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陽下の散策道

 戸棚の端の方に置いてある瓶の蓋を開けるなり、ソルは眉間に皺を寄せた。

「……む」

 何やら1人で問答したようにかぶりを振って、瓶を元の位置に戻す。

 彼の日課は、ひょんなことから、普段とは異なった様式での幕開けとなった。


「ほう。茶葉を切らしておったか」

「申し訳ありません」

 空の茶器を手に取って眺めるアルシャに、ソルは深々と頭を下げた。

 彼の主人はこれといった食事を摂らない代わりに、とにかく紅茶を愛飲する。もはや紅茶が主食なのではないかと疑いたくなるほどだ。

 彼女に弟子ができてからは、外からよく持ち込まれるようになった茶菓子を食する機会も増えたものの、それでもやはり紅茶を嗜む姿を目にする回数の方が圧倒的に多い。

 紅茶は、もはやなくてはならない生活必需品なのだ。

「すぐに調達して参ります」

「おはようございますー」

 ソルが踵を返そうとしたところで、彼の背後から聞き慣れた少女の声がした。

「あれ……ソルさんが本じゃないって珍しいですね。何かあったんですか?」

「おはよう、シオン」

 ソルの姿を見てきょとんとするシオンに普段通りの挨拶を贈り、アルシャは手にした茶器をテーブルの上に戻しながら言った。

「紅茶を切らしてしまったという話をしておったのじゃよ」

「紅茶、ですか?」

 そういえば師は頻繁に紅茶を嗜んでいた、ということを思い出し、シオンは肩から提げていた鞄を最も傍にあった椅子の上に置いた。

 中から杖を取り出して、それを腰のベルトに挟み込んで固定し、続ける。

「それは一大事ですね」

「まあ、大した問題ではないよ。今からソルが買出しに出ると言っておる……」

 そこまで言って、何かを思い付いたらしい。アルシャは一旦言葉を切ると、シオンの方を向いた。

「……そうじゃ。シオン、良い機会じゃから、御主もソルと一緒に外に出てみてはどうじゃ」

「え?」

「御主の知らない世界を直に歩くのも、良い勉強じゃ。此処とは違って色々と制約はあるがの、悪い経験にはならんよ」

 幻灯書庫の『扉』は、数多の世界へと開かれている。

 自らの住む世界だけではない。書庫を介することで、様々な世界へと足を踏み入れることができるのだ。

 それは、幻灯書庫に住む魔女だからこそ許された特権のようなものであった。

 それぞれの世界には、それぞれの理がある。普段から世界書を通じて数多の世界を知る彼女たちだからこそ、為せる所業わざなのだ。

「儂には此処を動けん理由があるからの、その分御主が『外』を歩けるようになると、儂らとしても色々助かるのじゃよ。……歩き方については、ソルが教えてくれる。何も心配せずに、観光だと思って行っておいで」


 書庫の内側から外へと『扉』の通り道を繋ぐには、通り道を繋ぎたい世界への道を正確にイメージする必要がある。

 故に、存在を知らない世界へは『扉』を繋ぐことができないのだ。

 世界を自力で渡るには、最低でも1度はその世界へと足を運び、その場所を直に目にしていなければならないのである。

 ソルとて、それは同じだ。

 彼の知らない世界へは、彼は行くことができない。

 もっとも、彼にしてみれば外に出る理由などごく限られているのだから、それでも何の不都合もないわけなのだが。

「他の世界の人が、勝手に出入りできないようになってるんですね」

「……そういうことだ」

 説明に対するシオンの感想に、彼は相槌を打った。

 この少女は、教えたことを素直に聞いて理解しようとする。物覚えも、出来具合の方はまあ置いておくにして、決して悪い方ではない。

 最初の頃こそ、何故一介の魔道書が将来の主となるであろう者を教育しなければならないのかと思ったりもしたのだが。こういう役目も悪くはないと、今では思っていた。

 どうやら。彼女が此処に来て、変わったのは我が主だけではなかったということらしい。

「最初は、私が『扉』を繋ぐ。決して私の傍から離れるな」

「はい」

 ソルに差し出された左手を、シオンはしっかりと握る。

 血の通わぬ書物であるはずのソルの掌は、不思議と人肌並みの温もりがあった。

 重厚な作りをした観音開きの木製扉が、ゆっくりと開かれていく。

 外から差し込んでくる光に飛び込むように、シオンはソルに手を引かれて扉の外へと足を踏み出した。


 白煉瓦の街道に沿って、古めかしい煉瓦の建物がずらりと並んでいる。

 等間隔に設置されている街頭は、建物同様に古いようで黒の塗装がすっかり色褪せてしまっている。

 行き交う人の姿は、それなりに多い。買い物籠を下げた女性の姿が最も目に付くことからして、此処は街の商店街か何かなのだろう。

 建物の中には、壁の一部がショーケースになっているものや、旗や植木等で飾られているものがある。何の店なのかは彼女が立っている位置からでは分からなかったが、それなりに明るい雰囲気を湛えていることが分かる。

 扉を抜けてシオンが最初に目にしたものは、そういう情景だった。

「もう離れても良い」

 景色に見とれていると、ソルから声が掛かる。

 繋いでいた手を離して、ソルは辺りを顎で指し示すように首を軽く回す仕草をした。

「紅茶は、基本的にこの街で調達している。それ以外にも必要な物資があれば、一部の特別な品以外は大抵此処で揃う」

「特別な品、ですか?」

「魔法の儀式に用いる品の類だ」

 例えば宝飾に用いている宝石。綴世器に使用しているさざれ石。

 魔女が身に着ける衣裳を誂えるための素材の数々。

 特別な魔法を扱う際に必要になる霊薬、など。

 そういった品は、その道に明るい者の手を介さなければ手に入らないのだ。

「……この世界には、お前の世界同様に『魔法』の概念は存在しない。これから先、お前が1人でこのように『世界』を渡るようになった時は、まずはそのことを念頭に置くように心掛けろ」

「魔法がない世界にいる間は、魔女の力は使うなってことですね」

「そうだ」

 もっとも、今のシオンには満足に扱える魔法のひとつもないのだが。

 ひとまず今はそれだけ覚えていれば十分だ、とソルは彼女に背後を見るように促した。

 シオンが振り返れば、そこには入口を閉ざした煉瓦造りの建物が建っている。

 窓もなく、傍目からでは中に入れるのかどうかすら分からない雰囲気を纏ったそれは、扉に『OPEN』と記された木の札を下げて、両脇を観葉植物の小さな鉢植えで飾っていた。

 今し方、2人が出てきた幻灯書庫の建物である。

「此処が、この世界から書庫に戻るための『扉』だ。開けば、いつもの場所へ繋がっている」

 場所によって造りが違うのだな、とシオンは思った。

 確か自分の世界では、白い漆喰の建物だった。観葉植物の鉢はなく、自転車の銅像のような置物が出入口の傍らに置いてあるだけの外観だったはずだ。

 共通点は、窓がないことくらいだろう。あの部屋には窓が存在しないので、それが関係しているのかもしれない。

 ソルは通りに沿ってまっすぐに歩き出した。

 人の波に紛れても、魔道士風の格好をしたソルの姿は目立ち、すぐに見分けが付いた。

 浮世離れしている、とはこういうことを言うのだろう。魔法使いが存在しない世界では、明らかに異世界の住人であることを主張しているかのような雰囲気を醸し出しているのだ。

 これでよく不審がられずに歩いていられるものだ。

 シオンの疑問は、ほどなくして解消されることとなった。

 やや道幅が広く、道が幾つも分かれている場所まで来ると、ソルは歩みを止めた。

 目的の店まで来たという雰囲気には見えないが──

「よう、ソル。お前さん、また来てくれたんだな」

 立ち止まったところで、彼に話しかけてくる者がいた。

 傍の飲食店を経営しているらしい、料理人シェフの格好をした若い男だった。

「お前さんがいなくなってから、御婦人方が大騒ぎしてたんだぜ? 見逃したー、ってさ。今日は、長くいてくれるのか?」

「……普段通りですよ。あまり家の方を空けるわけにもいきませんので」

「そうかい。そいつは残念だ」

 知人同士なのか、普通に遣り取りされる会話を耳にして、シオンは小首を傾げながらソルの傍らへと寄った。

「あの。お知り合いですか?」

「私は、此処で曲芸を演らせてもらっているのだ」

 回答になっているようなないような、そのような返事をソルは返してきた。

「紅茶を調達するには、此処での資金が要る。……流石に定職に就くわけにはいかないのでな、これが最も堅実な方法なのだ」

「……はあ」

 要は路上パフォーマーの真似事のようなことをして日銭を稼いでいるということなのだろうが、果たしてそれは堅実的と言えるのか。

 しかし、確かにそれならば、浮世離れした格好をしていても何ら不思議に思われることはないだろう。衣裳だから、の一言で十分に通用する。

 傍でシオンが見守る中、ソルは懐から小振りのナイフを何本も取り出して、真顔のままジャグリングをし始めた。

 意外と、器用だ。

 ほどなくして、辺りでわあっと歓声が上がる。

「ソルだ! ソルが来た!」

 あっと言う間に、2人の周囲にはそこそこ大きめの人垣が出来上がった。

 どうやらパフォーマーとしてのソルは、此処ではそれなりに人気があるらしい。

 投げていたナイフを残らずキャッチして、ソルは胸元に手を添えて観衆に向けて深々と一礼した。

 沸き起こる拍手の嵐。いつの間にかソルが足元に用意していた空の袋の中に、次々と小銭や紙幣が投げ入れられていく。

 続けてソルは、今し方投げていたナイフを顔の前に翳した。

 広げた左の掌でナイフの刃を撫でるような仕草をして、ふっと息を吹き掛ける。

 ぼっと炎に包まれるナイフの刃。観衆から歓声とどよめきが入り混じった声が上がる。

 先程と同じように、ナイフを1本、また1本と器用に宙に投げていくソル。

 美しい炎の輪が描き出されたところで、再度観衆からは歓声が上がった。

 つい見とれていると、ナイフの1本を唐突に放り投げられた。

 ナイフは反射的に掴まえたが、刃の鋭さと炎の熱さに思わずその場に落としてしまいそうになり、シオンは目を丸く見開いた。

 何事かとソルの顔に注目すると、ジャグリングは続けたまま真面目な面持ちでこちらのことをじっと見つめている彼と視線がぶつかった。

 投げ返せと言われているような、気がする。

 無言の訴えを聞いたような気がしたシオンは、彼に向けてえいっとナイフを投げ返した。

 回転しながら飛来したナイフを、ソルはその場で1回転をしてから器用に受け取った。

 盛大な拍手と共に、増えていく見物料。火が消えたナイフを手中に収めて頭を下げるソルの足元には、随分と膨らんだ袋の存在がある。

 本当に、曲芸で稼げるんだなあ……

 真面目で堅物な魔道書の意外な一面に、目が丸くなるばかりのシオンなのであった。


「ソルさんは、どうして普段は本の姿でいるんですか?」

 大道芸で稼いだ資金を片手に歩みを進めるソルの後方を付いて歩きながら、シオンは尋ねた。

 ソルの顔は広く知られているせいか、道行く人に声を掛けられたりはするものの、引き止めようとする者はいない。

 ゆっくりと目的の店へと続く道を進みながら、ソルは彼女に答えた。

「私の役目は、司書としてアルシャ様が行う作業の助力をすること。アルシャ様はそのために私を御作りになられた」

 主が求める形で貢献することこそが、道具の役目。

 自分は必要に応じて人の姿を取ることもできるだけの魔道書なのだと、ソルは言った。

「書である方が、都合が良いからだ。それ以上の理由はない」

「……何だか淋しいですね。それって」

「……どういう意味だ?」

 あくまで顔は前を向いたまま、胸中の目をついと横へ向けるソル。

 シオンは小走りでソルの横に並ぶと、ソルの横顔を覗き込むように見上げて、

「お話をするなら、顔が見えた方がいいなって思いません?」

 ──この少女にとっては、人の姿を取る存在ものは皆が等しく人となるのだろう。

 誰かと対話をし、笑い合うことを、等しく幸福になるものと信じて疑っていないのだ。

 人間でない身には酷くナンセンスで、理解し難い感情論であると言える。

 しかし。

 アルシャが時折口にする話を、ソルは思い出す。

 違い合う存在もの同士だからこそ、理解し合おうと考える想いが書庫に住まう者には必要不可欠なのだと、彼の主は言う。

 それは数多の世界を見渡し生きる魔女だからこそ、出てくる言葉だ。

 アルシャの言葉も、シオンの言葉も、根底にある考えは相違ない。

 本当に、魔女の考えることは、いつの時代も──

 ソルは、口元に間近で見なければ分からない程度の微笑を浮かべた。

「……お前が私の主となった時、お前が私にそのように命じたのならば、私はそれに従おう」


 魔女の考えることは、いつの時代も、心に直接触れる掌を持って心を揺り動かそうとしてくるのだ。


「やあ、いらっしゃい」

 閉じられた扉を開くと、ふわりと丸みを帯びた茶葉の芳香が2人を包み込んだ。

 小さな喫茶店のようなその店は、カウンター席の前に多種多様な茶葉を納めたガラスのショーケースを誂えた作りをしている。ショーケースがカウンターテーブルを兼ねているのだろう。如何にも茶葉の専門店といった装いの落ち着いた雰囲気の空間である。

 店主と思わしき初老の男がテーブルを挟んだ向こう側でティーカップを磨いている。彼はソルと目が合うなり、目尻に刻まれた皺を深くして彼を出迎えた。

「いつも御贔屓に。……おや、今日は可愛らしいお連れさんがいるんだね」

 妹さんか何かかい? と問われて、シオンはびっくりして首を左右に振った。

「いえっ、私は同じ場所で働いているだけで……」

「はは、そうかい? こんな可愛いお客さんは大歓迎だよ。ゆっくりと、うちの紅茶を楽しんでいっておくれ」

「マスター。いつもの茶葉を」

 ソルは先程曲芸で稼いだ金銭入りの袋を、丸ごとカウンターの上へと置いた。

 どうやらソルは、此処で稼いだ資金は全て紅茶の購入費用に当てているようだ。

「角砂糖とシロップはサービスするよ。いつもの通り、小分けにしないで良いのかな?」

「ええ」

 問答している間に、熱い紅茶を注がれたティーカップがかちゃりとカウンターの上に2人分置かれた。

「それじゃあ、準備して来るよ。ゆっくりしていきなさい」

 言うなり店の奥へと引っ込んでいく店主の背中を見送って、ソルは傍らでぽかんと突っ立っているシオンに傍の席に座るように勧めた。

「マスターの御厚意だ。遠慮しないで頂きなさい」

「は、はいっ」

 シオンが席に着くと、ソルも隣の席に座ってカップを手に取った。

 紅茶に顔を近付けて深く息を吸い、香りを確かめた後に、口に含む。

 うむ、と頷いて、言う。

「いずれ、此処へはお前が来るようになる。今日は此処の雰囲気と紅茶の味をよく覚えていくように」

「え……私が、ですか?」

「私にも、書庫でやらねばならない仕事があるのでな。先にアルシャ様も仰っておられたが、お前が私の代わりに此処に来られるようになると、私としても随分と助かるのだ」

 それは理解できるのだが──公衆の面前で大道芸のような真似事をする度胸は、シオンにはなかった。

 資金の調達まで代わりに行わなければならないとなると、手品の練習くらいはしておいた方が良いのだろうか。

 などと考えるシオンの胸中を見透かしたように、ソルは微苦笑してカップを傾けた。

「心配するな。資金の工面は私が仕事の合間を見て行っておく」

「あ……そう、ですか」

 それならば、今の自分でもソルの代役は立派にこなすことができるだろう。

 シオンは店内をくるりと見回した。

 淡い山吹色の光で照らされた店内は、月日を重ねて育てられた年季の重さを感じさせつつも、それを柔らかく包み込んで誰もが気さくに手を伸ばせるような、そんな独特の雰囲気で満たされている。

 木の茶とガラスの透明とで統一された色彩が、そうさせているのだろうか。書庫の雰囲気と何処か似ているなと、シオンは思った。

 店主の人柄が師に何となく似ているという部分も、少なからず影響しているのだろうが。

 先生が此処の紅茶を好きな理由、分かる気がする。

 ふふっと笑って、シオンはシロップで仄かに甘味を付けられた紅茶を口に含んだ。

 どうやら店主は、相手に合わせて淹れる紅茶の濃さや砂糖の有無を調整してくれているらしい。

 シオンとは初対面のはずなのだが──長年の慧眼の賜物といったところか。

「おまちどうさま。うちの紅茶は、楽しんで頂けているかな?」

 2人が紅茶を飲み干した頃、店主が小脇に赤子ほどの大きさの麻布包みを持って帰ってきた。

 紐で結い止められた紙のタグには、小さくサインのようなものが書いてある。

「相変わらずの御手前で。いつもありがとうございます、マスター」

 席を立ち、深く頭を下げるソル。

 それに倣い、シオンも席を立って店主に向けて身体を折り畳んだ。

 店主は笑いながら、包みをソルへと手渡した。

「こちらこそ、当店を愛して頂いて感謝に尽きませんよ。此処は、貴方方の御好意で成り立っているようなものですからね」

 と、小脇についと手を伸ばし、小さなポプリの袋のようなものを取り出して、シオンへと差し出してきた。

「新作の茶葉が入りましてね。少ししかありませんが、どうぞ御賞味下さい」

「ありがとうございます」

 シオンが袋を受け取ると、店主は胸元に手を当てて優雅に一礼をした。

「また御贔屓に」


「どうじゃったかの? 『外』の世界は」

 ソルに淹れてもらった紅茶のカップに口を付けながら、アルシャはシオンに向けて尋ねた。

 太陽の書ソルを収めたホルダーを揺らしながら梯子を上り、頂に着いたところでシオンはそちらへと振り返る。

「温かい街でした」

「おや、そうかい」

 アルシャは、今でこそ書庫の外に出ることはなくなったが、かつてはソルやルナに『外』を教えるために陽の当たる世界を歩いていた時期がある。

 当然、その街の雰囲気も、そこに愛すべき紅茶の店があることも知っている。

 随分と気に入ったようだ、と記憶の中に存在する街の姿を思い出してはにかみ、アルシャは言った。

「御主は儂と違って、自由に『世界』を駆け回れる足がある。『扉』を開くことに慣れたら、好きな時に、外に出て構わないんじゃよ」

「はい!」

 満面の笑顔で返事をして、シオンは抱えていた世界書を本棚の一角へと納めた。


 幻灯書庫の日常。

 時折姿に変化を齎す時の流れは──今日も、普段通りの平穏を持って、夕刻を運び入れようとしていた。

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