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どこにもいちゃダメ

「そうして今は家というわけだ」


 「誰と話してるの糞虫?」


 「いや別になんでもない。それよりなんでお前は当たり前のように俺の家で料理を作ってんだ?」


 「さすが糞虫ね! 質問に質問で返すなんて流石虫!」


 『だってねぇ。予行練習だよ』


 相変わらずの豊穣の心の声の甘さに砂糖を吐きそうだ。

 あれらから俺たちが岐路について豊穣が俺の家に上がり込み今に至る。

 皆は用事があるとかでさっさと帰ってしまった。

 そうして俺たちは家に二人きりそういうゲームだと確実に何かあるが、俺と豊穣がそういう関係に今なる事はない。

 何だかんだで俺たちは超がつく奥手、事におよびなどまずあり得ない。

 まぁ簡単に言えば俺が優柔不断すぎて選べないだけだが。


 「まぁいいや旨いの頼むぞ」


 少し考えていた俺だが豊穣にそう声をかけた。


 「ゲロ!」


 『うん! 腕によりをかけるね!』


 そういって豊穣は一端俺に背を向けるが再び俺を視界に収める。

 そのまま俺を見つめて。


 「糞虫」


 『浅井君』


 「どうした豊穣?」


 「もう勝手に飛んでいかないでよね」


 『もう勝手に居なくならないでね』


 なりほどそうか。

 九条院さんの所にって戻ってこないのかもしれないって心配なのか。

 だから今日の晩飯も俺を繋ぎ止めるために。


 「豊穣ちょっとこい」


 俺は豊穣を手招きする。


 「何よ糞虫!」


 豊穣が近づいてきた所で俺は優しく豊穣を抱きしめた。


 「ちょっと糞……浅井君」


 豊穣は動揺して素がでるがそのまま俺は無言で豊穣を抱きしめる。

 豊穣の暖かさと柔らかさと早まる鼓動を感じる。

 女性特有の鼻孔をくすぐる甘い香り。

 そのまま豊穣を抱きしめ豊穣に囁いた。


 「安心しろよ。もうお前を置いて勝手にいなくならないから、たとえお前を最後に選ばなくても一緒にいてやるから、お前みたいな問題児を受け止められるの俺ぐらいだからな」


 「浅井君」


 耳に近づけた顔をひき豊穣の顔を見ると目じりには涙が見て取れる。

 豊穣は目をつぶり唇を尖らす。

 そのまま俺も……なんか変だぞ。

 視界が目をつぶってないのに黒いきがするって。


 「豊穣火止めろ! 焦げてるぞ!」


 「ゲロ!」


 『そんなこんなタイミングで』


 結果フライパン一つが焦げ付くという少ない被害で済んだ。

 だが豊穣は一見無表情だが心の声の方はご立腹だ。


 

 『すごくいいムードだったのに!』


 『もう一度大好きな浅井君と甘いキスができたはずなのに!』


 『私のバカバカ! なんで焦げ付きやすい料理から目を離すのよ!』


 『むううううううう!』


 と一部抜粋してこの通りだ。

 それを無表情で送ってくるまじでその感情表に出ない物か。

 出てくればきっと可愛いだろうに。

 そんなため息を一つついて


 「まぁ後でしてやるから」


 「ゲロ! そんなものいらなく……ないから!」


 『ホント! 絶対だよ!』


 「肯定ってことだな。それより腹が減ったんだが……」


 「ゲロ! そうね!」


 『うん! 愛情あふれ出る程ギチギチにするね!』

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