 それをまじかで見て今更ながら気が付いた。

 次に豊穣の目じりに涙が薄っすら湧き出してきた。

 あふれる涙は量を少しづつ増え始め今にも零れそうだ。

 思わず豊穣に声をかけた。


 「豊穣何か気に障ったか? 涙が出ているけど……」


 「ゲロ! なんでもないわ糞虫!」


 『えへへへへ、だって今だけは大好きな浅井君は私だけの物なんだもんつい嬉しくて』


 やれやれ俺の毒舌幼なじみ様は困った奴だ。

 凄い可愛いけど。

 毒ばかり吐いて心は甘々。

 今日も今日とて俺は舌幼なじみ様の要望に付き合うのだった。

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