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夜の魔物  作者: 夢見る機械
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第一話 長い待ち合わせ

第一話です。おかしな所があったら是非指摘してください。よろしくお願いします。

ページが赤く染まっている。

僕は読みかけの本に栞を挿む。

いつの間にか夕方になっていた。

今日は待ち合わせをしていたような気がする。このベンチで三時丁度。

左手の機械式時計に目をやると針は六時を指していた。

僕の友達は約束をすっぽかしたらしい。あいつのことだからそんなこともたまにはある。

僕は黒のデッキフックジャケットのポケットから電話を取り出して(赤井 光)に電話を掛けた。

「プルルル プルルル プルr ツー」切られた。

「プルルr」今度は出た。ワンコールなる前に。

「もしも~し」やけに小さな声で応答している。

「何?声小さいね」

「のどが痛いんだよね~」

少し咳払いする音が聞こえた。

「風邪ひいた?」

「いや、そういうわけじゃないんだよねー。ちょっと寒くてさー」

「ああ、温めて寝なよ。じゃあね」

「ちょっ、ちょっとま・・・」光が何か言いたげだが本を読んで疲れた僕に長電話は億劫だった。また今度会ったときにでも聞こう。

足元に置いたゴミの入った小さなポリ袋を右手に、左手には本を持って立ち上がる。顔を上げると街にはちらほらとネオンが灯りはじめていた。

「そろそろ家に帰ろう」なんとなく小さな声で呟いてみる。首に巻いた黒のカシミヤのマフラーが少し緩かったので右手のポリ袋を一度地面に置いて巻きなおした。僕は寒がりだ。このマフラーは手放せない。

まずマフラーの方端を体の左前に少し垂らす。そしてデッキフックジャケットの襟に重なるようにグルグルと三回転巻く。両端を軽く結んで完成だ。とても暖かい。

「このゴミはカツサンドじゃあありませんかー?」後ろから声がする。振り返ると光が立っていた。

「カツサンド好きだよねー」確かに僕はカツサンドが好きだ。ちゃんとキャベツが入っている奴に限るけどね。

光のホホは少し赤みがかっている。寒かったのは本当らしい。「居たなら声かけてよ、そしたら店にでも入ったのにさ」僕がそういうと「だって一生懸命本を見てたからさー」そう言って両手を自分のほっぺにつけて軽く首をかしげて見せた。

「それに電話もすぐ切るしさー。私がすっぽかしたと思ったでしょうー」

「とりあえず一時間も隣に座ってたのに気付かないってちょっとおかしいんじゃないかなー」

「五時に来たの?」

「三時には来てたよー。あんまり本を一生懸命読んでたから声かけづらくて音楽聞いて公園の中を散歩してたんだー。二時間ぐらいはねー。そのあとはベンチで座ってたよー」

呆れた。光はこういう奴なんだ。

真面目でおっちょこちょいで親切で好奇心があって気が利くが少し流されやすくて優しい。

「とりあえず喫茶店でも行こうか。夜ご飯でも食べましょう」ポリ袋を拾って歩き出すと後ろを光がついてきた。

「カツサンドたべるのー?」

「一回カツサンドから離れようか」

そうして三時間遅れだが光と合流できたのだった。


ゆっくり更新して完結目指します

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