魔王
モコと別れて数日、魔族のため食料を犠牲にしていたレジェンドに限界が来た。
その時にある人物と出会う。
その人物とは?
モコと別れて数日が経った。
俺は相変わらず魔族と争わずに一人ぶらぶらと旅を続けている。
思った通り、こちらが攻撃をしなければ向こうから襲ってくることはない。
しかし魔族を倒して、合成素材やらを取って買い取ってもらわないとこっちの生活もあるのだが、向かってこない敵に牙を向けるほど非情ではないので俺は、樹にできている果実や魚を釣って焼いたりなど自炊で何とか補っている。
たまに森の中で珍しい果物などを見つけると高額で買い取ってくれる店に売ったりしてお金を稼いでいた。
「・・・・・・流石に辛いよな」
今の生活に限界が見えてきた。
ほぼ毎日木ノ実や果物だけで、魚は釣れないことがほとんどだ。
俺はとぼとぼと歩いているが、あまりの空腹に視界が霞んできた。
「や、やばい。誰か食べ物を・・・・・・」
とは言うがここは森の中。
人なんて滅多に出くわさないし、この世の中は非情だ。
倒れてる人に食べ物を分け与えるほどお人好しなんて一握りだ。
俺はもちろん同じ目にあっていたら助ける。
実際に助けたこともあるが、その人はお礼も言わずにすぐさま逃げていくという、助けてもらう人間もまた非情なのである。
嫌な世の中だ。
「あ、これマジでやばいやつだ・・・・・・。 モコ、ごめん。先に逝くわ」
俺は倒れて意識が飛んだ。
「・・・・・・か?」
誰かが俺に声をかけている気がする。
耳だけ意識があるせいか、頭に声が入ってこない。
「・・・・・・わね」
何を言っているかわからない。
蚊の鳴くような声だけが俺の耳に入る。
そして、俺は深い眠りについた。
美味しそうな匂いで俺は目がさめる。
「ここは・・・・・・」
起きると見覚えのないベッド、大理石の壁。
見るからにお金持ちの家だろう。
それにしても一体誰が。
その時ドアが開いた。
「あ、お目覚めですか」
そこにいたのは美しい美女・・・・・・だが、その背中には黒い翼があり、頭にも鋭いツノが生えていた。
人間とも魔族とも言い難い。
「た、助けてくれてありがと。君は?」
「積もる話しもあるでしょうし、とりあえずお食事にしませんか」
彼女はそう言って暖かいシチューを皿によそって俺に出してくれた。
ベッドの前にある小さいテーブルに置いてくれた。
「ありがとう。頂きます」
俺は一口シチューを含み驚いた。
今まで食べたどのシチューよりも美味しかった。
「お味はどうですか?」
彼女のその言葉には美味しいと言わせる絶対の自信がある口調と表情だった。
これだけ美味しければそりゃ自信持って聞けるだろう。
もちろん、
「美味しい。こんな美味しいの食べたことないよ」
「ふふっ。ありがとうございます」
彼女は優しく微笑んだ。
「ごちそうさま」
「おそまつさまでした」
俺は彼女の自信満々のシチューを美味しく頂き、本題に入った。
「ところで、君は冒険者か?」
「いえ、私はーー」
俺は彼女から予想外かつ衝撃的な答えに絶句した。
『私は魔王のエフデと言います』
「っ!?」
「お、落ち着いてください。あなたに危害を加える気はありません」
エフデはアセアセと焦った俺を必死に宥める。
「魔王ってもっと俺の何倍も大きくて、ゴツい化け物みたいなイメージをしていたんだが・・・・・・」
「私のお父さんはそうでした」
「魔王にも両親がいるのか」
「もともとはお父さんが魔王で、お父さんは先月定年で魔王を引退し、娘の私が継ぐことになりました」
なんか会社みたいな組織だな魔王って・・・・・・。
「そんな魔王がなんで俺を助けてくれたんだ」
「そうです。レジェンドさん、私たち魔王の組織に入りませんか?」
「・・・・・・は?」
魔王の勧誘に困惑するレジェンド。
果たしてレジェンドは魔王の勧誘を承諾するのだろうか?