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Second Life  作者: 永澄 拓夢
第1章 『Game Start(進帝高校編)』
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第1章 幕間 『本来の同行者』

第一章においては舞台袖でのお話となる回です(ゆえに25.5話)。


**********



 ユカリンのコンサート公演も終わり、ホールから多くのファンが満足した表情で退散していく。

 そんな群衆の様子を、ひときわ高い塔の上から眺める影が二つあった。

 片方は表情の乏しい、短い黒髪の青年。服装は真っ黒なフード付きコートに真っ黒なズボンといった、百人に「この人のイメージは何色か」と尋ねれば百人が「黒」と答えるような様相をしている。髪色も相まって全体的に黒で統一されているようだが、そのコートの襟首にのみ白い羽のようなモコモコとした装飾が施されており、その部分が外見のアクセントとなっている。

 もう片方は口を尖らせた金髪の青年。年齢は黒髪の方と近いように見える。髪型が少々独特であり、右半分は短く、左半分は肩程までの長さで、その前髪をピンでとめているといったようなものになっている。服装はシンプルなパーカーにダボダボのズボンといった、田舎のヤンキーのような様相をしている。

 先に口を開いたのは黒髪の方だった。


 「見つかったか?」


 金髪の方へと向けられたその質問からも察せる通り、この二人は何かを探している。高い場所から辺りを見渡しているのも、おおかたそれが目的であると言えるだろう。

 質問を投げられた金髪は、しかし返答を急ぐことはなく、一度口の中にあった風船ガムを膨らませ、それを破裂させてから黒髪に応じた。


 「んーにゃ」


 否定を表す言葉をかみ砕いたような、投げやりな返答をした金髪は、それ以降に言葉を続けることなく、再び探しものへと集中し始める。

 黒髪の方も慣れているのか、大して金髪の態度を気にする様子もなく、「そうか」とだけ返すと、こちらも再度黙々とした探しものへと戻る。

 二人が目で追っているのは、人気急上昇中のアイドルであるユカリンのアイドルコンサートが行われたホールから退場していく人々。つまり二人は、誰か探し人をしているということになる。

 用事があって知り合いを探しているのか。だとすれば、なぜわざわざこのような、人がごった返して特定の人物を探すのが億劫になるような場所で探そうと思ったのか。連絡を取り合うとか、連絡先を知らずともタイミングをズラすとか、やりようはあったはずだ。

 それができなかったということは、探しているのは知り合いではないのか。

 あるいは、知り合いであったとしても、このタイミングでなければいけない理由でもあったのか。

 しばらくすると、金髪の方がなにかを見つけたのか、膨らませていた風船ガムを破裂させてから「おっ」という声を漏らす。

 それに反応した黒髪が、今度はしっかりと逆側を向いていた金髪の方へと振り返り、再度同じ質問を繰り返す。


 「見つかったか?」

 「イエス」


 先ほどとは違い、金髪の返答は肯定を表すもの。

 黒髪は金髪の横に並び立つと、金髪が指さす先を見据える。

 その先にいたのは、女性と共に辺りをキョロキョロと見回しながら、なにかを嗅ぐ仕草をしつつ移動する、高校生くらいの男性だった。


 「本当に来ているとはな」


 探し人を見据えながら、ホッとしたように、あるいは呆れたように、しかし無表情のままで溜息を漏らす黒髪。

 そんな黒髪とは対照的に、先程までつまらなそうに風船ガムを膨らませていた金髪は嬉しそうに笑顔を浮かべながら言う。


 「ははっ‼ まぁアイツはユカリンが好きだったからな‼ しゃーねぇわ‼」


 探し人は見つかった。

 ならば、普通であれば次の行動は当然――――


 「あの女、アイツのカノジョじゃね? 冷やかしに行こうぜ」


 そう。会いに行くことになるだろう。

 しかし、提案を受けた黒髪の反応はよろしくない。


 「あのな。見つかって嬉しいのは俺も重々承知だけど、今回は”見つけるだけ”だって決めてたろ?」

 「あー、そーでしたー。かーーっ‼ つまーんねっ‼」


 黒髪の言葉を受け、現状では探し人に会うのはマズイということを思い出した金髪は、やるせなさをどうすることもできず、投げやりに叫びながら、塔の上にて大の字で仰向けになる。

 そんな金髪を一瞥してから、黒髪は再び探し人に視線を戻す。

 探し人はもう一人の同行者であろう同い年くらいの男性ともすでに合流し、三人で笑いあいながら歩いていた。

 黒髪はその光景を眺めながら、ほんの少しだけ口元に笑顔を浮かべ、呟く。


 「それにしてもよかった。いなくなる前、ヤツはなにか思い詰めてる様子だったから」


 黒髪にとっては独り言だったが、間近にいたということもあり、金髪がそのセリフを拾い、続ける。


 「そーだなー。アイツ、なーんも相談せずに唐突にいなくなっちまうってんだから、困ったやつだ。随分と遠くに来たもんだな」


 数秒の沈黙。

 ひと仕事終えたような余韻が、二人を包む。

 しかし、二人にとって大変なのはこれからだ。

 緩んだ空気を引き締めなおすかのように、真剣な表情で、金髪が話を切り出す。


 「んで? 結局どーする? アイツがこの街にいること、親父……ボスには言うか?」

 「……いや、やめとこう。ここにヤツがいるってことは俺とお前だけの秘密だ」

 「……でも時間の問題だぜ。ウチの情報網は侮れない。ここもすぐに見つかる。その後には追っ手チームだってすぐに組織されて、つかまりゃアイツは『脱走者』。ひどけりゃ『裏切者』としての制裁を与えられる」

 「わかってる。だからその前にケリをつけるんだ」

 「つまり……アレを実行に移すっつーのは決定ってことでいいんだな?」


 金髪が、喉を鳴らしながら黒髪の返答を待つ。

 先ほどまでの、少々不真面目さが目立つ態度から一転した金髪を見ても、彼の言う『アレ』というのがいかに重く、あるいは難しいものなのかが察せられる。

 そしてそれは当人に含まれる黒髪も当然理解しており――――


 「ああ」


 黒髪は、ひとつ深呼吸をすると、意を決して告げた。


 「アレを近々実行に移す。ヤツをこのまま『上』に処理させたりしない。必ず、連れ戻す」


 彼らの覚悟が実行に移されるのは、あとほんの少しだけ先のことである。

舞台袖でも、物語は動いています。

あらゆる思惑が、見えないところでも渦巻いています。

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