夜
そうして夜だ。
就寝しようとする俺の横には豊穣の姿が。
なんでいるかというと豊穣がそう要望してきたからだ。
当然心の声でだが、表の豊穣は毒を吐いていただけだ。
豊穣は幼い時から定期的に俺と一緒に寝たがる。
少し前までは毒を吐いてまで俺と一緒に寝たがるのか全くの謎でだったが、今は理由を知っている。
どうやら不安な時に一緒にいたいみたいだ。
こいつはこいつなりで乙女なんだなと思った。
表の豊穣からは想像がつかないな。
そんなことを考えていると豊穣の声が。
「ゲロ! 寒いからもう少し引っ付きなさい!」
『浅井君体くっつけて浅井君の体温を感じながら眠りたい』
「はいはい好きにしてくれ、まだお前起きてたのか」
「ゲロ! そうよだからその黒光りする腕を貸しなさい!」
「だからG扱いはやめろ!」
全くこいつはデレる時が増えてきたが、相変わらず辛辣な毒を息をするように吐きやがる。
まじで心の声さん少しの間でいいから表と交代してくれませんかね。
と思ったところで無駄の一言。
人間は無駄を楽しむ動物であるが、無茶事を考えてもしかたがない。
自分が出来ない事は望んでも叶う事はまずないのだ。
というわけで今俺ができる事するだけだ。
ゆっくりと右腕を豊穣へ近づける。
豊穣はその腕を抱え俺の肩に頭をかけた。
「ちょ……豊穣近い……」
「異論は認めないわ!」
『むふふ、浅井君腕枕♪ ああ浅井君の匂い♪ いい匂い♪』
豊穣はご満悦で、頭を擦り付けてくる。
マーキングのつもりなのだろうが、ここまで密着されるとさすがに意識して寝れないのだがそのむねを言葉に出す。
「ちょっと離れてくれよ。寝れないから」
「ゲロ駄目よ!」
『駄目いっぱい私の臭い付けるの!』
あいからず砂糖を吐きそうだ。
仕方ない付き合ってやろう、暫くすれば豊穣も飽きて寝るだろし、そのまま俺は目をつぶった。
結局豊穣は一時間たっても眠りにつかず。
時計を確認してから暫くしてやっと寝息を立て始め。
それから記憶はあやふやでいつのまにか俺も寝てしまった。




