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不思議な島を散歩してたらいろんなやつと会った

2-1


 なんか面白いこと起きねえかなぁ。などと考えていた。なんとなく、道端に生えていた猫じゃらしを摘んで道を特に目的もなく歩く。今日は今のところ一人でぶらぶらしている。渉が生まれ育った島はもう渉の庭のようなものだった。冒険心を宿して挑戦した難所はいくつか未踏の場所はあるけどね。でも、いつか攻略してやる!

 そして地図を作ろう。制覇の証にな。

 ククク。

 のどかな田園風景。やはり生まれ育った島だからか、この自然ばかりの景色の中にいると穏やかな気持ちになる。

 道を歩いていると向こうの方から人が歩いてくる。誰だろう?あの人は・・・・・


「清じゃねえか。」


「よっ。」


 清が声をかけてきた。清はいまいち何を考えているか分からないところがある。まぁ変わったヤツだ。同い年なのでまぁ立場もだいたい同じだし、こいつの成績を見て俺も安心しているところがある。


「おい。何か失礼なことを考えてるんじゃないか。」


 うっ鋭い。清のくせに。


「いやいや、平和だなぁと思ってさ。」


 訝しげな顔をする清。


「猫じゃらしか。うちの猫が猫じゃらしに目がないんだ。」


「へえそうだったのか。」


 そうなのか。遊びに行った時に俺が一方的にじゃらつかせてもらってる猫。今度猫じゃらし持って行って遊ぶか。


「これをお主に付与しよう。選ばれし者よ。」


 俺は芝居がかった口調で言った。


「いや、いらん。」


 カチーン。意地でも受け取らせてやる。


「いいから受け取れって。清んちの猫も後期高齢期でメタボぎみだろう。運動させたほうがいいぜ。」


 神妙に聞く清。渉教授の弁舌は絶好調だな。


「それに猫じゃらしは群生して生えるが、清んちの近くにはないぜ。この季節にしか生えないしな。」


「分かった分かった。おかしなやつだな。なんでそんなに受け取らせたがる。押し売りに弟子入りでもしたんじゃあるまいな。」


 俺はは猫じゃらしを清に渡した。やったぜ(意地)。


 そのまま何となく別れたが、後ろから声が清に投げかけられた。


「渉。これやるよ。」


 そう言って投げられた物をバシッと渉は片手でキャッチした。


「今度家に遊びに来いよ。」


 八mくらい離れた所から清が言う。


 渉は笑みをこぼし、片手を上げて返事をした。とてつもなく澄んだ青空と白い雲の下、道を行く渉。


 手を開くとそこには赤色のルビーみたいなおはじきがあった。顔の近くまで持ち上げて、透かしてみた。濃密な赤色の景色。片目をつぶって太陽を見てみた。濃い朱色が俺の網膜及び水晶体を太陽光線から守ってくれた。良い子は真似しないでね。


  おはじきを手で弄びながら歩いた。川に差し掛かった。アーチを描いた年季の入った橋が架かっている。その橋から下の小川を眺めていた。

 小魚が沢山泳いでいた。穏やかな気候のせいか渉は眠くなってきた。

 なんでだろう。ここんところすぐ眠くなるような気がする。

 確かこの島に縁のある英雄と呼ばれた人もよく突拍子もないところで眠っていたとかなんとかな。確か病名があるらしいな。いや、風土病とかじゃなく。なんだっけ。


「シュ・・・・シュプレコールだったっけ。」


 橋の欄干にもたれかかりながら、ひとり言。

 今日は何しようかなぁ。


「~~~~~~だよ。渉君。」


 暴走機械を伴って現れたのは久尊寺博士だった。ごちゃごちゃとした機械に乗って、久尊寺博士は彼特有のアルカイックスマイルで笑ってた。

 やれやれ。こののどかな風景に騒がしい人が来た。ネジや歯車がポンポンはじけていて、オイルが漏れまくっている。気分としては大型猛獣に至近距離で、あれ?こいつ食ったらまずいかも?と思いとどまるような感じだ。分かりやすく言うと大型トラックが至近距離で急ブレーキで鼻先5センチで止まった感じだ。勘弁してくれ。


「なんだよ。ハウルの動く城かよ。」


「ふむ。あれはいい映画だな?」


 久尊寺博士にしては普通の感想を言う。


 ガチャンガチャンとまた向こうからもう一つ黒っぽい装甲の機械が暴走してきた。乗っているのは黒いゴスロリを着た女性だった。恐ろしい形相だった。

 うわぁ。

 こわぁ。

 やばぁ。


「今度は何をしたんですか?久尊寺博士。黒繭さんがすんごい怒ってますけど。」


 美人が怒るとものっすごく怖いんだなぁ。


「何をしたかと聞かれれば天地解明、私に答えられないことはないので答えよう!」


 上機嫌?で手を腰に当てて、胸を張った満開の笑顔だった。この人は黙っていれば悪くない顔だちなのだが・・・。久尊寺博士の笑顔は俺には満開のラフレシアのように見えるね。危険信号しか感じないぜ彼の笑顔には。何にも知らない女子には別だろうけど。

 どうでもいいけど、もうすぐそこまで黒繭さん来てるんだけど。


「渉さん!その暴虐変態変人イカレクレイジーマッドサイエンテストをそこに留めて置いてください!!」


 狂っているって意味が何個か重複していますよ黒繭さん・・・・

 はぁ・・・・俺はため息をついた。


「実験で星まで行けるロケットを作っていただけなのだ。まァ暇つぶしだな。」


「だからと言って家まで解体するバカがどこにいますか!!」


「許してくれたまえ黒繭くん。遊びのためなた家など解体してしまうものだよ。」


 やれやれ。天才の論理にはついていけないな。

 ぎゅるん!突然振動を始めた久尊寺博士の操るロボットの機体が次の瞬間、フルスピードで加速始めた。

 狂ったバネ機械のようぼうんぼうんと音を立てて、猛スピードで離れて行き、なんと切り立った崖を登り始めた。

 渉横を黒繭の乗った機体が通り抜ける。しかし、久尊寺ほど機体捌きが習熟していないのか、渉に機体のフレームがぶつかった。


「あっ。」


 渉の手からおはじきが飛び出て、ちゃぽんと小さな飛沫を立てて、川に落ちた。

 橋を渡って、崖を登る久尊寺をギリリと歯ぎしりをして見ている黒繭。黒繭の機体じゃどうやらあんなクレイジーなマネはできないらしい。単に危ないのでやらないだけか知らないけど。

 機体から、黒繭が降りる。黒い機体から降りた、黒繭はやはり黒ずくめの服を纏っていたが、ずいぶんと人間らしさが増した。同じ目線で話せるからかな。

 すたすたと渉の所に歩いてくる。


「ごめんなさい渉くん。私としたことが、あのクレイジーに心を乱されたせいでぶつかってしまって。何か落としませんでしたか?」


「ああ。いいんだ。ただのおはじきだから。無価値無価値。」


 俺がこういうけど、黒繭はやはり申しわなさそうな顔をした。


「まぁ・・・どれだけ無価値と言われようと私はそれでは気がすみません。どうかこれを受け取ってください。」


 そう言ってバスケットから、クッキーの小包を取り出して渉に渡した。


「気にしなくていいのに。まぁ久尊寺博士はもうちょっと気にするべきだけどな。」


 この渉の言葉に黒繭は笑った。


「これ、黒繭の手作り?」


「ええ。そうです。」


「わーい。ありがとう。俺、黒繭の作るものなら何でも食べちゃうよ。」


「まぁ。渉さんったらお上手。」


 二人で笑って、その後黒繭は籠付きの馬車に乗る令嬢にようにロボットに乗ると去っていった。令嬢というにはおてんばさんな人だけれども。そういや黒繭は友達が少なかったけど、最近は普通に他人と話しているし、その悩みのような悩みでもないようなものはどうやら解決したのかなぁ・・・・・


 手には簡素な包に入れられた袋いっぱいのクッキーがある。ありがとう黒繭。


 これからどうすっかな。清んちにいって止まっていたゲームの続きでもするかな。あの新マップの探索が途中で止まっていたんだった。あいつの家の猫と遊んでやらなきゃいけないし、あいつの妹にも、結構会っていないような気がする。

 俺は鼻歌交じりに歩きだした。


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