第四十二話「魔法のトラップ廊下」
スヴェンとリン、アモイは石の階段を降りた。
そして降りきった先にあった扉を慎重に開ける。
今度は目の前には前、右、左へと3つに別れる通路が広がっていた。
どちらを見ても通路は20メートルほど先で曲がっており、どこへ繋がっているのか不明である。
スヴェンはかすかに石の床を踏むい足音を聞いた。
「マズイ、誰かが正面の通路からやって来る」
リンは慌てて透明化の魔法を唱えて姿を隠す。
だがスヴェンとアモイは一瞬遅れ、不審な行動となる魔法詠唱を断念して二人そろって通路に背を向けた。
ザッ、ザッ、ザッ、ザッ
人の歩く音がスヴェン達に迫る。
ザッ、ザッ、ザッ、ザッ
だがその足音はスヴェン達の元から離れ左の通路へと遠ざかっていった。
アモイがちらりと目をやると、フードを被った男がほうきを塵取りを両手に持って背を向けて去っていく。
「ふぅぅ。変装魔法を使っておいて良かった。バレなかったようだ」
「そうだね。だが三つの道のどれを進むべきか、最低でも左の道は避けたいが……。アモイさん、どっちか分かる?」
「人が居住する建物は作りが大体決まっている。平地に建てた建物と違い、岩盤や地下に穴を掘って作った建物の場合、放射状に伸びた廊下の先にそれぞれ別の機能を持つ部屋が配置されることが多い。
リンちゃん、透明化して邪教徒を正面から見てたよね? さっきの邪教徒は掃除に行くところだったと思う? それとも帰って来た所だったと思う?」
「掃除に行くところね。なんとなく憂鬱な雰囲気を醸し出していたわ。注意力も堕ちてたみたいだし」
「つまり左側は居住区だと想定するしかない。そして正面は様々な道具が置いてある作業場。右側へ行こう」
「リンならどっちへ行く?」
「人が居ない場所を選んで手当たり次第に物色するわ」
意見が纏まり、3人は右側の通路を進んだ。
通路は20メートルほど真っすぐ伸び、途中から右側へと弧を描きながら曲がる回廊となっていた。
5分ほど回廊を歩くと今度は左側に直角に通路が曲がり、幅5メートルほどの広くて真っすぐな廊下が30メートルほど伸びる。
遠くの通路の先には下り階段が見えた。
そしてスヴェン達の足元、廊下に入ってすぐの位置の床には魔法陣の刻まれたパネルがあった。
「正解だったみたいだね。じゃぁ行こう」
「スヴェンくん、ちょっと待った。この通路に関するゴルガンスペラの物語の記述を思い出した」
「……罠があるの?」
「二人ともそこで待ってて。オイラが一人で少し進んでみる」
アモイは魔法陣の位置からゆっくりと、慎重に周囲を観察しながら一歩一歩進む。
20歩ほど進んだところでアモイの姿が消え、スヴェン達の目の前、石のに刻まれた魔法陣の上に出現した。
「!」
「テレポート?」
「そう、ゴルガン・スペラがここを発見した当時からあった魔法のトラップ。いくら進もうとしてもテレポートで魔法陣の位置へと戻される」
「ゴルガン・スペラはどうやって通り抜けたの?」
「広い廊下を曲がりくねって歩く、見た目では分からない正解ルートがあったんだ。ゴルガン・スペラはひたすらトライ&エラーを繰り返し、二日間かけて正解ルートを探り当てた。
でも記載されているのはそれだけ。
正解ルートの記録も有ったのかも知れないけれど、船と一緒に海に消えたんだろう。
引き上げた宝箱のスクロールの中にも無かったよ」
「二日間……それは厳しいなぁ」
「見て、あの通路の行き当たりの燭台。火が灯ってるわ」
「そうだね……つまり?」
「ここの住人は正解を知ってるのよ。外で捕えた邪教徒はこんなことまで教えてくれなかったけど、ここの住人に教えて貰えばいいのよ」
「というと?」
「鈍いわね。ここで誰かが通るのを待つのよ。忍耐も時には大切よ?」
「それが一番早いかもね。それじゃぁ誰かが来るのを見張りながら待とう」
3人は魔法陣のある場所でしばらく座り込み、交代で回廊の様子見る事にした。
そして機会は意外に早く訪れた。
30分後。
「(来たわよ、皆隠れて)」
「(分かった)」
「(よし)」
3人そろって魔法陣のある場所の壁際に並び、透明化の魔法で姿を隠す。
ペタッ、ペタッ、ペタッ、ペタッ
小さな足音が近づいてくる。
そしてこの遺跡の住人が3人の前に姿を現した。
スヴェンとアモイはその姿を見て驚いて声を漏らしそうになるのをこらえる。
回廊からやってきたのは……コウモリのような羽の生えた小さな使い魔、インプであった。
インプは魔法陣の位置まで移動すると通路の先へと向き直り、ゆっくり途中まで真っすぐに進む。
そしてそこから左へ直角に曲がって左の壁際まであるき、再び通路の先へと壁沿いに進む。
階段まであと少しの所で今度は右に直角に曲がり、反対側の壁まで進む。
そして数メートル歩いた後、再び左へ直角に曲がって通路中央へ移動し、そのまま真っすぐに階段へと抜けた。
インプはそのまま階段を降りて消えて行った。
「インプじゃないか……いや、よく考えたら不思議でもないか」
「邪教徒達の使い魔、偵察と伝令に使われる小悪魔。つまり階段を降りた先にはその情報を受け取る立場の奴等が居る」
「ここは行くしか無いよ。目的の場所はここから更に下へと降りた場所だからね」
「仕方がない。階段を降りた先は看破の呪文を使いながら慎重に邪教徒達を避けて進もう。アモイさん、正解ルートは……」
「ばっちりだ」




