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ドリームゲーム  作者: 武藤希依
2/3

初戦

目の前が真っ白な霧に包まれ、身体が宙に浮いたような感覚がした。


宙に浮いていたのはほんの少しの間ですぐに足が地面に着いた。


そして真っ白な霧も徐々に晴れてくる。


まずは木の壁が目に入った。

どうやらログハウスの部屋のような場所にワープしたらしい。


「初めまして。君が俺の新しいパートナーかな?」


周囲の状況を確認する間も無く、後ろから声を掛けられた。

俺はとても驚き、真後ろに置いてあったイスを蹴飛ばしてしまった。


振り返るとそこには俺が蹴飛ばしてしまったイスではないもう一つあったイスに腰をかけ、テーブルに寄りかかった人がいた。


「驚かせちゃったかな。ごめんごめん。俺の名前はシュン。よろしく。君の名前は?」

シュンと名乗った男は鎧を身につけたこれぞ騎士(ナイト)というような身なりでクスッと笑って俺の方を見ていた。


「俺の名前はミナ、、、ミナミ。よろしく。」

ミナトと言い掛けた所で夢管理人に睨まれ、ギリギリの所でミナミと訂正した。


「ラクまたお前…。」


それ以上会話をするより前にまた別の声が聞こえた。

声の主はシュンのすぐそばでテーブルの上に座っている緑色の夢管理人の姿だった。


「やぁマサ。今回は君とペアか。よろしく頼むよ。」

どうやら夢管理人にも一人一人名前があるらしく、俺の管理人はラク、シュンの管理人はマサという名前らしい。


「またって?」

「こっちの話さ。何でもない。気にしないでくれ。」

俺がラクに聞くとまた適当にはぐらかされた。


「全く。そのうち夢様に怒られるぞ。」

「夢様はこんなことでは怒らないさ。さぁそんなことより早く始めようよ。」

「まぁもう仕方のないことか、、、。」

「だから何なんだよ?夢様って誰だ?」

「まぁそのうち話してあげるよ。今はドリームゲームに集中してくれ。」


俺はこの2人の会話に全くついて行けなかったが、もうこの話をする気は2人とも無いようだった。

シュンも全く何の話だか分からないというような顔をしていた。


「なんで俺はこんなよくわからない世界でお前らの暇潰しの遊びになんて付き合わないとならないんだよ…。」

適当にはぐらかしてばかりのラクを見て思わず声に出てしまった。

「おい。ラクお前またちゃんと説明してないのか?」

「僕たちが暇だから一緒にゲームしてってちゃんと説明したよー。」

「お前なぁ…いつもいつもちゃんと説明しろって言ってるだろ!」

「だって一緒にゲームしてくれたらそれでいいじゃん。ちゃんと願いを叶えるって事は話したしー。」

ラクはマサに怒られても悪びれる様子は全くなかった。

そして俺はまたしても置いてけぼりになっている。


「初めまして。夢管理人をやっているマサだ。君のところにきたラクは管理人の中でも本当に適当で説明すらしっかり出来ていなかったようで本当に申し訳ない。」

ポカンとする俺にマサは頭を下げ、謝ってきた。


「まずはこのドリームゲームをやる理由について説明していこうか。」

ラクはつまらないといった態度でテーブルの上に寝そべってしまった。


「僕たち夢管理人はなんでも願いを叶える事が出来るっていうのは知っているね?」

「あぁ。それはこいつから聞いた。」

俺はテーブルの上で欠伸をしているラクを指差した。

「なんでも願いを叶える事は出来るのだけれどだからといってみんなの願いをすべて叶えてあげることは出来ないんだ。すべて叶えてしまうと現実世界でバランスが取れなくなってしまうからね。つまり現実世界で願いが叶うこと、叶わないことのバランスを見極めて僕たちは誰のどの願いを叶えるか考えているんだ。」

「その叶える夢を決めるのがこのドリームゲームってことか?」

「あぁ。前までは夢管理人と人間とのジャンケンで決めてたんだがどうにも管理人たちはジャンケンが弱いらしくてね。人間たちの願いをどんどん叶えてしまった。おかげで現実世界のバランスがおかしくなってしまった。そこでこのドリームゲームというちょっと難易度の高い方法を取ったって訳だ。」


俺は唖然とした。


ジャンケンにしてもドリームゲームにしても人の願いを叶えるか叶えないか決めるには適当すぎる。

こいつらは俺たち人間をただのおもちゃとしか見ていないんじゃないかと思った。


「僕はジャンケンもドリームゲームもそんな適当な遊びのような決め方で人間の叶える願いを決めるなんておかしいと反論したんだがね。そこのラクのように自分が楽しければ何でもいいっていうやつがどうにも多くて、結局こんな事になってしまったんだ。本当に申し訳ない…。」

マサは俺に向かってまた頭を下げた。


どうやらマサは夢管理人の中ですごくまともなやつのようだ。


俺はこんなやり方で決めている事に腹が立ったがここで言い合いをしても仕方がないと思い、とりあえずこの状況を飲み込む事にした。


「まぁ君が悪い訳じゃないし頭を上げてくれ。それにどんな決め方だろうと俺は君たち夢管理人にすがるしかないんだ。どんなに過酷だろうと俺は勝ち進んで願いを叶えてもらうだけだ。」


そう決意を新たにした。


「うん。そうだな。必ず勝ち進んで一緒に願いを勝ち取ろう!」

それまで黙って聞いていたシュンが手を差し伸べてきたので俺はその手を掴み強く握り返した。


「話は終わったー?」

ラクが眠そうに欠伸をしながらこちらを見て言った。


こいつはマサとは違い、本当に腹が立つやつだと思ったが、ここで言い合いをしても仕方がない。

先程と同様に飲み込んでおく事にした。


「あぁ。俺たちは勝ち進んで必ず願いを勝ち取る。」

「その意気だね。本当に楽しそうだ。それじゃあ早く行こうよ!」

ラクは眠気など何処かへ飛んでしまったようで、早く遊びに行きたい子供のようにはしゃいでいる。


「まぁとりあえず実践あるのみかな。じゃあさっさと初戦行ってみようか。」

俺は心の準備が追いつく前に意外にもシュンが俺をドアの外に引っ張り出し、フィールドへ繰り出していた。


「えっちょっ待って!戦い方の練習とか作戦立てたりとか色々してからじゃないのか!?」

「まー初戦だし大丈夫だよ。実践あるのみ。ミナミはとりあえず自分が思うように動いてくれればいいよ。」

シュンと言い合いをしながら引っ張られているとどうやら森の中に入っていたらしく、辺りには木々が鬱蒼と生い茂っていた。


振り向くと先程まで俺たちがいたログハウスが跡形もなく消え去っていた。


「おいおい。一回出たらもう戻れないのかよ…。」

そんな泣き言も聞こえていないかのようにシュンはどんどんと先へ進んでいく。


俺は戻ることは諦め、最初から気になっていた事をシュンに聞いてみた。


「シュン。最初に俺を見たとき次のパートナーって言ってたよな?それって前にもこのゲームに違うやつと参加してたってことか?」

「そうだよ。前のパートナーとは8連勝までしたんだ。だけどどうやらあいつ現実世界でこっちの世界の話をしたみたいでね。このゲームから消されたんだ。」

シュンは悔しいような悲しいような顔で話してくれた。

8連勝までした実力を持っているからこれほど堂々とした立ち振る舞いをしていたのかとようやく分かった。


俺はなんと声をかけていいかわからなかった。

やっとあと2回勝てば夢が叶うってとこまで登りつめたはずだったのにスタート地点に戻されてしまったのだ。


しかも次の相方が初心者じゃ尚更理不尽ってなもんだ。


「そうなのか。じゃあ初戦なんて楽勝ってなもんだね。ミナミの出番なんて無さそうだ。」

ラクはシュンの気持ちなど全く気にせず、嬉しそうなでも少し残念そうな顔で言った。


「まぁ初戦エリアだから大丈夫だとは思うけど調子に乗ってるとやられそうだから気は抜かずに全力で戦うよ。」

シュンはニヤッと笑いながら言った。


俺が思うほどシュンは落ち込んではいないようでむしろこのゲームを楽しんでいるかのように見えた。


「初戦エリアってなんだ?」

「あぁ。実は何勝したかによってエリアが変わってくるんだよ。まだ僕たちは初戦だから初戦エリアつまり初心者しかいないこのエリアで戦う事になる。だから戦い慣れてるシュンにとっちゃ楽勝ってやつだろう。」

ラクが楽しそうに笑いながら説明した。

シュンはちょっと困ったような素振りを見せたがすぐに頼もしい顔に戻った。

「まぁミナミはこの初戦でこの世界の戦い方をなんとなく掴んでくれればいいよ。」

「分かった。シュン頼りにしてるよ。」



ドンっ!!



言い終えたと同時に左肩に衝撃が走った。


見ると肩に矢が刺さっていた。


「い、いったー!!!…くはないのか。」


俺は反射的に叫んでしまったがこの世界では衝撃だけで痛みは無いようだった。


「ミナミ!次くるぞ!そこの木に隠れて!」

その声を聞き、反射的に木の後ろに隠れた。



シュッ!



耳元で風が吹いた。


直後、先程まで俺がいた場所に矢が刺さった。


「ミナミは念のためHPを回復しておいて。俺はあの弓使いをやってくる。もう一人何処かに隠れているはずだから気をつけてくれ。」

そう言うとシュンは木陰から素早く出て弓使いの方へ走って行った。


俺は自分のHPを見ると4/1ほど削られていた。


ラクが素早く武器へ変化し、俺の右手に収まると同時に自分自身に回復魔法をかけた。


HPが満タンまで回復したのち、シュンの方を見た。


シュンは弓使いに矢を向けられ何本も打たれていた。


しかしシュンはそのすべてをかわしながらどんどんと距離を詰めていた。


弓使いはどんどん焦りの表情を見せ、手元が狂ってきている。


シュンと弓使いとの距離があと5メートルほどになった。


もう少しでシュンの間合いだ。


このままならいける!と思った。


ところが次の瞬間いきなりシュンの真上から剣の使い手が現れた。


剣先がシュンの頭に向かって落ちてくる。


剣士の顔がニヤッと笑ったのが見えた。


「シュン!危ない!!!」

俺は思わず叫んだ。


ガーーーン!!!と金属がぶつかり合う音が辺りに響いた。


見ると相手の剣はシュンの左手に収まる盾に防がれていた。


剣が盾に防がれ、剣先がカタカタと音を立てながら震えている。


おそらく力押しではシュンの方が有利だろう。


しかしその間に距離を取っていた弓使いが動けなくなっているシュンの頭を狙い、矢を飛ばしてきた。



バンッ!!!



矢はシュンに届く前に消え去った。


「ナイスミナミ!お前すげーな!」


回復を終えた俺はシュン達との距離を詰めていた。


矢が見えた瞬間、頭で考えるよりも先に体が動き、矢を攻撃して撃ち落としていた。


自分でも自分の行動に驚き、一瞬ぽかーんとしてしまった。


「ミナミ!危ない!!!」



ドンっ!!!



隙をついて弓使いが俺を狙って矢を打ってきた。


しかし、俺はまた頭で考えるよりも先に体が動いていた。


見ると杖に矢が刺さっていた。

杖を盾代わりにしたのだ。


「ミナミ!こっちが片付くまでそいつは任せた!」


二度も弓使いの攻撃を防ぎ、俺に任せても大丈夫だと判断したのかシュンはもうこちらを見ず、剣士の方に集中していた。


弓使いは苦い顔をして木陰に身を潜めてしまった。


シュンは一対一なら負けることはないだろう。


俺は木陰に身を潜めながら弓使いの気配を探した。


剣士の攻撃はことごとくシュンの盾に防がれ、弾き返されている。


「マサ。モードチェンジだ。」

「りょーかい。」


シュンは剣士の攻撃を盾で大きく弾きかえす。


剣士はよろけ、尻餅をついてしまった。


その瞬間、シュンの盾が煙になった。



「『アローブロー!!!』」



その隙を狙い、相手の弓使いがシュンに向かってスキルを使ってきた。


やばい!と思った時にはもう遅く、俺は何もできないまま、スキルはシュンに届いた。



ドーーーンっ!!!



すさまじい轟音と土煙が辺りを覆った。


シュンの姿は土煙で見えなくなってしまった。



「『スタースラッシュ!!!』」



土煙の中から今度は相手の剣士のスキルが発動された。



バーーーンっ!!!



またもすさまじい轟音と土煙が舞う。


「シュン!!!」


土煙が徐々に晴れていく。


見るとシュンは無傷とは言えないものの、堂々とした足取りで先程までいた場所と同じ場所に立っていた。


先程と変わっているのは武器が盾と片手剣だったのが、1本の大剣になっていることだ。



「『ヒール!!』」



俺はホッとしたと同時にシュンに回復スキルをかけた。


シュンの体が光に包まれ、傷が癒えていく。


「サンキューミナミ!よしじゃあ次はこっちの番といこうか。」


シュンはニヤッと笑い、相手の剣士を睨んだ。


スキルが防がれ、愕然としていた剣士はビクッと身震いした。


シュンが大剣を腰に構えた。



「『エアスラッシュ!!!』」



スキルを叫ぶと同時に大剣を左から右に向かって水平に斬りつけた。


先程の敵のスキルのような轟音はしなかった。


シュン!!と風が勢いよく通る音がした。


一瞬、スキルが不発したのかと思った。


「うっ!がはっ!!」


しかし、剣士との間合いに入っていなかったにも関わらず、剣士は見えない刃で切られたかのように吹き飛ばされ、そして倒れた。


剣士は光となって消えた。


「なっ!一撃かよ!」


弓使いの驚きの声が聞こえた。


と同時に敵わないと思ったのか弓使いはシュンに背を向け、逃げようとした。


しかし、シュンに気を取られている間に俺は弓使いの後ろを取っていた。


挟み撃ちにされた弓使いは苦い顔を浮かべた。


「くそっ!俺は負けるわけにはいかないんだよ!」


そう言うと弓を俺に向けて構えた。


「『アローブ、がはっ!!」


スキルを唱え終わる前に後ろからシュンが斬りつけた。


「後ろがガラ空きだ。」


弓使いは光となって消えた。




「まずは一勝だな!それにしてもミナミお前本当に初めてだったのかよ?戦い慣れしてるように見えたぞ。」

「初めてのはずなんだけど…。俺も無我夢中で考えるよりも先に体が動いてたって感じかな。シュンがすごすぎて俺の出番なんて無かったけどな。」

「いや、ミナミのおかげですげー戦いやすかったよ。これからもよろしくな!」



初勝利の喜びを分かち合い、俺たちは強く握手した。

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