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第三十話「タートルフォート寄港」

 ブラッド・ピーコック号はタートルフォート海砦の港へと寄港していた。

 ベラ船長は全員を甲板に集めて叫ぶ。


「本日中に水と食料、火薬などの補給物資を詰めるだけ積み込み、船の破損個所の修理を行う。

 そして明日の朝、日の出と共に出発する。

 全員持ち場のリーダーの指示に従って動け。

 アモイ、次の行き先『ピッテナー島』の事、その先の事について話し合いたいのでこの後船長室に来るように。それでは解散」


 再び全員、各々の仕事に取り掛かる。

 外装修理補助のリンは船大工に従って工具を運んで飛び回り、艦内清掃担当のイヴァリスはモップ掛けと油拭き、ラナは料理長たちと一緒に食糧庫のチェックと整理、そしてスヴェンはマスト補修担当として敗れたマストの交換にかかっていた。

 フロントセイルの上部のマストの張替えの為、横木に跨ってロープをほどいていたスヴェンの傍にリンが飛んで来てささやく。


「ねぇどうする? 皆で一緒に逃げちゃう?」

「うーん。僕たちとしては目的通りに進んではいるんだよなぁ」


「でも海賊よ? 本来のアマード船長の船に乗りなおすという手もあるわ」

「……そうだね。とりあえずみんなの意見を聞くべきだね。次の休憩時間、僕たちの船室に集まって話し合おう。皆に伝えてもらえるかな?」

「分かったわ」


 午前の作業が終わり、昼食後に一時間の休憩が与えられた。

 スヴェン達一行は全員船室に集まる。

 スヴェンの要望で、皆同じ大部屋で寝泊まりしているのである。

 スヴェンが机の上に乗りかかって小声で皆に言った。


「えーと、今は寄港中。もしこの船から逃げ出すんならチャンスなわけなんだけども。どうする?

 連絡して何日か待てばアマード船長の船に乗りなおせるかもよ?」


 皆が沈黙した。


「アモイさんはどう?」

「うん。おっかない船長と船員達だけども、仕事はきっちりしてくれる。ゴルガン・スペラの遺品の引き上げも成功させたしね。

 そして午前中話し合ったけども、ベラ船長は頭も良くて計画もヴィジョンもしっかりしている。

 オイラはこのままでいい気がする」


「イヴァリスは?」

「犯罪をしないなら……。船長も気前がいいし」


「リン」

「私はこっちのほうが面白いわ」


「ラナさん。ラナさんの事は巻き込んでしまって済まないと思ってます。なんならラナさんだけでもなんとか頼み込んでここで降ろしてもらう事も……」

「私はスヴェンさんに付いて行きます!」


「なんと」

「ええ?」

「ラーザス大司教様は私に、スヴェンさんに付いて行くようにとおっしゃいました。

 それが大精霊マーヤの啓示であるとおっしゃいました。

 私はどんな苦難が待ちかまえようとも耐えて見せます。

 皆さんの旅に同行したいです。

 そして私はプーリストとして皆を助ける力を身に付けなければいけないのです」


「でも……」

「足手まといにならないように……魔法の才能は私にはありませんが、剣の練習もしますから!

 どうか連れて行ってください!」


 イヴァリスが皆の顔を見回しながら言った。


「私の国にも……プーリストが居ます。首都の大聖堂にいけば……その力の使い方を……教えてくれるかも……」

「イヴァリスちゃんの出身地、オーナグ公国の首都、フロテナの大聖堂だね?

 それは好都合。ゴルガン・スペラが『ピッテナー島』の次に立ち寄ったのはそこなんだよ」

「それじゃぁ」


 スヴェンが締めた。


「皆このままこの船で進むということでいいね。

 僕としても、ここまでの航海でベラ船長とこの船の船員達は確実に目的を達成し、致命的な危機を見事に切り抜けた。

 僕の中では会ったことも無いアマード船長とその船よりも、確かな実績を積み重ねたこの船の方が信頼は大きくなっている。

 ガラが悪い人たちが多いけども、本当の悪人はそんなに見た目で分かりやすい物じゃない。

 そうだよね? リン」

「魔法の夜……大人になったのね」


「いざとなったら僕が皆を守るよ。それじゃぁ皆仕事があるだろうからここらで終わりにしよう」


 スヴェン達の集まる船室の外で、壁にもたれかかって腕を組み、黙って佇んでいた人影があった。

 ベラ船長である。

 ベラ船長はその場を離れて操舵室へと歩いて戻る。

 待ち構えてたようにダミアンが駆け寄って尋ねた。


「ベラ様、午後の自由時間ですが、アモイ一行を自由に外に出して大丈夫でしょうか?

 逃げられるかもしれませんよ?

 そうすると計画が全てパーです」

「構わん。出してやれ」

「了解しました!」



 午後の自由時間、リンとイヴァリスとラナはタートルフォートの街、商店街を歩いて宝石商を見つけ、お宝引き上げの分け前の宝石を換金していた。

 アモイは紙やインク、個人の嗜好品の買い物。

 スヴェンはマジックエッセンスの補給である。

 タートルフォートの秘薬屋の中に入ったスヴェンは店内を見回す。

 そしてフロアの端に丸椅子を置いて腰掛けている見知った顔と目が合った。


「スヴェン君!」

「コナーさん!」


 元スタグランドの秘薬屋で、スヴェンと一緒に異世界経由で脱出してきたコナーである。


「スヴェン君、無事だったか! 王都カルフンガリアが陥落したと聞いて心配してたんだよ!」

「えっ? カルフンガリアが陥落?」


「知らなかったのか。もうこの国はボロボロの状態。まさか自分の生きている間に『国が滅ぶ』状況を目にする事になるなんて……」

「シャドウ・キングか……。一刻の猶予も無いと言う事か……。

 コナーさん、今のシャドウ・キングと魔法学校評議会の動向、知っているだけ教えて下さい」


「それじゃぁ……秘薬屋ギルドの情報網から集めた最新の情報を教えるよ」

 

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