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第三十五話「ピッテナー島到着」

 ブラッド・ピーコック号がタートルフォートを出港してから7日後。

 船は嵐の中を航行していた。

 空は雲で覆われて暗く、大粒の雨や波しぶきが甲板に降り注ぐ。

 船のメインセールは縦に7段ほどに分かれているが、上の3つは既に折りたたまれていた。

 大きく揺れる甲板の上でベラ船長の罵声が響く。


「風が強くなってきた! メインセイルをもう一段畳め!」


 甲板で何人もの船員が走り、あちこちでメインセイルの上から4つ目の帆に伸びるロープを掴み引っ張って帆を畳む。

 スヴェンもその中に交じり、雨と水しぶきでびしょ濡れになりながら遥か高くそびえる帆を見つめつつロープを引いて操作する。

 メインセイルの中央の支柱の上。

 見張り台でレインコートを着てびしょ濡れの望遠鏡で遠くを見ていた船員がベラ船長に叫ぶ。


「………っ! ……」

「何だっ!? もっとデカイ声でしゃべれっ!」


 見張りの船員は海の遠くを指さして叫ぶ。


「……島が見えます! ピッテナー島です!」


 ベラ船長はそれを聞くと操舵室へと駆け込んだ。

 そして操舵室の中、不安そうに様子を見守るアモイの横で、操舵するダミアンへ指示する。


「ダミアン! ピッテナー島が南11時の方角に見えた! そのまま近づくぞ」

「はい船長。船長の予想通りですね」


 ダミアンは傍の机にアモイがスクロールの中から選び出したピッテナー島の地図を広げ、羅針盤を眺めながら応答する。

 それを見ていたアモイが二人に地図を指さして言った。


「ひょっとしてこのまま真っすぐピッテナー島へ向かうのですか?

 それはマズイです。

 この島の北の先端の岬はゴルガン・スペラの記録によれば邪教徒の集団の本拠地がある。

 話の通じる相手ではなく瞬く間に取り囲まれて捕まえられるかも知れません。

 それよりこの島の目的地、島の裏側、南の山脈に寄せてください。

 その方が近い」


 ベラ船長は島の北岬から西を回って少し進んだ先にある入り江を指さした。


「この嵐の中、船を揺らし続けていては持たない。この入り江に入るぞ」

「そ、そこじゃまだ邪教徒の本拠地のすぐ近くじゃ……」


「選択の余地は無い。進めろ」

「アイアイサー」


 ブラッド・ピーコック号は島の西側へと舵を切り、少し海岸沿いに進んだ後、大きな入り江を見つけ、その中へと進んでいった。

 ダミアンが唸る。


「ゴルガン・スペラの一行は中々の集団だったようですね。この地図は何百年も前の物なのにかなり正確に作られていて信頼できる。相当な技量があったと見えます」

「……よし、ここからは精巧な操舵が必要になる気合を入れて行けよ?」


 ベラ船長は再び甲板に飛び出すと風で飛びそうになる三角帽子を片手で抑えながら叫ぶ。


「メインセイル全て畳め! 残りは前後の三角帆だけで調整する! 急げ!」


 船員達とスヴェンは慌ててメインセイルを完全に畳む。

 そして前後の三角帆を操作するロープを握ってベテランの船員が待機し、甲板の中央船縁で入り江の地形を神経質に確認するベラ船長に注目した。

 ベラ船長は片手を上げて前後の船員を指し、降ろしたり上げたりで指示をする。

 船は大嵐の風の中ゆっくりと、岸壁への衝突を避けながら入り江の中へと侵入していった。

 巨大で動きの重い船にもかかわらず、船は正確に左右へ移動や時には回転動作を交えて進む。

 最後にはゆっくりと鍵づめ状の入り江の最深部まで侵入した。

 風は強いものの、波は全て地形で打ち消され穏やかになっている。


「よし、錨を降ろして全ての帆を畳め! 終われば今日は休憩だ! この嵐は明日の朝には収まるだろう。見張り! 気を抜くなよ?」


 船員達は帆を畳み、交代の見張りを残して船室へと戻る。

 一仕事終えたスヴェンはレリック探索隊の船室のドアを開けて頭の水を祓いながら片手を差し出した。


「誰かタオル取ってくれ。もうビショビショだよ」

「どうぞ」


 スヴェンはラナに手渡されたタオルで顔と頭を拭きながら部屋の中の光景を見て呆れた。


「……何やってんの?」


 イヴァリスとリンは机を中心に向かい合ってトランプをしていた。

 そして彼女達の左右には項垂れる船員と、椅子に仰け反って放心状態の船員がいる。

 机の上、彼女達二人の手元にはコインのタワーがいくつか積まれている。

 船員二人の手元にコインは無く、一人はパンツ一丁、もう一人は頭頂部の髪の毛が焼け焦げて禿げ上がっていた。

 ラナは疲れ切ったスヴェンに申し訳なさそうに状況を説明した。


「そ、その、最初はトランプ遊びだったんですけど、私が厨房に呼ばれて雑用して帰ってきたらいつの間にか船員を引き込んだギャンブルになってて……」

「……あの人なんで頭の毛が焼けてるの?」


「コインを使い切っちゃって、リンちゃんが頭の髪の毛を20ゴールド相当と認めるからと続行して、イヴァリスちゃんも同意して……」

「負けちゃったと……」


「はい……。(あの人、船大工の棟梁の方ですよね? ……恐れ多いことを……)」


 よく見るとイヴァリスの傍の床にはもみくしゃにされて染みと床の黒ずんだ汚れの付いた、船員の服とズボンが置かれていた。


「イヴァリスちゃんも船が揺れてコップが落ちてドリンクを床にこぼしちゃって……」

「雑巾替わりに使ったと……。ラナさん、あの二人とギャンブルなんか絶対しちゃ駄目だよ?」


「……頼まれてもやりたくないです……」

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